3 / 8
第3話
しおりを挟む
今年の文化祭は特に盛り上がる予定らしい。なんでも学園創立50周年記念文化祭のようだ。
各クラスや部活動が趣向を凝らした出し物を準備し、学園全体が熱気に包まれている。勇人が手伝っている生徒会が担当するのは、体育館で行われる「ホラーハウス」と、特別教室での「アート展」だ。
*
ある日の放課後、体育館に集まった生徒会メンバーたちは、ホラーハウスの飾り付けや仕掛け作りに取り掛かっていた。和真を中心に、全員でアイディアを出し合いながら準備を進めていたが、細かいデザインや飾り付けの部分がなかなか決まらなかった。
「うーん、やっぱりホラーハウスの飾り付けって、デザインセンスが重要だよね」
杏奈が頭を抱えながら、教室の壁に目を向ける。他のメンバーも何となく賛同しながらも、誰も具体的な案を出せないでいた。
「もっと迫力があった方が良いんだがな。どうすればいいだろうか?」
そんな中、紗奈がふと思い出したように勇人を見つめた。
「相川君、昔、美術の先生に褒められてたよね。小学校の頃、君の絵、すごく上手だったよ。覚えてない?」
勇人は突然名前を呼ばれ、驚いて紗奈を見返した。彼女がそんなことを覚えていたとは思いもよらなかった。そもそも勇人は紗奈との接点すら思い出せないのでいるのだから当然である。
確かに勇人は昔よく絵を描いていて、小学校の美術の時間では先生に褒められることもあり、コンクールに絵が出されたこともあった。しかしそんなことは遠い過去の話だ。
「……そんなこと、もう昔の話だよ。今はもうほとんど描いてないし」
勇人は少し照れながら、言い訳をする幼い子供のように答えた。
「でも、その時の絵、私すごく好きだったよ。だから、相川君が描いたら、きっと素敵なデザインができると思うんだ」
紗奈の言葉には力があった。紗奈はどのくらい昔の勇人のことを覚えているのだろうか?勇人は改めて紗奈のことが気になった。
「絵か……」
勇人にとって絵を描くことは、かつての楽しみであり、逃げ場でもあった。しかし、転校を繰り返すうちに、徐々に描かなくなっていった。
「相川、1度描いてみてくれないか?どんなものか気になる」
和真が促すと、他のメンバーも期待の眼差しを向けた。杏奈や大輝も興味津々の表情で勇人を見つめている。
「うん! 相川君なら、絶対いいデザインができるよ!多分……」
杏奈が無邪気に声を上げ、勇人の背中を押す。その無垢な期待に、勇人は深くため息をつき、ついに決心した。
「……わかった。じゃあ、やってみるよ」
そう言うと、周囲のメンバーから安堵の笑みが広がった。こうして、勇人はホラーハウスのデザインをやってみることとなった。
各クラスや部活動が趣向を凝らした出し物を準備し、学園全体が熱気に包まれている。勇人が手伝っている生徒会が担当するのは、体育館で行われる「ホラーハウス」と、特別教室での「アート展」だ。
*
ある日の放課後、体育館に集まった生徒会メンバーたちは、ホラーハウスの飾り付けや仕掛け作りに取り掛かっていた。和真を中心に、全員でアイディアを出し合いながら準備を進めていたが、細かいデザインや飾り付けの部分がなかなか決まらなかった。
「うーん、やっぱりホラーハウスの飾り付けって、デザインセンスが重要だよね」
杏奈が頭を抱えながら、教室の壁に目を向ける。他のメンバーも何となく賛同しながらも、誰も具体的な案を出せないでいた。
「もっと迫力があった方が良いんだがな。どうすればいいだろうか?」
そんな中、紗奈がふと思い出したように勇人を見つめた。
「相川君、昔、美術の先生に褒められてたよね。小学校の頃、君の絵、すごく上手だったよ。覚えてない?」
勇人は突然名前を呼ばれ、驚いて紗奈を見返した。彼女がそんなことを覚えていたとは思いもよらなかった。そもそも勇人は紗奈との接点すら思い出せないのでいるのだから当然である。
確かに勇人は昔よく絵を描いていて、小学校の美術の時間では先生に褒められることもあり、コンクールに絵が出されたこともあった。しかしそんなことは遠い過去の話だ。
「……そんなこと、もう昔の話だよ。今はもうほとんど描いてないし」
勇人は少し照れながら、言い訳をする幼い子供のように答えた。
「でも、その時の絵、私すごく好きだったよ。だから、相川君が描いたら、きっと素敵なデザインができると思うんだ」
紗奈の言葉には力があった。紗奈はどのくらい昔の勇人のことを覚えているのだろうか?勇人は改めて紗奈のことが気になった。
「絵か……」
勇人にとって絵を描くことは、かつての楽しみであり、逃げ場でもあった。しかし、転校を繰り返すうちに、徐々に描かなくなっていった。
「相川、1度描いてみてくれないか?どんなものか気になる」
和真が促すと、他のメンバーも期待の眼差しを向けた。杏奈や大輝も興味津々の表情で勇人を見つめている。
「うん! 相川君なら、絶対いいデザインができるよ!多分……」
杏奈が無邪気に声を上げ、勇人の背中を押す。その無垢な期待に、勇人は深くため息をつき、ついに決心した。
「……わかった。じゃあ、やってみるよ」
そう言うと、周囲のメンバーから安堵の笑みが広がった。こうして、勇人はホラーハウスのデザインをやってみることとなった。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる