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第三章【一日一度はメンタンピン編】
十三打目◉最後の給料日
しおりを挟むコテツの結婚は良かったが、めでたいことばかりではなかった。コテツの結婚を知ってアキラは自分の雀力では結婚は難しいがもうそろそろ結婚も考えなければならないんだなと気付いてしまう。
雀荘というのは例えるなら竜宮城のようであり、現実を忘れてあっという間に時が流れてしまいがちである。
責任感のあるアキラは富士2を辞めることを決意した。自分の力を慢心せずに冷静に恋人との未来を考えて大好きな職場を辞めることが出来る男がこの世界にどれくらいいるだろうか。
アキラの最後はスタッフ全員に惜しまれながらの退店だった。
その数日後————
今日は給料日だ。給料は手渡しなのでアキラが今日は給料を取りにくる。
「お疲れ様」
マネージャーが給料を手渡す。
「ありがとうございます」
アキラが最後の給料を受け取って確認のサインをする。
今更ながら別れが惜しくなりサインを書く手が少し震えた。
もう早番は帰る時間だ。その日は前からアキラを送る会を計画していた。アキラと早番みんなとその日休みなメタが集まって飯に行ってそのままカラオケコースだ。
コテツはアキラに『俺が俺であるために』を心を込めて歌った。
勝ち続けろ! どんな時も、どこにいても、ステージは変わっても勝て! というエールを贈った。君が君であるために。
マサルが歌った『さくら』の、俺らはきっと待ってる… という歌い出しはみんなの胸を熱くした。歌はあまり上手くなかったが張り裂けそうな気持ちが伝わりすぎて…。酒も入っていたのとあのマサルが想いを歌っているということからみんなが涙目になって聴き入ってた。
エリやリカもアキラを送る気持ちが入った選曲ばかりする。後ろ髪を引かれながらアキラは富士2を卒業していった。
——アキラの退店から3週間後。
富士2はスポーツ新聞に求人募集を出していたが全くモノになる新人が入らず、一日で辞めたり、面接に来なかったりで、もうそろそろスポーツ新聞での求人募集やめようかな、広告宣伝費の無駄かな。と思っていた所。経験者からの連絡がついに来た。北九州市の健康麻雀店で働く男性。21歳だという。健康麻雀店が今月で閉店なため寮付きの雀荘でバイトしたいとのことだった。それきた。そういうやつが来るのを待ち望んでいたのだ。
「七田喜朗さんね。採用」
健康麻雀というのが少し引っかかったが。まあ、そこは。メタやコテツに教育させればいいかな、と思ってマサルは七田の入店を歓迎した。しかし、この七田と言う男が想像つかないくらいある意味では凄いやつなのであった。
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