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第2章 黎明期

第17話 将の成長

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 これは、過去の経験によるものか。
 精神的なものも、強化しているのにな。
 彼の能力。暴走で干渉しないよね。
 幸い近くに……い。やば、さっき送ったモンスターが居る。

 その頃、僕は自身と戦っていた。
 まるで、どこかの気弱な主人公。
 逃げちゃだめだ。動け僕の体。

 どうして、しゃがみ込み、頭を抱え。ただ殴られているのか。
 収まれ動悸。
 俺は強い。強くなったんだ。

 そんな時だ、声が聞こえる。
「将。何をしているの? 優しい人。あなたは強くて躊躇っているの? 人を傷つけるのが怖いのね。きっと。でもね、囲んで人に一方的に暴力をあたえる奴らに遠慮しなくていいのよ。殺っちゃっていいのよ。遠慮せずに……さあ、顔を上げて御立ちなさい」

 すごく優しく、心に響く声。
 少し顔を上げて、見る。
 あのモンスターが立ち上がり、サムズアップ。
 胸の顔は、天使のような、ほほえみを浮かべている。
 

 まわりで、殴る蹴るを繰り返していた、奴らの動きも止まり、モンスターを見ている。
「あっ。あれ、なんだよ。いつから居たんだ?」


 そして、胸の顔が
「わたしは、あなたを見ていてあげる。将。立ち上がって」
 そう囁くように優しく言う。

 その瞬間。仮面の奴らが、振り返り俺を見る。

「なんだよ、おまえ。その顔は……」

 俺は殴られながら、泣いていたようだ。
 手で拭い、はじめて理解する。

 笑っていた。
 この状況で。
 シンが、僕の為に創ったモンスター。
 まさか、慰められ、勇気をもらうとは。

 最高だよ。受け入れる事は出来ないけど。

「笑っているんじゃねえよ」
 そう言って、また殴って来る。
 手を内側から払い。腹へパンチを入れる。

「なんだ。動くじゃないか」
 自身の体が、動く。それだけで、少し驚いた。
 ただ、力加減を間違えたのか、相手の腕を折ってしまった。
「大丈夫ですか?」
 そう聞くが、返事はない。
 仮面のせいで、表情も見れない。

「このやろう」
 次々に、襲ってくる連中を見る。
 スピードもない。大したことの無い連中。
 あの動かなかった体が、動く。
 まだこわばりがあり、スムーズとはいいがたいが、動く。

 なんだよこいつ。
 へらへら笑って、気持ち悪い。
 なんだよ、そのスピード。
 同時にかかる、4~5人のパンチや蹴りが、全く当たらない。
 わずかな動きだけで、すべて躱される。

 力加減が分からない。
 さっきだって、流す感じで、内側から右手を添えただけで、相手の腕を折ってしまった。
 このくらいかな?
 蹴りを、ブロックする。
 当然の様に折れる。
 脆い。
 どうすりゃいいんだ。


「あれぇ。動き出したんは良いけれど、さっきのドーパミンの影響かな。タガが外れているな。体の制御。練習するにはいいかもね。頑張れ」
 シンはなぜかほっとして、お気楽に声援を送る。


 僕が必死で、体の使い方に悩んでいると、奥の方から悲鳴が聞こえ始める。
 あのモンスターが、動き始めていた。
 マスクの男を捕まえ、ひん剥いて。躊躇なく、やばいことを……。

 あれはやばい。
 仮面のせいで、表情は見れないけれど。
 あの男は、終わったな。
 胸につけられた、天使の微笑みが、余計に怖い。

「おっおい。あのモンスターやべえ。掘られるぞ」
「おい逃げよう。こいつらつるんでいるみたいだし。ティマーかよ」
「おい何やっているんだ。出口で止まるな」
 出口の奥から、声が聞こえる。

「無いんだ。通路が無くなっている」
「おっおい。ふざけるなよ。来てるんだよ。ぎゃあぁぁ」

 ぼくは、相手が居なくなり、ぼーっと連中の阿鼻叫喚を見ている。

 ふと見下ろす。蹴られた足跡などが気になり、パタパタと服をはたく。

 しかし参ったな。
 昔のトラウマか。まさか体が動かなくなるなんて。
 訓練をして、精神的にも強くなったはずだったのにな。
 すこし、体を動かしてみる。
 あっ、いつもより動きが早くて、力も乗っているな。
 これで殴ったら、骨もおれるか。
 
 いつもの感じと違うな。平安2段を流してやってみる。
 そんな事をしていると、心も落ち着いて来る。
 周りの雑音も聞こえず、没頭する。

 よしよし。これで良い。
 体の状態も分かった。

 そして、自己逃避をいい加減やめて、周りの惨劇を見る。

 見ちゃ、ダメだった……。
 ここでは、己の世界にこもり、周りに目を向けては駄目だった。

 阿鼻叫喚は終わり、静かになっていたが、彼らはきっとまともには暮らせないだろう。
 とてもじゃないが、詳細は語れない。
 ただ武器は、直径10cmはありそうな凶悪なもの。
 そんなもので、攻撃されれば壊れてしまって当然。

 満足そうに、ガッツポーズを決めているモンスターに近寄り、
「ありがとう。君の応援はしっかり僕に届いた。本当にありがとう」
 そう言って、僕は彼を無に帰す。
 シンには悪いが、こいつはこの世にいてはいけない。

 とくに、目撃されれば、彼女にも迷惑がかかるだろう。

 口止めの為にも、彼らの人生を終わらせた方が、と一瞬思ってしまったが、彼らは人間。モンスターではない。
 この惨劇と、やられたことで、少しおかしくなっているのか?

 閉ざされた空間から、通路を復旧させ逃げ出すように出ていく。


 あらまあ、せっかくの自信作がリセットされちゃった。
 次回作はどうしよう。
 女性型でかわいい感じかな。
 でもパワーは欲しいよな。
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