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西団地いちの漫画オタク
1話◉漫画の好きな美少女
しおりを挟む偶然の再会をした時は大体うまく行かない。
どんなに会いたい人だったとしても、今会うなんて思ってない時に会ったりしたら緊張してうまく話せない。
僕にはそのくらい好きな子がいた。まだ学生だったあの頃。彼女がいたから学校が楽しかったっけ。
——————
僕の名前は泉天馬。
僕には当時、月に一度は必ず夢で見るくらい気になってる子がいた。誰もが振り返るような美少女。佐藤さん。
彼女は西団地のヒロインと呼ばれていた。
ここ、千葉県八千代市は団地発祥の地であり、八千代台駅の駅前には発祥の地碑もある。
その団地の中でも八千代台西団地は多分1番歴史ある団地なはずだ。
そこに佐藤さんはいた。
佐藤さんと僕は漫画の話で気が合った。
「これ、面白いよ」
「知ってる、持ってるよ」
「これ泣けるよ」
「わかる、全巻あるわ」
という具合に、僕の好きな漫画は佐藤さんも全部読んでいて趣味が合うと思ってたんだ。でも、そういうわけじゃなかった。
そうじゃなくて、彼女は読んでる作品数が多すぎたのだ!
実は彼女は中学生にして5000冊を超える漫画を読破。まごうことなきオタクだった。
後で見せてもらったのだが、彼女の家の使う団地特有の倉庫にはぎっしりと漫画が積まれていたのである。全部が彼女の漫画ではなかったが家族全員漫画が好きなのでとんでもない冊数を彼女は読んでいたのだ。
とにかく、西団地いちの美少女は西団地… いや、八千代台いちのマンガオタクだった。
漫画大好きな僕は、むしろそんな所も含めて彼女のことが好きになる。
彼女は隣のクラスの秀才で有名な谷川が好きというウワサは知っていたが、もうどうにもならない気持ちは抑えようがなかった。
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