先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい

月輪林檎

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学園中等部

終わった課題と次の課題

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 それから二週間が経った。セレーネ達は、通常の授業をこなしながら、レイアーより貰った課題を進めていった。そうしてようやく課題を完了させる事が出来た。カノン達に手伝って貰って、分かりやすく纏めてある。
 放課後に、研究室に来ていた。

「先生! 課題終わったよ!」
「はい。では、確認しておきますので、続いては、こちらをどうぞ」

 レイアーは用意しておいた課題を渡していく。

「こちらの魔術陣に関わっている属性を分析してください。上位属性の構成なども含まれていますので、図書室で調べながらやると良いかもしれませんね。これが終わったら、次は、本格的に基礎魔術の開発に移って頂きます。卒業までに出来ると良いですね」

 レイアーの最後の言葉に、三人は目を瞬かせた。

「先生。卒業までって言った?」
「はい。お三方にやって頂くのは、ダンジョンより回収された魔導武器に付与されている魔術陣の解析と基礎魔術化ですので」
「ダンジョンから回収したものは、基本的に回収した個人のものでは?」

 フェリシアが質問する。フェリシアの言う通り、ダンジョンで得た宝物などに関しては、回収した個人に所有権がある。そこから冒険者を取り纏めるギルドに売り払うかなどすれば、市場に出回るが、基本的に手放す者はいないので、市場に出る数はかなり少ない。こうして研究用に確保出来る可能性も、同様に限りなく低いのだ。なので、フェリシアからすると疑問に思ってしまうのだった。

「はい。今回の研究用になった魔導武器の所有者から許可を得ていますので、問題はありません」
「気前の良い冒険者もいたものね」
「珍しいの?」
「当たり前でしょう? 下手すれば、自分だけの技に出来るのだから、秘匿するのが普通よ」
「ふ~ん……誰にでも使えた方が良いと思うけど」
「それは、セレーネが良い子だからなだけよ。基本的には独占欲が強い人が多いから。少なくとも、私はそう聞いているわ」
「ふ~ん……シフォンは?」

 フェリシアが持っている情報を聞けたので、シフォンが知っている事も聞きたいと思ったセレーネは、シフォンの顔の前に顔を持ってきて訊く。急に目の前にセレーネの顔が出て来たので、シフォンは驚いて軽く跳ねた。

「ふえっ!? え、えっと……フェ、フェリシアちゃんと同じかな……」
「先生は?」
「私も同じですね。学生時代に冒険者として活動もしましたが、基本的には自分の物にしていました。自分の研究に使えますからね」
「ああ、なるほど。研究のために独占するって事はあり得るのか……」

 個人的な研究のために、自分で所有しておくという点に関しては納得した。セレーネもそれは独占したいと思ってしまったからだ。

「私も冒険者になってダンジョンに行こうかな」
「駄目です」

 ダンジョンに興味を持ったセレーネの言葉を、レイアーが即座に否定した。セレーネは、ジッとレイアーを見る。レイアーは、微笑みで返す。

「……行こうかな」
「駄目です」
「な~ん~で~!」
「セレーネ様には、まだ早いです。高等部に進学してから考えてください」
「これのせい?」

 セレーネは、自分の顔にある封印の紋様を指す。

「そうです。ただでさえ危険な場所です。何かあった時に傍にカノンさん達がいなければ、どうなるかお分かりでしょう?」
「む~……」
「中等部を卒業する頃には、魔力の量もかなり増えているでしょうから、その時までは我慢してください」
「……分かった」

 レイアーの言う事は最もなので、セレーネも納得せざるを得なかった。大怪我を負えば王程、吸血衝動を起こす可能性が上がっていく。封印で普通に生活していれば、吸血衝動は起きないので、忘れがちになるが、誘拐事件の際に一度死んで吸血衝動に襲われている。
 ダンジョンに入れば、同じ状況になる可能性が出て来る。そして、吸血する対象がカノンやマリアではない可能性も増えてくる。二人が一緒にいれば良いが、誘拐時は一人になっていた。あのまま吸血衝動に襲われていたらどうなっていたか。

(カノンさんかマリアさんがいれば大丈夫だと思いますが、念のため禁止しておいた方が良いはず。私が言えば、セレーネ様も納得するだろうし。高等部になるまでに、ダンジョンに入っても戦えるくらいの戦闘力を持てるようにさりげなく指導していけば大丈夫なはず。フェリシア様とシフォンさんが一緒なら効率良く進むだろうし)

 レイアーは、現在の立場を利用して、セレーネを鍛えるつもりでいた。その結果、フェリシアとシフォンも同時に鍛えられる事になるが、レイアーとしては、優秀な生徒が増えるのなら良いだろうと考えていた。
 そんな二人とは別に、フェリシアとシフォンは、セレーネを見ていた。

「ん? 何?」
「いえ、何でもないわ」
「う、うん……わ、私も何でもないよ……」

 二人は首を振って答える。

(人に秘密の一つや二つあるものね。セレーネから話してくれるまでは待つ方が良いわ)
(気になる……というか、ずっと気になってた……セレーネちゃんの身体の赤いのって何なんだろう? 運動着に着替える時とかに見えちゃったけど、身体全体に広がってるんだよね……何かの呪いじゃないよね? どうか、セレーネちゃんが健康でいられますように!)

 二人は、それぞれでそんな事を考えていた。

(う~ん……二人には話しても良いかな? これまでの感じだと話しても問題はないように思えるけど、なるべく話さない方が良いはず。真祖って言うと、色々と面倒くさそうだし。まぁ、二人ならそこまで面倒くさくならないだろうけど)

 セレーネとしても友人に隠し事をするのは、少し罪悪感を抱いていた。だが、自分の事を広く広めると面倒くさい事に巻き込まれる可能性もあるので、しっかりと選んで話すようにしている。大体の使用人は知っている事だが、それはセレーネと接する上で必要だからに他ならない。

「では、課題を頑張ってください。今回の課題の採点が終わり次第、ミルズ先生を経由して採点結果をお渡しします」
「うん!」
「はい」
「は、はい……」

 今日はこれで解散となった。セレーネ達も、今日は課題に着手せずに解散する。少しは休みの時間を作っても良いだろうという判断だった。
 その日の夜。セレーネは、カノンの膝に乗ってカノンから血を吸っていた。誘拐事件から定期的に行っている吸血練習だ。カノンとマリアから交互に血を吸っている。ある程度吸ったら、口を離して傷口を舐める。吸血鬼の唾液には、軽い止血効果があるので、噛み付いた傷くらいは、すぐに塞がる。
 ただ、カノンも眷属になっているので、そんな事をされなくても傷自体、すぐに塞がる。吸血が終わった後もセレーネはカノンに抱きついていた。

「今日は甘えん坊日でしたか」
「違う……今日はカノンも吸って良いよって事。はいはい。そういう事にしておきましょう。では、失礼します」

 カノンは、セレーネの首筋でキスをしてからゆっくり優しく牙を埋めていく。セレーネが軽く震えるが、カノンはそのままセレーネの頭を優しく撫でる。吸血の時間は一分程だった。吸血を終えた後は、セレーネ同様に軽く舐めて止血する。

「うぅ……慣れない……」
「私は大分慣れてきました。お嬢様の血だからでしょうか?」
「吸う方は慣れるよ。吸われるのが慣れないの!」

 カノンとマリアが血を貰うのは、眷属としての強さを高めるためだ。セレーネを守るために力を付けるという事で、こちらも定期的に血を貰っていた。

「ねぇ、カノン。二人には言っても大丈夫かな?」
「どうでしょう? 信用はしても良いと思いますが、真祖だという事を話して良いかと訊かれると返事に困りますね。なるべくならしない方が良いでしょうが、セレーネ様がどうしても話したいとおっしゃるのであれば、奥様にお話しして許可を頂いてきますが」
「うん……じゃあ、お願い」
「はい。分かりました」
「今日はカノンと寝る」
「はい。では、このまま横になりましょう」

 カノンは、片手でセレーネを抱き抱えつつ、掛け布団の中に入っていく。そして、セレーネの肩まで掛け布団を持ってきて一緒に横になった。
 そのままカノンが優しく頭を撫でていると、セレーネの規則正しい寝息が聞こえ始めた。

(心から気を許せる友人が出来たのは、本当に嬉しい事だね。大切になればなるほど、別れが辛くなるだろうけど、良い思い出が一杯になると良いな)

 真祖であるセレーネは永劫の時を生きる。つまり、フェリシアとシフォンとも最大でも後九十年近くしか会う事が出来ない。人で言えば長い年月だとしても、それから何百何千年も生きるセレーネからすれば短い。

(私とマリアさんが眷属として一緒にいるけど、友人としてではないからなぁ……リーシア様も年々友人が減っているって言っていたし……そもそもリーシア様のご友人って、人なのかな? というか、そもそもそんな交友しているのかな?)

 カノンは、セレーネを寝かしつけながら、そんな事を考えていた。真祖としての宿命。大切な人との別れは免れる事は出来ない。それこそ、相手を眷属にしない限り……
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