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最終稿② トゥルーエンドの条件・初夜の告白
しおりを挟むクローヴィスと共に式典の後の披露宴をこなし、夜にも祝宴が執り行われた。
夫婦の寝室は、花と蝋燭の灯りで夢の世界のように彩られていた。
(噂には聞いてたけど、ドレス重かった……)
正直に言うと、心身の疲労が激しくて部屋の飾り付けや艶っぽい雰囲気を楽しむ余裕など無い。
ベッドに吸い寄せられるように近付くと、手を取り引き止められた。
「クローヴィス様?」
「ナディアの考えていることは分かりやすいね。今すぐ眠りたい、だろ?」
イタズラっぽい笑顔で問われる。
「はい」コクリ。
「残念だけど、今夜は寝かせないよ」
寝かせない、か。
確かめておきたかったことを思い出すと、途端に眠気が遠ざかっていった。
燭台の灯りが揺らめく。
「薬の効果は、とっくに切れてるんですよね? クローヴィス様」
クローヴィスは、意外な事を言われた、と言う顔をする。
「だって、あの夜から婚礼まで、クローヴィス様は一度も、私に口付けもされなかったじゃないですか」
初めは疑った。
魔法薬の洗脳が解けていないから、クローヴィスは私の外堀を埋めて囲い込むようなことをしてくるのかと。
毎日、甘い言葉を降らせて誘惑して……でも、それだけだ。
彼の理性は、とっくに元に戻ってる。
優しさで包むばかりで、強引に奪うようなことはしない。
『君を王宮に招いた事に迷いがある』と言った、あの言葉こそが彼の真意。
「勇気を与えるジェイミーの魔法は解けてます」
魔法が解けてしまったから、彼は私に触れる理由が無くなった。
だから。
彼は冷静になった今、責任を感じている。
「クローヴィス様。あの夜があったから、こうしなければならないと思ったんでしょう? でも、貴方は私に囚われなくて良いんです」
「あの夜があったから囚われなくてはいけないと、君こそ思ったんじゃないのか?」
クローヴィスらしくない、強い声だった。
質問に質問で返されて混乱してしまう。
「受け入れてと仰ったのは、クローヴィス様じゃありませんか!」
違う。
言いたいのはこんなことじゃない。
「君が嫌なら」とクローヴィスは言葉を切る。
「私は君には触れない」
「クローヴィス様にとって、私はどうでもいいと言うことですか?」
「……!」
彼の苛立ったような空気を察した瞬間、ぐい、と、乱暴に抱き寄せられた。
腕の中に閉じ込められている事に後から気付く。
「そうだよ、薬はとっくに切れてる。だから私は必死に抑えてきたんだ。君の魔女の顔を引き出したい衝動を」
顔を上向けられ、呼吸を奪うような口付けをされる。
魔法薬もないのに、こんな乱暴な。
唇が離れる頃には息が乱れていた。
クローヴィスは低く囁いた。
「さあ見せて。君の中にいる魔女は身勝手な私を許さないはずだ」
鼓動の音がうるさい。
瞬き一つすると、世界が光で溢れた。
「……クローヴィス様」
小さく呟く。
彼の首に腕を回し、真正面から彼を睨んだ。
沸々と湧いてくる、不思議な高揚感。
彼の研ぎ澄まされた美しさなど、怖くない。
どんな相手でも怯まないのが、私が作り出したジェイミーだ。
「私は、貴方を奪い尽くす。檻も鎖も飲み込んで喰らう」
そうして彼に口付けた。
唇を重ねるごとに彼の息が乱れてくるのを感じて、微笑んだ。
何でも見通してしまう彼から、隠し通したことがある。
ようやく、言える。
「私は望んで、ここに居ます。クローヴィス様をここから、身も心も連れ出すために」
「……?」
紫色の瞳が、言葉の意味を測りかねるように細められた。
首に回した腕をほどき、身体を離して彼と向かい合う。
「クローヴィス様。多分、私が貴方にかけられる最初で最後の魔法です。一年間。たった一年間だけど、貴方の自由を皆に認めてもらえました」
「自、由……?」
「一年間、クローヴィス様の好きな場所に行けるんです。見たいものを見て、探したいものを探しましょう」
クローヴィスは戸惑った表情を浮かべる。
「ダメだ。私はここを離れられない」
「離れられるんです。王宮を出る許可をもらえました」
「どうやって?」
息を吸った。
彼に気取られないよう、慎重に用意し、皆に挨拶の場で手渡した物。
それは。
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