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第1章 優しさとは

第2話 初ダンジョンと出会い

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 モンスター駆除従事者となり、初ダンジョンへ行くことになった。

 試験は結局、3回目で合格したよ。
 ミスったのは、銃刀法関係と、あの内容で、引っ掛け問題があるんだよ。

 僕は素直だから、困っていると助けるにチェックを書いてしまった。
 要救助意思がない場合、他人の獲物を横取りする行為となるらしい。
 重傷で、「助けて」が言えない場合は、どうすんだよ。

 それで免許を貰って、防具や武器を見に行き、値段を見てパニックを起こし、逃げ帰る。
 この歳で、さらに親のすねをかじって初級装備を購入。
 そして今、この地に立つ。
「ゲート付近で、立ち止まらないで」
 そんな声が、背後でする。

「すみません」
 そう答え、押し出される感じで、初ダンジョン第1歩を踏み出した。

 通り過ぎながら、
「邪魔なんだから」
「でもあれって、初心者だよ。仕方ないよ」
「ああ、記念すべき第一歩。邪魔しちゃったわね。ひゃはは」
 そんな、声が聞こえる。

 まあいい。
 無事ダンジョンへと入った。

 まずは、スライムとゴブリンの魔石。1年以内に100個だ。
 スライム100円。ゴブリン300円。
 昔は、1000円くらいだったのに、施設管理費のようなものが引かれて、こんな値段になったようだ。
 どちらも弱いとはいえ、命がかかって危険なのは違いないのに。

 ぶちぶち、独り言を言いながら歩みを進め。
 およそ5分くらいかな? 初スライム発見。

 特殊警棒で、核を体から押し出す感じで攻撃を加える。
 この警棒。先端がとがり、そこから3cm位の所に2cm位の長さで、8方向。放射状に棒が出ている。
 これで核を押し出す。

 最初は、ぶすぶすと突き刺しても、うまくいかなかったが、左手を添えてまっすぐ突き出せば、綺麗に採れるようになった。

 夢中になってやっていると、早くも日が暮れて来る。
 ダンジョン内は、なぜか外と、壁の明かりがリンクしている。

 夜間はライトが頼りの為、天井からスライム落下してくるのに、注意が必要らしい。どうやら、光を求めて降って来る様だ。

「この位で帰ろう。えーと7、8。8個か、倒すのは慣れたが、うじゃうじゃいる訳じゃないしこんな物かな」

 家へ帰ると、問いかけがくる。
「どうだった、初ダンジョンは?」
「歩き回って疲れた。洞窟じゃなくてフロアタイプだから、結構広くて」
「どのくらい、倒したんだ?」
「スライム8匹」
 そう言うと、父さんの目が、わずかに細くなる。

「そうか、まあ初めてだし。先は長いな。怪我だけはするなよ」
「そうだね」
 ダンジョン内の怪我は、保険が使えない。
 危険な所へ行っての怪我だから、免責事項に入っている。
 無論、高額な専門の保険はある。
 有名チームや、公的機関はかけているようだが、個人では厳しいと思う。


 さて今日は、1階にいるのはスライムだけだから、2階に行ってみよう。

 2kmほどの距離を歩き、階段を下りる。
「見た目は一緒だな」
 人の歩いた道を外れて、周辺を探査する。

 2階は気を付けないといけない。
 下ばかり見ていると、上からゴブリンの攻撃が来たりする。

 まるで、テレビでタレントさんがしている、磯での魚取りの様に、岩の下など周辺を見ていく。
「いた」
 そっと近づき、警棒を構える。

 その時、顔に影が落ちる。
 ふと見上げる。
 逆光だが、小さい子供? いや、不味いゴブリンだ。

 岩の上から、こっちを見下ろしているが??
 向こうもこっちを見て、首をひねっている。
 あれ? 知能レベルは低く、人を見ると無条件で襲ってくるんじゃなかったのか?

 少し不思議な見つめ合いをしたが、足元のスライムが逃げる。
 本当は良くないのだろうが、意識をゴブリンから外し、スライムの核を抜く。

 相変わらず襲ってくる気配はないが、移動を始めても付いてくる。

 やがて、ふっと姿が消える。
 少し経って戻ってくると、躊躇いなく近づいて来て、掌を僕に見せる。

 掌には、魔石? スライムの核か。
「くれるの?」
 そう聞くが、当然返事はない。
 だが、ぽいと投げ渡して来ると、また姿を消す。

 それを拾い上げて、ウエストバッグに入れると、僕は首を捻りながらもまたスライムを探す。

 やがて、ゴブリンは3匹に増えていて、ポイポイと核を足元へ投げて来る。
 拾い上げて、「ありがとう」と言うと、また全員が散らばって行く。

 やがて、腰に付けたウエストバッグには核が50個以上貯まり、僕は焦り始める。
 これって、まずいんじゃないだろうか?

 いや規定では違反じゃないが、おすすめしないと言われていた、買取を疑われそうだ。


 その頃、周辺でも初心者組が、首をひねっていた。

 普段姿を見ると問答無用で襲って来ていたゴブリンたちが、駆除従事者には見向きもせず。
 スライムを見つけると、素早く核を抜き取って走っていく。
 そんなおかしな光景が、いたるところで目撃されて、それは速やかに報告される。

「ゴブリンが、スライムの核を抜き取っていくですか?」
 協会担当者も、首をひねる。

 だがそんな異変も、何かの前触れかもしれない。
 報告書が作成されて、速やかに上へとあげられる。

 夕方になり、理解できるか不明だが、ゴブリンにお礼を言って帰る事にする。

 あれからすでに、30個以上も核は増えた。
 昨日の8個と合わせれば、既定の100個を達成する目前だが、どう考えてもまずい。
 計数カウンターに20個のみ流して、家へと帰る事にした。


 その日、ほとんどの駆除従事者が、1個か2個だったのに。
 とびぬけた、20個という数字。
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