魔法が使えない出来損ないの私は、野蛮な辺境伯に嫁がされましたが、今日も溺愛……されてます?!

小野紅白

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3.出会い

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 ラウルに連れられて冒険者ギルドの中に入る。

 私たちが中に入ると喧騒が一瞬静かになるけれど、すぐにまたざわめき始める。でも色々な人達がこちらを見ていて何だか落ち着かない。

「……あれ、絶影だよな?」
「え、誰?」
「お前知らないのか?史上三番目の速さでにAランク冒険者になったっていう」
「あのお坊っちゃんが?」
「見た目で判断すんな。あいつマジでヤバいらしいからな」
「そうそう。姉貴の悪口言ったら半殺しにされたって噂だぜ?」

「……おっ?!ラウじゃねぇか!」

 囁き声が聞こえる中、一際大きな声が響く。

「ああ、バルガ。久しぶり。ちょうど良かった」

 ガシッと手を合わせ、お互いに抱き合うように肩を叩き合う。
 なんだか冒険者みたいでちょっとカッコいい。……あ、みたいじゃなくて本物だった。

「しっかしラウ、お前どうしたんだよそんな綺麗な服着てよ。薄々そうじゃないかとは思ってたけど、やっぱりどっか良いとこの坊ちゃんだったんだな」

「バルガ、そういうの良くないよ。やぁ。ラウ。久しぶり」

 そう言って現れたのは小柄な女の子。あれ?この子、頭に耳が……?!

「やぁカリン。久しぶりだね。元気してた?」

「元気だよ。それよりそっちの美人さんは?」

「ああ。姉さんだよ」

「やっぱり!」
「やっぱり!」

「なんだよ二人して」

「ラウが女連れてるなんてありえないだろ?!あるとすれば絶対お前が大好きな姉さんしか居ねえじゃねぇか!」

「そうだよ。耳からタコが生えるくらい聞かされたんだ」

「カリン何か違うぞ?」

「何が?」

「さぁ?」

 顔を見合わせて首を傾げる二人。

「耳がタコになるだよ」

 そう言ってやって来たのは腰に剣を携えた男性と大きな杖を持った女性。

「バルガとカリンがごめんね。僕たちはラウの友人の……」

 そう私に声をかけて来た男性と私の間にラウルがヒラリと身を入れる。

「ルーク近い」

 ルークと呼ばれた男性は両手を挙げて後ずさる。

「ごめんごめん!だけど自己紹介くらいさせてくれよ」

 ラウルの服の裾をちょんちょんと引っ張って言う。

「私は大丈夫だから」

「姉さん……。分かったよ」

 ラウルは困ったように眉を寄せて、それでも私の前から退いてくれた。
 ……横にぴったりと寄り添いはしているけれど。

「初めましてラウの姉君。僕たちはAランクパーティの『竜の息吹』だ。僕は、リーダーで剣士のルーク」

「私はヒーラーのケイティよ。よろしくね。ラウのお姉さん」

 そう言ったのは杖を持った女性。何だかとってもセクシーだ。

「おう、俺は大楯使いのバルガだ」

「あたいはシーフのカリン。見ての通りの猫獣人」

「よろしく……お願いします」

 緊張しながらもそう答える。でも自己紹介する前にラウルが口を挟む。

「頼みたいことがあるんだ。ここでは何だから個室を使いたい。依頼もするからちょっと待っててくれないか?」

「俺たちにか?」

「ああ」

「分かった。ラウの頼みだ。待ってるさ」

「ありがとう」

 ラウルはそう言うと私を連れて受付へ行く。

「ラウル、私ちゃんとご挨拶できてないわ」

「いいんだ。それは後で」

 そう言ってラウルは受付の女性へ声をかけた。

「指名依頼を出したいんだ。それと個室を借りたい。そこで依頼内容の説明をするから」

「はっ、はい!えっと、えっと、個室を、お貸しする……のは、えっと……」

 ラウルの顔がだんだん険しくなってくる。

「とりあえず個室の鍵を貸してくれないか?それからそこで指名依頼の内容の確認と依頼書の作成をすればいいじゃないか」

「いえ、ですが、あの、えっと……あの、えっと……」

「だから……っ!」

 ラウルの肩に手をそっと置く。

「ダメよ。そんなに慌てさせちゃ。私のことが心配なのはわかるけれど、そんなに怒っては彼女を怖がらせてしまうわ。ね?」

「ごめんなさいね」と、受付の女性へ謝ると、彼女は顔を赤らめてふるふると首を振る。

「姉さん……」

 何だかラウルが呆れている。……どうしてかしら?

「いや、いいや。……とりあえず、そう言う訳だから鍵を貸してくれ」

 そう言ってラウルはおもむろに冒険者カードを懐から出して受付の女性へ見せる。

「これを見せていなかった俺も悪かった」

「は、はい!ふぇっ?!……え、Aランクの、ラウ様……って絶影様?!」

 ギルドの中の喧騒がまた静まり、こちらに興味を向ける視線を沢山感じる。
 女性はハッとして口を押さえ、キョロキョロと辺りを見回しているけれど……今更なような気もする……。

「とりあえず鍵を」

 ラウルがそう言うと、大きなしゃがれ声がした。

「おう!ラウじゃねぇか!久しぶりだな!……まぁ何だ。俺の部屋へ来いよ」

 しゃがれ声の大柄な男性はラウルと私を交互に見てそう言った。

「あぁ、ギルマス。久しぶり。……そうだな。そうさせてもらうよ。竜の息吹も一緒でいいか?」

「あん?……良いぜ。着いて来い」

「おい、茶を全員分な!」受付の方へそう声をかけると、ギルマスと呼ばれた男性は二階へ上がって行った。

 私とラウルは竜の息吹と共に彼を追いかける。

「絶影様が来てるって本当?」
「あそこよあそこ。何か今日はすっっごく高貴な感じ」
「貴族だって噂本当だったの?」
「ていうか隣の女誰?よく見えない」
「女とか言うのやめろよ。姉貴だったら殺されるぞお前」
「ひぇっ。辞めてよ。気が付いたら死んでたとか怖すぎる」

 何だか不穏なヒソヒソ話がじわじわと広がる中、急ぎ足で階段を登る。

 軋む扉を開いて、ギルマスと呼ばれた男性が部屋へ招き入れてくれる。

「まぁ、座れや」

 三人掛けのソファに彼が座り、対面にラウルと私。竜の息吹たちは私たちの後ろに立ったままだ。……気になるけど、何か流儀があるのかも知れない。

「で、今日はどうした」

 私をチラリと見て言う。

「厄介ごとか?」

「ダメだ!ギルマス!謝れ!今すぐ謝れ!!ギルドごと燃やされるぞ!」

 後ろから慌てた声が聞こえる。
 ふと横を見ると、すごい顔をしたラウルがバルガに羽交い締めにされている。
 私はラウルの腕に手を置き、ふるふると首を横に振る。
 燃やすのは良くないもの。

「姉さん、だけど」

「姉さん?!いや、あの、悪かった!ラウ!俺が悪かった!すまん!誤るから。この通り!」

「……今回は……姉さんに免じて許します」

「助かったぁ」

 心底ホッとしたような声を出すギルマス……さん。

 ラウル、今まで何をして来たのかしら……。
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