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翌日ミーシャに着替えさせてもらった服は、襟のところが白い、アイスグレーのワンピース。なんだかすごい目でミーシャがワンピースを見ていた気がしたけれど、気のせいかしら……。
白い帽子に手袋。アクセントに黒い靴と小さな黒いバッグ。
「悔しいですけど完璧です!コンスタンツェ様!お美しいですぅ……」
と、泣きそうな顔で言うミーシャに笑いを堪えながら「ありがとう」と伝えると「ふぁふぁふぁふぁぁぁあ」などと言い始めて、またアンヌに怒られていた。
ふふふ。とっても楽しい子だわ。
お屋敷から街へは、私とミーシャ。護衛の騎士の方がお二人。彼らはそっと着いてこられるそうで「我らは居ないものとしてお過ごしください」なんて言われてしまった。御者はトマスさんとおっしゃる白いお髭がふさふさのお爺さん。笑顔が素敵だわ。
辺境伯の剣と狼の紋章の入った馬車に乗って移動する。
私なんかにこんな良い馬車を?なんて思ったのだけれど、お館様の婚約者様に不自由な思いはさせられません!などと皆から言われてしまって……。
行き先を告げられないまま馬車が出発する。家を出た日のことを、ふと思い出したけれど。隣にはミーシャがニコニコしながら座っているので、何だか楽しい気分になる。
あの日とは全然違う。
「お館様から、お小遣い預かってるので、ご遠慮なくお買い物して下さいね!」
ミーシャにそう言われたけれど、ヴァルグレン様のお金でヴァルグレン様への贈り物をするなんて何か変な気がする。
余りお金は使わないようにしようと、緩んでいた気を引き締める。
馬車が停まったのは領都の真ん中にある大きな広場。午前中は市が開催されているらしく、広場は活気に満ち溢れている。
「皆、楽しそうだわ」
思わず出た言葉に、ミーシャが嬉しそうに返してくれる。
「はい!お館様が領主様ですから!民のことをいつも考えて下さってますので、皆、楽しく生活しているんですよ!」
「そうなのね。皆が笑顔なのは良いことだわ」
家にいた時のことを思い出す。
笑顔か……。私が笑うとラウルが笑うから、ラウルの前では出来るだけ笑顔で居たけれど……。今はラウルが居なくても、自然に笑えている気がする。
ラウル……。あの子は今、笑えているのだろうか。
「コンスタンツェ様!降りましょう!」
ミーシャの声で我に返り「そうね」と、馬車から降りる。すると、馬車の中からでは分からなかった香りや音が押し寄せてきた。
嗅いだことのない香辛料の香りや、お店への呼び込みの声。大きな声で笑う人たちや冒険者の武器や鎧がたてるガシャガシャとした金属音。
目に映るのは色とりどりの屋台の色、道行く人々の笑顔に抜けるような青い空。
それだけでもう、ウキウキしてくる。こんな事って、私、本当に……初めて!
足を止めてしまった私を気遣って心配そうな顔をするミーシャに笑顔を向けて私は言う。
「ミーシャ!とても楽しそうだわ!誘ってくれてありがとう。さぁ、行きましょう!」
「ひゃ!ひゃいぃぃ!!!」
————
ココココ、コンスタンツェ様ぁぁぁ!!!
そそそ、それは!その笑顔は反則ですぅ……!!!
私は卒倒しそうになるのを必死で堪えてコンスタンツェ様をご案内する。
「コ、コンしゅタンツェしゃま!あっ!あちらの方には食材なんかが売ってますよ!行きましょう!」
うっ……噛んでしまいました……。
お休みの日によく訪れる市へコンスタンツェ様をご案内する。本当に悔しいけれど、アイスグレーのワンピースが良く似合ってらっしゃる。でも今日は負けたけれど、そのうち空色のワンピースも着ていただかなくてはいけません。
呼び込みの声が一層大きくなってきました。
「採れたての野菜だよー!甘くて美味しいよー!」
「朝獲れの肉だよー!新鮮だそー!」
「美味しいパンはいかがー!」
「鶏肉ならうちが一番だよー!」
「甘ぁい果物はいかがー!酸っぱくて美味しいのもあるよー!」
なんて声が一斉に聞こえてきます。思わずニコニコして、振り返って言います。
「コンスタンツェ様!楽しいですね!」
「ふふふ。そうね」
そう返してくれるコンスタンツェ様が眩しいです……!
私も更に笑顔になってお店を見て回ります。
「コンスタンツェ様は何がお好きなのですか?」
少しでもお好きな物が知りたいのです。
「そうね……」
少しお顔が暗くなる。何かいけない事を聞いてしまったのでしょうか。
「あまり、分からないわ。……そんなに考えてなかったのかも」
そんな事ってあるのでしょうか。
「でも、これからちゃんと、知っていければ良いと思っているわ。自分の事も、貴女たちの事も、ここに住む方々の事も」
コンスタンツェ様……。私をどうしようと言うのでしょうか。鼻血が出そうです……。
コンスタンツェ様は、色々な屋台を覗いて興味深そうに観察してらっしゃいます。その中でも果物の屋台が気になられたようで、甘い香りのする果物や柑橘の果物をじっくり見てらっしゃいました。……後で注文しておきましょう。
次は日用品……は飛ばして、雑貨や布、アクセサリーなどが売っている所へ行きましょうか。
「コンスタンツェ様!あちらも見ませんか?」
「まぁ、何があるの?」
「雑貨などです!……お館様へのプレゼントも見つかるかもしれませんよ!」
微笑むコンスタンツェ様に顔を熱くしながらもご案内します。
文具などを売っている屋台でコンスタンツェ様が立ち止まられたので一緒に売っている物を覗き込む。
そこには色々な柄で縁取られた便箋や封筒、ペンや綺麗な色のインクなども売っていました。……素敵!これでお館様への愛を綴られたりなんてしたら、私、鼻血を出して卒倒してしまう事間違いなしです!
「コンスタンツェ様!お買い求めですか?!」
「ミーシャ?……ふふふ。何て顔しているの?そんなに意気込んで、どうしたのかしら」
はっ!なんて事でしょう!おかしな顔を見せてしまいました……!私のバカ!
「い、いえ!いえいえ!コ、コンスタンツェ様が、一生懸命ご覧になられているのと……私も、このお店の商品が、とっても素敵だなーなんて、思いまして……えへへ」
「ミーシャもそう思うの?」
「ええ!本当に素敵です!」
「ありがとうございます。こちらは、私が木を彫った物で絵付けしてあるのですよ」
そう言って、店主……でしょうか、お洒落な女性が説明して下さいます。
「貴女がこれを彫られたのですか?」
コンスタンツェ様からそう聞かれて、店主が少し赤面しながら答えます。
「は、はい。こちらは、蔦をあしらった物、こちらはお花畑をイメージしました。こちらは小鳥ですね」
「とっても素敵……」
コンスタンツェ様がうっとりしながら眺めてらっしゃいます。……そのお顔にうっとりしかけて……でも、気を取り直します!
「コンスタンツェ様、どちらになさいますか?」
「ミーシャ、そんな……」
また遠慮しようとされるのでここは強く、そして小声で申し上げます。
「コンスタンツェ様、お館様が不在の間、何不自由なくお過ごし頂けるのが私たちの総意でございます。なによりお館様がそうお望みでございます。欲しい物は、是非、買って下さいませ」
コンスタンツェ様は少し悩んで、こう言われました。
「感謝しますわ。ミーシャ。……では、こちらのお花の便箋と封筒。それと小鳥の柄の物も。……それと、この、深い紫色のインクを下さいな」
……深い紫色のインク……!
コンスタンツェ様の瞳のお色ですね!ありがとうございます!
白い帽子に手袋。アクセントに黒い靴と小さな黒いバッグ。
「悔しいですけど完璧です!コンスタンツェ様!お美しいですぅ……」
と、泣きそうな顔で言うミーシャに笑いを堪えながら「ありがとう」と伝えると「ふぁふぁふぁふぁぁぁあ」などと言い始めて、またアンヌに怒られていた。
ふふふ。とっても楽しい子だわ。
お屋敷から街へは、私とミーシャ。護衛の騎士の方がお二人。彼らはそっと着いてこられるそうで「我らは居ないものとしてお過ごしください」なんて言われてしまった。御者はトマスさんとおっしゃる白いお髭がふさふさのお爺さん。笑顔が素敵だわ。
辺境伯の剣と狼の紋章の入った馬車に乗って移動する。
私なんかにこんな良い馬車を?なんて思ったのだけれど、お館様の婚約者様に不自由な思いはさせられません!などと皆から言われてしまって……。
行き先を告げられないまま馬車が出発する。家を出た日のことを、ふと思い出したけれど。隣にはミーシャがニコニコしながら座っているので、何だか楽しい気分になる。
あの日とは全然違う。
「お館様から、お小遣い預かってるので、ご遠慮なくお買い物して下さいね!」
ミーシャにそう言われたけれど、ヴァルグレン様のお金でヴァルグレン様への贈り物をするなんて何か変な気がする。
余りお金は使わないようにしようと、緩んでいた気を引き締める。
馬車が停まったのは領都の真ん中にある大きな広場。午前中は市が開催されているらしく、広場は活気に満ち溢れている。
「皆、楽しそうだわ」
思わず出た言葉に、ミーシャが嬉しそうに返してくれる。
「はい!お館様が領主様ですから!民のことをいつも考えて下さってますので、皆、楽しく生活しているんですよ!」
「そうなのね。皆が笑顔なのは良いことだわ」
家にいた時のことを思い出す。
笑顔か……。私が笑うとラウルが笑うから、ラウルの前では出来るだけ笑顔で居たけれど……。今はラウルが居なくても、自然に笑えている気がする。
ラウル……。あの子は今、笑えているのだろうか。
「コンスタンツェ様!降りましょう!」
ミーシャの声で我に返り「そうね」と、馬車から降りる。すると、馬車の中からでは分からなかった香りや音が押し寄せてきた。
嗅いだことのない香辛料の香りや、お店への呼び込みの声。大きな声で笑う人たちや冒険者の武器や鎧がたてるガシャガシャとした金属音。
目に映るのは色とりどりの屋台の色、道行く人々の笑顔に抜けるような青い空。
それだけでもう、ウキウキしてくる。こんな事って、私、本当に……初めて!
足を止めてしまった私を気遣って心配そうな顔をするミーシャに笑顔を向けて私は言う。
「ミーシャ!とても楽しそうだわ!誘ってくれてありがとう。さぁ、行きましょう!」
「ひゃ!ひゃいぃぃ!!!」
————
ココココ、コンスタンツェ様ぁぁぁ!!!
そそそ、それは!その笑顔は反則ですぅ……!!!
私は卒倒しそうになるのを必死で堪えてコンスタンツェ様をご案内する。
「コ、コンしゅタンツェしゃま!あっ!あちらの方には食材なんかが売ってますよ!行きましょう!」
うっ……噛んでしまいました……。
お休みの日によく訪れる市へコンスタンツェ様をご案内する。本当に悔しいけれど、アイスグレーのワンピースが良く似合ってらっしゃる。でも今日は負けたけれど、そのうち空色のワンピースも着ていただかなくてはいけません。
呼び込みの声が一層大きくなってきました。
「採れたての野菜だよー!甘くて美味しいよー!」
「朝獲れの肉だよー!新鮮だそー!」
「美味しいパンはいかがー!」
「鶏肉ならうちが一番だよー!」
「甘ぁい果物はいかがー!酸っぱくて美味しいのもあるよー!」
なんて声が一斉に聞こえてきます。思わずニコニコして、振り返って言います。
「コンスタンツェ様!楽しいですね!」
「ふふふ。そうね」
そう返してくれるコンスタンツェ様が眩しいです……!
私も更に笑顔になってお店を見て回ります。
「コンスタンツェ様は何がお好きなのですか?」
少しでもお好きな物が知りたいのです。
「そうね……」
少しお顔が暗くなる。何かいけない事を聞いてしまったのでしょうか。
「あまり、分からないわ。……そんなに考えてなかったのかも」
そんな事ってあるのでしょうか。
「でも、これからちゃんと、知っていければ良いと思っているわ。自分の事も、貴女たちの事も、ここに住む方々の事も」
コンスタンツェ様……。私をどうしようと言うのでしょうか。鼻血が出そうです……。
コンスタンツェ様は、色々な屋台を覗いて興味深そうに観察してらっしゃいます。その中でも果物の屋台が気になられたようで、甘い香りのする果物や柑橘の果物をじっくり見てらっしゃいました。……後で注文しておきましょう。
次は日用品……は飛ばして、雑貨や布、アクセサリーなどが売っている所へ行きましょうか。
「コンスタンツェ様!あちらも見ませんか?」
「まぁ、何があるの?」
「雑貨などです!……お館様へのプレゼントも見つかるかもしれませんよ!」
微笑むコンスタンツェ様に顔を熱くしながらもご案内します。
文具などを売っている屋台でコンスタンツェ様が立ち止まられたので一緒に売っている物を覗き込む。
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「コンスタンツェ様!お買い求めですか?!」
「ミーシャ?……ふふふ。何て顔しているの?そんなに意気込んで、どうしたのかしら」
はっ!なんて事でしょう!おかしな顔を見せてしまいました……!私のバカ!
「い、いえ!いえいえ!コ、コンスタンツェ様が、一生懸命ご覧になられているのと……私も、このお店の商品が、とっても素敵だなーなんて、思いまして……えへへ」
「ミーシャもそう思うの?」
「ええ!本当に素敵です!」
「ありがとうございます。こちらは、私が木を彫った物で絵付けしてあるのですよ」
そう言って、店主……でしょうか、お洒落な女性が説明して下さいます。
「貴女がこれを彫られたのですか?」
コンスタンツェ様からそう聞かれて、店主が少し赤面しながら答えます。
「は、はい。こちらは、蔦をあしらった物、こちらはお花畑をイメージしました。こちらは小鳥ですね」
「とっても素敵……」
コンスタンツェ様がうっとりしながら眺めてらっしゃいます。……そのお顔にうっとりしかけて……でも、気を取り直します!
「コンスタンツェ様、どちらになさいますか?」
「ミーシャ、そんな……」
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「コンスタンツェ様、お館様が不在の間、何不自由なくお過ごし頂けるのが私たちの総意でございます。なによりお館様がそうお望みでございます。欲しい物は、是非、買って下さいませ」
コンスタンツェ様は少し悩んで、こう言われました。
「感謝しますわ。ミーシャ。……では、こちらのお花の便箋と封筒。それと小鳥の柄の物も。……それと、この、深い紫色のインクを下さいな」
……深い紫色のインク……!
コンスタンツェ様の瞳のお色ですね!ありがとうございます!
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