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成長する王女
上級生との戦い
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その日、マリーは、試合の支度をしてコハクと共に家を出た。カーリーは、仕事の関係で先に出ている。
「緊張してる?」
「そりゃあね。上級生は、私よりも経験豊富だろうし、何回か試合を見たけど、かなり強そうだった」
「アルさんより?」
「…………」
マリーは、コハクにそう言われて、すぐに答えることは出来なかった。アルの強さは、魔剣術を含めれば、上級生以上にもなると思われる。
「う~ん、どうだろう? アルくんは、異常に強いし、上級生にも普通に勝ちそうだけど」
「うん。じゃあ、そのアルさんに勝ったマリーも勝てそうって事だね?」
「そうだね……あれ?」
いつの間にか、マリーが上級生に勝てそうということになってしまっていた。
「あっ、噂をしてたら、あそこにアルさんがいるよ」
「本当だ。でも、誰かといるね」
マリー達の視線の先には、アルとアルより少し年上の黒髪の少年と同じく黒髪の壮年の男性がいた。
「誰だろう? お父さんとかかな?」
「なんだか揉めてる感じがするね。少し離れてようか」
巻き込まれてもあれなので、マリー達はアルから少し離れようとする。しかし、その前にアルより年上の少年に見付かってしまった。
「おい! そこの白髪! こっちに来い!」
粗暴な感じの少年はマリーを呼びつける。黒髪の少年は、壮年の男性に拳骨を食らい、怒られている。マリーは、嫌な感じを覚えながら、アルがいる所まで歩いていった。一応、コハクも付いてきた。
「何でしょうか?」
「ふん! お前がこの愚弟に勝った女か。こんなのに負けたんだな。カストル家の恥だな! はっはははは!」
話を聞く限り、この少年はアルの兄のようだ。アルの兄はそれだけ言うと、この場から去って行った。
(行っちゃった。何のために呼んだんだろう?)
マリーの中に疑問が生じたが、そんな事を気にしている暇はなかった。
「愚息がすまない」
アルの父であるグラスフリートがマリーに頭を下げる。
「いえ、頭を上げてください。私は気にしてませんから、それよりも……」
マリーは、アルの方を見る。マリーの心配そうな眼を見て、アルは安心させるように微笑む。
「大丈夫だ。ああいう兄だからな。大して気にしていない」
「そう? なら、いいけど」
マリーとアルのそんな様子を見ていたグラスフリートは、顎に手を当てて何かを考えていた。
「ふむ……」
「どうしましたか、父上?」
少し様子のおかしいグラスフリートに、アルがそう問いかけた。
「いや、何でも無い。それよりも、其方は、かの大賢者カーリー・ラプラス殿のご息女か?」
「はい。そうです。といっても実子ではなく養子ですが」
「ほう。そうなのか。改めて、私はグラスフリート・ディラ・カストル。アルゲートと先のディルゲルの父だ」
「はじめまして、マリー・ラプラスです」
「うむ。ところで、アルに勝ったという話を聞いた。それも、魔剣術を引き出させての勝利と聞いている」
「父上、その話は……」
「いいではないか。入学試験でも負けて、ここでも負けるとは、お前にとっての天敵ということか」
グラスフリートは、笑いながらそう言った。息子が負けたというのに、マリーからは、どこか喜んでいる風にも見えていた。
(見た目よりも気さくな人なのかな?)
グラスフリートと話してみたマリーの印象はそんな感じだった。
「そちらのお嬢さんは、どなたかな?」
マリー達と話していたグラスフリートの眼が、コハクの方に向いた。
「は、はい! 私はコハク・シュモクといいます!」
いきなり話し掛けられたコハクは、驚いてしまっていた。アル達に対しては慣れているので、もう問題無いが、グラスフリートは、カストル家の当主。緊張しないわけがない。
「良く鍛えられているな。良き師匠がいるとみた」
「はい。カーリー・ラプラスが師匠です」
「なんと!? それは、すごいな」
コハクの師匠が、カーリーということにグラスフリートは眼を剥いた。そもそも、カーリーが弟子を取るということ事態が珍しいというよりも、一度も無かったことなのだ。
「父上、そろそろお時間では?」
「おお、そうだった。マリー殿」
「はい」
「恐らく、次のトーナメントで当たるのは、先程のディルゲルだ。基本的に卑怯な手を使うことが多いが、剣の腕前も一応は、普通の人よりも上だ。気を付けてくれ」
グラスフリートは、マリーに忠告をしてくれたのだ。
「助言をありがとうございます」
「うむ、ではな」
グラスフリートは、マリー達に背を向けて、闘技場に向かっていった。
「お父さん、闘技場でお仕事?」
コハクは、グラスフリートが去って行った方向を見てそう言った。
「ああ、学院トーナメントの優勝者を確認するという意味合いで、試合の確認をしておくんだ。もしかしたら、騎士団に勧誘することになるかもだからな」
「へぇ~、そういうこともしてるんだね」
「だね。それに、まさか、アルくんの家族に会うことになるとは思わなかったよ」
「ああ、俺もまさか、お前達に会うとは思わなかった」
アルは、手のひらで自分の顔を覆い、ため息をつきながらそう言った。
「何か疲れてる?」
「ああ、あの兄を見られたとなればな。過ぎたことは仕方が無いが……」
アルは、本当にディルゲル見られたくなかったのだろう。少しだけ、やつれたように見えていた。
「まぁ、そんな事はいいだろう。俺達も闘技場に向かうぞ」
「うん」
「は~い」
マリー達は、闘技場に向かう。闘技場に着くと、マリーは、二人と別れて、闘技場内にある別部屋に向かった。そこで、トーナメントについての説明があるのだ。
「ここかな?」
マリーは指定された部屋と思われる扉を開く。
「これで全員揃ったね」
中にいたのは、男子が二人と女子が三人だった。
「可愛い!」
「こっちおいで!」
「ほら、早く!」
マリーは、その女子三人に捕まり、連れて行かれた。
「けっ! こんな雑魚どもしかいないとは、魔武闘大会も落ちたもんだな!」
ディルゲルは、偉そうに椅子に座りながらふんぞり返っている。もう一人いる男子は、腕を組んで壁際に立っている。髪を剃っていて、筋肉が発達しており、もはや、生徒なのかも怪しい……
「君一年なんだって?」
「すごい綺麗な髪、触って良い?」
「それよりも抱きしめて良い!?」
マリーは、突然捕まり囲まれ詰め寄られて、戸惑っていた。金色の長い髪をポニーテールにしている赤眼の女子、茶色の髪を肩口で揃えた青い眼をした女子、赤茶色の髪を二つ括りにした茶眼の女子の三人だ。
「あ、あの……」
「はい! はい! ちょっと静かにしてね! 私は、五年生のクラスを担当しているクルエナ・エルシオン。今日の審判を担当するよ。第一試合は、一年生マリー・ラプラス対五年生ディルゲル・ディラ・カストルの試合ね。すぐに始まるから闘技場に行って所定の位置に付いてね」
ディルゲルは呼ばれた途端、にやにやとしながら部屋を出て行った。
「私も行かなきゃ」
「気を付けてね」
「また後でね」
「頑張れ!」
マリーを囲っていた女子三人は、笑顔でマリーを送り出した。マリーは、苦笑いしながら三人に手を振って部屋を出て行った。
「よし、行こう」
マリーは、闘技場に向けて、歩き出す。闘技場に着くと、観客席は、見える限り満席になっていた。
「うわぁ、人がいっぱい……」
「はっ! 怖じ気づいたか!」
ディルゲルがニヤニヤしながら、マリーに向かってそう言った。しかし、その言葉は、マリーに届く前に、観客の歓声によって掻き消えた。しかし、ディルゲルは無視されたと思い、憤っている。
「マリー!!」
本当に微かに、マリーを呼ぶ声が混じっているのを感じたマリーは、闘技場を見回す。すると、一画にアル達がいるのを見つけた。そこには、コハクやリリー、セレナ、アイリ、リンもいる。
「皆がいる。あっ! あっちにはアルくんのお父さんも!」
マリーが手を振ると、コハク達も手を振り返していた。
────────────────────────
「アルくんのお兄さんって、どんな戦い方をするの?」
マリーに手を振りつつ、セレナがアルに問いかける。
「そうだな……百聞は一見にしかずだ。見てみるといい」
アルは説明しようと思ったが、先に説明せずに試合を観て貰うことにした。
────────────────────────
そうこうしているうちに試合が始まる。
『それでは、学院トーナメント第一試合開始!!』
「くらえ!」
ディルゲルは、マリーから離れているにも関わらず、剣を振う。一見謎の行動だが、次の瞬間、観客席が驚愕する。なぜなら、ディルゲルが振った剣の刀身が、マリー目掛けて飛んできたのだ。
『起動』
マリーは、結晶を二つ取り出して風の壁を、二重で生成する。一枚目の壁が、多少勢いを削ぎ、二枚目の壁が完全に刀身を止めた。
「何!?」
これで勝敗が付くと思っていたのか、ディルゲルは、刀身を止められた事に驚いた。
「『剣舞・五重奏』」
マリーの魔法鞄から剣が五本飛び出して、ディルゲルを襲う。
「くそ!」
ディルゲルは、刀身を失った剣を投げ捨て、魔法鞄から新しい剣を取り出した。
「『魔剣術・風牙』!!!!」
風の剣撃でマリーの剣を弾き飛ばす。
「魔剣術!?」
「はっ! あいつに使えて俺に使えないとでも思ったのか!」
ディルゲルは、そう言ったにやりと笑った。マリーは、魔剣術が使える事では無く、魔剣術をあっさり使ったことに驚いたのだが、ディルゲルは勘違いしたままだった。
『起動』
マリーは、靴の魔道具を発動して、勢いよくディルゲルに接近する。
「わざわざ、近づいてくるとは、馬鹿だな!!」
ディルゲルは剣を構えて、マリーに接近する。その前に、マリーの剣が邪魔をする。
「くそ! 鬱陶しい!!」
マリーの剣に対応して、マリーの動きを見ていなかったディルゲルは、懐への進入を許すことになった。
「はぁっ!」
マリーの拳が、ディルゲルの脇腹に突き刺さる。そして、同時に魔力がディルゲルの中に反響する。
「うがああああああ……!!」
ディルゲルは、あっさり吹き飛ばされ壁に身体を叩きつけられる。
「ごほっ! がはっ!」
そして、地面に四つん這いになると、激しく咳き込む。そこに、マリーの剣が襲い掛かり、あっさり気絶させる事が出来た。
「……アルくんより弱い?」
あっけなく終わったので、マリーも拍子抜けしていた。
『勝者、マリー・ラプラス!!』
観客席から大きな歓声が響き渡る。下級生が上級生に勝ったのだから当然だ。
ディルゲルは、直ぐさま医務室に運ばれる。マリーも控え室に戻った。
────────────────────────
「何というか、アルくんよりも弱い?」
「そうだな。剣術単体でも俺の方が強い。しかし、最初にやったような不意打ちが得意でな。基本初撃決着で済ませるんだ。だから、痛みとか苦しみへの耐性がない」
「そうなんだ。だから、マリーの魔闘術でやられたんだね」
「ああ、あれで、少し懲りてくれると良いんだが……」
アルの願いは叶えられるのだろうか……
それは、神のみぞ知る。
「緊張してる?」
「そりゃあね。上級生は、私よりも経験豊富だろうし、何回か試合を見たけど、かなり強そうだった」
「アルさんより?」
「…………」
マリーは、コハクにそう言われて、すぐに答えることは出来なかった。アルの強さは、魔剣術を含めれば、上級生以上にもなると思われる。
「う~ん、どうだろう? アルくんは、異常に強いし、上級生にも普通に勝ちそうだけど」
「うん。じゃあ、そのアルさんに勝ったマリーも勝てそうって事だね?」
「そうだね……あれ?」
いつの間にか、マリーが上級生に勝てそうということになってしまっていた。
「あっ、噂をしてたら、あそこにアルさんがいるよ」
「本当だ。でも、誰かといるね」
マリー達の視線の先には、アルとアルより少し年上の黒髪の少年と同じく黒髪の壮年の男性がいた。
「誰だろう? お父さんとかかな?」
「なんだか揉めてる感じがするね。少し離れてようか」
巻き込まれてもあれなので、マリー達はアルから少し離れようとする。しかし、その前にアルより年上の少年に見付かってしまった。
「おい! そこの白髪! こっちに来い!」
粗暴な感じの少年はマリーを呼びつける。黒髪の少年は、壮年の男性に拳骨を食らい、怒られている。マリーは、嫌な感じを覚えながら、アルがいる所まで歩いていった。一応、コハクも付いてきた。
「何でしょうか?」
「ふん! お前がこの愚弟に勝った女か。こんなのに負けたんだな。カストル家の恥だな! はっはははは!」
話を聞く限り、この少年はアルの兄のようだ。アルの兄はそれだけ言うと、この場から去って行った。
(行っちゃった。何のために呼んだんだろう?)
マリーの中に疑問が生じたが、そんな事を気にしている暇はなかった。
「愚息がすまない」
アルの父であるグラスフリートがマリーに頭を下げる。
「いえ、頭を上げてください。私は気にしてませんから、それよりも……」
マリーは、アルの方を見る。マリーの心配そうな眼を見て、アルは安心させるように微笑む。
「大丈夫だ。ああいう兄だからな。大して気にしていない」
「そう? なら、いいけど」
マリーとアルのそんな様子を見ていたグラスフリートは、顎に手を当てて何かを考えていた。
「ふむ……」
「どうしましたか、父上?」
少し様子のおかしいグラスフリートに、アルがそう問いかけた。
「いや、何でも無い。それよりも、其方は、かの大賢者カーリー・ラプラス殿のご息女か?」
「はい。そうです。といっても実子ではなく養子ですが」
「ほう。そうなのか。改めて、私はグラスフリート・ディラ・カストル。アルゲートと先のディルゲルの父だ」
「はじめまして、マリー・ラプラスです」
「うむ。ところで、アルに勝ったという話を聞いた。それも、魔剣術を引き出させての勝利と聞いている」
「父上、その話は……」
「いいではないか。入学試験でも負けて、ここでも負けるとは、お前にとっての天敵ということか」
グラスフリートは、笑いながらそう言った。息子が負けたというのに、マリーからは、どこか喜んでいる風にも見えていた。
(見た目よりも気さくな人なのかな?)
グラスフリートと話してみたマリーの印象はそんな感じだった。
「そちらのお嬢さんは、どなたかな?」
マリー達と話していたグラスフリートの眼が、コハクの方に向いた。
「は、はい! 私はコハク・シュモクといいます!」
いきなり話し掛けられたコハクは、驚いてしまっていた。アル達に対しては慣れているので、もう問題無いが、グラスフリートは、カストル家の当主。緊張しないわけがない。
「良く鍛えられているな。良き師匠がいるとみた」
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「父上、そろそろお時間では?」
「おお、そうだった。マリー殿」
「はい」
「恐らく、次のトーナメントで当たるのは、先程のディルゲルだ。基本的に卑怯な手を使うことが多いが、剣の腕前も一応は、普通の人よりも上だ。気を付けてくれ」
グラスフリートは、マリーに忠告をしてくれたのだ。
「助言をありがとうございます」
「うむ、ではな」
グラスフリートは、マリー達に背を向けて、闘技場に向かっていった。
「お父さん、闘技場でお仕事?」
コハクは、グラスフリートが去って行った方向を見てそう言った。
「ああ、学院トーナメントの優勝者を確認するという意味合いで、試合の確認をしておくんだ。もしかしたら、騎士団に勧誘することになるかもだからな」
「へぇ~、そういうこともしてるんだね」
「だね。それに、まさか、アルくんの家族に会うことになるとは思わなかったよ」
「ああ、俺もまさか、お前達に会うとは思わなかった」
アルは、手のひらで自分の顔を覆い、ため息をつきながらそう言った。
「何か疲れてる?」
「ああ、あの兄を見られたとなればな。過ぎたことは仕方が無いが……」
アルは、本当にディルゲル見られたくなかったのだろう。少しだけ、やつれたように見えていた。
「まぁ、そんな事はいいだろう。俺達も闘技場に向かうぞ」
「うん」
「は~い」
マリー達は、闘技場に向かう。闘技場に着くと、マリーは、二人と別れて、闘技場内にある別部屋に向かった。そこで、トーナメントについての説明があるのだ。
「ここかな?」
マリーは指定された部屋と思われる扉を開く。
「これで全員揃ったね」
中にいたのは、男子が二人と女子が三人だった。
「可愛い!」
「こっちおいで!」
「ほら、早く!」
マリーは、その女子三人に捕まり、連れて行かれた。
「けっ! こんな雑魚どもしかいないとは、魔武闘大会も落ちたもんだな!」
ディルゲルは、偉そうに椅子に座りながらふんぞり返っている。もう一人いる男子は、腕を組んで壁際に立っている。髪を剃っていて、筋肉が発達しており、もはや、生徒なのかも怪しい……
「君一年なんだって?」
「すごい綺麗な髪、触って良い?」
「それよりも抱きしめて良い!?」
マリーは、突然捕まり囲まれ詰め寄られて、戸惑っていた。金色の長い髪をポニーテールにしている赤眼の女子、茶色の髪を肩口で揃えた青い眼をした女子、赤茶色の髪を二つ括りにした茶眼の女子の三人だ。
「あ、あの……」
「はい! はい! ちょっと静かにしてね! 私は、五年生のクラスを担当しているクルエナ・エルシオン。今日の審判を担当するよ。第一試合は、一年生マリー・ラプラス対五年生ディルゲル・ディラ・カストルの試合ね。すぐに始まるから闘技場に行って所定の位置に付いてね」
ディルゲルは呼ばれた途端、にやにやとしながら部屋を出て行った。
「私も行かなきゃ」
「気を付けてね」
「また後でね」
「頑張れ!」
マリーを囲っていた女子三人は、笑顔でマリーを送り出した。マリーは、苦笑いしながら三人に手を振って部屋を出て行った。
「よし、行こう」
マリーは、闘技場に向けて、歩き出す。闘技場に着くと、観客席は、見える限り満席になっていた。
「うわぁ、人がいっぱい……」
「はっ! 怖じ気づいたか!」
ディルゲルがニヤニヤしながら、マリーに向かってそう言った。しかし、その言葉は、マリーに届く前に、観客の歓声によって掻き消えた。しかし、ディルゲルは無視されたと思い、憤っている。
「マリー!!」
本当に微かに、マリーを呼ぶ声が混じっているのを感じたマリーは、闘技場を見回す。すると、一画にアル達がいるのを見つけた。そこには、コハクやリリー、セレナ、アイリ、リンもいる。
「皆がいる。あっ! あっちにはアルくんのお父さんも!」
マリーが手を振ると、コハク達も手を振り返していた。
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「アルくんのお兄さんって、どんな戦い方をするの?」
マリーに手を振りつつ、セレナがアルに問いかける。
「そうだな……百聞は一見にしかずだ。見てみるといい」
アルは説明しようと思ったが、先に説明せずに試合を観て貰うことにした。
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そうこうしているうちに試合が始まる。
『それでは、学院トーナメント第一試合開始!!』
「くらえ!」
ディルゲルは、マリーから離れているにも関わらず、剣を振う。一見謎の行動だが、次の瞬間、観客席が驚愕する。なぜなら、ディルゲルが振った剣の刀身が、マリー目掛けて飛んできたのだ。
『起動』
マリーは、結晶を二つ取り出して風の壁を、二重で生成する。一枚目の壁が、多少勢いを削ぎ、二枚目の壁が完全に刀身を止めた。
「何!?」
これで勝敗が付くと思っていたのか、ディルゲルは、刀身を止められた事に驚いた。
「『剣舞・五重奏』」
マリーの魔法鞄から剣が五本飛び出して、ディルゲルを襲う。
「くそ!」
ディルゲルは、刀身を失った剣を投げ捨て、魔法鞄から新しい剣を取り出した。
「『魔剣術・風牙』!!!!」
風の剣撃でマリーの剣を弾き飛ばす。
「魔剣術!?」
「はっ! あいつに使えて俺に使えないとでも思ったのか!」
ディルゲルは、そう言ったにやりと笑った。マリーは、魔剣術が使える事では無く、魔剣術をあっさり使ったことに驚いたのだが、ディルゲルは勘違いしたままだった。
『起動』
マリーは、靴の魔道具を発動して、勢いよくディルゲルに接近する。
「わざわざ、近づいてくるとは、馬鹿だな!!」
ディルゲルは剣を構えて、マリーに接近する。その前に、マリーの剣が邪魔をする。
「くそ! 鬱陶しい!!」
マリーの剣に対応して、マリーの動きを見ていなかったディルゲルは、懐への進入を許すことになった。
「はぁっ!」
マリーの拳が、ディルゲルの脇腹に突き刺さる。そして、同時に魔力がディルゲルの中に反響する。
「うがああああああ……!!」
ディルゲルは、あっさり吹き飛ばされ壁に身体を叩きつけられる。
「ごほっ! がはっ!」
そして、地面に四つん這いになると、激しく咳き込む。そこに、マリーの剣が襲い掛かり、あっさり気絶させる事が出来た。
「……アルくんより弱い?」
あっけなく終わったので、マリーも拍子抜けしていた。
『勝者、マリー・ラプラス!!』
観客席から大きな歓声が響き渡る。下級生が上級生に勝ったのだから当然だ。
ディルゲルは、直ぐさま医務室に運ばれる。マリーも控え室に戻った。
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「何というか、アルくんよりも弱い?」
「そうだな。剣術単体でも俺の方が強い。しかし、最初にやったような不意打ちが得意でな。基本初撃決着で済ませるんだ。だから、痛みとか苦しみへの耐性がない」
「そうなんだ。だから、マリーの魔闘術でやられたんだね」
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