先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい

月輪林檎

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学園中等部

学園の入学式

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 それから更に一ヶ月が経った。セレーネの入学の日がやってきた。セレーネは屋敷届いた制服に袖を通す。黒を基調にした制服で、リボンとスカートは赤色になっている。これが、中等部一年生の色だ。成長する事も考えて、多少大きめに作られている。

「カノン、カノン。見て見て」
「はい。お似合いですよ」
「ふふん! マリアにも見せてくる!」

 セレーネはそう言って、隣の部屋に突入する。そこではメイド服に身を包んだマリアの姿があった。

「セレーネ? どうしたの?」
「見て見て!」

 セレーネはそう言って制服を見せびらかす。マリアは、くるくると回るセレーネを頬に手を当てて止める。

「可愛い!」
「ふふん!」
「それじゃあ、カノンさんのところに戻って準備して来て。入学式に遅れちゃうよ」
「うん!」

 そう言って、セレーネは自分の部屋に戻っていった。マリアも自分の身支度をしっかりとしてから、セレーネの部屋に入る。

「準備終わりました」
「では、学園に行きましょう。旦那様と奥様は、後ほど向かうとの事ですので。先に向かって問題ないかと」
「うん」

 セレーネは、カノンとマリアを連れて学園中等部の入学式へと向かう。

「そういえば、マリアって、本当に卒業したんだね」
「勿論。早くセレーネに仕えられるように頑張ったんだから。アカデミーに行かないって言ったら、先生達がしつこく勧めてきたけど……」
「ああ……私も同じです。学費の問題で無理と言っているのに、奨学金などがあるからとかしつこかったですね……」

 マリアとカノンは同じように遠い目をしていた。それだけ、二人とも優秀だったという証拠なのだが、当の二人にとっては、ありがた迷惑だった。

「ふ~ん……アカデミーって年齢制限とかあるの?」
「ないですね。一応、高等部を卒業する学力があれば、誰でも入学出来る事になっています。高等部を卒業して、どこかで働きつつ勉強して入学というのも珍しくはないらしいです」
「現役で入学するのは難しいとも言われてるかな。結局毎年入学出来る人数は決まってるから、より勉強している方が有利みたいな部分はあるよ。まぁ、現役でもしっかり勉強しておけば問題ないはずだけどね」

 アカデミーは、高等部を卒業するのと同等の学力があれば入学が出来る。それを判断するために入学試験があり、それを突破する必要がある。より優秀な生徒を欲しているため、入学試験の難易度はかなり高く設定されていた。
 そのため現役で入学するのも難しいと言われるレベルになっている。カノンとマリアがアカデミーに進学しない事を惜しまれたのは、現役でも確実に入学出来るだけの学力があり、そんな優秀な人材がどこかへ流れていってしまうのは勿体ないと思われたからだ。

「ふ~ん……じゃあ、お姉様は凄いって事だね!」
「まぁ、テレサ様は、凄いだろうね……普通に中等部に飛び級出来たはずなのに、小等部から入学して別の勉強とかをしていたくらいだから」
「それって、中等部に飛び級して早く卒業するんじゃ駄目だったの?」
「学園の図書館にある本を読破したかったらしいよ。お話しする機会が何度かあって、その時に教えてもらった」
「マリア、ズルい……」
「私に嫉妬しないの。テレサ様だって、セレーネに会いたがってたし」
「本当!?」

 さっきまで嫉妬の視線を向けていたセレーネが一転輝いた眼で見てきたので、マリアも苦笑いをしていた。

(本当にテレサ様の事大好きだなぁ……小さい時に一杯遊んで貰った事を経験として覚えてるのかな)

 そんな事を思いながら、マリアはセレーネの頭を優しく撫でる。

「本当だよ。それよりも、セレーネはしっかりと覚悟出来てる?」
「何の?」

 マリアの言いたい事が分からず、セレーネは首を傾げる。

「これからセレーネが入学するのは、王立学園の中等部。つまり、周りはセレーネよりも年上ばかりって事だよ。相手は、年下と見て、見下してくる人ばかりかもしれない。私とカノンさんは、ずっと一緒にいる事は出来ないから、セレーネが孤立する可能性もある。そういう目に遭う覚悟だよ」

 カノンもその通りと言わんばかりに頷く。
 セレーネよりも年上と言えど、中等部の生徒は十歳の子供ばかりだ。大人な対応をしてくれるような生徒がいるとは限らない。そのため、学園内でのトラブルもそこそこ存在している。マリア自身もいくつかのトラブルには巻き込まれた事があった。

「私がいた時は、飛び級した生徒は私しかいなかったから、色々と目の敵にされたりしたんだよね、私の時は、テレサ様が同級生として居てくれたから、ある程度どうにかなったけど、セレーネはそうじゃないでしょ? ちゃんと立ち向かえる?」
「うん。大丈夫」
「やけに自信満々だね?」
「ふふん! フェリシアがいるから一人じゃないもん!」

 セレーネが何も気にしていない理由は、同級生としてフェリシアがいるからだった。まだ飛び級出来たかどうかは分かっていないが、セレーネはフェリシアが飛び級出来ていると確信していた。

「そういえば、ウルトラマリン家の神童と友人になったんだっけ? なら、大丈夫ではあるか」
「そういう事。楽しみだなぁ」

 ウキウキなセレーネとは逆にカノンとマリアは、本当に大丈夫か心配になっていた。その理由は、セレーネが他の生徒と違うという事にある。セレーネが吸血衝動に襲われないための封印は、まだ機能している。誘拐された時と同じように死を経験しない限りは、吸血衝動に襲われる確率は低くなっている。
 そのため、セレーネの身体には、まだ封印が刻印されたままだった。見た目の違い。特にセレーネのような普通の人族と変わらない容姿に入れ墨のような紋様。セレーネが嫌厭される可能性は否定出来ない。幸い、フェリシアは全く気にしていないので、フェリシアが傍に居てくれる事を祈るばかりだった。
 そうして学園に着いたセレーネ達は、そのまま入学式を執り行う場所である集会場に向かった。二人が卒業生という事もあり、全く迷う事なく集会場に着き、入学式が始まった。 学園長による特に有り難くもない長い話を聞いた後、国王による軽い挨拶が入り、入学式が終わった。
 入学式が終わった後、セレーネはクラス分けを確認する。入学式が始まる前に配られたものだ。

「う~ん……」
「クラス分けの紙って見にくいですよね。ここにありますよ」
「本当だ。一組だって」

 最初に方に名前があったのだが、セレーネは見逃していた。そのため一向に見つからない状態が続いていたのだった。

「早い方で良かったね。下の方になると、教室が微妙に遠くなって面倒くさいから」
「ふ~ん……一組って使用人待機室に近い?」
「まぁ、他に比べたらね」
「じゃあ、一組で良かった。フェリシアはどこかな……」
「同じクラスですね」
「本当だ! やった!」

 そこにラングリドとミレーユがやって来る。

「セレーネ」
「お父様、お母様!」

 両手を広げてセレーネを受け入れようとしているラングリドを無視して、セレーネはミレーユに飛びついた。

「一組だった!」
「そう。もう成績順にクラス分けをしていないから、あまり指標とかにはならないのよね」
「昔はそうだったの?」
「ええ。取り敢えず、何も変わりなさそうね。頑張れそう?」
「うん!」
「それじゃあ、今日は別邸でお祝いね。テレサの入学祝いもあるから、テレサも一緒よ」
「やった!」

 テレサが来ることを知って喜ぶセレーネに、ラングリドが咳払いをして注目を受ける。

「とにかく。入学おめでとう、セレーネ。学園での生活は大変な事もあるだろうが、セレーネを大きく成長させてくれるだろう。頑張るんだぞ!」
「うん!」

 こうして、セレーネは新しい生活へと足を踏み入れた。
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