面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

蝋梅

文字の大きさ
2 / 14

2.さばの味噌煮の日はちょっと困るんです

しおりを挟む

「申し訳なかった」

 はい、金髪美青年の父は王様でした。なんと私に頭を下げて謝っています。

 あれから、やはり騎士で正解だった方々と共に豪華な、小さいというが戸建てが入りそうな部屋に連れて行かれまして。いえ、それまでに既に聞き取り調査的な質問を沢山されましてね。

ああ、朝日が眩しい。

 電車に乗っていたのが夜7時で飛ばされた時は真夜中だったらしい。

「もう、帰れるならよいですよ。それで細かいお話は後程でも可能でしょうか?」

 梅雨の時期、湿度100%超えの調理場で働き主任が休みだったから副の私が会議に参加。

もう限界だ。

「顔色がよくないな。気づかずすまん。ゆっくり休んでからまた話そう」
「ありがとうございます」

意外と気さくなトップで良かった。

「はー疲れた」

 背後で扉が閉まったとたん、疲れがどっとくる。あっ、不味い。

「おっと、すみません」

目眩によろめけば、腕を掴まれた。

「顔色が悪い。配慮が足らず申し訳なかった」

 顔をゆっくり上げれば、緑の瞳が此方を覗き込むようにしていた。あ、この人さっきの。幾分か柔らかい声だけど金髪美青年に呼びかけた人だ。いや、この人もかなりのイケメンだ。濃い金髪は刈り上げられ、清潔感たっぷり。なにより藍色の制服がカッコいい。

 顔がいい人しかいないのだろうか? いやいや、陛下は普通だったし、立って警護をしている方々もガタイは引き締まっていたけど、地味めである。

「あの」

 うんうん唸っていたら頭上から再び声がしたと思ったら。

「えっ?!」
「ご案内する部屋までかなり距離があるので。不快かと思いますがこのまま向かいます」

姫抱っこ!

「申し訳ございません。嫌がられて当然だと思いますが、そのご様子ですと直ぐに休まれたほうがよいかと」

人としかも男の人と近すぎる距離でパニックの私に、まるで嫌がって当然という言葉に違和感を感じた。

「えっと、嫌じゃなくて恥ずかしいんです」

 あ、まだ疑ってる気が。しょうがないと、ちょっとだけ目線を合わせた…ああっ、やっぱり次元の違うイケメンの直視はキツイ。あてられてぼんやりしている場合じゃなかった。

「あの、仕事で沢山汗をかいてまして」

 ああ、それだけではないんだった! 私は電車で何故隅の座席を選んだのかを思い出した。

「今日は、献立がさばの味噌にだったんです!」
「料理をされたのですか?さばとは?」

通じていない。

「青魚の煮たものです。本当は旬の時がとっても美味しいんですけどね。そう、それでキャップ被っているのに髪の毛や皮膚にまで魚の匂いがついちゃうんです」

 大量調理だからなのか匂いってすごいんですよ。先輩のロッカーには、タオルとおけが常備されておりデートの日には近くにある奇跡的に残っている銭湯に行ってから彼氏に会う周到さ。いえ、マナーですね!

「ほらっ、腕にまで匂いがついちゃうんですよ。なのに姫抱っこはツライ!」

 つい興奮して腕を彼の目の前に付き出せば、身体が揺れた。いや、仰け反ったのかもしれない。

はっ!

 私は初対面の人に何を! 腕をひっこめようとしたら、何かが触れた。

「そうですね。石鹸の香りと、微かに魚の匂いもするような」

 当たったのは、どうやら彼の鼻だった。

ううっ。イケメンに皮膚の匂いを分析され、いや、言い出したのは私だけど。

「大丈夫ですか?」

 黙り込んだ私に覗き込むように顔を見られて。

ふっと笑われた。

「軽食と湯の用意もされていると思いますので、ゆっくりして下さい」
「…はい」

 真っ赤になった顔は、部屋に着くまで上げられなかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界転移して冒険者のイケメンとご飯食べるだけの話

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 社畜系OLの主人公は、ある日終電を逃し、仕方なく徒歩で家に帰ることに。しかし、その際帰路を歩いていたはずが、謎の小道へと出てしまい、そのまま異世界へと迷い込んでしまう。  持ち前の適応力の高さからか、それとも社畜生活で思考能力が低下していたのか、いずれにせよあっという間に異世界生活へと慣れていた。そのうち家に帰れるかも、まあ帰れなかったら帰れなかったで、と楽観視しながらその日暮らしの冒険者生活を楽しむ彼女。  一番の楽しみは、おいしい異世界のご飯とお酒、それからイケメン冒険者仲間の話を聞くことだった。  年下のあざとい系先輩冒険者、頼れる兄貴分なエルフの剣士、口の悪いツンデレ薬師、女好きな元最強冒険者のギルド長、四人と恋愛フラグを立てたり折ったりしながら主人公は今日も異世界でご飯を食べる。 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

捕まり癒やされし異世界

蝋梅
恋愛
飲んでものまれるな。 飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。 異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。 「これ、売れる」と。 自分の中では砂糖多めなお話です。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

処理中です...