2 / 8
第2話
しおりを挟む
それから数日が経ち、勇人は生徒会の仕事を正式に手伝うことになった。
学校全体を見ても放課後の教室や体育館では、文化祭の準備が進められており、生徒たちは各々の役割を果たしていた。
普段、表立って人と関わることを避けてきた勇人にとって、こうした集団の中に身を置き、それでいて役割が与えられているという事実は少し居心地が悪かった。
それでも、紗奈が何かと気にかけてくれるため、逃げ出さずにすんでいる。
生徒会には、紗奈以外にも個性的なメンバーがいた。文化祭の実行委員長を務めるのは、冷静沈着で成績優秀な高橋和真という男だ。彼は生徒会長と文化祭実行委員長を兼任している。
リーダーシップを常に発揮し、生徒全体をまとめる力を持ち、常に淡々とした態度で物事を進めていた。
「高橋和真だ。生徒会長をしている。よろしく頼む。早速で悪いが相川、これが全体のスケジュールだ。確認しておいてくれ」
初めて会った日に、和真はスケジュール表を勇人に手渡した。
「随分と雑な挨拶ですね」
勇人は、少しぶっきらぼうな対応をとってしまった。和真は3年生で、勇人は2年生である。
「そうか?気に障ったなら謝る。篠原から、お前は信頼できる奴だと聞いている。文化祭成功させような!」
高橋は、激励の意味を込めて隼人の肩を叩く。
勇人は、こういった人間とどうやって関わっていけば良いのかわからずにただ呆然と立ち尽くしてしまった。
「悪い人ではなさそうだけど、正直どう関わっていけばわからんな……」
勇人は思わず声に出して呟く。
次に勇人が出会ったのは、生徒会の書記を務める向田杏奈という3年生の女子生徒だった。
彼女は小柄で元気いっぱいな性格で、どんな状況でもポジティブな発言で周囲を明るくする。彼女の無邪気な笑顔は、勇人の緊張をほぐしてくれる存在となった。
「向田杏奈です!相川君、よろしくね! 私、いっぱい頼みごとしちゃうかもしれないけど、がんばろうね!」
杏奈は最初からフレンドリーに接してくれた。握手を求めて右手を差し出しているのも彼女の性格を大いに表しているなと思った。
「よ、よろしくお願いします」
勇人は、和真の時とは違うベクトルでどう接して良いかわからずに少しオドオドとした態度をとってしまった。かろうじて、握手をすることには成功した。
そして、最後に会計担当の檜山大輝という同学年の男と出会う。
彼は無口で少し取っつきにくい性格だが、計算や細かい作業に関しては非常に精密で、他のメンバーからも信頼されていた。彼が一人で静かに予算案を作成している姿に、勇人は少し親近感を抱いた。
「お前も静かな方が好きだろ?」
大輝が勇人にそう声をかけた時、勇人は驚いた。普段あまり話さない彼が、自分に声をかけるとは思わなかったのだ。
「……まあ、そうだな。でも最近は、少し騒がしいのも悪くないと思ってる」
勇人はそう答えると、大輝は小さく笑った。
「一瞬にしてこの生徒会メンバーに染められちまったな」
「うるせ」
「あはは。でも安心しろ。俺もだ」
こうして、勇人は少しずつではあるものの生徒会メンバーとの距離を縮めていくのだった
学校全体を見ても放課後の教室や体育館では、文化祭の準備が進められており、生徒たちは各々の役割を果たしていた。
普段、表立って人と関わることを避けてきた勇人にとって、こうした集団の中に身を置き、それでいて役割が与えられているという事実は少し居心地が悪かった。
それでも、紗奈が何かと気にかけてくれるため、逃げ出さずにすんでいる。
生徒会には、紗奈以外にも個性的なメンバーがいた。文化祭の実行委員長を務めるのは、冷静沈着で成績優秀な高橋和真という男だ。彼は生徒会長と文化祭実行委員長を兼任している。
リーダーシップを常に発揮し、生徒全体をまとめる力を持ち、常に淡々とした態度で物事を進めていた。
「高橋和真だ。生徒会長をしている。よろしく頼む。早速で悪いが相川、これが全体のスケジュールだ。確認しておいてくれ」
初めて会った日に、和真はスケジュール表を勇人に手渡した。
「随分と雑な挨拶ですね」
勇人は、少しぶっきらぼうな対応をとってしまった。和真は3年生で、勇人は2年生である。
「そうか?気に障ったなら謝る。篠原から、お前は信頼できる奴だと聞いている。文化祭成功させような!」
高橋は、激励の意味を込めて隼人の肩を叩く。
勇人は、こういった人間とどうやって関わっていけば良いのかわからずにただ呆然と立ち尽くしてしまった。
「悪い人ではなさそうだけど、正直どう関わっていけばわからんな……」
勇人は思わず声に出して呟く。
次に勇人が出会ったのは、生徒会の書記を務める向田杏奈という3年生の女子生徒だった。
彼女は小柄で元気いっぱいな性格で、どんな状況でもポジティブな発言で周囲を明るくする。彼女の無邪気な笑顔は、勇人の緊張をほぐしてくれる存在となった。
「向田杏奈です!相川君、よろしくね! 私、いっぱい頼みごとしちゃうかもしれないけど、がんばろうね!」
杏奈は最初からフレンドリーに接してくれた。握手を求めて右手を差し出しているのも彼女の性格を大いに表しているなと思った。
「よ、よろしくお願いします」
勇人は、和真の時とは違うベクトルでどう接して良いかわからずに少しオドオドとした態度をとってしまった。かろうじて、握手をすることには成功した。
そして、最後に会計担当の檜山大輝という同学年の男と出会う。
彼は無口で少し取っつきにくい性格だが、計算や細かい作業に関しては非常に精密で、他のメンバーからも信頼されていた。彼が一人で静かに予算案を作成している姿に、勇人は少し親近感を抱いた。
「お前も静かな方が好きだろ?」
大輝が勇人にそう声をかけた時、勇人は驚いた。普段あまり話さない彼が、自分に声をかけるとは思わなかったのだ。
「……まあ、そうだな。でも最近は、少し騒がしいのも悪くないと思ってる」
勇人はそう答えると、大輝は小さく笑った。
「一瞬にしてこの生徒会メンバーに染められちまったな」
「うるせ」
「あはは。でも安心しろ。俺もだ」
こうして、勇人は少しずつではあるものの生徒会メンバーとの距離を縮めていくのだった
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる