【語るな会の記録】鎖女の話をするな

鳥谷綾斗(とやあやと)

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後記

筆者による補足

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 以上が、Kさんから預かった文書です。
 彼が語るな会に参加した際に起こった、すべての出来事になります。


 では、ここで、本作を発表するに至った経緯をお話ししましょう。


 Kさんが書いたとおり、Kさんはひとつの目的のために文章をしたため、できるだけ注目されやすい場に発表するよう、筆者に依頼しました。

 どうして筆者に託したのか?
 それはKさんが語るな会で聞いた『小説』を書いたのが、他ならぬこの私だからです。


 数年前、ある団体から依頼され、ひとつのホラー小説を書きました。
 それが実話を基にした――『鎖女の話をするな』です。


 依頼内容をつづめると、

 ・注意喚起のために書いてほしい
 ・なんの媒体でもいいから発表してほしい

 とのことでした。


 資料にと、行方不明になった女子高生のSNSのスクショ、関係者から集めた証言、一連の事件に関する記事などを提供され、「彼女はどうして禁じられた怪談を広めたのか」を描きました。

 それを当時、開発されたばかりのノベルサイトのコンテストに出したのですが――
 筆者が未熟なため、注目度は低く、多くのホラー作品の中に埋もれてしまいました。


 ですが依頼主は、「それはそれで構わない」とおっしゃいました。


 取るに足らない怪談と判定されたのなら、逆に大衆から忘れられやすくなる……という理屈です。


 しかし、その数年後。
 また鎖女の噂が、ネットの片隅で流れるようになりました。
 そのせいで、Kさんが語るな会に呼ばれました。


 怪談とは『戻ってくる』ものだと言います。

 いちど廃れたとしても、
 不幸の手紙がチェーンメールと化したように。
 視聴したら死ぬ呪いのビデオが、再生したら死ぬ呪いの動画と化したように。
 一部あるいは全部を引き継ぎ、時代に合わせて変化し、決して滅びることはない。

 それが怪談というモノ……なのだそうです。


 さて。

 ここで、三月六日の更新停止の件について、謝罪と説明をさせていただきます。

 お詫びにあった『予想外のトラブル』とは、
 Kさんと音信不通になったことです。


 Kさんは、今月初めに、突如家族の前から姿を消したそうです。


 会社の昇進や兼ねてからの交際相手と結婚も決まり、新居を契約した矢先のことでした。

 これにより、筆者は大いに悩みました。
 本作をこのまま発表し続けていいものか、それとも削除するべきか。

 ですが、慎重に関係者の方々と協議を重ねた結果、
 Kさんの足取りをつかむためにも、最後まで書ききり、公開する運びになりました。

 それがKさんの望みだったからです。
 どうかこの決断が、Kさんのためになるよう願ってやみません。


 また、とある事実が判明しました。

 失踪する前、
 Kさんはかつて運営していた動画チャンネルで、ライブ配信をしたそうなのです。

 アーカイブはありませんでしたが、元データは残っていました。
 ご家族から提供と許可を得て、次頁より、Kさんの最後の動画の文字起こしを掲載します。
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