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8.それぞれの想い
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クソッ、失敗しちまった。
あの冒険者ども、なぁにがCランクだ。ふざけやがって。お坊っちゃんに瞬殺されてんじゃねぇか。
……あぁ、俺のコンスタンツェ……。お前が泣き叫び、あの美しい顔が歪むのを見たかったのに……。
クソッ。
だが早く逃げないと……。
あのシスコン野郎、絶対に俺の事追いかけてくるよなぁ……。
少し悪寒がして馬を急かす。
夕暮れの旧街道は足場が悪く、余り馬も速度が出せない。チッ。ミスったか。人が少ない方が早く距離を稼げると思ったんだが、あれから丸一日。上手く進めた気がしねぇ……。
その時強い風が吹き、埃が舞い上がる。馬がタタラを踏み、俺は思わず目を瞑って風をやり過ごす。
風が収まり、もう一度馬を進めようとするとそこには、満面の笑みを浮かべた黒髪の悪魔。
ラウレディオ・イヴェリオスが、立っていた。
————
「ひぃっ……!」
馬に乗った男が叫ぶ。会えてとても嬉しかったのに、何て歓迎のされ方だよ。
俺は馬の側まで駆けて行き、飛び上がって男を殴り飛ばす。
男が旧街道の脇の茂みに突っ込んでいく。
驚いた馬を宥めて落ち着かせ、男の側へゆっくりと歩いて行く。
「ひぃっ!……ひぃっ!お助け……!」
男は這い蹲りながら助けを乞うてくる。
だけど、この辺りまで近付くと大体……。
「うぉらぁ!!」
ナイフを振り上げて俺を襲おうとしてくる。
まぁ、最低限の護衛くらいは戦えるんだろうけど……。
「だと思った」
軽く躱して男を地面に叩きつける。
転がるナイフ。
「ぐえっ……」
唸る男に尋ねる。
「誰の入れ知恵だ」
目を見開いて首を僅かに振る男。
……まぁ、大体察しは付いてるんだけど。
ため息をついて石の礫を鏃の形にして周りに浮かべる。
「三つ数える間に誰の入れ知恵か教えてくれないと、これがお前の所へ飛んでいくことになるけれど」
青ざめる男。
「一」
首を振りながら後ろへズリズリと下がって行く。
「二」
口をパクパクとさせる男に石礫がじりじりと迫る。
「さ……」
「あいつだ!あいつに言われた!!!」
男から聞かされた名前をしっかりと胸に刻む。
……姉さんを泣かせたやつは、絶対に許さない。
男の死体を燃やして地面に埋め、馬に身体強化をかけて走らせる。近くの街へ馬を預け、転移で家に帰る。
俺の戦いは、今から始まる。
待ってて。姉さん……。
————
温かいハーブティーを頂く。
とても美味しい。柔らかな甘味と、さわやかな苦味が合わさって、とても落ち着く。
ふぅっと息を吐いて、改めてお部屋を見回す。
本当に素敵なお部屋。
そうだ、ラウルに手紙を書きたいわ。
持ってきたトランクに便箋と封筒を入れていたはず。トランクは何処に置いて頂いたのかしら。
そう思ってキョロキョロしていると、アンヌさんから声がかかる。
「コンスタンツェ様、いかがなさいましたか?」
「あ、あの、私のトランクはどちらに置いていただいたのかしら……と。……手紙を書きたくて」
「それでしたら寝室の方へ置かせて頂いております。取って参りましょうか?」
「いえ、私が行きますわ」
ハーブティーが入っていたカップを机に置き、続きになっている寝室の方へ行く。
ベッドサイドの机の上に置かれていた私のトランクは、なんだかみすぼらしくて恥ずかしくなる。
「よろしければ、荷解きのお手伝いをいたします」
「いえ……」
今着てるワンピース位しかちゃんとした洋服なんてないし、後は細々した物……。
手伝って貰う様なものも無いな……。
と思っていると、ミーシャさんから声が掛かった。
「コ、コンスタンツェ様!そろそろ晩餐のお時間ですので、ご用意をと……。本日は歓迎パーティの為、立食形式になっているそうですので、冒険者の皆さんも参加されるみたいですよ!」
「そうなのですね。わかりました。……このままの格好でもよろしいでしょうか……」
アンヌとミーシャが私の姿を見てから顔を見合わせる。
とりあえず手紙は夜に書くとして、伯爵令嬢がこのワンピース一枚しかないって、笑うしかないかもしれない……。
そんな事を考えていると、アンヌとミーシャが満面の笑みを浮かべて近寄ってくる。
「コンスタンツェ様!お館様が張り切って、婚約者様の為に用意させたドレスがたくさんございます!ぜひそちらを着て頂けませんでしょうか?!」
私はたじたじとなりながらも、
「は……はい」
と、答えることしか出来なかった……。
「とりあえず湯浴みですわー」
とニコニコ顔のアンヌとミーシャに連れられてお風呂に入れられて隅々まで磨かれる。
何処かのお茶会に連れて行かれる日の前日くらいしかお風呂なんて入れて貰えなかったのに……。
きっと旅行で埃っぽくもなってるだろうし、なんだか申し訳ない。
全身をマッサージされ、髪に香油を付けられて櫛で梳かれる。
さらっとガウンを着せられ、浴室と続きになっている衣裳室へ通される。……まさか、専用の浴室では……ないわよ……ね?
少しドキドキしながら衣裳室に入ると、数十着のドレス。豪華なものからシンプルなものまで揃えられていて、アクセサリーや靴まである。
「これ……って……?」
あはは、まさか。……どなたかのお部屋と間違われてるのかしら……。
アンヌは満面の笑みでこちらを見て私に告げる。
「こちらがお館様が張り切ってご用意された衣裳の数々でございます。コンスタンツェ様のお気に召されるとよろしいのですが」
「ひゃ……ひゃい……」
思わず変な声が出てしまった。顔が熱い。
何故かミーシャがあちらを向いてしまう。
「これミーシャ」
「ひゃいっ!すみません!」
顔が真っ赤になったミーシャが居住まいを正す。
「大丈夫?」と私が聞くと、「大丈夫れす!」と元気に返してくれるけれど、本当かしら。
「本日は立食パーティーでございますから、少しラフな物でよろしいかと存じます。コンスタンツェ様」
アンヌがそう言って、いくつか見繕ってくれる。
鏡の前で合わせてみて、最後に選んだのは……。
————
奥様……いえ、気が早かったですね。
コンスタンツェ様……。本当にお綺麗な方です。
いずれお館様の奥様になられる方だ!と、思ってたらつい、奥様なんて呼んでしまって……。
コンスタンツェ様の前でアンヌさんに怒られるハメになってしまいました……。
でも仕方ないじゃないですか!
あんなに素敵なお館様のところに、あんなに素敵な方がいらっしゃったんですよ?!
ついうっかり奥様って呼んでしまっても仕方ないと思います……。
奥様……いえ、コンスタンツェ様は銀髪にアメジストの様な紫の瞳。あどけない中にも芯のあるお姿で、それでいて、言葉の節々に滲み出る謙虚さと言いますか……我々使用人に対するお気遣い何かも感じてしまって……。
おこがましい気持ちではありますが、守ってあげたい。守らせて頂きたい。なんて言う気持ちにさせるお方だな……なんて、アンヌさんに聞かれたら、よくわからないまま怒られそうですけど……。あはは。
でも、何度も微笑みかけられたり、ちょっと恥ずかしがるような表情を見せられた私は……。
もう、ギブアップでございます……。
コンスタンツェ様……。あぁ、今も髪を耳にかき上げられて微笑まれるだなんて……。
失礼にあたるかもしれませんが……。推せます……。ありがとうございます……!
あの冒険者ども、なぁにがCランクだ。ふざけやがって。お坊っちゃんに瞬殺されてんじゃねぇか。
……あぁ、俺のコンスタンツェ……。お前が泣き叫び、あの美しい顔が歪むのを見たかったのに……。
クソッ。
だが早く逃げないと……。
あのシスコン野郎、絶対に俺の事追いかけてくるよなぁ……。
少し悪寒がして馬を急かす。
夕暮れの旧街道は足場が悪く、余り馬も速度が出せない。チッ。ミスったか。人が少ない方が早く距離を稼げると思ったんだが、あれから丸一日。上手く進めた気がしねぇ……。
その時強い風が吹き、埃が舞い上がる。馬がタタラを踏み、俺は思わず目を瞑って風をやり過ごす。
風が収まり、もう一度馬を進めようとするとそこには、満面の笑みを浮かべた黒髪の悪魔。
ラウレディオ・イヴェリオスが、立っていた。
————
「ひぃっ……!」
馬に乗った男が叫ぶ。会えてとても嬉しかったのに、何て歓迎のされ方だよ。
俺は馬の側まで駆けて行き、飛び上がって男を殴り飛ばす。
男が旧街道の脇の茂みに突っ込んでいく。
驚いた馬を宥めて落ち着かせ、男の側へゆっくりと歩いて行く。
「ひぃっ!……ひぃっ!お助け……!」
男は這い蹲りながら助けを乞うてくる。
だけど、この辺りまで近付くと大体……。
「うぉらぁ!!」
ナイフを振り上げて俺を襲おうとしてくる。
まぁ、最低限の護衛くらいは戦えるんだろうけど……。
「だと思った」
軽く躱して男を地面に叩きつける。
転がるナイフ。
「ぐえっ……」
唸る男に尋ねる。
「誰の入れ知恵だ」
目を見開いて首を僅かに振る男。
……まぁ、大体察しは付いてるんだけど。
ため息をついて石の礫を鏃の形にして周りに浮かべる。
「三つ数える間に誰の入れ知恵か教えてくれないと、これがお前の所へ飛んでいくことになるけれど」
青ざめる男。
「一」
首を振りながら後ろへズリズリと下がって行く。
「二」
口をパクパクとさせる男に石礫がじりじりと迫る。
「さ……」
「あいつだ!あいつに言われた!!!」
男から聞かされた名前をしっかりと胸に刻む。
……姉さんを泣かせたやつは、絶対に許さない。
男の死体を燃やして地面に埋め、馬に身体強化をかけて走らせる。近くの街へ馬を預け、転移で家に帰る。
俺の戦いは、今から始まる。
待ってて。姉さん……。
————
温かいハーブティーを頂く。
とても美味しい。柔らかな甘味と、さわやかな苦味が合わさって、とても落ち着く。
ふぅっと息を吐いて、改めてお部屋を見回す。
本当に素敵なお部屋。
そうだ、ラウルに手紙を書きたいわ。
持ってきたトランクに便箋と封筒を入れていたはず。トランクは何処に置いて頂いたのかしら。
そう思ってキョロキョロしていると、アンヌさんから声がかかる。
「コンスタンツェ様、いかがなさいましたか?」
「あ、あの、私のトランクはどちらに置いていただいたのかしら……と。……手紙を書きたくて」
「それでしたら寝室の方へ置かせて頂いております。取って参りましょうか?」
「いえ、私が行きますわ」
ハーブティーが入っていたカップを机に置き、続きになっている寝室の方へ行く。
ベッドサイドの机の上に置かれていた私のトランクは、なんだかみすぼらしくて恥ずかしくなる。
「よろしければ、荷解きのお手伝いをいたします」
「いえ……」
今着てるワンピース位しかちゃんとした洋服なんてないし、後は細々した物……。
手伝って貰う様なものも無いな……。
と思っていると、ミーシャさんから声が掛かった。
「コ、コンスタンツェ様!そろそろ晩餐のお時間ですので、ご用意をと……。本日は歓迎パーティの為、立食形式になっているそうですので、冒険者の皆さんも参加されるみたいですよ!」
「そうなのですね。わかりました。……このままの格好でもよろしいでしょうか……」
アンヌとミーシャが私の姿を見てから顔を見合わせる。
とりあえず手紙は夜に書くとして、伯爵令嬢がこのワンピース一枚しかないって、笑うしかないかもしれない……。
そんな事を考えていると、アンヌとミーシャが満面の笑みを浮かべて近寄ってくる。
「コンスタンツェ様!お館様が張り切って、婚約者様の為に用意させたドレスがたくさんございます!ぜひそちらを着て頂けませんでしょうか?!」
私はたじたじとなりながらも、
「は……はい」
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「とりあえず湯浴みですわー」
とニコニコ顔のアンヌとミーシャに連れられてお風呂に入れられて隅々まで磨かれる。
何処かのお茶会に連れて行かれる日の前日くらいしかお風呂なんて入れて貰えなかったのに……。
きっと旅行で埃っぽくもなってるだろうし、なんだか申し訳ない。
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さらっとガウンを着せられ、浴室と続きになっている衣裳室へ通される。……まさか、専用の浴室では……ないわよ……ね?
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「これ……って……?」
あはは、まさか。……どなたかのお部屋と間違われてるのかしら……。
アンヌは満面の笑みでこちらを見て私に告げる。
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「ひゃ……ひゃい……」
思わず変な声が出てしまった。顔が熱い。
何故かミーシャがあちらを向いてしまう。
「これミーシャ」
「ひゃいっ!すみません!」
顔が真っ赤になったミーシャが居住まいを正す。
「大丈夫?」と私が聞くと、「大丈夫れす!」と元気に返してくれるけれど、本当かしら。
「本日は立食パーティーでございますから、少しラフな物でよろしいかと存じます。コンスタンツェ様」
アンヌがそう言って、いくつか見繕ってくれる。
鏡の前で合わせてみて、最後に選んだのは……。
————
奥様……いえ、気が早かったですね。
コンスタンツェ様……。本当にお綺麗な方です。
いずれお館様の奥様になられる方だ!と、思ってたらつい、奥様なんて呼んでしまって……。
コンスタンツェ様の前でアンヌさんに怒られるハメになってしまいました……。
でも仕方ないじゃないですか!
あんなに素敵なお館様のところに、あんなに素敵な方がいらっしゃったんですよ?!
ついうっかり奥様って呼んでしまっても仕方ないと思います……。
奥様……いえ、コンスタンツェ様は銀髪にアメジストの様な紫の瞳。あどけない中にも芯のあるお姿で、それでいて、言葉の節々に滲み出る謙虚さと言いますか……我々使用人に対するお気遣い何かも感じてしまって……。
おこがましい気持ちではありますが、守ってあげたい。守らせて頂きたい。なんて言う気持ちにさせるお方だな……なんて、アンヌさんに聞かれたら、よくわからないまま怒られそうですけど……。あはは。
でも、何度も微笑みかけられたり、ちょっと恥ずかしがるような表情を見せられた私は……。
もう、ギブアップでございます……。
コンスタンツェ様……。あぁ、今も髪を耳にかき上げられて微笑まれるだなんて……。
失礼にあたるかもしれませんが……。推せます……。ありがとうございます……!
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