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第四章 中等部
第49話 フィリップ商国とアルノシュト王国
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フィリップ商国は、元々アルノシュト王国のダンジョンを擁する一つの領だった。
そして、商売で上手く行き、調子に乗ったフィリップ氏は、国軍を上回る武力を用いて独立をした。
ダンジョン産の、素材を使った武具や防具は軽量で丈夫。
国軍の鉄製を圧倒する。
金払いの良さもあり、国で雇われた者まで、戦争時に裏切り、あっという間に王国軍は敗れてしまう。
王国にまで押し寄せた、フィリップ軍。
国ごと奪われるよりはと言う事で、分離独立。
自治権を認め、フィリップ商国が誕生をした。
無論そこから出る街道は、王国が持っているため、通行関税を掛けたが、それに対してダンジョン素材を欲する他国が反発。
睨まれ、渋々会談を開き、税が決まることになる。
それから数百年。
幾度となく氾濫などがあったが、自前で押さえて、何とかしてきた。
だが今回は、毒だ。
目に見えず、力自慢達でも対処方法がない。
建国以来の危機である。
やれることは、盗賊を捕まえて、定期的に食わせること。
十一階からの、穀物エリアは大丈夫なようだ。
被害は、六階から十階までの海エリア。
春夏秋冬すべてが駄目である。
「何とかしろ。事態を治めた者には大金貨十枚を出す。触れ回れぇ」
代表から、檄が飛ぶ。
それにより、闇雲に探索者達は調査をするが当然のように原因など分からない。
だが、原因が分かるその前に、一階から五階での低級モンスター達が、倍々で増え始めた。
「これは、氾濫の前兆でございます」
「ええい。ダンジョンから皆を出せ。防衛体勢」
これにより、三つの防壁。
すべての門が閉められる。
アルノシュト王国では、その報が入ると、急に軍備をまとめ始めた。
表向きは、フィリップ商国からのモンスター防御。
「氾濫の規模により、我が国まで被害が及ぶかも知れんからのう」
王アルマン=ルノアー達は、いやらしく笑う。
そう。あくまでも表向きは。
アルノシュト王国軍は、国境に展開をする本隊とは別の分隊を、カサコソと先行させ、フィリップ商国へ侵入させる。
その行動は、とても大義のある行動には見えない物だった。
「フィリップ商国のダンジョンで異変じゃと?」
王は宰相からの報告を聞き、怪訝そうな顔をする。
「はい。海産物がすべて毒を持ったと」
その報告に驚く。
ダンジョン産の海産物は、その安定性が売りだ。
「ふうむ。うちのダンジョンは問題ないか?」
「ええ。問題ありませぬ。イングヴァル帝国の方は不明です」
むうっと顎に拳を当て、うなり出す。
「まだ、落ち着いておらぬのか」
「はい」
謎の光。
それ以降、音信不通となっている。
実際に、イングヴァル帝国は種族間抗争が始まっていた。
聖の種族と、闇の種族。
見た目だけで、そう分けられた。
だが、力は黒き者達の方が強い。
そして、今まで身分が低かった者達は、力を得て集団を作り始めた。
そう、今まさに戦乱の時代へと雪崩れ込んでいた。
「おらー。いけぇー」
春の名物、ダンジョン攻略戦。
流石に毎回抜けていたため、周囲の連中も気が付いたようだ。
「おい、付いて行くぞ」
腕に自信がある連中が、付いて行こうとする。
だが単なるスキル持ちとは違い、身体強化を効かせたメンバー。
暗いダンジョン内を、全力で駆け抜けていく。
無論この頃には、全周囲に気配察知を張り巡らし安全に。
だが後ろから付いて行く連中は、そんな器用なことは出来ない。
ご学友にぶつかるのは当たり前。
ゴブリンとぶつかり、抱き合ったまま転がっていく。
「きゃあー。いやあぁ。助けてぇ」
「ゴブリンだ。倒せ」
そんな騒動が、あちらこちらで巻き起こる。
「なんだか騒がしいわね」
モニカが振り返る。
無事に、後からチームに入った者達も、なんとか付いてきている。
近道をして、水龍の元へ。
水龍は彼らを見ると記憶など無いはずなのにビクッとする。
「さあいけ」
「「「はい」」」
いつものことだが、水龍の災難が始まる。
フィリップ商国の、水のダンジョン。
その最奥から、無表情な少女が一人上がってくる。
精霊もどき。
実体化をしているが、よく見れば半透明。
元々は、性別などないが、途中で死にかかった探索者をみた。
その時に気が向き、その生き物を修理をして、遺伝子を拾った。
それにより、明確に少女へと変化をした。
見た目は十二歳前後。
無論服など着ていない。
倒れていた探索者は、深層調査中。
十七階から十八階へ降りてきたときに、野良のガルーダが襲ってきて仲間とはぐれてしまった。
ここはキャニオン系のフロア。
空にはワイバーン達が飛んでいる、危険なフロア。
植物的には乏しいが、鉱石採取には重要な階層だ。
そう、重要だが空からのモンスター襲撃がとても多い。
大抵、小さな盾を持ち、掴まれたら離して逃げる様な戦術を使う。
だが、おバカなワイバーンと違い、ガルーダは賢い。
魔法を使い、人型と鳥形に変化をする。
そして、餌としてではなく、お遊びで殺す。
降りてきたときに、風の塊をばら撒き、盾が離れたときに鋭い爪で切り刻む。
致命傷を与えるわけでもなく、いたぶる。
攻撃を受ける者にはたまらないが、彼らにしてみれば、ここは我らのエリア。
ジャマな者は来るなとでも言うように。
そんな混乱で、チーム『穴蔵の開拓者』所属。
カミラ十七歳は背中を切られ、低い崖を転がり落ちてしまった。
足を折り、背中からの出血。
死の覚悟をした。
それと出会ったときも……
そして、商売で上手く行き、調子に乗ったフィリップ氏は、国軍を上回る武力を用いて独立をした。
ダンジョン産の、素材を使った武具や防具は軽量で丈夫。
国軍の鉄製を圧倒する。
金払いの良さもあり、国で雇われた者まで、戦争時に裏切り、あっという間に王国軍は敗れてしまう。
王国にまで押し寄せた、フィリップ軍。
国ごと奪われるよりはと言う事で、分離独立。
自治権を認め、フィリップ商国が誕生をした。
無論そこから出る街道は、王国が持っているため、通行関税を掛けたが、それに対してダンジョン素材を欲する他国が反発。
睨まれ、渋々会談を開き、税が決まることになる。
それから数百年。
幾度となく氾濫などがあったが、自前で押さえて、何とかしてきた。
だが今回は、毒だ。
目に見えず、力自慢達でも対処方法がない。
建国以来の危機である。
やれることは、盗賊を捕まえて、定期的に食わせること。
十一階からの、穀物エリアは大丈夫なようだ。
被害は、六階から十階までの海エリア。
春夏秋冬すべてが駄目である。
「何とかしろ。事態を治めた者には大金貨十枚を出す。触れ回れぇ」
代表から、檄が飛ぶ。
それにより、闇雲に探索者達は調査をするが当然のように原因など分からない。
だが、原因が分かるその前に、一階から五階での低級モンスター達が、倍々で増え始めた。
「これは、氾濫の前兆でございます」
「ええい。ダンジョンから皆を出せ。防衛体勢」
これにより、三つの防壁。
すべての門が閉められる。
アルノシュト王国では、その報が入ると、急に軍備をまとめ始めた。
表向きは、フィリップ商国からのモンスター防御。
「氾濫の規模により、我が国まで被害が及ぶかも知れんからのう」
王アルマン=ルノアー達は、いやらしく笑う。
そう。あくまでも表向きは。
アルノシュト王国軍は、国境に展開をする本隊とは別の分隊を、カサコソと先行させ、フィリップ商国へ侵入させる。
その行動は、とても大義のある行動には見えない物だった。
「フィリップ商国のダンジョンで異変じゃと?」
王は宰相からの報告を聞き、怪訝そうな顔をする。
「はい。海産物がすべて毒を持ったと」
その報告に驚く。
ダンジョン産の海産物は、その安定性が売りだ。
「ふうむ。うちのダンジョンは問題ないか?」
「ええ。問題ありませぬ。イングヴァル帝国の方は不明です」
むうっと顎に拳を当て、うなり出す。
「まだ、落ち着いておらぬのか」
「はい」
謎の光。
それ以降、音信不通となっている。
実際に、イングヴァル帝国は種族間抗争が始まっていた。
聖の種族と、闇の種族。
見た目だけで、そう分けられた。
だが、力は黒き者達の方が強い。
そして、今まで身分が低かった者達は、力を得て集団を作り始めた。
そう、今まさに戦乱の時代へと雪崩れ込んでいた。
「おらー。いけぇー」
春の名物、ダンジョン攻略戦。
流石に毎回抜けていたため、周囲の連中も気が付いたようだ。
「おい、付いて行くぞ」
腕に自信がある連中が、付いて行こうとする。
だが単なるスキル持ちとは違い、身体強化を効かせたメンバー。
暗いダンジョン内を、全力で駆け抜けていく。
無論この頃には、全周囲に気配察知を張り巡らし安全に。
だが後ろから付いて行く連中は、そんな器用なことは出来ない。
ご学友にぶつかるのは当たり前。
ゴブリンとぶつかり、抱き合ったまま転がっていく。
「きゃあー。いやあぁ。助けてぇ」
「ゴブリンだ。倒せ」
そんな騒動が、あちらこちらで巻き起こる。
「なんだか騒がしいわね」
モニカが振り返る。
無事に、後からチームに入った者達も、なんとか付いてきている。
近道をして、水龍の元へ。
水龍は彼らを見ると記憶など無いはずなのにビクッとする。
「さあいけ」
「「「はい」」」
いつものことだが、水龍の災難が始まる。
フィリップ商国の、水のダンジョン。
その最奥から、無表情な少女が一人上がってくる。
精霊もどき。
実体化をしているが、よく見れば半透明。
元々は、性別などないが、途中で死にかかった探索者をみた。
その時に気が向き、その生き物を修理をして、遺伝子を拾った。
それにより、明確に少女へと変化をした。
見た目は十二歳前後。
無論服など着ていない。
倒れていた探索者は、深層調査中。
十七階から十八階へ降りてきたときに、野良のガルーダが襲ってきて仲間とはぐれてしまった。
ここはキャニオン系のフロア。
空にはワイバーン達が飛んでいる、危険なフロア。
植物的には乏しいが、鉱石採取には重要な階層だ。
そう、重要だが空からのモンスター襲撃がとても多い。
大抵、小さな盾を持ち、掴まれたら離して逃げる様な戦術を使う。
だが、おバカなワイバーンと違い、ガルーダは賢い。
魔法を使い、人型と鳥形に変化をする。
そして、餌としてではなく、お遊びで殺す。
降りてきたときに、風の塊をばら撒き、盾が離れたときに鋭い爪で切り刻む。
致命傷を与えるわけでもなく、いたぶる。
攻撃を受ける者にはたまらないが、彼らにしてみれば、ここは我らのエリア。
ジャマな者は来るなとでも言うように。
そんな混乱で、チーム『穴蔵の開拓者』所属。
カミラ十七歳は背中を切られ、低い崖を転がり落ちてしまった。
足を折り、背中からの出血。
死の覚悟をした。
それと出会ったときも……
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