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九話
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病院の入り口を見上げているとスマホが鳴った。
和夫おじさんだ。
「……もしもし」
『もしもし圭太?大丈夫か?』
「はい。……すみません。連絡しちゃって」
『え、いいよ。むしろ連絡してくれてありがたい。頼ってくれて嬉しいよ。マジで』
「そう……ですか?」
『そうだぞ。あと、心配だから今から行くわ』
「えっ?!でも、結構遠いです…よね?」
『おう。車で三時間くらいかな。ま、すぐだよ』
「え、悪いですよ」
『いやいや、俺が行きたいから。んじゃまた連絡するわ。宗佑には首洗って待ってろよって言っとけ。説教だから。じゃあ、後でな』
返事をする前に電話が切れて、何だか立ち尽くしてしまった。
よろよろと病院の前の植え込みに腰をかける。
加賀屋さんからメッセージが来てるみたいだ。まぁ、急に帰ったら気になるよな。
普段だったら嬉しいはずなのに、トーク画面を開くことも出来ない。
「圭太さん、大丈夫ですわ。先生は大したことないとおっしゃってましたし、おじ様も来てくださるのでしょう?」
マダムの声が沁みる。
「……うん。そうだね」
「……そうですわね……。心がざわざわする時は、空でも見上げるとよろしいですわよ。一番簡単で、心が少し、落ち着きますもの」
そう言われて目線をゆっくり上に動かす。
そこにはどこまでも青くて高い、秋の空が広がっていた。
生温いような風が頬を撫で、僕は両手でパチンと頬を叩く。
息を大きく吐きながら立ち上がり、病院の入り口に足を向ける。
中に入り、案内係の人に病棟の場所を聞いて向かう。
そこからは看護師さんが案内してくれる。
「山中さんの息子さん?……若いのに大変ねぇ。お父さん、完全に働き過ぎよー。倒れて当然って感じ」
息が、詰まる。
「ま、詳しいことは先生から説明があると思うけど。あんたからもガツンと言ってやった方が良いわよ。あれ」
返事ができなくて、ただうつむいてしまう。
フンと鼻を鳴らして病室に入る看護師さんを、止まろうとする足を必死に動かして追いかける。
「山中さーん、息子さん来たよー」
看護師さんがベッドの仕切りのカーテンをザッと開けると、父さんが居た。
父さんは、点滴を吊るされながらベッドに横たわって、眠そうな目でこちらを見て、それからこう言った。
「おう、圭太。ごめんな」
ふいに視界がぼやける。
胸の奥がぐるぐるしてやたらと重い。
「そこ、座れよ」
足が動かない。ポケットの中のハンカチを握りしめる。
「どうした?」
父さんの顔が見れない。
「圭太、ごめんな。心配かけて」
謝んなよ…。謝んなって。
「でも、大丈夫だからさ。大したことないから。な。ごめんな」
「謝んなって!」
言ってしまった。
「謝んなって。頑張ってたんだろ?倒れるくらい。俺のこと、育てなきゃだし、頑張ってたんだろ?!だから……だから……さ……謝ん……な…って……」
言ってる途中から鼻水が出てきた。握りしめてたハンカチをポケットから出して鼻水を拭く。ついでに顔全体もぐしゃぐしゃと拭く。
ズビズビと鼻を鳴らしながら椅子に腰を下ろす。頭が勝手にどんどん下に下がっていく。
その頭を、ポンと、撫でられた。
「ありがとうな。……でもやっぱ、ごめん。圭太に、ほんと、負担かけてた。ごめん。でも、ありがとう。……ありがとう」
声が出ない。でも、頷く。
ハンカチが、どんどん水分を含んでいく。
撫でられてた手が、ふいに落ちる。
はっと顔をあげると、父さんが眠っていた。
ちょっと笑っちゃったけど……だよな。過労で倒れたんだもんな。
ゴシゴシとハンカチで顔を拭いて、父さんを見る。それから、父さんの落ちた手を布団の中にしまう。
……どうしよう。帰ろうかな。どうしたら良いんだろう。何か、わからないけどもうちょっと居た方がいいのかな……。
その時、「山中さんのご家族の方?」と、白衣を着た男の人がやって来た。
「は、はい。息子…です」
「あ、息子さんね。お母さんとか、保護者の方はいらっしゃる?」
「あ、いえ、父子家庭で……」
「祖父母の方とか、ご親戚も近くにいらっしゃらない?」
「あ、はい。……僕だけ……ですね」
また出そうになる鼻水を必死で押し込める。
「そう……うん、まぁ、お父さん、過労と脱水で倒れられたのね。で、今日から三日間は最低でも入院してもらって検査するから。その間の着替えとかは後で看護師から聞いてね。まぁ、大したことはないからね。安心して。今すぐどうこうって言うことはないから」
何度も頷く。
「今日は説明聞いてね、また明日必要なもの持って来てあげて。明日はもっと元気になってると思うから。お父さん」
「わかり…ました」
どんな顔をしてたのかわからないけど、くしゃくしゃになってるのは間違いない顔でお辞儀して、去っていく先生を見送る。
入れ替わりに看護師さんがやってきて必要な物の説明を受ける。
話を聞いて、挨拶して、何とか病院を出る。
病院を出たところで気付く。僕、どうやって帰れば良いんだろう……。
「圭太さん、あれはございませんの?」
マダムが何か聞いてくる。
「あれって何?」
「あれですわよ。……円タク……?」
「……えんたく……の騎士?」
「……タクシィですわ!」
「……あぁ、なるほど。……いや、いいや。何か、歩くわ」
「大丈夫ですの?」
「うん。……まぁ、辛くなったらタクシー乗るよ。あ、でも学校に置いてある自転車取らなきゃ」
「わかりましたわ。ではお散歩ですわね」
「まぁ……そうだね」
夕方の匂いがする道を歩く。
こっちの方にはあまり来ないから何だか新鮮だ。
「あら、圭太さん。秋桜が咲いていますわ。もう秋なのですのね」
「そうだね。毎日暑いから忘れちゃうけど」
「綺麗ですわ」
「うん……」
ピンクと白の秋桜が道端に咲き連なって、風に揺れている。
……そろそろ冬服出しとかなきゃな…。
「ねぇマダム…」
「あら、わたくしの事ですの?」
あ、マダムって呼んじゃった。
「う……。まぁ、そう……かも?」
「うふふ。マダム、素敵ですわね」
「……怒らない?」
「まさか!マダムと言われて怒る女性なんておりますの?」
「そうなの?」
「……多分?」
「ふふふ」
思わず笑ってしまった。
ため息ばかりつきたくなるけど、まぁ。
花も空も、綺麗だしな。
しばらく歩いているとマダムが尋ねてくる。
「圭太さん、さっきは何をおっしゃりたかったのです?」
「ん?」
「わたくしに、呼びかけられましたでしょう?」
ああ、マダムって密かに呼んでたのバレちゃった時のやつか。
「……忘れちゃった」
「あら、そうですの?」
「うん」
マダムには、大切な人がいたのかなって思ったんだけど。ちょっと今更、恥ずかしいや。
学校に近付くにつれて、夕焼けが濃くなってくる。ゆっくり歩きながら辺りを見回す。
普段自転車で走っている道が、まるで別の道みたいに見えてくる。いろんな人がいて、いろんな表情をしてて。……僕は今、どんな顔をしているんだろう。
「山中君?」
透き通るような声がした。
「へ?」
何かすっごい情けない声が出た。
振り向くと、加賀屋さんがいた。
「大丈夫?今日急に帰ったから心配してたんだよ。連絡も返ってこないし」
「えっ、あ、……うん。ごめん」
思わず俯いてしまう。
「あ、いや、責めてる訳じゃ……ないんだ……けど……」
「あ、うん。なんか、ちょっと、あってさ。バタバタしてて。後で、返事、返すね。ありがとう」
何だか逃げるように、足早に立ち去ってしまった。
はぁ。ダメだ……。今日はもう誰にも会いたくないや。
やっと学校の駐輪場にたどり着くとまだ沢山の自転車が置いてあった。これなら目立たないかな?とか、よくわからないことを考えながら自転車を出して跨り、大急ぎで校門を出た。
「圭太さん、今日は……ばいと…?は、ございませんの?」
「ばいと……ああ、バイトね。んーっと……無いよ。週末だけど、明日文化祭だから入れてない……。……文化祭か……。はぁ」
「どうされましたの?文化祭、楽しみにされてましたわよね」
「いや、父さんの荷物病院に持って行かなきゃだし……」
「……楽しめなさそう……です?」
直球図星ってやつだなこれ。びっくりして、それから思わず苦笑してしまう。
「まぁ、そうだね」
「無理に楽しんでいるフリをしても疲れるだけですわ!自分を騙しても辛いだけですもの」
マダムが拳を握って喋る姿が見える気がする。
「ふふ。……そうだね。まぁ、仕方ないし、休んじゃおっかな」
そう言うと、胸の奥がすーっと軽くなる気がした。
家に帰って自分の部屋に直行し、カバンを投げ出して着替えもせずにベッドに倒れ込む。
何だか疲れちゃった。
天井を見上げてぼぅっとしていると、点滴を繋がれた父さんの姿とか、加賀屋さんとうまく喋れなかった事とか、走り去っていく先生の車の後ろ姿とか、色々な事が頭の中をぐるぐると巡る。
「圭太さん、圭太さん、眉間がしわしわですわ。休むのも大切ですけど、こんな時こそ身体を動かした方が良いですわ」
何だよ眉間がしわしわって。
とりあえず上半身を起こしてスマホを見る。
あれ、加賀屋さんから何件かメッセージが来てる。
『さっきは何か、ごめんね。明日文化祭、楽しもうね!』
だって。
その前は『やあ』っていうスタンプと
『さっき、大丈夫だった?何か力になれる事あったら、気軽に言ってね?』
って。
他にも三浦さんや、伊藤とかからもメッセージが来てる。
……グスン。
もう一度ベッドに身体を投げ出す。
……泣いてないやい。
和夫おじさんだ。
「……もしもし」
『もしもし圭太?大丈夫か?』
「はい。……すみません。連絡しちゃって」
『え、いいよ。むしろ連絡してくれてありがたい。頼ってくれて嬉しいよ。マジで』
「そう……ですか?」
『そうだぞ。あと、心配だから今から行くわ』
「えっ?!でも、結構遠いです…よね?」
『おう。車で三時間くらいかな。ま、すぐだよ』
「え、悪いですよ」
『いやいや、俺が行きたいから。んじゃまた連絡するわ。宗佑には首洗って待ってろよって言っとけ。説教だから。じゃあ、後でな』
返事をする前に電話が切れて、何だか立ち尽くしてしまった。
よろよろと病院の前の植え込みに腰をかける。
加賀屋さんからメッセージが来てるみたいだ。まぁ、急に帰ったら気になるよな。
普段だったら嬉しいはずなのに、トーク画面を開くことも出来ない。
「圭太さん、大丈夫ですわ。先生は大したことないとおっしゃってましたし、おじ様も来てくださるのでしょう?」
マダムの声が沁みる。
「……うん。そうだね」
「……そうですわね……。心がざわざわする時は、空でも見上げるとよろしいですわよ。一番簡単で、心が少し、落ち着きますもの」
そう言われて目線をゆっくり上に動かす。
そこにはどこまでも青くて高い、秋の空が広がっていた。
生温いような風が頬を撫で、僕は両手でパチンと頬を叩く。
息を大きく吐きながら立ち上がり、病院の入り口に足を向ける。
中に入り、案内係の人に病棟の場所を聞いて向かう。
そこからは看護師さんが案内してくれる。
「山中さんの息子さん?……若いのに大変ねぇ。お父さん、完全に働き過ぎよー。倒れて当然って感じ」
息が、詰まる。
「ま、詳しいことは先生から説明があると思うけど。あんたからもガツンと言ってやった方が良いわよ。あれ」
返事ができなくて、ただうつむいてしまう。
フンと鼻を鳴らして病室に入る看護師さんを、止まろうとする足を必死に動かして追いかける。
「山中さーん、息子さん来たよー」
看護師さんがベッドの仕切りのカーテンをザッと開けると、父さんが居た。
父さんは、点滴を吊るされながらベッドに横たわって、眠そうな目でこちらを見て、それからこう言った。
「おう、圭太。ごめんな」
ふいに視界がぼやける。
胸の奥がぐるぐるしてやたらと重い。
「そこ、座れよ」
足が動かない。ポケットの中のハンカチを握りしめる。
「どうした?」
父さんの顔が見れない。
「圭太、ごめんな。心配かけて」
謝んなよ…。謝んなって。
「でも、大丈夫だからさ。大したことないから。な。ごめんな」
「謝んなって!」
言ってしまった。
「謝んなって。頑張ってたんだろ?倒れるくらい。俺のこと、育てなきゃだし、頑張ってたんだろ?!だから……だから……さ……謝ん……な…って……」
言ってる途中から鼻水が出てきた。握りしめてたハンカチをポケットから出して鼻水を拭く。ついでに顔全体もぐしゃぐしゃと拭く。
ズビズビと鼻を鳴らしながら椅子に腰を下ろす。頭が勝手にどんどん下に下がっていく。
その頭を、ポンと、撫でられた。
「ありがとうな。……でもやっぱ、ごめん。圭太に、ほんと、負担かけてた。ごめん。でも、ありがとう。……ありがとう」
声が出ない。でも、頷く。
ハンカチが、どんどん水分を含んでいく。
撫でられてた手が、ふいに落ちる。
はっと顔をあげると、父さんが眠っていた。
ちょっと笑っちゃったけど……だよな。過労で倒れたんだもんな。
ゴシゴシとハンカチで顔を拭いて、父さんを見る。それから、父さんの落ちた手を布団の中にしまう。
……どうしよう。帰ろうかな。どうしたら良いんだろう。何か、わからないけどもうちょっと居た方がいいのかな……。
その時、「山中さんのご家族の方?」と、白衣を着た男の人がやって来た。
「は、はい。息子…です」
「あ、息子さんね。お母さんとか、保護者の方はいらっしゃる?」
「あ、いえ、父子家庭で……」
「祖父母の方とか、ご親戚も近くにいらっしゃらない?」
「あ、はい。……僕だけ……ですね」
また出そうになる鼻水を必死で押し込める。
「そう……うん、まぁ、お父さん、過労と脱水で倒れられたのね。で、今日から三日間は最低でも入院してもらって検査するから。その間の着替えとかは後で看護師から聞いてね。まぁ、大したことはないからね。安心して。今すぐどうこうって言うことはないから」
何度も頷く。
「今日は説明聞いてね、また明日必要なもの持って来てあげて。明日はもっと元気になってると思うから。お父さん」
「わかり…ました」
どんな顔をしてたのかわからないけど、くしゃくしゃになってるのは間違いない顔でお辞儀して、去っていく先生を見送る。
入れ替わりに看護師さんがやってきて必要な物の説明を受ける。
話を聞いて、挨拶して、何とか病院を出る。
病院を出たところで気付く。僕、どうやって帰れば良いんだろう……。
「圭太さん、あれはございませんの?」
マダムが何か聞いてくる。
「あれって何?」
「あれですわよ。……円タク……?」
「……えんたく……の騎士?」
「……タクシィですわ!」
「……あぁ、なるほど。……いや、いいや。何か、歩くわ」
「大丈夫ですの?」
「うん。……まぁ、辛くなったらタクシー乗るよ。あ、でも学校に置いてある自転車取らなきゃ」
「わかりましたわ。ではお散歩ですわね」
「まぁ……そうだね」
夕方の匂いがする道を歩く。
こっちの方にはあまり来ないから何だか新鮮だ。
「あら、圭太さん。秋桜が咲いていますわ。もう秋なのですのね」
「そうだね。毎日暑いから忘れちゃうけど」
「綺麗ですわ」
「うん……」
ピンクと白の秋桜が道端に咲き連なって、風に揺れている。
……そろそろ冬服出しとかなきゃな…。
「ねぇマダム…」
「あら、わたくしの事ですの?」
あ、マダムって呼んじゃった。
「う……。まぁ、そう……かも?」
「うふふ。マダム、素敵ですわね」
「……怒らない?」
「まさか!マダムと言われて怒る女性なんておりますの?」
「そうなの?」
「……多分?」
「ふふふ」
思わず笑ってしまった。
ため息ばかりつきたくなるけど、まぁ。
花も空も、綺麗だしな。
しばらく歩いているとマダムが尋ねてくる。
「圭太さん、さっきは何をおっしゃりたかったのです?」
「ん?」
「わたくしに、呼びかけられましたでしょう?」
ああ、マダムって密かに呼んでたのバレちゃった時のやつか。
「……忘れちゃった」
「あら、そうですの?」
「うん」
マダムには、大切な人がいたのかなって思ったんだけど。ちょっと今更、恥ずかしいや。
学校に近付くにつれて、夕焼けが濃くなってくる。ゆっくり歩きながら辺りを見回す。
普段自転車で走っている道が、まるで別の道みたいに見えてくる。いろんな人がいて、いろんな表情をしてて。……僕は今、どんな顔をしているんだろう。
「山中君?」
透き通るような声がした。
「へ?」
何かすっごい情けない声が出た。
振り向くと、加賀屋さんがいた。
「大丈夫?今日急に帰ったから心配してたんだよ。連絡も返ってこないし」
「えっ、あ、……うん。ごめん」
思わず俯いてしまう。
「あ、いや、責めてる訳じゃ……ないんだ……けど……」
「あ、うん。なんか、ちょっと、あってさ。バタバタしてて。後で、返事、返すね。ありがとう」
何だか逃げるように、足早に立ち去ってしまった。
はぁ。ダメだ……。今日はもう誰にも会いたくないや。
やっと学校の駐輪場にたどり着くとまだ沢山の自転車が置いてあった。これなら目立たないかな?とか、よくわからないことを考えながら自転車を出して跨り、大急ぎで校門を出た。
「圭太さん、今日は……ばいと…?は、ございませんの?」
「ばいと……ああ、バイトね。んーっと……無いよ。週末だけど、明日文化祭だから入れてない……。……文化祭か……。はぁ」
「どうされましたの?文化祭、楽しみにされてましたわよね」
「いや、父さんの荷物病院に持って行かなきゃだし……」
「……楽しめなさそう……です?」
直球図星ってやつだなこれ。びっくりして、それから思わず苦笑してしまう。
「まぁ、そうだね」
「無理に楽しんでいるフリをしても疲れるだけですわ!自分を騙しても辛いだけですもの」
マダムが拳を握って喋る姿が見える気がする。
「ふふ。……そうだね。まぁ、仕方ないし、休んじゃおっかな」
そう言うと、胸の奥がすーっと軽くなる気がした。
家に帰って自分の部屋に直行し、カバンを投げ出して着替えもせずにベッドに倒れ込む。
何だか疲れちゃった。
天井を見上げてぼぅっとしていると、点滴を繋がれた父さんの姿とか、加賀屋さんとうまく喋れなかった事とか、走り去っていく先生の車の後ろ姿とか、色々な事が頭の中をぐるぐると巡る。
「圭太さん、圭太さん、眉間がしわしわですわ。休むのも大切ですけど、こんな時こそ身体を動かした方が良いですわ」
何だよ眉間がしわしわって。
とりあえず上半身を起こしてスマホを見る。
あれ、加賀屋さんから何件かメッセージが来てる。
『さっきは何か、ごめんね。明日文化祭、楽しもうね!』
だって。
その前は『やあ』っていうスタンプと
『さっき、大丈夫だった?何か力になれる事あったら、気軽に言ってね?』
って。
他にも三浦さんや、伊藤とかからもメッセージが来てる。
……グスン。
もう一度ベッドに身体を投げ出す。
……泣いてないやい。
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