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第一章 始まりの前
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三十二歳の誕生日を、今、職場で向かえた。
別に同僚が祝ってくれるわけではないし、同情してくれるわけでもない。なぜならオフィスには俺しかいない。電気だって消えているし、警備員すら帰っている。だから『三十二歳になったんだな』とモニターの右下の時計が日付を越えた瞬間に、一人静かに思っただけだ。
「つかれたな……」
俺の仕事は末端も末端のシステムエンジニア兼プロジェクトマネージャーだ。ホワイトかブラックかでいえばブラックかなというグレーゾーン。だから、金曜日の午後に仕様変更が決定し月曜日までにリリースせよ、なんてお達しが出ることもある。そして、こんな風に徹夜する羽目になる。
以前はこれでも、もっと寝る時間があったのだ。しかし三十越えて『リーダー』だとか『マネージャー』だとか肩書きがついてしまってから、こんな残業が桁違いに増えた。給与は全然変わらないのに『肩書き』のために残らざるをえなくなる。『肩書き』は他人に残業を強要できるほどの力はないのに、作業は膨大だ。つまり俺が以前寝れていたのは、俺の代わりにその時のリーダーが寝ていなかっただけ。
とはいえ、彼らは今の俺よりは楽しそうに仕事をしていた気がする。
「本当に、向いてないな……」
開発作業は好きだ。でも、人は苦手だ。
可能ならただのプログラマーに戻りたいが、この会社ではそれは許されない。フリーランスに転向したり、転職したりできるほどの対人スキルもキャリアもない。そもそも、そんな決断ができるような勇気がない。
だから、こんな風に一人、誕生日を向かえることになったんだろう。
目頭をもんでから立ち上がり、軽くストレッチをする。それからエスプレッソマシーンでカフェラテを淹れた。
「後は設計書のスクショ直して、メール送るだけ。……よし、頑張ろう」
結局、オフィスを出たのは三時過ぎだった。それでも土日は休めるのだから、まだましな方だと思った。
別に同僚が祝ってくれるわけではないし、同情してくれるわけでもない。なぜならオフィスには俺しかいない。電気だって消えているし、警備員すら帰っている。だから『三十二歳になったんだな』とモニターの右下の時計が日付を越えた瞬間に、一人静かに思っただけだ。
「つかれたな……」
俺の仕事は末端も末端のシステムエンジニア兼プロジェクトマネージャーだ。ホワイトかブラックかでいえばブラックかなというグレーゾーン。だから、金曜日の午後に仕様変更が決定し月曜日までにリリースせよ、なんてお達しが出ることもある。そして、こんな風に徹夜する羽目になる。
以前はこれでも、もっと寝る時間があったのだ。しかし三十越えて『リーダー』だとか『マネージャー』だとか肩書きがついてしまってから、こんな残業が桁違いに増えた。給与は全然変わらないのに『肩書き』のために残らざるをえなくなる。『肩書き』は他人に残業を強要できるほどの力はないのに、作業は膨大だ。つまり俺が以前寝れていたのは、俺の代わりにその時のリーダーが寝ていなかっただけ。
とはいえ、彼らは今の俺よりは楽しそうに仕事をしていた気がする。
「本当に、向いてないな……」
開発作業は好きだ。でも、人は苦手だ。
可能ならただのプログラマーに戻りたいが、この会社ではそれは許されない。フリーランスに転向したり、転職したりできるほどの対人スキルもキャリアもない。そもそも、そんな決断ができるような勇気がない。
だから、こんな風に一人、誕生日を向かえることになったんだろう。
目頭をもんでから立ち上がり、軽くストレッチをする。それからエスプレッソマシーンでカフェラテを淹れた。
「後は設計書のスクショ直して、メール送るだけ。……よし、頑張ろう」
結局、オフィスを出たのは三時過ぎだった。それでも土日は休めるのだから、まだましな方だと思った。
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