魔法が使えない出来損ないの私は、野蛮な辺境伯に嫁がされましたが、今日も溺愛……されてます?!

小野紅白

文字の大きさ
9 / 13

9.歓迎パーティー

しおりを挟む
「いやぁ、俺たちまでパーティーに呼んでくれるなんて、気前がいいよなぁ」

 ガッハッハッハ!と笑うのは竜の息吹の大楯使い、バルガ。

「声が大きい。バカバルガ」

「あんだとぉ?!言っとくがお前の方がバカだからなぁ?!バカカリン!いや、バカリン!」

「バカリン……?ちょっと可愛い」

「何でだよ!」

 領主の屋敷の一部屋に案内された竜の息吹たち。バルガと斥候の猫獣人、カリンがじゃれあっている。

 リーダーのルークがため息をついて言う。

「二人とも落ち着いて。領主様のお屋敷だよ」

「そうよ。『これだから冒険者は』なんて言われたくないわよ?」

 ヒーラーのケイティもそう言う。

「私はうるさくないもん」

「はいはい」

 拗ねるカリンの頭を撫でながら返事をするケイティ。

「俺もうるさくねぇ!!」

「うるさい」
「うるさい」
「うるさい」

「な ん だ と……」

 四つん這いになってショックを受けるバルガ。
 その姿を横目に見ながら立ち上がるルーク。

「夜はパーティーだから、それまで僕はギルドに行ってくるよ。君たちは……お屋敷の方がお風呂とか貸してくれるって言ってたから、行ってくればどうかな?」

「お風呂、良いわね!カリン!一緒に行きましょう!」

「に゛ゃっっ?!やだ!ルーク!私もギルドに行く!」

「はぁ。カリンのお風呂嫌いは相変わらずだね。ま、別に付いてきても良いんだけど……僕も後でお風呂借りるよ?」

 呆然とするカリン。
 その背後に笑顔のケイティが現れ、カリンの両肩をガシッと掴む。

「カーリーンー。行ーくーわーよーー!!!」

「ひょえ!!」

 ビクッとするカリン。そしてそのままケイティに引き摺られて行く。

 ルークとバルガは顔を見合わせて肩をすくめた。


 ————

「今宵は、お館様様の婚約者になられます、コンスタンツェ・イヴェリオス様が無事に到着された事を祝いまして、内々ではございますがパーティーを開催させていただく事になりました!立食形式になりますので、皆様お気楽にどうぞ!!!」

 そう声を上げたのは、ヴァルグレン様の側近のフィン様。
 今回のパーティーはヴァルグレン辺境伯家の家臣が主に参加するもので、肩肘張らなくても良い気軽な物と聞かされている。
 ……聞かされているのだけれど……。何故か私は会場に続く控えの間で、ヴァルグレン様と二人きりで待たされている。
 ……といっても、メイドのマリアとミーシャはそこに居るのだけれど、二人ともニコニコしてこちらを見ているだけで何とも落ち着かない。

「イヴェリオス嬢……」

「は、はい……」

 突然名前を呼ばれて驚いてしまう。

「いや、なんだその……。その、ドレス。とても、似合っている……。まるで春の女神の……いや、何でもない」

 ヴァルグレン様がそう言った時、パーティー会場の壇上で司会をしているフィン様から声が掛かった。

「お館様ぁ!ご挨拶お願いしまぁす!」

「あ、あぁ。……ではまた後で……」

 ヴァルグレン様はそう言って会場の方へ向かって行かれた。
 私は火照った顔で頷く事しか出来なかった。

 そんな私に、アンヌとミーシャが近付いて来て「春の女神ですって!」「良かったですわね」なんて言うので、さらに顔が熱くなってしまう。

 突然会場の方から、ワァッという歓声が聞こえてくる。それと同時に「コンスタンツェ・イヴェリオス嬢!こちらへどうぞ!」と言う声も。

 どうしよう。緊張する。アンヌが「大丈夫ですよ。とってもお綺麗ですから」なんて、言ってくれるのだけれど、大体いつもその後で、魔法が使えないとわかるとため息をつかれたり、顔だけなんて言われたり……。
 頭に義妹の姿や両親の影がちらつく。
 ……ううん。ダメだわ。そんな事を考えたって仕方ないもの。それに、今と前とは違う。

 頭をふるふると張って雑念を吹き飛ばす。
 そして、震えそうになる手をギュッと握りしめて歩き出す。口角を無理矢理上げて背筋を伸ばす。会場の明るい光に導かれるように足を進め、入り口に着くと、そこにはヴァルグレン様が居た。
 手を差し出して、エスコートして下さる。
 恐る恐るその手を取る。
 ラウル以外の男性に、こうしてエスコートして貰うのは初めてかもしれない。
 ラウルよりもゴツゴツとした、剣を振り続けて来た方の手……。少しだけ、緊張がほぐれる。

 壇上へ導かれて小さな階段を登ると、さっきまでの歓声が嘘のように静まり返る。
 家臣の方ばかりとはいえ、百人程居るのではないかしら……。自分の心臓の音が耳に聞こえるように鳴り始める。

「こほん……。えー。本日、こちらに着かれたコンスタンツェ・イヴェリオス嬢だ。私の……その、婚約……者と、なられる……」

 ヴァルグレン様がそう言って私を少し見つめる。そして、少し首を振って前を向き直し

「皆、丁重におもてなしするように!」

 と大きな声で言って、壇上を降りていってしまわれた。

 ああ、まただ。きっとまた、失望されたんだわ。見栄えが良くても、中身はダメ。魔法が使えないんじゃ何の役にも立たない。
 歪みそうになる顔を必死に抑える。口角を上げろ。笑え。私。

 でも、その瞬間。

「お館様ぁ!照れないで下さいよぅ!」
「ひゅーぅ!!嬢ちゃん綺麗だぜぇ?!」
「どこ行くんですかお館様ぁ!!」
「綺麗だー!!奥さまぁ!!」
「お館様ぁ、照れてないでエスコートしないとですよぉ!!」

 へっ?照れてる?誰が?

 百人近い家臣の方々の歓声がワッと上がる中、そんな声が聞こえて来て目をぱちくりさせてしまう。
 とにかく一礼をして頭を上げると、頭をぽりぽりと掻きながら困った顔をしているヴァルグレン様が壇上へ戻って来ていた。

「その……なんだ、悪い。慣れなくてな……。こちらへ、どうぞ……」

 そう言って差し出してくれた手をそっと取り、ぎこちなく微笑むと、ヴァルグレン様は少し顔を赤らめ、会場は更に大きな歓声に包まれた。



 ————

 竜の息吹たちはパーティーを楽しんでいた。
 食べ物も酒も美味しいし、辺境伯の家臣たちも気の良い人間ばかり。
 どこかのシスコンが言っていたような野蛮な雰囲気など微塵も無い。

「なぁルーク」

 会場の和やかな雰囲気の中で、何かの肉の塊に齧り付いているバルガがルークに話しかける。

「何だい?バルガ」

「俺思うんだけどよぅ、ラウの奴、あんな極端な考え方する奴だったか?」

「この地のこと?」

「あぁ。異常な程蛮族やら野蛮やら言ってただろ?」

「確かにそうだね。でも……貴族の顔したラウと会ったのは初めてだったからね……。もしかしたらその方向で何かあるのかもしれない。バルガのそういう感覚は鋭いからね。注意しておこう」

 頷くバルガ。満足そうにまた肉の塊を食べ始める。

「ねぇバルガ……そんな肉、どこにあったんだよ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される

ムラサメ
恋愛
​「君の打つ剣は輝きが足りない。もっと華やかに光る、騎士団の象徴となる剣を打てないのか」 ​実家の鍛冶屋からも、婚約者である騎士団長カイルからも「無能」と切り捨てられた鍛冶師・メル。不純物を削ぎ落とし、使い手の命を守るためだけに特化した彼女の「究極の業」は、美しさを求める凡夫たちには理解されなかった。 ​冷たい雨の中、行き場を失い魔物に襲われた彼女を救ったのは、隣国の至宝であり、その強すぎる魔力ゆえに触れる武器すべてを粉砕してしまう最強の騎士――アルベールだった。 ​圧倒的な武力で魔物を屠り、砕けた愛剣を悲しげに見つめるアルベール。周囲がその「化け物じみた力」を恐れて遠巻きにする中で、メルだけは違った。彼女は泥にまみれた鉄の破片を拾い上げ、おっとりと微笑む。 ​「……騎士様。この子は、あなたの力に応えようとして、精一杯頑張ったみたいですよ」 ​その場で振るわれたメルのハンマーが、世界で唯一、アルベールの全力を受け止める「不壊の剣」を産み落とした瞬間――最強ゆえに孤独だった英雄の運命が、狂おしく回り始める。

周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

鳥花風星
恋愛
聖女の力を酷使しすぎるせいで会議に寝坊でいつも遅れてしまう聖女エリシアは、貴族たちの間から「ぐうたら聖女」と呼ばれていた。 そんなエリシアを毎朝護衛騎士のゼインは優しく、だが微妙な距離感で起こしてくれる。今までは護衛騎士として適切な距離を保ってくれていたのに、なぜか最近やたらと距離が近く、まるでエリシアをからかっているかのようなゼインに、エリシアの心は揺れ動いて仕方がない。 そんなある日、エリシアはゼインに縁談が来ていること、ゼインが頑なにそれを拒否していることを知る。貴族たちに、ゼインが縁談を断るのは聖女の護衛騎士をしているからだと言われ、ゼインを解放してやれと言われてしまう。 ゼインに幸せになってほしいと願うエリシアは、ゼインを護衛騎士から解任しようとするが……。 「俺を手放そうとするなんて二度と思わせませんよ」 聖女への思いが激重すぎる護衛騎士と、そんな護衛騎士を本当はずっと好きだった聖女の、じれじれ両片思いのラブストーリー。

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました

さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。 裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。 「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。 恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……? 温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。 ――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!? 胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜

せりもも
恋愛
転生したのは、web小説の世界だった。物語が始まる前の時間、隣国の竜王へ嫁ぐ薄幸の王女、デジレに。 結婚相手である竜王ワッツァは、冷酷非道で人間を蔑む恐ろしい竜人だ。彼はデジレを、半竜(半分竜で半分人間)である息子の養育係としかみていない。けれどその息子バートラフこそ、前世の「わたし」の最オシ」だった。 この世界のバートラフはまだ5歳。懸命に悪ガキぶっているけど、なんてかわいいの!? 小説のバートラフは、闇落ちして仲間の騎士たちに殺されてしまうけど、そんな未来は、絶対に許さないんだから!  幼いバートラフに対する、愛情いっぱいの子育ての日々が始まる。やがて彼の成竜への通過儀礼を経て、父の竜王は、デジレに対して執着を見せ始める。 ところが、竜と人間の戦争が始まってしまう。おとなになったバートラフは人間側につき、聖女の騎士団に入った。人と竜の間で下される彼の決断は? そして、転生者デジレに与えられたスキル「プロットを破断する者」を、彼女はどう発動させるのか。

処理中です...