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3.私の名前はみゃーではありません
しおりを挟む「テオドール、今日は怪我人が多いかもしれないので待機を頼み……どうして貴方が此処に?」
「おはようございます。えっと。簡単に説明するとですね」
私は、驚いている人、姫抱っこをしてもらったフェリスさんに説明した。
飛ばされてから数日後の現在。私は、騎士団敷地内の一室にお手伝いの為本日から勤務する事になった。え? 看護師でも医師でもないんですよ。ならばと言いますと。
遡ること一昨日の昼下り。
気晴らしに庭を薦められたので面倒くさいと思いつつハッキリ断れなかった私は、迷路のような城内を歩いていた。そして何回目かの曲がり角で。
「うわっ」
「きゃ」
勤務中であろう女の人に出会い頭にぶつかった。まるで映画の出会いのような場面だが、残念ながらその方向はない。いや、でも、とっても可愛い女の子で。
「大丈夫ですか? あ、腕を擦りむいてますね」
「あ、問題ございません!」
いい勢いでお互いがぶつかったけど、飛ばされたのは彼女だった。私のほうが重かったと認めざるおえない悲しい現実。
「結構擦ったかな」
とりあえず水で流した方がいいかなと断りをいれて傷口付近に手を触れたら。
「おぅ。流石異世界?」
傷跡もわからないくらいに瞬時にふさがった。
「あれ、普通じゃない……?」
彼女が目を見開き傷口を凝視している様子をを見て、私は直ぐにあのクルリン金髪のミルフィー君に会いに行った。
「と、まあこんな感じで。治癒能力があるみたいなので食費代くらい働こうかなと」
普段の私は、仕事以外は面倒くさいのだ。なるべく動きたくないのである。だけど流石に意思とは関係なく喚ばれたとはいえ豪華な三食と部屋付きな生活は、悪いかなと思っていたのだ。
偉いでしょ! ちゃんと社会人だもの!
「ミャー様」
キリッとした彼の口から発せられた言葉なだけに思わず脱力した。
「フェリス副団長、ミヤビ様ですよ。ミャーだと、あちらの世界ではネコという動物の鳴き声になってしまうそうです」
すかさず私の上司になるテオドールさんが訂正してくれる。
うんうん。そうなんです!
皆さんミャーと呼ぶんですもん。にゃんと応えたほうが良いのだろうかと、ほんのちょびっと真剣に考えちゃったくらい皆さん、私の名前を言えてない。
「ミヤー様」
「違うよ。ミヤビ様」
「ミァ」
テオドールさんがフェリスさんに区切ったりして教えてあげている。
「み、や……び?」
おおっ、マスターしましたね。ただ正確に呼んでもらえただけで、なんか嬉しい。
「ミヤビ様」
「ふぉ」
いきなり距離を詰められ耳元で名前を呼ばれた! め、免疫ない私にはツライ。
「治癒の際、力を抑えて下さい」
「えっ?」
テオドールさんにも聞こえないであろう小さな声で囁かれた。加減しろって事? どうやら正解のようでフェリスさんは、微かに頷いた。
「準備前に邪魔をした。ミヤビ様、後程お茶を致しませんか? このような顔とは不快になられるかもしれませんが。読みたいと仰っていた本をお持ちします」
私、本が読みたいなんて言った事ないですよ? 勘違いじゃないかなと口を開こうとしたら目配せをされた。
「……はい。楽しみにしています」
フェリスさんは、満足げに微笑むと颯爽と去っていった。
何か、ありそうな予感がする。
「さて、ミヤビ様、いつもはこの部屋で待機するのですが今日は模擬試合を行うそうなので、外の簡易室にて患者を受け入れます。早速行きましょうか」
「はい!」
今は、仕事に集中しよう。私は、芽生えた小さな不安を無理やり消した。
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