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10. SNS奇談 ~#FF外から失礼します・5分後~
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(え、あれ松尾じゃね?)
部活を終えた杉下の足が止まる。通学路の黒山の人だかりの向こうで見つけたのは、クラスメイトの松尾だった。
松尾の傍には自転車が倒れ、彼自身は大人の男に羽交い締めにされている。泣き叫ぶ女の悲鳴が聞こえてきた。
何があったのか疑問に思っていると、野次馬の中に友達の菊山の姿を見つけた。
「なぁ、松尾どうしたの?」
そう尋ねる。
「松尾が近所の幼稚園児を跳ねたんだよ。しかもチャリスマホで」
「うーわー、サイアク」
(アイツ、中毒入ってたからなぁ)
呆れ返り、松尾を見やる。彼は顔面蒼白で、今にも泡を吹いて倒れそうな様相だった。それを見ているうちに、杉下はほとんど無意識にスマホを取り出していた。
カシャカシャ!
松尾の哀れな姿をカメラに収めると、杉下はこっそりと離れた。菊山が見とがめる。
「おい。その写真、どうするんだよ」
「ん? ネットにバラまくケド?」
さも当然と言った口ぶりで、杉下は答えた。
「は!? 何考えてんだよ!」
「だってさぁ、俺ら中学生じゃん? チャリスマホでコドモ轢いたのにさ、たぶんニュースとかで顔写真出ないじゃん? そういうの、許せなくね?」
「許すとかそんな問題じゃねーだろ!」
「いいじゃん。どうせたいした罪にならねーんだし、いっぺんイタい目見るべきなんだよ」
杉下はツイッター画面を開き、さっき撮った松尾の写真、彼の名前、中学校名とクラス、出席番号を入力していく。
「やめとけって!」
菊山が止めた。しつこい。
「うるせーな。悪いのは松尾なんだから、当然の報いだろ? 一度やらかしたことはさ、取り消せねーんだよ」
一生かけて償え、と続けた。
「……オレは忠告したからな」
菊山が苦々しく吐き捨てる。杉下は、どうでもいいやつからのLINEのようにスルーした。
すると、通知ボタンに数字が現れた。杉下にリプライが届いたのだ。
【FF外から失礼します。
やめた方がいいですよ。】
「は……?」
なんだこれは、と思ったが、すぐに思い当たった。
きっと菊山が送ってきたのだろう。杉下を止めるために。わざわざ別アカまで作ってご苦労なことだ。
誰がやめるか。リプライを削除する。
「おい、杉下! おい!」
菊山の呼び声。杉下は舌打ちした。
(うるせーな。もうほっとけよ――)
その刹那、杉下の目が強い光に射貫かれた。思わずスマホを落としそうになるが、堪えた。
「杉下ぁ!!」
菊山の声が届く時には、既に杉下は減速を忘れたかのようなスピードで突っ込んできたトラックに肉薄していた。
高らかなクラクションは遅すぎた。
轢かれる瞬間、杉下はトラックの運転手と目が合った。
運転手の手には、ソーシャルゲームの画面が映し出されたスマホがあった。
ブレーキ音、衝突音、人々の悲鳴、奇妙な静寂。
菊山は地面に膝をつき、手足がねじれ曲がった杉下は真っ赤な血だまりに横たわる。
トラックの割れたフロントガラスの向こうで、ハンドルに突っ伏した運転手の手から、スマホが落ちた。
割れた液晶画面。ゲームからメッセージ通知の画面に切り替わる。
【FF外から失礼します。
何度も何度も言ってるのに。】
部活を終えた杉下の足が止まる。通学路の黒山の人だかりの向こうで見つけたのは、クラスメイトの松尾だった。
松尾の傍には自転車が倒れ、彼自身は大人の男に羽交い締めにされている。泣き叫ぶ女の悲鳴が聞こえてきた。
何があったのか疑問に思っていると、野次馬の中に友達の菊山の姿を見つけた。
「なぁ、松尾どうしたの?」
そう尋ねる。
「松尾が近所の幼稚園児を跳ねたんだよ。しかもチャリスマホで」
「うーわー、サイアク」
(アイツ、中毒入ってたからなぁ)
呆れ返り、松尾を見やる。彼は顔面蒼白で、今にも泡を吹いて倒れそうな様相だった。それを見ているうちに、杉下はほとんど無意識にスマホを取り出していた。
カシャカシャ!
松尾の哀れな姿をカメラに収めると、杉下はこっそりと離れた。菊山が見とがめる。
「おい。その写真、どうするんだよ」
「ん? ネットにバラまくケド?」
さも当然と言った口ぶりで、杉下は答えた。
「は!? 何考えてんだよ!」
「だってさぁ、俺ら中学生じゃん? チャリスマホでコドモ轢いたのにさ、たぶんニュースとかで顔写真出ないじゃん? そういうの、許せなくね?」
「許すとかそんな問題じゃねーだろ!」
「いいじゃん。どうせたいした罪にならねーんだし、いっぺんイタい目見るべきなんだよ」
杉下はツイッター画面を開き、さっき撮った松尾の写真、彼の名前、中学校名とクラス、出席番号を入力していく。
「やめとけって!」
菊山が止めた。しつこい。
「うるせーな。悪いのは松尾なんだから、当然の報いだろ? 一度やらかしたことはさ、取り消せねーんだよ」
一生かけて償え、と続けた。
「……オレは忠告したからな」
菊山が苦々しく吐き捨てる。杉下は、どうでもいいやつからのLINEのようにスルーした。
すると、通知ボタンに数字が現れた。杉下にリプライが届いたのだ。
【FF外から失礼します。
やめた方がいいですよ。】
「は……?」
なんだこれは、と思ったが、すぐに思い当たった。
きっと菊山が送ってきたのだろう。杉下を止めるために。わざわざ別アカまで作ってご苦労なことだ。
誰がやめるか。リプライを削除する。
「おい、杉下! おい!」
菊山の呼び声。杉下は舌打ちした。
(うるせーな。もうほっとけよ――)
その刹那、杉下の目が強い光に射貫かれた。思わずスマホを落としそうになるが、堪えた。
「杉下ぁ!!」
菊山の声が届く時には、既に杉下は減速を忘れたかのようなスピードで突っ込んできたトラックに肉薄していた。
高らかなクラクションは遅すぎた。
轢かれる瞬間、杉下はトラックの運転手と目が合った。
運転手の手には、ソーシャルゲームの画面が映し出されたスマホがあった。
ブレーキ音、衝突音、人々の悲鳴、奇妙な静寂。
菊山は地面に膝をつき、手足がねじれ曲がった杉下は真っ赤な血だまりに横たわる。
トラックの割れたフロントガラスの向こうで、ハンドルに突っ伏した運転手の手から、スマホが落ちた。
割れた液晶画面。ゲームからメッセージ通知の画面に切り替わる。
【FF外から失礼します。
何度も何度も言ってるのに。】
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