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成長する王女
魔武闘大会(5)
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リンとリリーが、闘技場に向かい合って立つ。リンは弓を、リリーは剣と鞭を携えている。
「もうセレナとアイリの戦いは、終わっちゃったんだ」
「あれ、コハク? もういいの?」
観客席にいるマリー達の元に、医務室から戻ってきたコハクが現れた。アイリとは入れ違いになったようだった。マリーは、コハクが現れた事に驚きつつも、身体の心配をする。
「うん、大丈夫。あの結界のおかげで怪我はしないし」
コハクは、ニコッと笑って、マリーを安心させる。
「アルさんは、やっぱり強いね。全然敵わなかったよ」
「そんな事は無いぞ。最後は、運頼りだったからな」
「運も実力の内でしょ」
「それもそうか。いや、そうなのか?」
アルは最初に納得した後、少し疑問に思ったらしく、首を傾げた。
「私はそうだと思うよ」
「運を引き寄せるのも実力だよ」
セレナがそう言うと、マリーも何度も頷く。
「それはさておき、試合が始まりそうだよ」
マリーの隣に座ったコハクが、闘技場の方を見ながらそう言う。皆が同じ方を見ると、審判の先生が口を開いた。
『これより、Cブロック決勝戦を行う……はじめ!』
合図と共に、二人が動き出す。先に攻撃を仕掛けたのは、やはり、リンの方だった。弓を引き絞り、魔力で矢を形成して撃ち出す。その矢は、真っ直ぐリリーに向かって飛んでいった。
それに対してリリーは、腰の鞭を抜き、矢に向けて振う。矢に対して鞭を振うリリーに観客席の一部から嘲笑が漏れる。しかし、次の瞬間、嘲笑は驚愕に変わった。
「まさか、鞭で矢を払うなんてね」
リンも表情には出ていないが内心は、少し驚いていた。しかし、正確に言えば、リリーは鞭で直接矢を払ったわけではない。
「前までの鞭と違いますの。威力の上昇だけではなく、魔力波を放てるようになったんですのよ!」
リリーは、眼を輝かせながらふんぞり返った。これには、リンも苦笑いだ。
「あはは……それより、そんな大事な事を僕に教えて良かったのかい?」
「ふふふん。分かっていても、どうしようも無い事だってあるんですのよ!」
リリーは、自信満々にそう言う。リンは、にこやかに笑いながら、弓を引き絞る。
「『魔弓技・炎狼』」
放たれた矢は、炎の狼となってリリーを襲う。
「そりゃっ!」
リリーの鞭が炎狼を打ち据えると、炎狼は掻き消えた。
「今の私に魔法は効きません事よ!」
リリーは、左手に鞭、右手に剣を持ち、リンに接近する。
「そして、接近戦では弓も自由に使えないでしょう」
リリーは、これまでの模擬戦の経験から、弓は接近戦では取り回しが難しいと知っている。リンの場合は、それを感じさせない程、巧みに弓と魔弓術を操る事で接近戦でも、うまく戦っていた。
しかし、それでも中遠距離よりも動きが悪くなってしまう。
「近づけさせると思うかい? 『魔弓術・氷波』」
リンの放った矢は、氷の波となって、リリーを呑み込もうとしてくる。
「はあぁぁぁぁ!」
リリーは、左手の鞭を幾度も振い、氷の波を打ち払っていく。氷の波に当たる度に魔力の衝撃波が広がっていく。ほとんど掘削作業に近かった。
「これで終わりですわ!」
氷の波を越えたリリーの目の前にいるのは、弓を引き絞っているリンだった。
「!? 誘い込まれたんですの!?」
「リリーさんは、時折、すごく単純だよね。『魔弓術・雷槍』」
リンの放った矢は、いつもと違い、太く長い槍の形状をしたものだった。そして何より、雷の槍は速かった。今からでは、リリーの鞭も間に合わない。
「『起動』!」
リリーがそう発すると、目の前に光の障壁が現れた。雷槍は、光の障壁にぶつかると、激しい音を立てながら障壁を破ろうとする。
「!?」
「誰が単純ですの!?」
障壁の右側から、リリーが抜けてくる。リンの弓も間に合わない。
「これで終わりですわ!!」
リリーは、リンに向かって右手の剣を突き出す。剣は真っ直ぐリンの心臓に向かっていく。誰もがこれで決着が付いたと思った。
「リンを侮ったな。リンは、青騎士だぞ」
アル以外は……
「嘘……!」
リンの心臓を狙った一撃は、結局、リンを貫く事はなかった。リリーの剣を防いだもの。それは、リンの弓だった。そして、弓を使って、リリーの剣を背後に受け流す。
「きゃあっ!」
リリーは、体勢を崩す。しかし、そのままでは倒されるだけなので、受け流された勢いを利用して、リンから少し離れる。だが、その判断は正しくなかった。
「!!」
リンは、リリーに対して何度も矢を放っていく。リリーは、その矢を何とか避けていく。
「距離が……」
リンは、適当に矢を放っていたわけではなく、リリーを自分から離すように放っていた。
「『魔弓術・雷鳥・拡散』」
リンの弓から放たれたのは、細かく複数になった雷の鳥だった。雷の鳥は、各々独自の軌道を飛んで、リリーに殺到する。
リリーは、その場から急いで離れる。全力で後ろに走りつつ、鞭を振い、雷の鳥を次々落としていった。それでも、自分に近づいてくる鳥を全て落とせるわけではない。何匹かは、リリーの元まで近づいてくる。
「うっ……!!」
リリーは、ギリギリのところで身体を捻り、どうにかして避けていく。何匹かの羽が掠り、小さくないダメージを負う。しかし、直撃を食らうよりもマシなダメージだ。
何とか雷鳥を避けきったリリーに、今度は雷の狼が襲い掛かってきた。いつの間にか、リンから放たれていたのだ。
「くっ……!」
鞭を何度も振って、雷の狼を打ち消しているリリーだったが、次々に襲い掛かってくる様々な属性の動物達に、劣勢となっていった。
────────────────────────
その様子を観客席から見ていたマリーは、顔を強張らせる。
「あれじゃあ、対応しきれない……」
「あれが青騎士の戦い方の一つ、圧倒的物量による飽和攻撃だ」
「キマイラと戦った時には、やらなかったね」
コハクが、キマイラと戦った時を思い出しながらそう言った。
「ああ。この飽和攻撃は、数を重視するせいで威力に欠けるんだ。あの時必要としていたのは、大威力の一撃だったからな」
「そうなんだ」
こうして話している間も、アル達の目線はリンとリリーの戦闘から離れる事は無かった。
────────────────────────
「これじゃあ、近づけないですわ!」
リリーは、闘技場の中を走り続けながら、鞭を振い続けて、迫ってくる動物を打ち消していく。
「大きく回り込む事も出来ない……このまま、負けるしかないんですの……?」
リリーの心が折れそうになる。
「いや……まだですわ! 例え、可能性が薄くても……!」
リリーは、折れる寸前で心を奮い立たせる。リンから放たれてくる魔弓術をどんどん打ち消し、なんとかして近づこうと足掻いていく。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、迫ってくる魔弓術を消している内に、時間が過ぎ去っていった。
『そこまで! 規定時間に達したため、審判による判決により勝敗を決める! 両者、その場で止まれ!』
時間切れとなったのだった。審判が闘技場内に降り立ち、リンとリリーを見ていく。そして、勝敗を決めた。
『両者の消耗度を考慮した結果……勝者、リンガル・ミル・バルバロット!!』
勝ったのは、リンの方だった。この戦闘を誰が見ても、同様の判決を出しただろう。最初こそ、リリーが優勢に見えていたが、試合中盤からの一方的な攻撃は、その判決を下すに値する。
実際、リンは、けろっとした表情をしているが、リリーは肩で息をしている。自分達もどっちが勝ちかは分かっている。
「ふぅ……負けてしまいましたわ……」
「お疲れ様。よく攻撃を耐える事が出来たね。正直、驚いてるよ」
リリーの傍まで来たリンが、真面目な顔をしながらそう言った。
「本当は諦めそうになりましたわ。でも……」
リリーは、そこで観客席にいるマリーの事を見る。
「マリーさんは、この状況でも諦めるなんて事はしないですわ。なら、私もこの状況で諦めるなんて事出来ませんもの!」
「なるほど、手強いわけだ」
リンは、一瞬面食らった顔をしたが、その後、にこやかに笑った。そして、二人は並んで観客席にいるマリー達の元まで向かう。
「リリー、大丈夫?」
マリーが、心配そうにリリーを見る。マリーの隣にいたコハクが横にずれて、リリーがその間に腰を下ろした。
「大丈夫ですわ。直撃はしてませんもの」
「そうなの? 少しでも気分が悪くなったら医務室に行くんだよ?」
「分かってますわ」
マリーは、とても心配のようだった。それを見ていたアル達は、全員苦笑いの状態だ。そして、全員の胸中は同じだった。
(マリー、あれだけ姉扱いを嫌がっていたのに、思いっきり姉の様に振る舞ってるな)
それを指摘する者は一人もいなかった。
「もうセレナとアイリの戦いは、終わっちゃったんだ」
「あれ、コハク? もういいの?」
観客席にいるマリー達の元に、医務室から戻ってきたコハクが現れた。アイリとは入れ違いになったようだった。マリーは、コハクが現れた事に驚きつつも、身体の心配をする。
「うん、大丈夫。あの結界のおかげで怪我はしないし」
コハクは、ニコッと笑って、マリーを安心させる。
「アルさんは、やっぱり強いね。全然敵わなかったよ」
「そんな事は無いぞ。最後は、運頼りだったからな」
「運も実力の内でしょ」
「それもそうか。いや、そうなのか?」
アルは最初に納得した後、少し疑問に思ったらしく、首を傾げた。
「私はそうだと思うよ」
「運を引き寄せるのも実力だよ」
セレナがそう言うと、マリーも何度も頷く。
「それはさておき、試合が始まりそうだよ」
マリーの隣に座ったコハクが、闘技場の方を見ながらそう言う。皆が同じ方を見ると、審判の先生が口を開いた。
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それに対してリリーは、腰の鞭を抜き、矢に向けて振う。矢に対して鞭を振うリリーに観客席の一部から嘲笑が漏れる。しかし、次の瞬間、嘲笑は驚愕に変わった。
「まさか、鞭で矢を払うなんてね」
リンも表情には出ていないが内心は、少し驚いていた。しかし、正確に言えば、リリーは鞭で直接矢を払ったわけではない。
「前までの鞭と違いますの。威力の上昇だけではなく、魔力波を放てるようになったんですのよ!」
リリーは、眼を輝かせながらふんぞり返った。これには、リンも苦笑いだ。
「あはは……それより、そんな大事な事を僕に教えて良かったのかい?」
「ふふふん。分かっていても、どうしようも無い事だってあるんですのよ!」
リリーは、自信満々にそう言う。リンは、にこやかに笑いながら、弓を引き絞る。
「『魔弓技・炎狼』」
放たれた矢は、炎の狼となってリリーを襲う。
「そりゃっ!」
リリーの鞭が炎狼を打ち据えると、炎狼は掻き消えた。
「今の私に魔法は効きません事よ!」
リリーは、左手に鞭、右手に剣を持ち、リンに接近する。
「そして、接近戦では弓も自由に使えないでしょう」
リリーは、これまでの模擬戦の経験から、弓は接近戦では取り回しが難しいと知っている。リンの場合は、それを感じさせない程、巧みに弓と魔弓術を操る事で接近戦でも、うまく戦っていた。
しかし、それでも中遠距離よりも動きが悪くなってしまう。
「近づけさせると思うかい? 『魔弓術・氷波』」
リンの放った矢は、氷の波となって、リリーを呑み込もうとしてくる。
「はあぁぁぁぁ!」
リリーは、左手の鞭を幾度も振い、氷の波を打ち払っていく。氷の波に当たる度に魔力の衝撃波が広がっていく。ほとんど掘削作業に近かった。
「これで終わりですわ!」
氷の波を越えたリリーの目の前にいるのは、弓を引き絞っているリンだった。
「!? 誘い込まれたんですの!?」
「リリーさんは、時折、すごく単純だよね。『魔弓術・雷槍』」
リンの放った矢は、いつもと違い、太く長い槍の形状をしたものだった。そして何より、雷の槍は速かった。今からでは、リリーの鞭も間に合わない。
「『起動』!」
リリーがそう発すると、目の前に光の障壁が現れた。雷槍は、光の障壁にぶつかると、激しい音を立てながら障壁を破ろうとする。
「!?」
「誰が単純ですの!?」
障壁の右側から、リリーが抜けてくる。リンの弓も間に合わない。
「これで終わりですわ!!」
リリーは、リンに向かって右手の剣を突き出す。剣は真っ直ぐリンの心臓に向かっていく。誰もがこれで決着が付いたと思った。
「リンを侮ったな。リンは、青騎士だぞ」
アル以外は……
「嘘……!」
リンの心臓を狙った一撃は、結局、リンを貫く事はなかった。リリーの剣を防いだもの。それは、リンの弓だった。そして、弓を使って、リリーの剣を背後に受け流す。
「きゃあっ!」
リリーは、体勢を崩す。しかし、そのままでは倒されるだけなので、受け流された勢いを利用して、リンから少し離れる。だが、その判断は正しくなかった。
「!!」
リンは、リリーに対して何度も矢を放っていく。リリーは、その矢を何とか避けていく。
「距離が……」
リンは、適当に矢を放っていたわけではなく、リリーを自分から離すように放っていた。
「『魔弓術・雷鳥・拡散』」
リンの弓から放たれたのは、細かく複数になった雷の鳥だった。雷の鳥は、各々独自の軌道を飛んで、リリーに殺到する。
リリーは、その場から急いで離れる。全力で後ろに走りつつ、鞭を振い、雷の鳥を次々落としていった。それでも、自分に近づいてくる鳥を全て落とせるわけではない。何匹かは、リリーの元まで近づいてくる。
「うっ……!!」
リリーは、ギリギリのところで身体を捻り、どうにかして避けていく。何匹かの羽が掠り、小さくないダメージを負う。しかし、直撃を食らうよりもマシなダメージだ。
何とか雷鳥を避けきったリリーに、今度は雷の狼が襲い掛かってきた。いつの間にか、リンから放たれていたのだ。
「くっ……!」
鞭を何度も振って、雷の狼を打ち消しているリリーだったが、次々に襲い掛かってくる様々な属性の動物達に、劣勢となっていった。
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その様子を観客席から見ていたマリーは、顔を強張らせる。
「あれじゃあ、対応しきれない……」
「あれが青騎士の戦い方の一つ、圧倒的物量による飽和攻撃だ」
「キマイラと戦った時には、やらなかったね」
コハクが、キマイラと戦った時を思い出しながらそう言った。
「ああ。この飽和攻撃は、数を重視するせいで威力に欠けるんだ。あの時必要としていたのは、大威力の一撃だったからな」
「そうなんだ」
こうして話している間も、アル達の目線はリンとリリーの戦闘から離れる事は無かった。
────────────────────────
「これじゃあ、近づけないですわ!」
リリーは、闘技場の中を走り続けながら、鞭を振い続けて、迫ってくる動物を打ち消していく。
「大きく回り込む事も出来ない……このまま、負けるしかないんですの……?」
リリーの心が折れそうになる。
「いや……まだですわ! 例え、可能性が薄くても……!」
リリーは、折れる寸前で心を奮い立たせる。リンから放たれてくる魔弓術をどんどん打ち消し、なんとかして近づこうと足掻いていく。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、迫ってくる魔弓術を消している内に、時間が過ぎ去っていった。
『そこまで! 規定時間に達したため、審判による判決により勝敗を決める! 両者、その場で止まれ!』
時間切れとなったのだった。審判が闘技場内に降り立ち、リンとリリーを見ていく。そして、勝敗を決めた。
『両者の消耗度を考慮した結果……勝者、リンガル・ミル・バルバロット!!』
勝ったのは、リンの方だった。この戦闘を誰が見ても、同様の判決を出しただろう。最初こそ、リリーが優勢に見えていたが、試合中盤からの一方的な攻撃は、その判決を下すに値する。
実際、リンは、けろっとした表情をしているが、リリーは肩で息をしている。自分達もどっちが勝ちかは分かっている。
「ふぅ……負けてしまいましたわ……」
「お疲れ様。よく攻撃を耐える事が出来たね。正直、驚いてるよ」
リリーの傍まで来たリンが、真面目な顔をしながらそう言った。
「本当は諦めそうになりましたわ。でも……」
リリーは、そこで観客席にいるマリーの事を見る。
「マリーさんは、この状況でも諦めるなんて事はしないですわ。なら、私もこの状況で諦めるなんて事出来ませんもの!」
「なるほど、手強いわけだ」
リンは、一瞬面食らった顔をしたが、その後、にこやかに笑った。そして、二人は並んで観客席にいるマリー達の元まで向かう。
「リリー、大丈夫?」
マリーが、心配そうにリリーを見る。マリーの隣にいたコハクが横にずれて、リリーがその間に腰を下ろした。
「大丈夫ですわ。直撃はしてませんもの」
「そうなの? 少しでも気分が悪くなったら医務室に行くんだよ?」
「分かってますわ」
マリーは、とても心配のようだった。それを見ていたアル達は、全員苦笑いの状態だ。そして、全員の胸中は同じだった。
(マリー、あれだけ姉扱いを嫌がっていたのに、思いっきり姉の様に振る舞ってるな)
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