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第2章 黎明期

第18話 謎

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「黒の道化師が解散したようです。届が協会に届きました」
 受付さんが、書類を担当係長へ持ってくる。

「解散した? どうしてまた」
「不明です。事由については明記されていません」
「つい最近も、彼らについて苦情が来ていたはずだが、これだな」
 そう言って、紙の束が出される。

「10階以上で、奴らがたむろしている。怖くて近づけない。だな」
「噂によると、未確認のモンスターに壊滅させられたようです」
「モンスター?」
「ええなぜか、詳細は不明です。みんなが、ただ一言。ダンジョンはもういやだと言っているようです」
「ふむ。できれば、その未確認のモンスター。詳細を入手したいが無理そうかね?」
「一応、聞き取りは、行ってみます」
「頼むよ」


 黒の道化師事務所。事件当日。
「何だよおまえら、ガキ一匹にやられたのか?」
 関わったメンバーは、全員ひどい格好で、ふらふらとなんとか歩いて帰ってきた。
 一見、大多数は怪我などはしていない。服はボロボロだが。

「すいません。もうだめです。ダンジョンが。ダンジョンがあんな……」

「何があった? 野郎はどうなった? やつにボコられたんなら、それを協会に伝えて、賠償請求をしなきゃならん」
「やめましょう。やつの後ろには、あいつが。そうだよ。どうして気がつかなかったんだ。やつを、ボコっているときに…… あいつが励ましていたじゃないか。やつは、ティマーじゃなくモンスターを作れるのか? そうか、それなら納得ができる。手を出しちゃだめだったんだ」

「何を言っているんだ? きちっと説明しろ」
「だめです。ここにも来るかもしれねえ。俺はもうチームを抜けます」
「「「俺たちも抜けます」」」
「何だよ、ふざけんな!! 何があったか言えよ」
「いえません。恐ろしい。やつにか関わると、恐ろしい目に遭います。やつには関わらない方がいい。それだけは、言っておきます。じゃあ」
 そう言って、みんなメンバーが出て行ってしまった。

「ふざけんなよ。訳分かんねぇ」
 その後、メンバーを集めようとしたが集まらず、チームとして5人以上という規定を満たせないため解散届が提出された。



「シンごめん。君の創ってくれたモンスターは、心優しくてずいぶんありがたかったけれど、無に帰したよ」
「うん? ああ見ていたよ。経験によるトラウマというのはやっかいそうだな。僕には分からないけれど」
「僕自身もびっくりしたよ。動こうと思っても全く体が動かなかった」
「と言うことで、紹介しよう。将の2号君」
「2号? 聞こえが悪いな」
「そうかい?」

 そういう、彼の傍らに彼女の顔を持った人物が一人。
 前回と違い、3mを超える巨体でもない。
 身長は、160cm前後。
 ただ頭に、ぴょこんと猫耳がある。

「君たちの感覚では、かわいいだろう」
「確かに、かわいいけれど。本人が見たら……。きっと迷惑がかかる。顔は変えない?」
「えー、まあいいけど。君らの言う美人系にしようか」
 そう言って、シンはいじり始める。

 できあがったのは、北欧系美人。
 銀髪で、虹彩が縦に割れているのは、ネコ科の因子のせいか?
「どうだい? これでいいかい」
「ああ美人さんだな。ところでそのままなの? 服は?」
「全身に毛が生えているから、必要ないだろう?」
「胸だけ、生えていないじゃない」
「そりゃ、生物的に言って、授乳時に邪魔だろう」
「そうだろうけれど、目のやり場が」
「体は、スキャンしたから、彼女のままだし、君がそう言うなら服を着せようか」
 彼女のスキャン? へええ。結構胸が……。いやいや、だめだろ。今度会ったときにドギマギしてしまう。


 それ以降、連れて歩いているわけではないが、彼女が僕の周りをうろついている。フードを目深にかぶっているので、見た目は単なる駆除従事者に見える。


 そして僕にくっついているやつが、もう一人。
「ちくしょう。あいつにせいで、チームがなくなっちまった。何があるって言うんだ」

 僕が誘うように、通路の奥へ入っていくと付いてくる。

 途中まで、しっかり付いてきていたようだが、やがて、途中から付いてこなくなった。
「あれ? おかしいな」
 来た道を、少し戻るとフードをかぶった彼女が、座り込んでいる。

 バキバキ、しゃぐしゃぐと音が聞こえる。
 いやな予感がして、のぞき込むと。
 ああやっぱり、付いてきていた男が一人、食われていた。

 シンが強くないとね。と言ってつけた機能。
 上半身。そこに縦に大きく開いた口。
「食べちゃったんだ。それにやっぱり、絵面がよくない。口なんだけどね」
 シンは、前に言っていた形状を組み込んでいた。
「どう? ドキドキする? 」とか言って。

 ぼくは、彼女の頭をなでながら、無に帰した。


「ありゃ。帰されちゃった。もう。何が気に入らないんだろうね」
 そう言って、シンは実験室に戻っていく。

 僕は考える、胸のドキドキが止まらない。
 彼女の、知らないところで。
 シンのいたずらだが、彼女の詳細な情報を知っていいのだろうか?

 今度会ったら、きっとまともに顔を見られないだろう。
 僕はそう思いながら、通路を出て行く。

 この日、完全に黒の道化師はなくなった。
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