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第四章 中等部
第51話 おまえ。あんた。何者?
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それは、邂逅とも言える出逢い。
モンスター同士。
いやモンスターと、化け物の出逢い。
クラス対抗、ダンジョン攻略戦で四十階の氷龍を皆がボコれるようになり満足をして帰ってきた後、王命によりシン達はフィリップ商国へ向かった。
途中に、幾度もアルノシュト王国軍と出会う。
どう見ても異様な雰囲気。
「ああっ? フィリップ商国へ向かう? 通行止めだ」
当然のように止められる。
「どうする?」
マッテイスは、嫌そうな顔で聞いてくる。
周りにいる兵達の柄の悪さ。
商人達も完全に止められているようだ。
「行くさ」
シンはそう答えると、別の道に向かい始める。
そう、千年前に通った道。
意外と地元の人は利用しているようで、まだ残っていた。
「多少風景は変わっているが、問題ないな」
大きな街道には関所があるが、フィリップ商国すべてを囲むなんと言うことは、アルノシュト王国軍でも無理なようだ。
よく見れば、農民に扮した商人達が荷車を引いている。
「意外と使われているんだな」
マッテイスも感心をしている。
「此処の道は、昔のライハラ連合国へ向かう道に繋がっている。ノエル=デューに教えて貰った。今のクリスティアン共和国へ繋がる道だな」
シンの仲間だったノエル=デュー。
ライハラ連合国は、少数民族の集まりだった。
そこをまとめたのが、彼だった。
アルノシュト王国軍も、クリスティアン共和国とまで事を構える気は無いようでこちらは手薄。
意外とあっさりと、国境の町ヘーフェルスへとたどり着く。
そこから、フィリップ商国へ。
昔の水のダンジョンへと、彼らはたどり着く。
「ギルドへ行こう」
マッテイスは定番だと言うように、情報収集のためにギルドに向かう。
現在ダンジョンは封鎖中。
指名を受けた探索者のみ、ダンジョンへ入れる様だ。
おかげで、あぶれた者達が昼間っから酒をくらい、くだを巻いている。
やる気があれば、周囲のモンスター退治や町の雑用など仕事はあるが、どうもプライドがジャマをするようだ。
そんな中、シンは紛れ込んでいる異物を感知する。
相手も、シンを感知して近寄ってくる。
「何者だお前?」
「ヒトでは無い者が、なぜ紛れ込んでいる」
常人では判らない攻防が始まっていた。
見た目は十二歳前後のローラ。
シンはいま十三歳。
その二人が対峙する空間には、紫電が煌めく。
魔力のぶつかり合い。
方や人に化けた水妖。
方や、リッチの特性を取り込んだ人。
双方それを感じ取り、攻防を繰り返す。
それを崩したのは、カミラの一言。
マッテイスは話を聞きに行き、探索者達と飲んでいる。
「ローラ。妹が何か?」
「妹じゃと? そなたは人間であろう」
シンの一言で、カミラは理解をする。
だが、
「ええそうよ。妹も……」
「違うな。そいつが知らぬと言うなら、成り代わったのか?」
その言葉で、カミラは確信をした。
「待って。知っているから。お願い」
少年に向かい、カミラはお願いをする。
一つの席に座り、こしょこしょと話し始める。
「あなた、妹のこと分かるの?」
じっと、真剣な目でシンを見つめる。
「モンスターと言うより、精霊に近い様じゃな」
じっと、ローラを見つめながらシンは答える。
「えーと君は?」
「化け物じゃ」
逆にシンを見ながらローラが答える。
シンの口調が、うつったようだ。
「化け物?」
「そうじゃ。こいつは、この世の理から外れ、妙な術式により魂が組まれておる。面妖な化け物。精霊王よりもきっと強い」
人外に人外認定されてしまった。
「あー……。否定はせん。コンラート王国から、此処のダンジョンの様子と、アルノシュト王国軍の様子を見に来ただけじゃ」
色々とまずそうなので、王国軍の紋章を見せる。
物を知らなくとも、そんな紋章を持っている者は、貴族か軍のものと理解をしてもらえるだろう。
「えっ。君その年で御貴族様」
そういえば、男爵だか伯爵だか、もらった気がする。
反対を押し切り、王の一声で。
「今は忍びだ。気にするでない」
カミラは情報が多すぎて、完全にパニックである。
「さあてと、落ち着いたところで、なぜこんな者を妹と?」
そう聞かれて、悩んだがカミラはあったことを説明をする。
嘘をつくとまずい気がする。
さっきローラが言った、物語の英雄『精霊王よりもきっと強い』と言う言葉。
それなら、ローラが殺される可能性がある。
それは嫌。
「ふうむ。それでは、成り代わった訳ではなく、遺伝子を読み込み変化をしたのか。こいつは、そなたの複製品じゃな」
「複製品?」
「そう。妹御は、そなたに似ておったようじゃな」
自分にそっくりな妹だったのだろう。
「それで、どうして上へと上がってきた?」
「底の魔素が薄くなった」
それだけで、理解。
「ぼろなダンジョンじゃな。どこか、不具合が出た様じゃ。入ってみるか」
あっさりとそういうシンだが、カミラは当然否定をする。
「今は封鎖中で入れないわよ」
「その辺りは、どうとでもなるじゃろ。そなた、案内せい」
「むう。良いじゃろ」
「えっ。小さな子二人でなんて、駄目よ」
その後、チームリーダーのロイスは仲間を募集しに行っている間に、また一人。居なくなったことに気が付く。
マッテイスは数日間、帰ってこないシンを、宿でひたすら待つことになる。
モンスター同士。
いやモンスターと、化け物の出逢い。
クラス対抗、ダンジョン攻略戦で四十階の氷龍を皆がボコれるようになり満足をして帰ってきた後、王命によりシン達はフィリップ商国へ向かった。
途中に、幾度もアルノシュト王国軍と出会う。
どう見ても異様な雰囲気。
「ああっ? フィリップ商国へ向かう? 通行止めだ」
当然のように止められる。
「どうする?」
マッテイスは、嫌そうな顔で聞いてくる。
周りにいる兵達の柄の悪さ。
商人達も完全に止められているようだ。
「行くさ」
シンはそう答えると、別の道に向かい始める。
そう、千年前に通った道。
意外と地元の人は利用しているようで、まだ残っていた。
「多少風景は変わっているが、問題ないな」
大きな街道には関所があるが、フィリップ商国すべてを囲むなんと言うことは、アルノシュト王国軍でも無理なようだ。
よく見れば、農民に扮した商人達が荷車を引いている。
「意外と使われているんだな」
マッテイスも感心をしている。
「此処の道は、昔のライハラ連合国へ向かう道に繋がっている。ノエル=デューに教えて貰った。今のクリスティアン共和国へ繋がる道だな」
シンの仲間だったノエル=デュー。
ライハラ連合国は、少数民族の集まりだった。
そこをまとめたのが、彼だった。
アルノシュト王国軍も、クリスティアン共和国とまで事を構える気は無いようでこちらは手薄。
意外とあっさりと、国境の町ヘーフェルスへとたどり着く。
そこから、フィリップ商国へ。
昔の水のダンジョンへと、彼らはたどり着く。
「ギルドへ行こう」
マッテイスは定番だと言うように、情報収集のためにギルドに向かう。
現在ダンジョンは封鎖中。
指名を受けた探索者のみ、ダンジョンへ入れる様だ。
おかげで、あぶれた者達が昼間っから酒をくらい、くだを巻いている。
やる気があれば、周囲のモンスター退治や町の雑用など仕事はあるが、どうもプライドがジャマをするようだ。
そんな中、シンは紛れ込んでいる異物を感知する。
相手も、シンを感知して近寄ってくる。
「何者だお前?」
「ヒトでは無い者が、なぜ紛れ込んでいる」
常人では判らない攻防が始まっていた。
見た目は十二歳前後のローラ。
シンはいま十三歳。
その二人が対峙する空間には、紫電が煌めく。
魔力のぶつかり合い。
方や人に化けた水妖。
方や、リッチの特性を取り込んだ人。
双方それを感じ取り、攻防を繰り返す。
それを崩したのは、カミラの一言。
マッテイスは話を聞きに行き、探索者達と飲んでいる。
「ローラ。妹が何か?」
「妹じゃと? そなたは人間であろう」
シンの一言で、カミラは理解をする。
だが、
「ええそうよ。妹も……」
「違うな。そいつが知らぬと言うなら、成り代わったのか?」
その言葉で、カミラは確信をした。
「待って。知っているから。お願い」
少年に向かい、カミラはお願いをする。
一つの席に座り、こしょこしょと話し始める。
「あなた、妹のこと分かるの?」
じっと、真剣な目でシンを見つめる。
「モンスターと言うより、精霊に近い様じゃな」
じっと、ローラを見つめながらシンは答える。
「えーと君は?」
「化け物じゃ」
逆にシンを見ながらローラが答える。
シンの口調が、うつったようだ。
「化け物?」
「そうじゃ。こいつは、この世の理から外れ、妙な術式により魂が組まれておる。面妖な化け物。精霊王よりもきっと強い」
人外に人外認定されてしまった。
「あー……。否定はせん。コンラート王国から、此処のダンジョンの様子と、アルノシュト王国軍の様子を見に来ただけじゃ」
色々とまずそうなので、王国軍の紋章を見せる。
物を知らなくとも、そんな紋章を持っている者は、貴族か軍のものと理解をしてもらえるだろう。
「えっ。君その年で御貴族様」
そういえば、男爵だか伯爵だか、もらった気がする。
反対を押し切り、王の一声で。
「今は忍びだ。気にするでない」
カミラは情報が多すぎて、完全にパニックである。
「さあてと、落ち着いたところで、なぜこんな者を妹と?」
そう聞かれて、悩んだがカミラはあったことを説明をする。
嘘をつくとまずい気がする。
さっきローラが言った、物語の英雄『精霊王よりもきっと強い』と言う言葉。
それなら、ローラが殺される可能性がある。
それは嫌。
「ふうむ。それでは、成り代わった訳ではなく、遺伝子を読み込み変化をしたのか。こいつは、そなたの複製品じゃな」
「複製品?」
「そう。妹御は、そなたに似ておったようじゃな」
自分にそっくりな妹だったのだろう。
「それで、どうして上へと上がってきた?」
「底の魔素が薄くなった」
それだけで、理解。
「ぼろなダンジョンじゃな。どこか、不具合が出た様じゃ。入ってみるか」
あっさりとそういうシンだが、カミラは当然否定をする。
「今は封鎖中で入れないわよ」
「その辺りは、どうとでもなるじゃろ。そなた、案内せい」
「むう。良いじゃろ」
「えっ。小さな子二人でなんて、駄目よ」
その後、チームリーダーのロイスは仲間を募集しに行っている間に、また一人。居なくなったことに気が付く。
マッテイスは数日間、帰ってこないシンを、宿でひたすら待つことになる。
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