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19.グライダー副団長は拒絶する

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 周囲の者達の心を開き美醜に関係なく平等に接するユリ様は、自分の事はあまり口にしない。勿論、頑なにではなく尋ねられれば異世界の事を話されていたりはしていたが。

『私のような者には話すことすら躊躇われますか?』

苛立ちを彼女にぶつけてしまった。

 言葉は時に重い。それは立場が上がるほど守るモノが増えるほど言葉は選ばなければならない。

「副団長さん、無理に話さなくて大丈夫ですから」

 そんな私に呼吸をしろと私の背中を行き来する温かい手。かつてまだ存命だった両親は、私が幼い頃にこのように触れ支えてくれた。

 二人は一族の恥だと親戚からの声も私が耳にする事がないよう盾になってくれた。だが、標的は私だけではなく身分が低い母にも降りかかり陰湿な嫌がらせを受けていたと知ったのは、随分後だった。

いや、ユリ様は、両親達とは異なる。

 城からアッサリと去ったユリ様は、何事もなかったのように再び国に帰ってきた。

 以前より日に焼けた顔、伸びた髪は一括に無造作に紐で結ばれ、服装は顔を隠すフードがついた大きなローブ。女性というより男性の魔法使いのような服装だった。

 彼女は、格好は大きく変わったが中身は驚くほど以前のままだ。

先程届いた殿下からの文が浮かぶ。

『さっき戻ったんだけど、心配で文を飛ばしたよ。本は、活用してくれている? ねぇ、滞在期間中、進展がなかったら私が彼女を貰ってよいかな? 勿論、本気だ。当然だよね』

何が当然なんだか理解ができない。

「なにより森の周囲に張られた強い結界を通り抜ける為とはいえ有事に使用する鳥まで出してきて内容がコレか。くだらない」

 燃やそうとした紙には続きがあったので仕方なく握って小さくなってしまった紙を伸ばす。

『しつこいようだけど、誇り高きグライダー家の長男が自分の気持に気づいていないとかないよな?』

気持ち?
そんなモノ。

「邪魔でしかない」

 私は、彼女の手をやんわりと拒絶した。

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