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成長する王女
準決勝 第二試合
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アルとセレナの戦いに、マリー達も開いた口が塞がらなかった。二人の戦いは、そのくらいに衝撃的だった。誰も何も言えないまま、闘技場の修繕が終わった。
「私! 医務室に行ってくるね!」
アイリは、それだけ言うと、急いで医務室まで走って行った。マリー達は、それを見送る。アイリの姿が見えなくなるタイミングで闘技場からアナウンスが来る。
『それでは、準決勝第二試合を始めます。呼ばれた生徒は降りてきて下さい。Sクラス、マリー・ラプラス。同じくSクラス、リンガル・ミル・バルバロット』
呼ばれたマリーとリンが、下に降りて行く。
「緊張してる?」
降りている途中で、マリー対してリンが声を掛けた。
「う~ん、少ししてるかも。さっきの戦いを見ちゃったらね」
「まぁ、気楽にやろう。さっきのような戦闘をしなきゃいけないわけじゃないのだから」
「そうだね」
マリー達は、話しつつ闘技場の所定の位置に着く。
『それでは、はじめ!』
カレナの合図で、準決勝第二試合が始まる。
「『炎弾』」
開始直後にマリーが、リンに向かって火の弾を放つ。それと同時に、大きく迂回するような形でリンに近づいていく。
リンは、魔力で作った矢で火の弾を打ち消し、すぐにマリーに狙いを定める。
「えいっ!」
マリーは、地面に黄色い結晶を叩きつける。その衝撃で砕け散った結晶から眩い光が発生する。
「うっ……」
目が眩んだリンは一瞬怯んでしまう。その隙を見逃さずに、マリーは攻撃に移る。
「『氷槍』」
氷の槍をリンに向けて放つ。目が見えない状態であれば、この攻撃は命中するはず、少なくとも観客席にいる生徒達は、そう思っていた(ほとんどの生徒は、マリーの閃光石のせいで眼が見えない状態だったが)。
「ふっ……」
リンは目が見えない状態で、マリーの氷の槍を正確に射貫いて見せた。
「やっぱり、そのくらいはするよね」
そうなるであろうと予想していたマリーは、先程の位置から反対側に移動していた。つまり、リンの背後を取ったという事だ。
「『風弾・高速』」
高速で飛ぶ風の弾が、リンの身体に命中する。
「ぐっ」
衝撃でよろけるが、それだけだった。ということは、大したダメージになっていないという事だ。
「そこか! 『魔弓術・氷霧』」
放たれた矢は、マリーに届く直前で消え去り、氷属性を持った霧となってマリーを呑み込もうとしてくる。
「これは、絶対にヤバい!!」
マリーは、魔法鞄から、先程とは違う結晶を取り出して、魔力を少し込めて氷霧に投げつける。マリーの投げた結晶は、氷霧の中で割れ、熱風を生み出した。熱結晶と呼ばれるもので、魔力を込めると結晶が割れて、熱風を生み出す。
「さすがに、うまくはいかないか」
魔弓術を避けられたリンは、面白そうに笑う。
「こっちは必死だよ!」
マリーは、魔法鞄から複数の結晶を取り出した。
(今日は、魔道具をよく使う。今までの戦い方とは全く違う感じだ。攻撃は、常に警戒しておかないと)
リンは、マリーの戦い方が、昨日までと違う事に警戒しながら、矢継ぎ早に矢を放っていく。マリーは、リンの攻撃を先読みして避けていく。
(青騎士の本領の一つである物量攻撃、今は、そこまでの密度はないけど、これ以上増やされると、キツいかも……)
マリーは矢を避けつつ、結晶をリンの傍に投げて発動させていく。リンの周りで、色とりどりの煙幕が発生する。
「視界を塞ぐつもりか……『魔弓術・風哮』」
リンは、自分が立っている地面に矢を撃ち込む。すると、獣の咆哮のような音を出しながら、大きな風が巻き起こる。その風は、マリーが張った煙幕を巻き取っていく。
「マリーさんは……」
煙幕は晴れた。しかし、マリーの姿は無くなっている。
「……魔道具で姿を消したんだね。なら、『魔弓技・光雨』」
マリーを見失ったリンは、弓を空に向け、矢を放つ。放たれた矢は、空で炸裂すると、光の矢が闘技場を余すところなく降り注ぐ。
「そんなのも使えるんかい!」
リンの予想通り、隠蔽の効果を発動出来る魔道具である『隠れ身の布』を被っていたマリーは、それを取り払って一つの結晶を割る。そして、自分を中心とした半円状の結界を張った。大量の光の矢が降り注いだが、マリーが怪我を負う事はなかった。
「『魔弓技・氷針』」
結界を張ったマリーに、リンが何百もの氷の針を放つ。
「やばっ! 結界が保たない! 『炎壁』」
マリーは、自分の目の前に炎の壁を発生させる。リンの氷の針が連続して当たっていく事で、マリーの結界が砕かれる。結界を割った氷の針は、マリーが生み出した炎の壁に当たり蒸発した。
「『衝撃』」
マリーは、地面を思いっきり殴る。殴った箇所の地面が割れ、リンに向かって延びていく。それと共に、大きな砂煙が起こった。リンは、マリーの攻撃を警戒していたため、その地割れに飲まれぬように、後ろに下がっていく。しかし、割れ目は、リンに届く前に止まる。
「……不発?」
マリーの攻撃を警戒していたリンは、拍子抜けしてしまう。それが、油断に繋がってしまった。
「!?」
砂煙から小さな影が、リンに向かって飛んでくる。飛んできたものが予想外すぎて、リンは一瞬反応するのが遅れてしまった。とはいえ、避ける事には成功する。
「マリーさんが、短剣を投げた……!?」
混乱したままのリンは、砂埃の中に矢を放つ。
(確か、魔法神の祝福が原因で剣に分類されるものは使えないはず……)
「『魔弓術・雷鳥・拡散』」
リリーとの戦いでも使った細かい雷の鳥を大量に放つ。砂埃の中を余すところなく攻撃する。すると、砂埃の中から、マリーが出てくる。さすがに、マリーも多少のダメージを負っていた。
「『短剣舞《ダガーダンス》・二重奏《デュオ》』」
マリーの魔法鞄から、短剣が飛び出てリンに飛んでいく。
「隠し球か……!」
リンは、自分の弓も使って、短剣の攻撃を防ぐ。そして、ある事に気が付く。
「二重奏……なら、もう一本は!」
リンは、自分の背後を見る。砂煙から飛んできた最初の一本である短剣が自分に向かって飛んできているのが見えた。その攻撃は、避けきる事が出来ず、リンに突き刺さる。
「くっ!」
リンは、直ぐさま短剣を抜き捨てる。
「『魔弓術・大氷河《だいひょうが》』」
なりふり構っていられないと感じたリンは、キマイラに放ったものと全く同じ魔弓術を放つ。矢が消えた地点から先が完全に凍り付く。そこには、マリーがいる場所も含まれる。この事態を見越したカレナによって、神域が展開されていたため、観客席への被害はない。キマイラすらも凍り付かせた一撃だ。マリーもひとたまりもない。誰もがそう思った。
「まさか、この技を防ぐとはね……」
「いや、かなりギリギリだったよ」
マリーの頭上には五本の剣が魔法陣を描いて回転していた。マリーが使ったのは『剣唄・夜想曲』あらゆる魔法攻撃を防ぐ事が出来る。あれから剣を改良した事で使えるようになったものだ。開発した際にイメージしていたのは、カレナの神域だった。マリーにとって、サリドニア大森林で、自分達を守ってくれたカレナの神域は、あらゆる魔法を受け付けない絶対的なものに見えていた。
「消費魔力が高いとみた。『魔弓技・極雷《きょくらい》』!」
弓から放たれた矢が、極太の雷撃となってマリーに向かって飛んでいく。雷撃はマリーに当たる事なく、夜想曲で作られた結界によって防がれる。
(やばい! ただでさえ、この曲は消費魔力が高いのに、こんな威力の高い技を撃たれ続けたら、確実に負ける!)
マリーは、リンの攻撃を防ぎつつ、攻撃する方法を考える。並大抵の技では、リンに届く事は無い。さらに言えば、威力も足りないので、倒しきる事が出来ない。
「使えるかな……」
リンを倒せる唯一の技があるが、マリーはそれを操れた事がない。下手すれば、反動でマリーが負ける可能性もある。
「でも……」
マリーは、さっき行われたアルとセレナの試合を思い出す。セレナは、一度もやった事が無い限界を超えた力を操って見せた。
「私も、それくらいやってみせないと!」
マリーは、十本の剣を五本ずつ使い、二重の魔法陣を形成させる。
「『魔弓技・炎狼《えんろう》』」
炎の狼が、マリーを襲う。
「熱っ!」
炎の狼は、マリーの肩口に噛みつく。いつも通りであれば、避けるかすぐに狼をかき消すが、今のマリーは、そこにリソースを割くわけにはいかない。今、準備している技は、少しでも集中を乱してしまうと、不発になってしまう。
「させない」
リンは、矢継ぎ早に矢を放っていく。マリーは、避ける事をせずに身体に矢を受けていく。それでも、マリーは、魔法陣の形成をやめない。
(まずいかな。魔弓術の連発で、僕も魔力が空だ。これ以上、魔弓術を使う事も出来ない……)
リンも焦り始めたその時、マリーの技の準備が終わった。マリーの目の前で剣が二重の魔法陣を形成した。その魔法陣は、虹色に輝いている。そして、マリーの唄の中で唯一の攻撃魔法が発動する。
「くらえ! 『剣唄《ソードソング》・交響曲《シンフォニー》』」
マリーの魔法陣から、虹色に輝く極太の光が放たれる。逃げ場のないマリーの攻撃に、リンは、魔力が欠乏するのに構わず、魔弓術を使用する。
「『魔弓術・暗黒雲《あんこくうん》』」
リンが放ったのは、あらゆるものを吸い込む暗黒の雲だ。動き自体は遅い攻撃だが、その威力は高い。そして、その特徴から防御技としても使える。
マリーの交響曲とリンの暗黒雲が、ぶつかり合う。辺り一面に砂埃が発生した。観客達は、さっきの試合と同じように衝撃波が起こると思い、身構えた。しかし、衝撃波が起こる事は無かった。
観客の生徒達は息を呑んで闘技場を見ている。それは、コハクやリリーも同じ事だ。
砂埃が収まると、勝敗が決まっていた。
倒れているのは…………リンだった。とはいえ、マリーも膝を付いて、肩で息をしていた。
『そこまで! 勝者、マリー・ラプラス! 医療班、急いで!』
(勝った……体力も魔力も限界だよ)
今回来た担架は二人分だった。マリーもリンも担架に寝かされ、医務室に連れて行かれる。
『今日の試合はここまでとします。今回の試合による結果から、決勝戦は、明日街の外で行おうと思います。観戦したい方は、城壁までお越しください』
カレナはそれだけ言うと、審判席から降りて医務室に向かう。
「リリー! 私達も医務室に向かおう!」
「わ、わかりましたわ!」
コハクとリリーも医務室に向かった。
今日行われた試合は後世にも残る白熱した試合となった。そして、明日の試合は、それよりも白熱したものとなるだろう。
「私! 医務室に行ってくるね!」
アイリは、それだけ言うと、急いで医務室まで走って行った。マリー達は、それを見送る。アイリの姿が見えなくなるタイミングで闘技場からアナウンスが来る。
『それでは、準決勝第二試合を始めます。呼ばれた生徒は降りてきて下さい。Sクラス、マリー・ラプラス。同じくSクラス、リンガル・ミル・バルバロット』
呼ばれたマリーとリンが、下に降りて行く。
「緊張してる?」
降りている途中で、マリー対してリンが声を掛けた。
「う~ん、少ししてるかも。さっきの戦いを見ちゃったらね」
「まぁ、気楽にやろう。さっきのような戦闘をしなきゃいけないわけじゃないのだから」
「そうだね」
マリー達は、話しつつ闘技場の所定の位置に着く。
『それでは、はじめ!』
カレナの合図で、準決勝第二試合が始まる。
「『炎弾』」
開始直後にマリーが、リンに向かって火の弾を放つ。それと同時に、大きく迂回するような形でリンに近づいていく。
リンは、魔力で作った矢で火の弾を打ち消し、すぐにマリーに狙いを定める。
「えいっ!」
マリーは、地面に黄色い結晶を叩きつける。その衝撃で砕け散った結晶から眩い光が発生する。
「うっ……」
目が眩んだリンは一瞬怯んでしまう。その隙を見逃さずに、マリーは攻撃に移る。
「『氷槍』」
氷の槍をリンに向けて放つ。目が見えない状態であれば、この攻撃は命中するはず、少なくとも観客席にいる生徒達は、そう思っていた(ほとんどの生徒は、マリーの閃光石のせいで眼が見えない状態だったが)。
「ふっ……」
リンは目が見えない状態で、マリーの氷の槍を正確に射貫いて見せた。
「やっぱり、そのくらいはするよね」
そうなるであろうと予想していたマリーは、先程の位置から反対側に移動していた。つまり、リンの背後を取ったという事だ。
「『風弾・高速』」
高速で飛ぶ風の弾が、リンの身体に命中する。
「ぐっ」
衝撃でよろけるが、それだけだった。ということは、大したダメージになっていないという事だ。
「そこか! 『魔弓術・氷霧』」
放たれた矢は、マリーに届く直前で消え去り、氷属性を持った霧となってマリーを呑み込もうとしてくる。
「これは、絶対にヤバい!!」
マリーは、魔法鞄から、先程とは違う結晶を取り出して、魔力を少し込めて氷霧に投げつける。マリーの投げた結晶は、氷霧の中で割れ、熱風を生み出した。熱結晶と呼ばれるもので、魔力を込めると結晶が割れて、熱風を生み出す。
「さすがに、うまくはいかないか」
魔弓術を避けられたリンは、面白そうに笑う。
「こっちは必死だよ!」
マリーは、魔法鞄から複数の結晶を取り出した。
(今日は、魔道具をよく使う。今までの戦い方とは全く違う感じだ。攻撃は、常に警戒しておかないと)
リンは、マリーの戦い方が、昨日までと違う事に警戒しながら、矢継ぎ早に矢を放っていく。マリーは、リンの攻撃を先読みして避けていく。
(青騎士の本領の一つである物量攻撃、今は、そこまでの密度はないけど、これ以上増やされると、キツいかも……)
マリーは矢を避けつつ、結晶をリンの傍に投げて発動させていく。リンの周りで、色とりどりの煙幕が発生する。
「視界を塞ぐつもりか……『魔弓術・風哮』」
リンは、自分が立っている地面に矢を撃ち込む。すると、獣の咆哮のような音を出しながら、大きな風が巻き起こる。その風は、マリーが張った煙幕を巻き取っていく。
「マリーさんは……」
煙幕は晴れた。しかし、マリーの姿は無くなっている。
「……魔道具で姿を消したんだね。なら、『魔弓技・光雨』」
マリーを見失ったリンは、弓を空に向け、矢を放つ。放たれた矢は、空で炸裂すると、光の矢が闘技場を余すところなく降り注ぐ。
「そんなのも使えるんかい!」
リンの予想通り、隠蔽の効果を発動出来る魔道具である『隠れ身の布』を被っていたマリーは、それを取り払って一つの結晶を割る。そして、自分を中心とした半円状の結界を張った。大量の光の矢が降り注いだが、マリーが怪我を負う事はなかった。
「『魔弓技・氷針』」
結界を張ったマリーに、リンが何百もの氷の針を放つ。
「やばっ! 結界が保たない! 『炎壁』」
マリーは、自分の目の前に炎の壁を発生させる。リンの氷の針が連続して当たっていく事で、マリーの結界が砕かれる。結界を割った氷の針は、マリーが生み出した炎の壁に当たり蒸発した。
「『衝撃』」
マリーは、地面を思いっきり殴る。殴った箇所の地面が割れ、リンに向かって延びていく。それと共に、大きな砂煙が起こった。リンは、マリーの攻撃を警戒していたため、その地割れに飲まれぬように、後ろに下がっていく。しかし、割れ目は、リンに届く前に止まる。
「……不発?」
マリーの攻撃を警戒していたリンは、拍子抜けしてしまう。それが、油断に繋がってしまった。
「!?」
砂煙から小さな影が、リンに向かって飛んでくる。飛んできたものが予想外すぎて、リンは一瞬反応するのが遅れてしまった。とはいえ、避ける事には成功する。
「マリーさんが、短剣を投げた……!?」
混乱したままのリンは、砂埃の中に矢を放つ。
(確か、魔法神の祝福が原因で剣に分類されるものは使えないはず……)
「『魔弓術・雷鳥・拡散』」
リリーとの戦いでも使った細かい雷の鳥を大量に放つ。砂埃の中を余すところなく攻撃する。すると、砂埃の中から、マリーが出てくる。さすがに、マリーも多少のダメージを負っていた。
「『短剣舞《ダガーダンス》・二重奏《デュオ》』」
マリーの魔法鞄から、短剣が飛び出てリンに飛んでいく。
「隠し球か……!」
リンは、自分の弓も使って、短剣の攻撃を防ぐ。そして、ある事に気が付く。
「二重奏……なら、もう一本は!」
リンは、自分の背後を見る。砂煙から飛んできた最初の一本である短剣が自分に向かって飛んできているのが見えた。その攻撃は、避けきる事が出来ず、リンに突き刺さる。
「くっ!」
リンは、直ぐさま短剣を抜き捨てる。
「『魔弓術・大氷河《だいひょうが》』」
なりふり構っていられないと感じたリンは、キマイラに放ったものと全く同じ魔弓術を放つ。矢が消えた地点から先が完全に凍り付く。そこには、マリーがいる場所も含まれる。この事態を見越したカレナによって、神域が展開されていたため、観客席への被害はない。キマイラすらも凍り付かせた一撃だ。マリーもひとたまりもない。誰もがそう思った。
「まさか、この技を防ぐとはね……」
「いや、かなりギリギリだったよ」
マリーの頭上には五本の剣が魔法陣を描いて回転していた。マリーが使ったのは『剣唄・夜想曲』あらゆる魔法攻撃を防ぐ事が出来る。あれから剣を改良した事で使えるようになったものだ。開発した際にイメージしていたのは、カレナの神域だった。マリーにとって、サリドニア大森林で、自分達を守ってくれたカレナの神域は、あらゆる魔法を受け付けない絶対的なものに見えていた。
「消費魔力が高いとみた。『魔弓技・極雷《きょくらい》』!」
弓から放たれた矢が、極太の雷撃となってマリーに向かって飛んでいく。雷撃はマリーに当たる事なく、夜想曲で作られた結界によって防がれる。
(やばい! ただでさえ、この曲は消費魔力が高いのに、こんな威力の高い技を撃たれ続けたら、確実に負ける!)
マリーは、リンの攻撃を防ぎつつ、攻撃する方法を考える。並大抵の技では、リンに届く事は無い。さらに言えば、威力も足りないので、倒しきる事が出来ない。
「使えるかな……」
リンを倒せる唯一の技があるが、マリーはそれを操れた事がない。下手すれば、反動でマリーが負ける可能性もある。
「でも……」
マリーは、さっき行われたアルとセレナの試合を思い出す。セレナは、一度もやった事が無い限界を超えた力を操って見せた。
「私も、それくらいやってみせないと!」
マリーは、十本の剣を五本ずつ使い、二重の魔法陣を形成させる。
「『魔弓技・炎狼《えんろう》』」
炎の狼が、マリーを襲う。
「熱っ!」
炎の狼は、マリーの肩口に噛みつく。いつも通りであれば、避けるかすぐに狼をかき消すが、今のマリーは、そこにリソースを割くわけにはいかない。今、準備している技は、少しでも集中を乱してしまうと、不発になってしまう。
「させない」
リンは、矢継ぎ早に矢を放っていく。マリーは、避ける事をせずに身体に矢を受けていく。それでも、マリーは、魔法陣の形成をやめない。
(まずいかな。魔弓術の連発で、僕も魔力が空だ。これ以上、魔弓術を使う事も出来ない……)
リンも焦り始めたその時、マリーの技の準備が終わった。マリーの目の前で剣が二重の魔法陣を形成した。その魔法陣は、虹色に輝いている。そして、マリーの唄の中で唯一の攻撃魔法が発動する。
「くらえ! 『剣唄《ソードソング》・交響曲《シンフォニー》』」
マリーの魔法陣から、虹色に輝く極太の光が放たれる。逃げ場のないマリーの攻撃に、リンは、魔力が欠乏するのに構わず、魔弓術を使用する。
「『魔弓術・暗黒雲《あんこくうん》』」
リンが放ったのは、あらゆるものを吸い込む暗黒の雲だ。動き自体は遅い攻撃だが、その威力は高い。そして、その特徴から防御技としても使える。
マリーの交響曲とリンの暗黒雲が、ぶつかり合う。辺り一面に砂埃が発生した。観客達は、さっきの試合と同じように衝撃波が起こると思い、身構えた。しかし、衝撃波が起こる事は無かった。
観客の生徒達は息を呑んで闘技場を見ている。それは、コハクやリリーも同じ事だ。
砂埃が収まると、勝敗が決まっていた。
倒れているのは…………リンだった。とはいえ、マリーも膝を付いて、肩で息をしていた。
『そこまで! 勝者、マリー・ラプラス! 医療班、急いで!』
(勝った……体力も魔力も限界だよ)
今回来た担架は二人分だった。マリーもリンも担架に寝かされ、医務室に連れて行かれる。
『今日の試合はここまでとします。今回の試合による結果から、決勝戦は、明日街の外で行おうと思います。観戦したい方は、城壁までお越しください』
カレナはそれだけ言うと、審判席から降りて医務室に向かう。
「リリー! 私達も医務室に向かおう!」
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