先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい

月輪林檎

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学園中等部

学園の飛び級試験

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 セレーネ達が別邸に住み始めてから、一ヶ月後。セレーネの元に手紙が届いた。それは学園からの手紙だ。受け取ったセレーネは部屋でクロに寄り掛かって座りながら手紙を読む。

「王立学園? これが名前?」
「そうですね」
「ふ~ん……何か入学試験を受けてって」
「お嬢様は侯爵家ですので、家庭教師から教育されているかもしれないので、飛び級させるかさせないかを判断する試験を受けて欲しいという事ですね」
「ふ~ん……今日から一週間以内に学園に来て欲しいみたい。いつ行けばいいかな?」
「そうですね。特にやる事もありませんから、今日行ってもいいかもしれませんね」

 試験は申し込み制ではなく、即日で受ける事が出来るものだった。なので、届いた当日に行っても何も問題は無い。だが、普通は試験に備えて軽く勉強してから行くものである。

「じゃあ、行こ。面倒くさい事は最初に片付ける!」

 そう言ってセレーネは立ち上がり、タンスに向かって行く。外出用の服に着替えるためだ。このくらいの着替えは、セレーネ一人でも出来るため、カノンはクロと向き合った。

「そうですね。クロは、お留守番だから」
「にゃ~」
「学園にクロを連れて行く事は出来ないから。学園にいてもお嬢様と一緒にはいられないし」
「にゃ~」
「ここから学園までは徒歩で十分くらい歩けば着くから、クロに乗る必要はない。大人しく屋敷で待つ事。そうじゃないと、お嬢様に迷惑が掛かるかもなんだから」
「にゃ~」
「それは嫌でしょ? じゃあ、お嬢様が呼ぶまでは屋敷にいる事。お嬢様がクロに来て欲しい時は分かるでしょ?」
「にゃ~」
「はい。良い子」

 クロを説得したカノンは、大人しく従う事を選んだクロを撫でる。それを見ながら着替えていたセレーネは頬を膨らませる。

「私もクロと話したい」
「そんな簡単に出来たら、私も隠さずに済むのですけど。着替えは出来ましたか?」
「うん。ちゃんと出来てるよね?」
「…………はい。出来てますね。それでは、学園に行きましょう」
「うん!」

 セレーネは、カノンと手を繋いで学園へと向かった。外は人で賑わっている。何度か外出しているが、セレーネは王都の景色が珍しく感じており、何度もキョロキョロと見回していた。

「学園への道程は覚えておいてください」
「は~い」

 素直に返事をしながら、セレーネは周りを見続けている。若干心配になるカノンだったが、セレーネならちゃんと分かるだろうと信じる事にした。
 カノンは元々王都に住んでいたので、学園への道程に迷うという事はない。そのまま学園へとやって来る。

「おっ……きいね」

 セレーネは学園の敷地面積の広さに驚いていた。それを見て、カノンは微笑む。こんな反応をするのだろうなと思っていたからだ。

「はい。学園は王都の五分の一を占めています。小等部から高等部までが合わさっていますからね。因みに、あちらの方にある高い建物が分かりますか?」

 カノンが指さす方には、大きな高層ビルが建っていた。高さ的には二十階近くある。本当に大きな高層ビルだった。そのビルは、王都内にいくつか並んでいる。

「うん。大っきい」
「あれがアカデミーの一つだそうです」
「へぇ~……じゃあ、お姉様はあそこにいくの?」
「入っている学部によりますが、そうですね」
「ふ~ん」

 セレーネは、改めてアカデミーとなっている高層ビルを見つめる。

(いずれは、あそこに通うようになるのかな?)

 セレーネがそんな事を想っていると、カノンが軽く手を引っ張る。それに気付いてセレーネはカノンを見る。

「それでは、小等部に行きましょう」
「うん」

 カノンの案内で小等部まで来て、事務室へとやって来た。カノンは、慣れた様子で事務室の受付に顔を出す。

「すみませ~ん」
「はいはい。どうしましたか?」
「入学試験を受けに来たのですが、手続きをお願い出来ますか?」
「はい。手紙はお持ちでしょうか?」
「はい」

 カノンは、セレーネが受け取った手紙を事務員に渡す。事務員は中身を確認してあらセレーネの方を見る。

「クリムソン侯爵家のセレーネさんですね」
「はい」

 事務員がセレーネに確認するので、セレーネは頷いて答えた。本人確認が出来たので、事務員は手続きを進めていく。

「はい。では、この教室に行き待機して下さい」
「分かりました。行きましょう、お嬢様」

 事務員から紙を受け取ったカノンは、セレーネを連れて校舎を歩く。その足に迷いはない。

「この学園では、身分差を持ち込まないという風になっています。学園則によって、そう定められているのです」
「学園則?」
「学園内のみで通用するルールという感じですね。まぁ、守る生徒は少ないですが」
「へぇ~、意味ないね」
「そうですね。まぁ、破っているのを見られたら、反省文を書かされたりしますが」
「ふ~ん」
「お嬢様も気を付けて下さいね」
「うん。よく分からないけど分かった」

 大丈夫かなと思いながら、カノンはセレーネを連れていった。教室の場所も覚えていたので一切迷う事なく教室に着くことが出来た。教室には、まだ誰もいない。先程伝えたばかりなので、教師も間に合っていなかったのだ。そのくらいはカノンも想定済みだった。

「席に座ってお待ちください」
「うん」

 セレーネが席に座り、カノンは傍に立つ。それをセレーネはジッと見ていた。

「カノンは座らないの?」
「使用人ですので」
「身分差はないんじゃないの?」
「私はもう生徒ではありませんし、お嬢様もまだ生徒ではありませんので」
「……屁理屈?」
「筋の通った理屈です」
「ふ~ん」

 そんな話をしていると、教師が入ってきた。女性の教師で、教室に入りカノンを見るなり目を剥いた。

「カ、カノンさん!?」

 カノンは教師の顔を見て、片手を振りながら微笑む。

「あっ、先生。お久しぶりです。では、お嬢様。私は使用人室に行きます。試験が終了する時刻にお迎えに参りますので、頑張ってください」
「うん!」

 久しぶりに会った教師との会話は続けずに、すぐにセレーネへの鼓舞をした。ここに来た理由は試験を受けるセレーネの付き添いなので、旧交を温めるのは今じゃないと判断していた。

「お嬢様をよろしくお願いします」
「あ、はい……」

 カノンはセレーネと教師に頭を下げてから教室の外に出て行った。そして、そのまま使用人が待機するための部屋へ向かう。

「で、では、試験を始めます。いくつかの科目の試験を受けてもらいます。一科目につき、制限時間は一時間です。早く終わった場合は申告してください。次の科目へと移ります」
「は~い」

 少し狼狽していた教師だったが、気を取り直して試験を始めた。セレーネは次々に試験を終わらせていく。想定よりも遙かに早く試験の問題を解いていくセレーネに教師は唖然としていた。セレーネが問題を解いている間に、採点もしているが、その全てが満点だった。最後の試験問題の採点も終わったところで、教師は笑顔のまま固まった。

「どうだった……でした?」

 普段丁寧な言葉遣いなどしないセレーネはぎこちなくそう訊いた。

「あ、はい。全問正解ですので、小等部は飛び級となります。後日、その旨の書類を送りますので、その書類に沿って手続きをお願いします」
「分かった……りました」
「言葉遣いに関しては、徐々に慣れていきましょうね」
「うん……あ、はい」

 ぎこちないセレーネに、教師は微笑む。

(侯爵家って聞いていたけど、良い子だなぁ……皆、こういう子ばかりだったら良いのに)

 頑張って言葉遣いをちゃんとしようとしているセレーネを見て、教師はそんな風な印象を受けていた。
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