幼馴染みが、知り合いになった夜 短編集

久遠 れんり

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欲望の果てに

第1話 捨てられた雑誌と出逢い

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「ねえ、りつちゃん。明日月曜日だから雑誌出してね」
 明日は月曜日、マンションの雑誌や段ボールの回収日。

 そして、自称か弱い彼女は、寝転がりながら俺に命令をする。
 一緒に暮らし始めて二年。

 そう俺達は、幼馴染みで家族同士のお付き合い。
 ガキの頃から共に、二人は結婚をするんだと暗示をかけられて育って来た。

 大学へ入ったときに、学部はちがうのだが、学校は同じだからと、あろうことか両家が金を出し合ってマンションを借りた。

 大学は町中なので、同窓会とかで出てきたときに泊まれるとか、都合の良いことを言って。

うたぁ、たまにはお前も出せよ。おまえが買っている雑誌。写真ばかりで重いんだよ」
「しーん」
「しーんて、聞こえてるじゃないか」
 そう言うと、ソファーの背もたれに引っかけていた足が、ぴよぴよと振られる。
 まあ昔から知っていて、二年も一緒に生活をしていれば、こんなもんだ。

 結構がさつだし、トイレは汚しても掃除しないし。
 すぐ詰まらせるし…… どうしてあんなに紙を使うんだろう。

「なんだかなぁ」
 俺はベランダに出て、雑誌を束ねる。

 玄関まで運び出すと、折りたたみ式のキャリーカートへと乗せる。
 もう時間は二十三時過ぎ。
 零時前だと前日投棄となり、本当なら不法投棄だとか、自治会のおばさんが叫んでいたが、雑誌だし良いだろう。

 そうしてエレバーターへ乗り、下へと降りる。
 一階でドアが開くと、俺が降りる前に誰かが飛び込んできた。
「ひゃう。ごめんなしゃい」
 彼女の鼻が俺の肩にあたったようだ。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
 そう言ってこっちを見上げた彼女は、鼻が痛いのか涙ぐんでいた。
 その表情が妙に色っぽくて妙に気になった。

 俺はカートを引きながらエレベーターから出る。
 夏前とはいえ夜中にミニスカート。
 エレベーターに飛び込んでいく彼女が残した匂い。
 しかもあの音。
 まさかなぁ?

 そう、エッチの前に、詩からも匂うあの匂い。

「六階か?」
 あわてて外へ回り、廊下を歩く彼女を見つける。
「六百四十七号室なんだ」
 そう部屋が分かったからと言って、どうこうはない。

 だけどかわいい顔をした、守ってやりたい小動物のような彼女。
「むかしは詩も、かわいかったのになぁ」

 そうぼやきながら、ゴミ捨て場へ向かう。
 誰かがすでにゴミを出していた。
 段ボールの裏に隠されていた雑誌の山。
「素人投稿? なんだこれ」
 表紙を見た感じ、まあある意味…… エロ本よりエロい。
 つい引っ張り出して、ペラペラと捲る。

 素人が屋外で露出をして写真を撮っている。
 趣味的にはたいていの人は外れだし、男まで?
 どういうコンセプトなんだ?

 そんな中で、見つけてしまう。
 調教中ですという文字と、ひどく若い女の子。
 目線が入っているが、あの子だとなぜか分かった。

 広げたコートと、身につけた縄?
 その姿、そして、恥ずかしそうにはしているが、本当に嬉しそうな顔が妙に頭の中に残った。
 なんとなく、そこだけを撮影してしまう。

 ゴミ捨て場で、どう考えても怪しい奴だったが、妙な高揚感を覚えて夢中で見てしまった。

 雑誌は、なんとなく、簡単に引き抜けない場所に押しもどした。

「おつかれぇ」
 部屋へ帰ると、ソファーでまだ同じ格好をして、ドラマを見ていた詩。
 俺はベッドへ潜り込むと、さっきの投稿系を調べる。

「結構居るんだ」
 悪い事だと知りながら、やっている様だ。
「屋外で裸なんて、まあ違法だよな」
 その時は、まあこんな世界もあるんだと、感心をしたくらいだった。


 しばらくして、また資源ゴミの日。
 また俺は送り出された。

 ため息を付きながらエレベーターへ乗る。
 すると、先客がいて出てこようとするので下がった。
 俺は廊下側で待つ事にする。
 先客はあの子だった。
 Tシャツ、ミニスカートでノーブラ。
 そして、両手で雑誌の束を持つ。
 俯いて出てきたが、ふと景色が違うことに気がついたのだろう。

「あっ」
 彼女は出てこようとして階が違うことに気がついたようだ、戻ろうとするとドアが閉まり掛かる。
 手を伸ばしてセンサーを反応させる。

「ありがとうぞざいます」
 そう言って彼女が戻るのを、追いかけるように中へと入る。

 扉が閉まり、沈黙が来る。
「重そうだね。これに乗せる?」
 俺はカートを指さす。
「えっ。あっ良いんですか?」
 特にこだわりもないようで、素直に乗せてきたのだが、また過激そうな雑誌が……

「それって、旦那さんの趣味なんですか?」
 ホントに他意もなく聞いてしまった。

 当然だろうが、それの意味を彼女も理解した様だ。
 少し赤くなったのが分かった。
「あっええと…… ご主人様です」
「はっ?」
 一階へ到着して、ゴミ置き場へ向かうと彼女も付いてくる。

「捨てるんですよね。なら出しておきますから大丈夫ですよ」
「えっいいえ。そう言うわけには……」

 まあそんな感じで、その日はキャリアの値段とかそんなのを聞かれて普通に別れた。
 だけどまあ、夜だしその格好は危険だよと忠告。

「ありがとうございます」
 そう言って彼女は、手を振りながら上へと上がっていった。
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