先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい

月輪林檎

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学園中等部

難航する課題

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 それから一週間が経った。レイアーから課せられた問題は、少し難航していた。その理由は、レイアーの課題の難易度がかなり高かったからだ。それでも半分は完了していた。
 そして今日も三人は図書室の個室で話し合いながら作業している。

「う~ん……これも範囲指定か……そもそもこの魔術って何?」
「分からないわ。魔術名を書かないのは、こうして調べさせるためよね。本当によく考えられた課題だわ。嫌でも他の魔術にも目を通す事になるのだもの」
「こ、これじゃないかな……?」

 シフォンが本に書かれている魔術陣をセレーネに見せる。セレーネは、その魔術陣をジッと見る。

「ん? う~ん……いや、ここが違うかも。ほら、この部分がない」
「あっ……ご、ごめんね……」

 間違えを教えてしまった事で、シフォンが謝る。それを聞いて、フェリシアがシフォンを睨む。

「いい加減謝るのはやめなさい。シフォンはしっかりと意見を出しているわ。それだけでも十分よ。そのおかげで、一つ可能性を潰せるのだから」
「そうだよ。シフォンのおかげで、この魔術は似ているけど違うって分かったんだから。取り敢えず、メモしておこう」

 セレーネは、新しいメモ用紙にシフォンが見つけた魔術をメモする。セレーネのメモ量は、二人の倍以上はある。それを見て、フェリシアは苦笑いする。

「セレーネは、無駄にメモする癖を直した方が良いわね。関係ない事ばかり増えているじゃない」
「もしかしたら、役に立つかもしれないでしょ!?」
「あなたのメモは、ちゃんと読めるの?」

 一枚の紙にみっちりとメモがされているので、フェリシアからすると、どこに何がメモされているのか分からない。
 それを言われて、セレーネは自分のメモを見る。

「…………まぁ、それなりに。そんなことより、カノン、この魔術って、どういう効果なの?」
「範囲凍結ですね。一定範囲にあるもの凍結させます。この魔術陣であれば、そこまで強力なものではありませんが、強力にすればするほどかなり使いづらい魔術ではあります」
「じゃあ、これも範囲凍結に類するものかもよ」

 一部分がないだけで、他の要素はシフォンが見つけた魔術陣とほぼ同じである。そのため、セレーネは課題に書かれている魔術陣が範囲凍結に関係していると考えた。

「でも、その魔術陣で範囲凍結になっているのなら、付け加える要素は何かしら?」
「う~ん……時間?」
「時間? 凍結させておくための時間って事?」
「うん。もしかしたら、戦闘魔術じゃないのかも。生活とかで使う系の魔術だとしたら? 」
「お、温度を一時的に下げる必要がある時に使うって事……?」

 シフォンの疑問をセレーネは答えだと解釈した。

「それだ。回復魔術の一種なのかも。打ち身とかって、一時的に冷やす事があるでしょ?」
「こんな直接的に冷やす事はしないと思うのだけど……」

 そう言われて、セレーネは少し考える。

「…………それは確かに。それに時間の要素なら見つけてあるから、それになるだろうしね。じゃあ、範囲の具体的な指定とか?」
「というと?」

 フェリシアが続きを促す。

「基本的には、魔術は円の範囲で発動するけど、これによってぐちゃぐちゃな形でも発動するとか」
「それよ。だから、シフォンが見つけた魔術陣には書いていないんだわ。ここで、範囲の具体的な形を指定する。その指定した結果完成する魔術陣がこれなのかもしれないわね」
「そうしたら、同じ要素が入ってる魔術が同じように範囲指定系かどうか調べれば良いんだね」
「そうね。お手柄だわ、シフォン」
「ふえっ!? わ、私ですか……!?」
「そうよ。シフォンの発見で、当たりを付ける事が出来たのだから、シフォンの手柄でしょう?」
「うん。シフォンのおかげだよ。ありがとう」

 二人から褒められたシフォンは、顔を真っ赤にして照れた。これまでにない反応だったので、セレーネとフェリシアは、顔を見合わせて笑い合う。
 そうして課題を進めていく。三人は、なるべくカノン、マリア、ジーニーの知恵を使わずに進めていった。時折、セレーネとフェリシアが無意識に訊く事はあったが、それでも頻度は少ない。おかげで、三人で話す時間が増えるので、三人の仲はどんどんと深まっていった。
 ただ、この状況で、ちょっとした不満を持っている者もいた。
 その日の夜。夕食を終えて、セレーネは、クロを可愛がっていた。そこにマリアがやって来る。

「セレーネ。カノンさんは、ちょっと仕事をするみたいだから、二人でお風呂入るよ」
「うん! クロは?」
「にゃ~」

 クロは首を横に振る。

「そっか。昨日入ったもんね。じゃあ、お風呂入ってくるから、大人しくしてるんだよ。じゃないと、カノンが怒るから」
「にゃ~」

 クロは、セレーネに頭を擦りつけると、自分のベッドで丸くなった。それを見てから、セレーネはマリアの元に移動して手を繋ぎ、浴場へと向かう。脱衣所で服を脱いだ二人は、湯浴み着を持って洗い場に移動する。そして、マリアがセレーネを洗う。セレーネの髪にトリートメントを付けて、湯浴み着を着せて待って貰う内に自分も髪を洗い、トリートメントを付けて、髪を纏め、身体を洗う。

「マリアも慣れてきたよね」
「まぁ、カノンさんの手際に負けるけどね。さっ、トリートメント落とすよ」
「は~い」

 そうしてトリートメントを落としたセレーネは先に湯船に浸かる。自分もトリートメントを落として、マリアも湯船に入った。そして、セレーネを後ろから抱きしめる。セレーネもマリアに寄り掛かって湯船を楽しんでいた。マリアがセレーネを抱くのは、セレーネが泳ぎ出さないようにするためと、しっかりと肩まで浸からせるためだ。
 ただ、今日はマリアの力が少し強いようにセレーネは感じていた。

「マリア、何かあったの?」
「ん? どうして?」
「何か変な感じだから。不満があるのかなって」
「う~ん……せっかくセレーネと一緒にいられるようになったのに、セレーネは学園で忙しそうだから、あまりこうしてイチャイチャ出来ない事かな」
「ふ~ん……私もお姉様とイチャイチャしたい」

 まさかテレサを選択されるとは思わず、マリアも苦笑いしてしまう。

「私じゃないんかい……でも、テレサ様がイチャイチャしてくれる?」
「うん! 私が甘えたら甘やかしてくれるもん」
「まぁ、セレーネだからね。末っ子の強みみたいなものかな」
「マリアは、私とイチャイチャしたいの?」

 先程のマリアの発言をセレーネは忘れていなかった。

「そりゃあ、眷属だからね。主と仲良くなりないのは当然でしょ。これまでは学園にいて何も出来なかったしね」
「私は、マリアが居てくれるだけでも嬉しいよ? カノンもいるともっと嬉しい! そして、お姉様が居たらもっともっと嬉しい!」
「本当にテレサ様大好きだねぇ……ラングリド様が泣くよ?」

 テレサとラングリドが居れば、セレーネは間違いなくテレサの元に駆け寄り抱きつく。例え、ラングリドが受け止める姿勢をとっていてもだ。そうして、無言の涙を流すラングリドをマリアも見た事があった。決して、セレーネがラングリドを嫌いなわけじゃない。優先順位が、テレサよりも遙かに低いだけだった。

「お父様はお父様だから。いないと寂しいけど、そこまで求めてない」
「容赦ないね……」
「そうだ! マリア、今日は一緒に寝よ!」
「良いよ。セレーネは甘えん坊だね」
「マリアが甘えたいかと思ってね!」
「……じゃあ、甘えちゃおうかな」

 マリアは、セレーネを撫でながらぎゅっと抱きしめる。セレーネは嬉しそうにマリアに体重を預けていた。そして、その日の夜は、二人で一緒に眠った。
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