捨てられた王女は魔道具職人を目指す

月輪林檎

文字の大きさ
53 / 93
成長する王女

束の間の安らぎ

しおりを挟む
 マリー達が街まで帰ってくると、Sクラスの皆が城門の前にいた。

「マリー!」

 コハクがいの一番にマリーに近づいていく。

「ブイ!」

 近づいてきたコハクに対してピースをするマリー。

「すごいですわ! まさかアルさんに勝ってしまうなんて」
「うん、うん。すごいよ!」
「マリーちゃんもアルくんもすごい戦いだった!」
「そうだね。まさか、アルに魔剣術を使わせるとは思わなかった」

 リリー達が思い思いの感想を言う。

『さて、これにて、魔武闘大会一年の部を終了します! 後日、六年の部まで終了した後、全学年の優勝者同士でトーナメントを行います。さらに、エキシビションもありますので、優勝者であるマリーさんは、準備しておいてください。では、解散!』

 カレナのアナウンスで、観客達が街の中に戻っていく。

「私達も戻ろうか」
「そうだな。しばらくは、ゆっくり休めるだろう。皆、明日から、どうするつもりなんだ?」

 アルが皆に明日の予定を訊く。

「私は、休んでいるかな。魔道具の補充もしておきたいし」
「マリーが家にいるなら、私もそうしようかな」

 マリーとコハクは、自宅でゆっくりするつもりみたいだ。

「私は、他の学年の試合を見るつもりですわ」
「私も、リリーに付いていこうかな」
「じゃあ、私も」

 リリー、セレナ、アイリは、他の学年の試合を観に、闘技場に行くらしい。

「僕は、家の用事があるから、しばらくここを離れるかな」
「なるほどな」

 それぞれにやりたいことがあるため、しばらくは、別々に行動するようになりそうだ。

「それじゃあ、またね」
「ああ」

 マリー達は、それぞれ別れて、自分達の家に戻っていった。

 魔武闘大会一年の部は、マリーの優勝で幕を閉じた。

 ────────────────────────

 王城にて。

「予定通り、マリーナリアが優勝したな」
「はい。少し危ういかと思われましたが、優勝なされました」

 国王の執務室には、国王とカイトだけがいた。他には誰もいない。

「これで、あの作戦が使えるな」
「ですが、その作戦にのる者などいらっしゃるのですか?」
「既に手配済みだ。後は、時を待って細工をすれば完了だ。くっくく、くっくくくくく、ふっははははははは!!」

 国王の高笑いが執務室に響き渡った。

「では、私は失礼します」
「ああ、引き続き、マリーナリアの監視を怠るな」
「御意」

 カイトは執務室から出て行った。

「これでは、さすがのマリー様も……」

 国王とは正反対にカイトの顔は浮かなかった。

 ────────────────────────

 決勝戦の次の日、マリーは、自宅の工房にいた。

「ふぅ、消費した魔道具を補充して、剣のメンテナンスと改良……後は、少し新しいものを作ろうかな」

 マリー最初に予定していたとおり、消費した閃光石などの魔道具を補充し、自分の剣のメンテナンスを済ませる。

「改良……魔力の通りを複雑化させて、新しい魔法陣に対応出来るように……いや、そのままの状態で通りを良くする方が……」

 メンテナンスまでは、スムーズに終える事が出来たのだが、改良に関しては、かなり難航していた。今の状態から魔法式を変えて新しい魔法陣を創り出すか、あるいは今の状態を維持して魔力の通りを良くするか。前者は、一本だけでなく、全ての剣の魔法式を見直す必要がある。

「う~ん……」

 マリーが悩んでいると、工房のドアがノックされた。

「は~い」

 作業中ではなかったので、ドアを開けに向かう。開けた先にいたのは、コハクとマニカだった。

「マニカ? どうしたの?」

 何度も義手のメンテナンスなどで顔を合わせているので、マリーも呼び捨てで話す仲になっていた。

「いや~、腕の調子が少し悪くて確認して欲しいんだ」

 どうやら、義手の調子がおかしいらしい。

「分かった。中に入って、案内してくれてありがとう、コハク」
「ううん、お茶持ってく?」
「うん。お願い」

 マリーは、マニカを工房に招き入れ、コハクは、厨房にお茶の支度をしに向かった。

「それで、調子がおかしいってどんな感じで?」
「何か反応が悪い感じ? 関節部分の動きが悪いんだ」

 マニカの言葉に、マリーは少し険しい顔になる。関節部分の不調は、戦闘に限らず、日常生活にも影響を及ぼす問題だ。

「一度腕を外すよ」
「うん」

 マニカの腕を外して、作業机の上に載せる。そして、装甲とゴムを外して骨格だけにする。

「えっと……」

 マリーは、関節部分を中心に不具合の原因を探っていく。

「これは……マニカ、少し無茶な戦闘したでしょ?」
「えっ? ええっと、確か、魔武闘大会で激しい戦闘になったのは、あったけど……」
「多分、その戦闘でかな。骨格が少し歪んでる」
「直る?」

 マニカは、不安そうに訊く。もう既に、この義手はマニカにとって無くてはならないものになっている。そのため、義手が直る直らないは、マニカにとって死活問題になる。

「大丈夫! 直るよ!」

 マリーは、魔力を流して骨格の歪みを直していく。多少の歪みなので、マリーの魔力による成形でも直せる段階だった。

(う~ん、強度をもっと強化した方が良いかな。これから激しい戦闘が増えるって仮定したら、その方が良いよね)

 マリーは、義手にある魔法陣を浮かび上がらせて、強度上昇の魔法陣をプラスさせる。強度上昇を二重で付ける事により、さらに、強度を跳ね上げさせる。

「よし! 成功!」

 マリーは、念のため義手のメンテナンスもする。それらを終えたマリーは、義手を組み立てる。

「終わった。マニカ付けてみて」
「わかった」

 マニカは、義手を腕に付けて魔力を通す。そして、義手を軽く動かして調子を確かめる。

「すごい! 元に戻ってる!」
「そりゃあ、作った本人ですから!」

 褒められたマリーは、胸を張る。

「メンテナンスは、いつも通りで大丈夫だよ。魔力の消耗は大丈夫そう?」
「うん、前と変わらないよ。ありがとうね、マリーちゃん!」

 お礼を言うと直ぐさま飛び出していってしまった。

「無理しないでね」

 マリーの声は聞こえていただろうか。

「マニカさん、行っちゃったよ?」

 扉からお茶の用意をしたコハクが覗いてきていた。

「うん。直ったら行っちゃった」
「何か急ぎだったのかな?」
「どうだろう? まぁ、いいや。お茶飲も」
「そうだね」

 マリーとコハクは、食堂の方に向かっていった。そして、二人でゆっくりとお茶を飲みながら他愛のない話をした。
 お茶を飲み終えたマリーは、再び工房に戻ってきた。

「さて、剣の改良は諦めるとして……新しい魔道具か……」

 マリーは、素材を入れている箱などを眺めて頭を働かせていく。

「あっ……いや、さすがに難しいか……いや、形だけなら、既に出来る事は証明している……問題は、中核……そっちも既にある程度は形がある……でも、実際に作り上げるのは、難しい……焦らずに、理論の組み立てからやろう……絶対、トーナメントには間に合わないな」

 マリーは、口角を上げながらそう呟いていた。

 ────────────────────────

 あれから数日後、マリー達の自宅に、アルがやって来た。

「アルくん!? どうしたの?」
「少し、頼み事があってな」
「?」

 アルから頼み事と言われても、一切思いつかないマリーだったが、取り敢えず、アルを応接室にまで案内する。

「頼みって何?」
「ああ、盗聴器を一つくれないか」
「何で?」

 マリーは、眉を寄せながらそう訊く。

「今、色々と調査していてな。少し、確かめたいことがあるんだ」
「ふ~ん、まぁ、いいよ」

 アルの事をジッと見ていたマリーだったが、了承して、盗聴器を取りに工房まで向かった。

「絶対に悪用しちゃダメだよ」
「ああ、分かってる。かなり小型なんだな」
「まぁ、小さくないと見付かっちゃうからね」
「そうか。ありがとうな。また何かあったら来る」
「うん。分かった」

 盗聴器の受け渡しが終わると、アルは早々に帰っていった。

「本当に何に使うんだろう?」

 マリーは、かなり考え込んだが、結局何も思いつかなかった。マリーが、うんうん唸りながら考えていると、家の呼び鈴がまた鳴った。

「は~い!」

 マリーが扉を開けると、セレナとアイリが立っていた。

「マリー! ちょっと遊びに行かない?」
「いいよ。コハクもいるけど、誘って良い?」
「うん。いいよ」

 マリーは、家の中にいるコハクを呼び出して、セレナ、アイリと共に、街に繰り出した。

「ところで、リリーは?」
「今日は王城での予定があるんだって」
「王城で? なんだろう?」

 王城でする事など、マリーとコハクには、検討も付かない。

「何だっけ? 確か、王妃様とのお茶会とか言ってたかな?」
「へぇ~」

 マリーには、ほんの少しも興味をそそられない話だった。

「そんな事より、色々回ろうよ! もう少ししたら、マリーも忙しくなるでしょ?」

 魔武闘大会もかなり進んでいる。もうすぐ、上級生の試合も終わる頃合いだ。それは、マリーの上級生との、試合も近づいている事を表している。

「はぁ、何で上級生と試合しなくちゃいけないんだろう?」
「下級生に上級生の強さを確認させて、上昇志向を伸ばさせようとしてるんだっけ?」
「でも、下級生に負けたら、上級生のプライドが崩れるんじゃない?」
「そもそも、下級生が上級生に勝てる訳がないもん。そんな心配してないんじゃないの?」

 セレナの意見が、一番的を射ていた。六年連続優勝しているカレナがおかしいだけだ。

「まぁ、この話は置いておいて、今日は目一杯遊び尽くそう!」
『おー!』

 マリー達は、様々な店に赴き、わいわい話ながら、服や宝石、魔道具の材料まで幅広く買い物をした。マリー達にとっても、かけがえのない思い出となった。
 この数日後、マリーの試合の日がやって来た。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...