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捨てられた王女
結果発表
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試験の結果が発表される日。マリーとコハクは、一緒に学院に向かった。
「試験結果でクラス分けが行われるんだったっけ?」
「うん。マリーと同じが良いな。クラスに馴染めるか不安だし」
「引っ込み思案だもんね」
「もう! それは治ったってば!」
二人がそんなことを話していると、少し前の方に、アルが歩いているのが見えた。二人は、すぐにアルの名を呼ぶ。
「アルく~ん!」
「アルさ~ん!」
「ん?」
呼ばれたアルが、マリー達の方を振り返る。二人の姿を見つけると、少し表情が柔らかくなる。
「マリーとコハクか。おはよう」
「「おはよう」」
三人は、挨拶を交わして、一緒に学院へと向かって行く。
「アルくんも、一緒のクラスになるといいね」
「そうだな。だが、俺は、マリーに負けたからな。どうなるか分からん」
「勝ち負けも関係するのかな?」
コハクが首をかしげる。この結果がクラス分けに影響するとは言っていたが、勝ち負けが関係するとは言っていない。そのことを、コハクは思い出したのだ。
「確かに、そう言ってはいなかったな。希望は、まだあるということか」
「アルくんがいたら楽しくなるもんね」
三人並んで歩いていると、学院まであっという間だった。結果は、個人個人で受け取る形式らしく、行列が出来ている。三人が列に並んで待っていると、周りから視線を感じる。
「何で、皆こっちを見てるんだろう?」
コハクは鬱陶しいという風にそう言った。
「私の髪の毛が白いからかな?」
「白髪は珍しいが、ここまで注目するほどではないだろう」
三人は全く分かっていなかったが、この三人は入学試験で異例の戦闘力を見せている。そのため、周りから注目を浴びているのだ。三人が他愛のない話をしながら待っていると、順番が回ってきた。
「入学おめでとう。これが、クラス分けです。後、こちらが生徒証になります。卒業後も使えるのでなくすことのないようにしてください。最後にこれが制服となります。明日からは、こちらを着て登校してください」
「はい、ありがとうございます」
マリーは、資料などをもらって、列から抜ける。空いているベンチがあったのでそこに向かった。アルとコハクも、マリーの座るベンチに来た。
「三人とも同じクラスだったな」
「えっ、嘘っ! まだ見てなかった!」
アルから同じクラスになったと言われたが、マリー自身の目でも確認しておきたいと思い、貰った紙を確認する。すると、Sクラスと書かれた欄に、マリー、コハク、アルの名前を見つけた。
「やった!」
マリーは、ガッツポーズをとった。友人と同じクラスになれた事が嬉しいようだ。
「そういえば、この身分証って、真っ白だけど良いの?」
マリーは、小さなカードを手に持つ。そこには、何も書かれていない。身分証などを知らないマリーは、カードの裏表を何度も見ながら、首を傾げていた。
「ああ、魔力を通せば、個人の名前などの情報が出て来る。ただの市民には、身分証以上の価値はないが、ギルドに行けば、他の使い道がある。こっちに関しては、俺達には関係しないかもしれないがな。それと、一度通した魔力で登録されるから、他の誰かが魔力を通したとしても、情報は出てこない。そこは安心して良い」
「ふ~ん……魔力に反応するって事は、魔道具の一種かな」
マリーは、身分証に魔力を通して、魔法陣を浮かび上がらせる。すると、複雑な魔法陣がいくつも重なって出てきた。
「これ……カードに刻印するには、複雑過ぎる。そもそもの基礎から違う。こんなの、私もお母さんから習ってない。所々読めるところはあるけど、いろんな魔法陣が混ざり過ぎて、全てを読めないし、どこに掛けている付加なのかも分からない。複数の魔法陣を掛け合わせる技術はあるけど、それはあくまで、同じ魔道具に複数の魔法陣を刻印するってだけで、こんな重なり合ったかのようにはならないはず。複数の魔法陣を一つの魔法陣にしているって事? でも、それだと、効果が発揮出来ないで、破綻する可能性が高いはず。ここのは、強度強化のはずだけど……魔法式の一部が書き換えてあるから別のもの? これだけじゃない。どこの魔法式も普段の魔法式とは違う形式になってる。これが、一つの法則になっているって事かな……」
「マリー!」
マリーが集中していると、耳元でコハクが呼びかけた。マリーは、ビクッとしてからコハクを見る。
「マリー。そうやって、夢中になって考え込んで、周囲が見えなくなるのは、悪い癖だよ」
「ごめん。見た事のないものが多かったから、何なんだろうって思って」
コハクに叱られたマリーは、肩を落としながらそう言う。マリーは好奇心の塊なので、知らない魔法陣などを見ると、それがどんな効果を持っているのかなどが、気になってしまうのだ。
「早速、魔力を通してみたらどうだ?」
「あ、うん」
アルに言われて、マリーは自分の身分証に魔力を通す。すると、何も書かれていなかったカードに、マリーの名前が現れた。しっかりと、マリー・ラプラスの方の名前で書かれていた。
「魔力だけで、個人認識って、どうなってるんだろう?」
「確か、鑑定の魔法陣が組み込まれていると言われていたな」
「鑑定か……私もまだ使えないんだよね。どの魔法陣だろう」
「マリー」
「あ、う……分かってるよ」
また、マリーの悪癖が出そうになったが、コハクが前もって注意することによって踏み留まった。
「よっぽど、魔道具が好きなんだな」
「まぁね。将来は魔道具職人になるんだから」
マリーは、胸を張って答える。
「カーリー殿に教わっているマリーなら、なんとかなるだろう。頑張れ」
「うん!」
今日の予定は全て終ったので、マリーとコハクは、学院の前でアルと別れ帰宅した。
「ただいま!」
「おかえり。どうだったさね?」
カーリーが出迎えてくれた。
「二人ともSクラスだったよ!」
「そうかい。それは良かったさね」
二人が一緒のクラスと聞いて、カーリーも喜んでいた。
「そういえば、身分証ももらったよ!」
「ほう? 魔法陣の解読はできたかい?」
「無理だった。ほとんどが知らない式で出来た魔法陣だったから。でもね、知っているのもあったんだけど、いつもの魔法式と細部が違ったの。繋げるための処理なのか、いつものとは違う効果なのかって考えたけど結局答えはでなかったよ」
学院で見た魔法陣からわかった事をカーリーに話すと、カーリーはにやりと笑った。
「いい分析だ。確かに、これに使った技術は教えてないからね。ちなみに、式が違う部分はマリーの言う通り、繋げるための処理さね。いつも作るのに使っているものは、一つの魔法陣を別々の場所に刻む方法だからね。これは、同じ場所に刻むのに必要な処理さ」
マリーの疑問を、カーリーが解説してくれた。マリーは感心していたが、一部気になる事が混ざっていた。
「へぇ~……ん? お母さん今、これに使ったって言った? ってことは、これって、お母さんが作ったの!?」
「そうさね。というより私しか作ってないよ。他の職人は、すぐに諦めたからね」
マリーは、驚きと関心が半分半分になった反応をする。
「へぇ~、さすがはお母さん。こんなものも作れるなんて」
「マリーもこの領域に足を踏み入れることになるよ。いや、もしかしたら私を超えるかもしれないね」
カーリーが、しみじみと言う。
「マリーが師匠を超えられるのですか?」
コハクは、少し気になったので訊いてみた。
「ああ、私が魔道具を作り始めたのは、大体三十歳ぐらいだったからね。マリーは、もうすでに、一般の魔道具職人と同じくらいの技術を持っている。それらを加味すれば、超えるのも時間の問題さね」
マリー達は、むしろ三十歳からやって魔道具職人界の頂点に立っているカーリーに驚いていた。
「師匠は、本当に規格外ですよね」
「私もそう思う」
「何を言ってるんだい。あの学院でSクラスと言えば、他の生徒とは比べものに出来ない程の優秀な者しか入れないクラスだよ。ただ、最近では金にものを言わせて入る輩もいるらしいがね。まぁ、マリー達のクラスにはいないだろうさ」
学院のクラスは、C~Sに振り分けられる。一般的に、Cは普通、Bはそこそこ、Aは優秀、Sは規格外と言われている。こういった事から、年度によっては、Sクラスがない時もある。また、一年ごとにクラス分けをやり直すため、常に同じクラスにいない人も現れる。つまり、Sクラスへの昇級も極希に起こるという事だ。
「ふーん、あっ、そういえば、明日が入学式なんだ! お母さんも来てくれるよね!?」
「ああ、愛娘と弟子の晴れ姿を見させてもらうよ」
「やった!」
マリーは、笑顔でガッツポーズをとる。コハクも小さく手を握る。その後、皆で夕飯を食べお風呂に入ってから就寝した。
────────────────────────
その夜、カーリーは食堂で一人晩酌をしていた。
「ふぅ、明日は、あの子にとって苦痛となるかもしれないね。しかし、これから先のことを考えれば、乗り越えないといけない壁だからね。もしもの時は、私がどうにかすればいいさね。はぁ……あの子のためとはいえ、ここまで苦しいとは思わなかった。それだけ、あの子を本当に娘と思えている証拠さね。そう考えれば、いくらかマシに思える」
カーリーは、とあることで悩んでいた。それは、明日の入学式で起こるかもしれない……いや、ほぼ確実に起こるであろう事だった……
「試験結果でクラス分けが行われるんだったっけ?」
「うん。マリーと同じが良いな。クラスに馴染めるか不安だし」
「引っ込み思案だもんね」
「もう! それは治ったってば!」
二人がそんなことを話していると、少し前の方に、アルが歩いているのが見えた。二人は、すぐにアルの名を呼ぶ。
「アルく~ん!」
「アルさ~ん!」
「ん?」
呼ばれたアルが、マリー達の方を振り返る。二人の姿を見つけると、少し表情が柔らかくなる。
「マリーとコハクか。おはよう」
「「おはよう」」
三人は、挨拶を交わして、一緒に学院へと向かって行く。
「アルくんも、一緒のクラスになるといいね」
「そうだな。だが、俺は、マリーに負けたからな。どうなるか分からん」
「勝ち負けも関係するのかな?」
コハクが首をかしげる。この結果がクラス分けに影響するとは言っていたが、勝ち負けが関係するとは言っていない。そのことを、コハクは思い出したのだ。
「確かに、そう言ってはいなかったな。希望は、まだあるということか」
「アルくんがいたら楽しくなるもんね」
三人並んで歩いていると、学院まであっという間だった。結果は、個人個人で受け取る形式らしく、行列が出来ている。三人が列に並んで待っていると、周りから視線を感じる。
「何で、皆こっちを見てるんだろう?」
コハクは鬱陶しいという風にそう言った。
「私の髪の毛が白いからかな?」
「白髪は珍しいが、ここまで注目するほどではないだろう」
三人は全く分かっていなかったが、この三人は入学試験で異例の戦闘力を見せている。そのため、周りから注目を浴びているのだ。三人が他愛のない話をしながら待っていると、順番が回ってきた。
「入学おめでとう。これが、クラス分けです。後、こちらが生徒証になります。卒業後も使えるのでなくすことのないようにしてください。最後にこれが制服となります。明日からは、こちらを着て登校してください」
「はい、ありがとうございます」
マリーは、資料などをもらって、列から抜ける。空いているベンチがあったのでそこに向かった。アルとコハクも、マリーの座るベンチに来た。
「三人とも同じクラスだったな」
「えっ、嘘っ! まだ見てなかった!」
アルから同じクラスになったと言われたが、マリー自身の目でも確認しておきたいと思い、貰った紙を確認する。すると、Sクラスと書かれた欄に、マリー、コハク、アルの名前を見つけた。
「やった!」
マリーは、ガッツポーズをとった。友人と同じクラスになれた事が嬉しいようだ。
「そういえば、この身分証って、真っ白だけど良いの?」
マリーは、小さなカードを手に持つ。そこには、何も書かれていない。身分証などを知らないマリーは、カードの裏表を何度も見ながら、首を傾げていた。
「ああ、魔力を通せば、個人の名前などの情報が出て来る。ただの市民には、身分証以上の価値はないが、ギルドに行けば、他の使い道がある。こっちに関しては、俺達には関係しないかもしれないがな。それと、一度通した魔力で登録されるから、他の誰かが魔力を通したとしても、情報は出てこない。そこは安心して良い」
「ふ~ん……魔力に反応するって事は、魔道具の一種かな」
マリーは、身分証に魔力を通して、魔法陣を浮かび上がらせる。すると、複雑な魔法陣がいくつも重なって出てきた。
「これ……カードに刻印するには、複雑過ぎる。そもそもの基礎から違う。こんなの、私もお母さんから習ってない。所々読めるところはあるけど、いろんな魔法陣が混ざり過ぎて、全てを読めないし、どこに掛けている付加なのかも分からない。複数の魔法陣を掛け合わせる技術はあるけど、それはあくまで、同じ魔道具に複数の魔法陣を刻印するってだけで、こんな重なり合ったかのようにはならないはず。複数の魔法陣を一つの魔法陣にしているって事? でも、それだと、効果が発揮出来ないで、破綻する可能性が高いはず。ここのは、強度強化のはずだけど……魔法式の一部が書き換えてあるから別のもの? これだけじゃない。どこの魔法式も普段の魔法式とは違う形式になってる。これが、一つの法則になっているって事かな……」
「マリー!」
マリーが集中していると、耳元でコハクが呼びかけた。マリーは、ビクッとしてからコハクを見る。
「マリー。そうやって、夢中になって考え込んで、周囲が見えなくなるのは、悪い癖だよ」
「ごめん。見た事のないものが多かったから、何なんだろうって思って」
コハクに叱られたマリーは、肩を落としながらそう言う。マリーは好奇心の塊なので、知らない魔法陣などを見ると、それがどんな効果を持っているのかなどが、気になってしまうのだ。
「早速、魔力を通してみたらどうだ?」
「あ、うん」
アルに言われて、マリーは自分の身分証に魔力を通す。すると、何も書かれていなかったカードに、マリーの名前が現れた。しっかりと、マリー・ラプラスの方の名前で書かれていた。
「魔力だけで、個人認識って、どうなってるんだろう?」
「確か、鑑定の魔法陣が組み込まれていると言われていたな」
「鑑定か……私もまだ使えないんだよね。どの魔法陣だろう」
「マリー」
「あ、う……分かってるよ」
また、マリーの悪癖が出そうになったが、コハクが前もって注意することによって踏み留まった。
「よっぽど、魔道具が好きなんだな」
「まぁね。将来は魔道具職人になるんだから」
マリーは、胸を張って答える。
「カーリー殿に教わっているマリーなら、なんとかなるだろう。頑張れ」
「うん!」
今日の予定は全て終ったので、マリーとコハクは、学院の前でアルと別れ帰宅した。
「ただいま!」
「おかえり。どうだったさね?」
カーリーが出迎えてくれた。
「二人ともSクラスだったよ!」
「そうかい。それは良かったさね」
二人が一緒のクラスと聞いて、カーリーも喜んでいた。
「そういえば、身分証ももらったよ!」
「ほう? 魔法陣の解読はできたかい?」
「無理だった。ほとんどが知らない式で出来た魔法陣だったから。でもね、知っているのもあったんだけど、いつもの魔法式と細部が違ったの。繋げるための処理なのか、いつものとは違う効果なのかって考えたけど結局答えはでなかったよ」
学院で見た魔法陣からわかった事をカーリーに話すと、カーリーはにやりと笑った。
「いい分析だ。確かに、これに使った技術は教えてないからね。ちなみに、式が違う部分はマリーの言う通り、繋げるための処理さね。いつも作るのに使っているものは、一つの魔法陣を別々の場所に刻む方法だからね。これは、同じ場所に刻むのに必要な処理さ」
マリーの疑問を、カーリーが解説してくれた。マリーは感心していたが、一部気になる事が混ざっていた。
「へぇ~……ん? お母さん今、これに使ったって言った? ってことは、これって、お母さんが作ったの!?」
「そうさね。というより私しか作ってないよ。他の職人は、すぐに諦めたからね」
マリーは、驚きと関心が半分半分になった反応をする。
「へぇ~、さすがはお母さん。こんなものも作れるなんて」
「マリーもこの領域に足を踏み入れることになるよ。いや、もしかしたら私を超えるかもしれないね」
カーリーが、しみじみと言う。
「マリーが師匠を超えられるのですか?」
コハクは、少し気になったので訊いてみた。
「ああ、私が魔道具を作り始めたのは、大体三十歳ぐらいだったからね。マリーは、もうすでに、一般の魔道具職人と同じくらいの技術を持っている。それらを加味すれば、超えるのも時間の問題さね」
マリー達は、むしろ三十歳からやって魔道具職人界の頂点に立っているカーリーに驚いていた。
「師匠は、本当に規格外ですよね」
「私もそう思う」
「何を言ってるんだい。あの学院でSクラスと言えば、他の生徒とは比べものに出来ない程の優秀な者しか入れないクラスだよ。ただ、最近では金にものを言わせて入る輩もいるらしいがね。まぁ、マリー達のクラスにはいないだろうさ」
学院のクラスは、C~Sに振り分けられる。一般的に、Cは普通、Bはそこそこ、Aは優秀、Sは規格外と言われている。こういった事から、年度によっては、Sクラスがない時もある。また、一年ごとにクラス分けをやり直すため、常に同じクラスにいない人も現れる。つまり、Sクラスへの昇級も極希に起こるという事だ。
「ふーん、あっ、そういえば、明日が入学式なんだ! お母さんも来てくれるよね!?」
「ああ、愛娘と弟子の晴れ姿を見させてもらうよ」
「やった!」
マリーは、笑顔でガッツポーズをとる。コハクも小さく手を握る。その後、皆で夕飯を食べお風呂に入ってから就寝した。
────────────────────────
その夜、カーリーは食堂で一人晩酌をしていた。
「ふぅ、明日は、あの子にとって苦痛となるかもしれないね。しかし、これから先のことを考えれば、乗り越えないといけない壁だからね。もしもの時は、私がどうにかすればいいさね。はぁ……あの子のためとはいえ、ここまで苦しいとは思わなかった。それだけ、あの子を本当に娘と思えている証拠さね。そう考えれば、いくらかマシに思える」
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