魔法が使えない出来損ないの私は、野蛮な辺境伯に嫁がされましたが、今日も溺愛……されてます?!

小野紅白

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12.二つで一つ

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 さあ、次は待ちに待ったアクセサリーの屋台が集まるエリアです!
 コンスタンツェ様はお館様へのプレゼントを買われるのか否か!それとももっとちゃんとした宝飾店へ行きたいとおっしゃるのか……!
 何だか緊張してきました。胸の高鳴りを抑えながら、そのエリアへ足を踏み入れます。

「お姉さん、安くしとくよー」
「今ならおまけ付きだよー!」
「お姉さんに似合う髪飾りあるよー!」

 そんな声を掻き分けてコンスタンツェ様が立ち止まられたのは、彫金のアクセサリーを主に扱っている屋台の前。あれ?もしかしてこのお店、従兄弟のルイかしら?

「ルイ?」

「え、ミーシャ?」

「やっぱり?!コンスタンツェ様!従兄弟のルイです!ルイは彫金の職人さんの所へ弟子入りして、修行してるんです!」

「そうなのね。こんにちは。ミーシャにはお世話になっていますわ。私はコンスタンツェ・イヴェリオスと申します」

「は、はい。こここ、こちらこそ、ご、ご丁寧に……!ミーシャの、従兄弟をやっております、ルイと、申します!」

 従兄弟をやっておりますだなんて!ルイったら!

「お、お気に入られるかわかりませんが、どうぞ、ご覧下さい……っ!」

 そう言うルイに微笑みながら頷かれて、商品を眺められるコンスタンツェ様。

「あ、あの、もし、殿方への贈り物でございましたら、こちらがお勧めです」

「あら、どうしてそう思われたのですか?」

「いえ、先程から、男性向けの物を見られてるように思いましたので……」

 何ですと……?!お館様へのプレゼント、探してらっしゃるのですか……?!

「うふふ。恥ずかしいわ。でも、何かお勧めはあるのかしら」

 ルイ!期待してますよ?!

「え、ええ、こちらのイヤーカフはいかがでしょうか……」

「これ、ですか?」

 ルイが指し示す先には細かい模様の入った二つのイヤーカフ。
 流石ルイ!やりますね?!

「は、はい。……こちらの由来は、ご存知で?」

 首を傾げられるコンスタンツェ様。私はその後ろで首を左右に振ってアピールします。
 私を見たルイが、何かを察したように説明し始めます。

「こ、こちらは、二つで一つのイヤーカフになっております」

「そうなのですね?とても細工が細かくて綺麗ですわ」

 コンスタンツェ様、好感触です!

「それで、由来……とは?」

「こ、これは……お守り……と、言いますか、生還を願う気持ちを表したアクセサリーで、ごさいます」

「なるほど。これは……同じ耳に、付けるのですか?」

「はい!同じ耳に付ける事で、願いの力が高まると……言われて、います」

「そうなのですね……。とても素敵ですわ。並べて付けると、更に素敵ですわね」

「は、はい!」

 コンスタンツェ様……。それは、最高の贈り物かもしれません。

「では、これを下さいますか?」

 コンスタンツェ様がそうおっしゃったので、お館様から預かったお金を出そうとすると

「ミーシャ、大丈夫ですわ」

 とおっしゃって、ご自分のバッグからお金を出して払われてしまいました。

 ……尊い……。何て良い方なのでしょう。



 ————

 思わず買ってしまったけれど、本当に喜んで頂けるのかしら……。
 ミーシャったら、本当に私を乗せるのが上手だわ。彼女の言う事は、何故かしら全て信じてしまいたくなるのだもの。……きっと、全て本心から言っているからかしら。
 もし、ヴァルグレン様がお気に入られなければ、ミーシャにあげましょう。一つづつ、私とお揃いにしてもいいかも。……ちょっと迷惑かしら。まぁ、成るように成れ!……だわね。

 一通り市を見て、また馬車に乗る。
 次はどこへいくのかしら。

「コンスタンツェ様、そろそろお腹空きませんか?」

「そうね。少し空いてきたわ」

 私がそう答えると、笑顔を更に深めてミーシャは言う。

「では、やはり、あそこに参りましょう!」

 ミーシャは御者のトマスさんに何かを伝えると、またニコニコとして席に戻る。
 私を驚かせたいのかしら。ふふふ。本当に楽しいわ。

 馬車の窓から外を眺めていると、街の喧騒から少し離れていく。そしてやがて着いたのは小高い丘の上。大きな樹があってとても気持ちが良さそうな場所。

「コンスタンツェ様!着きましたよ!さぁ、どうぞ!」

 ミーシャがテキパキと木陰に布を敷き、クッションをどんどんと置いていく。私はクッションの上へ導かれて座らされる。側に置かれたバスケットの中からサンドイッチと温かいお茶が出てきてびっくりしていると

「ピクニックの完成です!どうぞ、お召し上がり下さい!」

 そんな事を言って、温かいお茶を差し出してくれる。「ありがとう」と言ってお茶をそっと飲む。
 眼下には領都が広がり、遠くの方には麦畑が見える。時折聞こえる風の音が心地よくて、さっきまであそこに居たのに、まるでとても遠くに来たみたい。

 景色を眺めていると、ミーシャが言う。

「私、この場所が大好きなんです。お館様が守ってらっしゃる領都が見えて、それと、この樹も、私たちをずっと見守ってくれている気がして。……コンスタンツェ様、本当に、この地に来て下さって、ありがとうございます!」

 いきなりお礼なんて言われても……いえ、違うわね。

「ミーシャ、こちらこそありがとう。この地のことを知るのはもう少しかかるかも知れないけれど、少なくともここに来られて良かったと思っているわ。こちらこそ、ありがとう」

「コンしゅタンツェしゃまぁぁぁ」

 ぷしゅーと言う音が聞こえたかと錯覚するような声と顔で、ミーシャはヨロヨロっとしてしまった。

「ミーシャ?!」

「あははは、すみません!大丈夫ですっ!」

「そうなの?でも、少しそこに座って休んだ方が良いわ」

 私がそう言うと、ミーシャはまた顔を赤くしながら私の横に座った。

「すみません……。またアンヌさんに怒られてしまいます……」

「うふふ。大丈夫よ。秘密にしといてあげるわ」

「コンスタンツェ様……」

「ミーシャもお茶を飲んで。さぁ、一緒に食べましょう」

「いえ、でもそんな」

「今日は、特別。に、しましょう?」

 私がそう言うと、おずおずと頷いたミーシャ。ふふふ。可愛い。
 リリシアーナとも、こんな関係になれたのかしら……。ふと、義妹の顔が浮かぶ。いえ、きっと無理ね。せめて私に魔法が使えたら……。

 ううん。今はそれよりもこの時間を大切にしよう。
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