3 / 34
3.小さな異変
しおりを挟む
翌日、無知の素人でも感じるほど、やたら大掛かりだなと思っていた式典は、近隣諸国との友好記念日であり長い戦を繰り広げていた時代、多くの犠牲の上で成されたと忘れない為の重要な行事と教えてもらった。
うーん。勢いに押されて参加を承諾してしまったけれど私が出て意味があるのか未だ不明だわ。
* * *
「ありがたいけれど良いのかしら?」
小心者の私はいちいち気になって訪ねてしまう。そんな私に彼女は嫌がる事なくハキハキと答えてくれた。
「これから夜会もありますので今のうちに一度休まれないと身体が持ちません」
断言してくれたので安心した私は、陛下や各国のトップの演説が終了後、自室へと引き続き侍女のルビーさんと話をしながら背後の護衛騎士のクラリス君という名の青年と共に足早に移動していた時。
チリン
「えっ?」
とても小さな鈴の音を耳にし足を止めた直後。
「危ない!」
「ユリ様っ!」
二人の鋭い声と硝子の割れる派手な音がしたなと思った時には床に転がっていた。
「いったい何が」
「まだ危険です!頭を下げ動かないで下さい!」
横に倒れた私に覆いかぶさるようにしてくれているのはクラリス君のようだ。
「あ、ルビーさんは?!」
「こちらにおります。クラリス様。追跡をかけましたが最後まで辿れるかわかりません」
焦っているのは私だけらしい。二人は頭上で会話を勧めていく。
「ああ、気配が薄い。至急第三に伝達をしなければ」
動きが機敏だとおもっていたけどやはりルビーさんは、普通の侍女ではなかったのね。
そういえば、鈴のような音は何だったのかしら? いえ、今は先にする事があるわ。
「二人共、こっちに来て少し屈んで」
仮面をつけた騎士と侍女さんは、不思議そうな様子をしている。じれったくなった私は、彼らの身体にぶら下がるようにして同時に抱きしめた。
「ユリ様?!」
「つ、お離し下さい!」
「嫌かもしれないけれど、少しこのままで」
おばさんに抱きつかれるなんて嫌よね。でも動かれると集中できないの。
「ばい菌、入らないように治れ」
目を瞑りあの鱗粉のような光る粉を凝縮させるようにイメージしてみる。だってねノートには方法が書いてなかったし、ルールで一日に一度だけしか質問はできないんだもの。女神様ってケチよね。
「怪我をさせてさしまってごめんなさいね」
昨日、鱗粉を出した時よりも強い脱力感を感じた。目を開き、そっと腕を離して二人を観察する。
「出来たのかしら?」
ルビーさんの褐色のなめならか肌に先程の切れた傷は見当たらない。良かった。そうそう騎士さんは腕も怪我していたわよね。
「「ユリ様!」」
力が入らないわ。なんだか足も。若返ったのにおかしいわね。走りこみとかしたほうがよいのかもしれない。
ああ、目を開けてられないわ。百合は誰かに抱きとめられた事にも気づかず意識を失った。
* * *
「あら、寝てしまったの?」
そうだ夜会。
「ユリ様!」
「いきなり起きては身体に障りますよ」
飛び起きた私に駆け寄るルビーさんと、昨夜会った副団長さんが椅子に座っていた。
「警護を強化する為、私も貴方の護衛として配属になりました」
貴方が何故と聞く前に教えてくれたのはありがたいけれど。
「……そうですか」
贅沢だとわかってはいるけれど、副団長さんは外して欲しかった。
「不備がありますか?」
ただでさえ低い声が更に低くなったように感じ慌てて返事を返してしまう。
「いえ、そんな事は」
この時はまだ小さな迷いしかなかった。だけど、後に副団長さんの護衛を断っておけばよかったと酷く後悔する事になるのだった。
うーん。勢いに押されて参加を承諾してしまったけれど私が出て意味があるのか未だ不明だわ。
* * *
「ありがたいけれど良いのかしら?」
小心者の私はいちいち気になって訪ねてしまう。そんな私に彼女は嫌がる事なくハキハキと答えてくれた。
「これから夜会もありますので今のうちに一度休まれないと身体が持ちません」
断言してくれたので安心した私は、陛下や各国のトップの演説が終了後、自室へと引き続き侍女のルビーさんと話をしながら背後の護衛騎士のクラリス君という名の青年と共に足早に移動していた時。
チリン
「えっ?」
とても小さな鈴の音を耳にし足を止めた直後。
「危ない!」
「ユリ様っ!」
二人の鋭い声と硝子の割れる派手な音がしたなと思った時には床に転がっていた。
「いったい何が」
「まだ危険です!頭を下げ動かないで下さい!」
横に倒れた私に覆いかぶさるようにしてくれているのはクラリス君のようだ。
「あ、ルビーさんは?!」
「こちらにおります。クラリス様。追跡をかけましたが最後まで辿れるかわかりません」
焦っているのは私だけらしい。二人は頭上で会話を勧めていく。
「ああ、気配が薄い。至急第三に伝達をしなければ」
動きが機敏だとおもっていたけどやはりルビーさんは、普通の侍女ではなかったのね。
そういえば、鈴のような音は何だったのかしら? いえ、今は先にする事があるわ。
「二人共、こっちに来て少し屈んで」
仮面をつけた騎士と侍女さんは、不思議そうな様子をしている。じれったくなった私は、彼らの身体にぶら下がるようにして同時に抱きしめた。
「ユリ様?!」
「つ、お離し下さい!」
「嫌かもしれないけれど、少しこのままで」
おばさんに抱きつかれるなんて嫌よね。でも動かれると集中できないの。
「ばい菌、入らないように治れ」
目を瞑りあの鱗粉のような光る粉を凝縮させるようにイメージしてみる。だってねノートには方法が書いてなかったし、ルールで一日に一度だけしか質問はできないんだもの。女神様ってケチよね。
「怪我をさせてさしまってごめんなさいね」
昨日、鱗粉を出した時よりも強い脱力感を感じた。目を開き、そっと腕を離して二人を観察する。
「出来たのかしら?」
ルビーさんの褐色のなめならか肌に先程の切れた傷は見当たらない。良かった。そうそう騎士さんは腕も怪我していたわよね。
「「ユリ様!」」
力が入らないわ。なんだか足も。若返ったのにおかしいわね。走りこみとかしたほうがよいのかもしれない。
ああ、目を開けてられないわ。百合は誰かに抱きとめられた事にも気づかず意識を失った。
* * *
「あら、寝てしまったの?」
そうだ夜会。
「ユリ様!」
「いきなり起きては身体に障りますよ」
飛び起きた私に駆け寄るルビーさんと、昨夜会った副団長さんが椅子に座っていた。
「警護を強化する為、私も貴方の護衛として配属になりました」
貴方が何故と聞く前に教えてくれたのはありがたいけれど。
「……そうですか」
贅沢だとわかってはいるけれど、副団長さんは外して欲しかった。
「不備がありますか?」
ただでさえ低い声が更に低くなったように感じ慌てて返事を返してしまう。
「いえ、そんな事は」
この時はまだ小さな迷いしかなかった。だけど、後に副団長さんの護衛を断っておけばよかったと酷く後悔する事になるのだった。
304
あなたにおすすめの小説
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
第零騎士団諜報部潜入班のエレオノーラは男装して酒場に潜入していた。そこで第一騎士団団長のジルベルトとぶつかってしまい、胸を触られてしまうという事故によって女性とバレてしまう。
ジルベルトは責任をとると言ってエレオノーラに求婚し、エレオノーラも責任をとって婚約者を演じると言う。
エレオノーラはジルベルト好みの婚約者を演じようとするが、彼の前ではうまく演じることができない。またジルベルトもいろんな顔を持つ彼女が気になり始め、他の男が彼女に触れようとすると牽制し始める。
そんなちょっとズレてる二人が今日も任務を遂行します!!
―――
完結しました。
※他サイトでも公開しております。
婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる