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4.居場所
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「ラウル、それで今日はどうしたんだ」
さっきまでのことが無かったかのように部屋は落ち着いている。
その時、コンコンとドアがノックされ、女性がお茶を持って来てくれた。一礼し、退出する女性。
ラウルはそれを見送りながら
「遮音結界」
と呟く。
「お前それ……」
静かに頷いてラウルは続ける。
「誰にも聞かれたくない」
全員がゴクリと唾を飲み込む。
「竜の息吹も、一度あちらへ回ってくれ」
ギルマスさんの後ろに竜の息吹が控える。
何だかかっこいい。
ラウルが一息ついて続ける。
「先ずは自己紹介をしよう。私はラウレディオ・イヴェリオス。イヴェリオス伯爵家の嫡男だ」
「なんだって?!」
「まさか!」
「ふぇっ?!」
「そんな」
表情を崩さないギルマスさんとは対照的に、竜の息吹が狼狽えているのが何だか面白い。
「それでこちらは……」
自分で、ちゃんと、言わなきゃ。
「コンスタンツェ・イヴェリオス。イヴェリオス伯爵家の長女です」
軽く会釈をする。
「あ、いや、これはまぁご丁寧にどうも……。俺は、この町の冒険者ギルドのギルドマスターをしているゲオルク・モルガンだ」
モルガン……先日貴族名鑑で見た気がする……。
「あれ、ギルマスって貴族だったのかよ」
「バルガ!」
「おぅ、すまねぇ」
「……まぁ、一応な」
「この近くの領主様のご関係者ですの?」
「そうだよ姉さん。ギルマスは俺が貴族だって前から知ってる。信頼できる人だよ」
「面と向かって言われると照れるなぁ」
肩をすくめるラウル。
「お前、ギルマスが貴族って知ってたか?」
「知らないよ」
「僕は知ってたよ」
「私も」
「それにラウもやっぱ貴族だったじゃんか」
「しかもご領主様の嫡男だなんてね」
「バルガあんた処刑されるんじゃない?」
「何でだよ!怖ぇよ」
竜の息吹たちがヒソヒソとやりとりしている。
「ごほん!」
ラウルが大きな咳払いをすると場が静まる。
「それで、竜の息吹に依頼したいんだ。内容は、姉さんの護衛。目的地はヴァルグレン辺境伯領の、領主邸まで」
「理由を聞いても?」
「……姉さんの結婚が決まった。ヴァルグレン辺境伯とだ」
苦虫を噛み潰したような顔でラウルが言う。
「おぅ。あいつか。良かったじゃねぇか。いい奴だぞ」
「何を言ってるんだギルマス!あいつの噂を知らないのか?!王城で貴族を殴り殺したのに裏で手を回して無罪!自分が魔法を使えない腹いせに術者を斬り殺す!挙げ句の果てに強さを求めるとか言って若い人間の心臓を食べるなんてものまであるんだぞ?!」
「そんな酷い奴と結婚させられちまうのか?!」
「そうなんだバルガ!姉さんの心臓が食べられてしまう!」
「おい、落ち着けお前ら」
「だって」
「だけどよ!」
「ラウル!バルガさん!」
思わず口を挟んでしまう。
「落ち着いてお話ししましょう?話が進まないわ」
「お、おう……」
「……わかったよ、姉さん」
「モルガン様は辺境伯様とお知り合いなのですか?」
「お、おう。……ギルマスでいいぞ。で、辺境伯……だな。おう。知り合いだ。というか、ラウみたいな……ラウでいいか?」
「ああ」
「おう。ラウみたいにだな、昔冒険者をやっててよ。その時にこの町にも来たことがあるんだわ」
「そうなのですね……」
「あー、でもまぁ安心して大丈夫だ。今ラウが言ったみたいな事は一切ないから」
「ギルマス?!」
「いや、考えてみろよ。何だよ人間の心臓を食うって。どこの蛮族だよ」
「だから野蛮人などと呼ばれているのですよ!」
「いやいや、ラウ、お前人の噂を真に受けすぎだぞ?いい加減姉さんの事になるとバカになる癖治したほうがいいぞ?」
「うぅ……」
私もラウルの事言えないわ。野蛮人って、真に受けてたもの……。
「では、少しは安心して良いのでしょうか……」
「ああ、良いぞ」
少し、ほっとした。思わず笑みが溢れる。
「イヴェリオスのお嬢様って、こんなに可愛かったのね」
びっくりして目線を上げると頷き合う竜の息吹たち。困ってしまってラウルを見ると、ラウルも困ったような顔をしていて、少し笑ってしまった。
「……だがよ。何で冒険者なんか雇うんだ?伯爵家なら領軍なり何なり居るだろ?」
ラウルはソファに深く座り直した。
「……ここからが本題だ。だが、その前に竜の息吹に聞きたい。俺の依頼、受けてくれるかな?」
「……いいよ」
即答だった。
「ルークさん……」
「あはは、そんな顔しなくても大丈夫ですよ。皆もいいよね?」
「あったり前だ!」
「いいよ」
「もちろんよ」
思わず破顔して言う。
「……ありがとうございます!!」
「皆、ありがとう。本当に、助かる……」
ラウルも少し潤んだ目で皆にお礼を言う。
「ねぇ、この兄妹、私たちをどうするつもりなのかしら……」
「だね。ケイティ。僕もそう思う」
「顔が……良い……」
「だな……」
ラウルと顔を見合わせて首を傾げる。
「ごほん」
ギルマスの咳払いで居住まいを正す。
視線で先を促されたラウルが続ける。
「……ギルマスはもちろん知ってると思うけど、貴族の中では魔法が使えるのは当然の素養とされている」
皆が頷く。
「姉さんは……」
言い淀むラウル。
「私は魔法が使えません」
「姉さん……」
ギルマスが訊ねる。
「それで……辺境伯領へ?」
「ああ。それだけじゃない。姉さんは……」
ぐっと拳を握るラウル。
「結婚式に着るドレス一つ渡されて、家から追い出されたんだ」
皆が目を見開いて驚く。
その顔が何だかおかしくて笑いそうになる。
「ドレス一つって、侍女とか護衛とかも居るだろ?」
首を横に振るラウル。
「御者一人付けられただけだった。……そしてそいつは、こいつらに姉さんを襲わせようとした」
ラウルは胸ポケットから三枚のギルドカードを出して机の上に叩きつけた。
「なんだって?!」
ギルマスは身を乗り出して机の上のカードを取り、確認し始める。
顔を上げるとラウルに質問する。
「で、こいつらは?」
「姉さんに指一本触れる前に地獄へ行って貰った」
「あははは……。予想はしたがまぁそうなったか」
ギルマスは苦笑しながら言う。
「まぁ、貴族に対する暴行未遂だろ?しかも領主様のご令嬢。……どっちみち処刑だな。元々素行が悪くて他所から流れて来た奴らだ」
ラウルが肩をすくめて続ける。
「で、俺は残念ながら辺境伯領まで姉さんを送っていけない。だから、そこを竜の息吹に頼みたい」
「成程。それでここに繋がるわけか。……その御者はどうした?」
「馬を奪って逃げた。今馬車に付いてる馬は俺の馬だ。それはそのまま使ってくれれば良い」
「ふん……。分かった。まぁ、何だ。守秘義務だらけって感じだな。なぁ?お前ら」
そう言ってギルマスは竜の息吹の方へ問いかける。
「あはは。まぁ、ラウの頼みだしね。ラウが僕たちを信頼して大好きな姉さんを預けてくれるんだ。応えなきゃ」
ルークさんはそう言って私にパチンとウインクをした。
ウインクをされるなんて初めてだからびっくりしてると、隣から地響きのような声が聞こえてくる。
「ルーーーーークーーーーーー。死にたいのかなぁ……??」
思わず言ってしまう。
「ラウル、信頼してるんでしょ?」
「うっ……姉さん……」
「あっはっはっは。姉さんの前じゃラウも形無しだなぁ!」
「バルガ!!」
「うふふふふ。良い仲間なのね。ラウルが信頼出来る人たちだったらもう安心ね」
何だかラウルがちゃんと自分の居場所を見つけていて安心する。いつまでも小さなラウルではないのだわ。
さっきまでのことが無かったかのように部屋は落ち着いている。
その時、コンコンとドアがノックされ、女性がお茶を持って来てくれた。一礼し、退出する女性。
ラウルはそれを見送りながら
「遮音結界」
と呟く。
「お前それ……」
静かに頷いてラウルは続ける。
「誰にも聞かれたくない」
全員がゴクリと唾を飲み込む。
「竜の息吹も、一度あちらへ回ってくれ」
ギルマスさんの後ろに竜の息吹が控える。
何だかかっこいい。
ラウルが一息ついて続ける。
「先ずは自己紹介をしよう。私はラウレディオ・イヴェリオス。イヴェリオス伯爵家の嫡男だ」
「なんだって?!」
「まさか!」
「ふぇっ?!」
「そんな」
表情を崩さないギルマスさんとは対照的に、竜の息吹が狼狽えているのが何だか面白い。
「それでこちらは……」
自分で、ちゃんと、言わなきゃ。
「コンスタンツェ・イヴェリオス。イヴェリオス伯爵家の長女です」
軽く会釈をする。
「あ、いや、これはまぁご丁寧にどうも……。俺は、この町の冒険者ギルドのギルドマスターをしているゲオルク・モルガンだ」
モルガン……先日貴族名鑑で見た気がする……。
「あれ、ギルマスって貴族だったのかよ」
「バルガ!」
「おぅ、すまねぇ」
「……まぁ、一応な」
「この近くの領主様のご関係者ですの?」
「そうだよ姉さん。ギルマスは俺が貴族だって前から知ってる。信頼できる人だよ」
「面と向かって言われると照れるなぁ」
肩をすくめるラウル。
「お前、ギルマスが貴族って知ってたか?」
「知らないよ」
「僕は知ってたよ」
「私も」
「それにラウもやっぱ貴族だったじゃんか」
「しかもご領主様の嫡男だなんてね」
「バルガあんた処刑されるんじゃない?」
「何でだよ!怖ぇよ」
竜の息吹たちがヒソヒソとやりとりしている。
「ごほん!」
ラウルが大きな咳払いをすると場が静まる。
「それで、竜の息吹に依頼したいんだ。内容は、姉さんの護衛。目的地はヴァルグレン辺境伯領の、領主邸まで」
「理由を聞いても?」
「……姉さんの結婚が決まった。ヴァルグレン辺境伯とだ」
苦虫を噛み潰したような顔でラウルが言う。
「おぅ。あいつか。良かったじゃねぇか。いい奴だぞ」
「何を言ってるんだギルマス!あいつの噂を知らないのか?!王城で貴族を殴り殺したのに裏で手を回して無罪!自分が魔法を使えない腹いせに術者を斬り殺す!挙げ句の果てに強さを求めるとか言って若い人間の心臓を食べるなんてものまであるんだぞ?!」
「そんな酷い奴と結婚させられちまうのか?!」
「そうなんだバルガ!姉さんの心臓が食べられてしまう!」
「おい、落ち着けお前ら」
「だって」
「だけどよ!」
「ラウル!バルガさん!」
思わず口を挟んでしまう。
「落ち着いてお話ししましょう?話が進まないわ」
「お、おう……」
「……わかったよ、姉さん」
「モルガン様は辺境伯様とお知り合いなのですか?」
「お、おう。……ギルマスでいいぞ。で、辺境伯……だな。おう。知り合いだ。というか、ラウみたいな……ラウでいいか?」
「ああ」
「おう。ラウみたいにだな、昔冒険者をやっててよ。その時にこの町にも来たことがあるんだわ」
「そうなのですね……」
「あー、でもまぁ安心して大丈夫だ。今ラウが言ったみたいな事は一切ないから」
「ギルマス?!」
「いや、考えてみろよ。何だよ人間の心臓を食うって。どこの蛮族だよ」
「だから野蛮人などと呼ばれているのですよ!」
「いやいや、ラウ、お前人の噂を真に受けすぎだぞ?いい加減姉さんの事になるとバカになる癖治したほうがいいぞ?」
「うぅ……」
私もラウルの事言えないわ。野蛮人って、真に受けてたもの……。
「では、少しは安心して良いのでしょうか……」
「ああ、良いぞ」
少し、ほっとした。思わず笑みが溢れる。
「イヴェリオスのお嬢様って、こんなに可愛かったのね」
びっくりして目線を上げると頷き合う竜の息吹たち。困ってしまってラウルを見ると、ラウルも困ったような顔をしていて、少し笑ってしまった。
「……だがよ。何で冒険者なんか雇うんだ?伯爵家なら領軍なり何なり居るだろ?」
ラウルはソファに深く座り直した。
「……ここからが本題だ。だが、その前に竜の息吹に聞きたい。俺の依頼、受けてくれるかな?」
「……いいよ」
即答だった。
「ルークさん……」
「あはは、そんな顔しなくても大丈夫ですよ。皆もいいよね?」
「あったり前だ!」
「いいよ」
「もちろんよ」
思わず破顔して言う。
「……ありがとうございます!!」
「皆、ありがとう。本当に、助かる……」
ラウルも少し潤んだ目で皆にお礼を言う。
「ねぇ、この兄妹、私たちをどうするつもりなのかしら……」
「だね。ケイティ。僕もそう思う」
「顔が……良い……」
「だな……」
ラウルと顔を見合わせて首を傾げる。
「ごほん」
ギルマスの咳払いで居住まいを正す。
視線で先を促されたラウルが続ける。
「……ギルマスはもちろん知ってると思うけど、貴族の中では魔法が使えるのは当然の素養とされている」
皆が頷く。
「姉さんは……」
言い淀むラウル。
「私は魔法が使えません」
「姉さん……」
ギルマスが訊ねる。
「それで……辺境伯領へ?」
「ああ。それだけじゃない。姉さんは……」
ぐっと拳を握るラウル。
「結婚式に着るドレス一つ渡されて、家から追い出されたんだ」
皆が目を見開いて驚く。
その顔が何だかおかしくて笑いそうになる。
「ドレス一つって、侍女とか護衛とかも居るだろ?」
首を横に振るラウル。
「御者一人付けられただけだった。……そしてそいつは、こいつらに姉さんを襲わせようとした」
ラウルは胸ポケットから三枚のギルドカードを出して机の上に叩きつけた。
「なんだって?!」
ギルマスは身を乗り出して机の上のカードを取り、確認し始める。
顔を上げるとラウルに質問する。
「で、こいつらは?」
「姉さんに指一本触れる前に地獄へ行って貰った」
「あははは……。予想はしたがまぁそうなったか」
ギルマスは苦笑しながら言う。
「まぁ、貴族に対する暴行未遂だろ?しかも領主様のご令嬢。……どっちみち処刑だな。元々素行が悪くて他所から流れて来た奴らだ」
ラウルが肩をすくめて続ける。
「で、俺は残念ながら辺境伯領まで姉さんを送っていけない。だから、そこを竜の息吹に頼みたい」
「成程。それでここに繋がるわけか。……その御者はどうした?」
「馬を奪って逃げた。今馬車に付いてる馬は俺の馬だ。それはそのまま使ってくれれば良い」
「ふん……。分かった。まぁ、何だ。守秘義務だらけって感じだな。なぁ?お前ら」
そう言ってギルマスは竜の息吹の方へ問いかける。
「あはは。まぁ、ラウの頼みだしね。ラウが僕たちを信頼して大好きな姉さんを預けてくれるんだ。応えなきゃ」
ルークさんはそう言って私にパチンとウインクをした。
ウインクをされるなんて初めてだからびっくりしてると、隣から地響きのような声が聞こえてくる。
「ルーーーーークーーーーーー。死にたいのかなぁ……??」
思わず言ってしまう。
「ラウル、信頼してるんでしょ?」
「うっ……姉さん……」
「あっはっはっは。姉さんの前じゃラウも形無しだなぁ!」
「バルガ!!」
「うふふふふ。良い仲間なのね。ラウルが信頼出来る人たちだったらもう安心ね」
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