訳あり師弟が媚薬を100本作る方法【完結済】

ゆきのりん

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08.師匠、欲情とやらを知ったかも

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 熟すのを待っていた温室の袋果が食べ頃だったので収穫して、昨日の煮込みの残りを簡単なパンの生地で包んで焼いたものと共に朝の食卓に並べた。
 乾燥させると少し甘いお茶になる外側の袋を剥くと、とても薄い皮に包まれた瑞々しい果実が現れる。

「小耳に挟んだんですけど、魔族がヒトを不老にするのは、次に会った時わかるようにらしいですよ」
「へえ~」
「魔族の時間の流れはヒトと違うので…」
「なるほどね~んむう」

 昔は手も口も果汁まみれにして笑っていたシューなのに、綺麗に食べていた。
 そして、私の口の周りを微笑みながら拭いてくれた。



 引き続き、シューに浄化の魔法を教える。
 さっきの袋果の果汁を加えた水を入れた瓶を用意して、ふと思った。

「シュー、前髪邪魔じゃない?」
「ああ………顔を隠しておいた方が都合がいいので…視界はまあ慣れですよ、慣れ」

 敢えて顔を隠す理由…

「ああ~女の子避け? ふふ、かっこいいから、シュー」
「え…??? 師匠、俺は顔が良いんですか??」
「え…???」

 自覚が無いの?
 あ、そういうのも女の子には堪らないかもしれない。多分。

「あっそうだ、これ」

 しっかり乾燥させると伸び縮みするようになる蔓を結んで輪にしたものを手首に通していたので、シューの前髪を額の上で括って顔がよく見えるようにしてみた。
 なんだか幼けない。

「あら~かわいいね」
「かわ…? み、見てきてもいいですか」
「どうぞ、ふふ」

 シューは落ち着かない様子で部屋を出て行った。よく映る鏡はこの家にはないので、汲置きの水か窓辺りに映しに行ったのだろう。
 若い子は皆可愛いけれど、シューはかっこいい方が強いかもしれない。
 あと、なんだろ……あ、色気……?

「…切れてしまいました。すみません」

 シューは肩を落としながら戻ってきた。

「あらら、ちゃんと乾いてなかったかな、蔓」

 若いから髪の毛も元気なのだろう。前髪は元に戻って、少し跳ねている。

「せっかく師匠が結んでくれたのに…」
「気にしないで。これを浄化したら休憩にしようね」
「はい…」



 朝の簡単なパン生地を普通に焼いておいたものにチーズを乗せて香辛料を散らしたものを食べるシュー。
 その向かいで、私は朝温室で収穫して井戸水で冷やしておいた、硬い皮を持つ果物を小刀で割った。
 五つに分かれた部屋にまろやかな甘さの果実が詰まっている。

「はい、これもどうぞ」
「ありがとうございます、師匠も食べてくださいね」
「じゃあひとつもらおうかな…あっ美味しい~」
「ひとつと言わず、もっと食べてください」
「体重で分けたら私1シュー4じゃない?」
「2対3くらいでしょう…はい師匠、あーん」
「あーん」

 反射的に口を開けてしまった。うーん、滑らかな口どけ。



「水の浄化、難しいですね…」
「…今のままだと魔力の消費量と割が合わないかも」
「繰り返し練習ですね…頑張ります」
「うんうん、焦らずにやろうね」

 適性がないと早々に見切りをつけて投げ出さないのは立派だ。
 まず水で浄化の基本や要点を得て、他の得意な対象を見つけるのもいいだろう。



 夕食の、燻製肉の脂で炒めた野菜や茸と酸味のある木の実のスープ。
 その中に入れる、粉を練ってチーズを混ぜて丸めたものはシューが作ってくれた。
 なるべく同じ大きさになるように苦心している様子が微笑ましい。

「師匠、いくつ食べますか」
「ひとつ」
「もっと食べてください!」
「厳しい~!」




「媚薬作るよ~~~集中!」

 昨夜のシューの顔で、さささっと20本を調薬した。
 シューは、後方で見守ってくれている。

「思い出は美しくなるって言うけど――」
「一般的にはそうかもしれませんね」
「実際も美しいね」
「…? ええ、そうですね」

 頭に浮かぶ昨夜のシューは、思い出の中だから割増されてる?と思ったけれど、振り返って見た本物もとても綺麗だった。 
 
 …何だろう。
 改めて思い出すと、腰のあたりが…

「…ぞくぞくする」
「えっ、風邪でしょうか…大変です何か薬を飲みますか暖かくしてもう寝ま」
「風邪じゃないよ。だって」

 風邪の引き始めの悪寒とは明らかに違う。

「下半身が…おかしい?疼く?の?」
「ど、どういうことでしょうか」
「上手く説明できないんだけど、昨夜のシューを思い出したら、この辺がぞわぞわする…」

 腰回りに手のひらを這わせたり手の甲で叩きながらなんとか伝えようとすると、抱きしめられた。

「もしかしたらそれ…欲情じゃないんですか」
「…ハッ、これが!?」

 何故か背中や腰、太ももを撫でられて、シューの腕の中で身を捩った。

「ん、ふふ、くすぐったいよ」
「師匠…」

 普段と少し違うその声に、背筋がぞわりとした。

「ちょっと待ってて、ね、シュー」
「………はい」

 名残惜しそうにしていたシューが可愛くて、なんとさらに10本も作ってしまった。

「たくさん作れたけど、疲れたぁ…」

 作業台に手をつきあくびを噛み殺しながら呟くと、後ろからシューに抱きしめられた。

「思い出の俺で欲情する師匠もよかったですけど今目の前にいる俺も見てくださいそしてまた思い出してください」
「ん、んん?」

「師匠、あと35本作れそうですか?」
「うーん、そうだねえ…」

 昨夜のシューを思い出そうとするけれど、耳元で囁かれる声で集中できない。

「俺が師匠に触れるのを許されるのは、媚薬のためですよね…」
「え、うん…まあ、そう…だ…ね……」

 シューの腕の中は温かくて心地よくて、もう頭が働かない。

「俺のことは、男としては……その、けっ……」


 何か問うシューに答える前に、意識が無くなってしまった。
 シューは私を抱き上げて寝室に運んで後片付けもしてくれたと翌朝知った。



<媚薬:65本(うち35本納品)>


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