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第五章 人は生き残れるのか?
第80話 少し手入れをする
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「これは駄目だ。ヘルミーナ」
横にいた、ヘルミーナについ声をかけたが……
「はい。お兄様」
「あっいや……」
何か言おうとしたシンだが、窓際へと移動して庭に向かい声をかける。
「シュワード伯爵に説明をして、口座とやらの権利の移譲を行って貰ってくれ」
「御意」
どこからか、声が聞こえる。
一瞬、ヘルミーナに行って貰おうかと思ったが、今でも第一は、ヘルミーナの護衛だったはず。
それが頭をよぎる。
今まで幾度かは、遠征時に放っておいたが、学園だし周りに間者もいた。ここから、シュワード伯爵家へ向かわせるのは危険だ。
どう見ても、町中ですら危険そうな雰囲気が漂っている。
とりあえず、館内のガラクタをひとまとめにして積み上げる。
宝物庫の中にあった物も、何が嬉しくて買ったのか理解ができない。
絵画にしたって、下手な絵が多く、高名な作品を摸写した物ばかり。
彫像も、裸婦像ばかりが所狭しと並んでいる。
「まともな物は、王が回収を行ったのでしょう」
ヘルミーナが呆れたように言う。
「そうだろうな、でなければ、ガラクタのために大金を払っていたのか……」
シンがそういって見つめる先には、どこか昔の自分に似た彫像。銘には英雄の像ラファエル=デルクセンと入っている。
他にも、レジアス=オーケルフェルト、エルナ=ミカエラ、ドミニク=ライナス、ザシャ=エンフィールド、エメリヤン=スヴャトス、ノエル=デュー、エミリアーナ=デメトリアと並んでいるが似ているかと言えば、微妙な者達が並んでいる。
体型も、妙に誇張された物ばかり。
ヘルミーナとマッテイスが横に来てじっと見る。
「お仲間さんですか?」
「らしいが、似てない。だが、懐かしくはある」
「金ができたら、本人監修で作ったらどうだ」
「―― 必要ない」
そう言ってその場を後にしたが、シンの後ろ姿が少し淋しそうだった。
そうして、町を浄化をしたり、残っている人達を集めて説明を行ったり三週間ほどの期間が経った頃、怪しい集団がやって来る。
どう見ても武装集団だが……
「王国銀行の者です。今回領主になられたシン様ですね」
「ああ、そうだ」
「では、屋敷の魔導具を起動させましょう」
そう、王国の特殊性。
空間魔法を使った銀行システム。
行政機関には建物と一体化させた部屋が、必ず設置されている。
これにより、政治的な金が強盗に奪われることが無い。
麦による現物支給での行政は、数百年前に終わっていた。
その頃は、ドミニク=ライナスの作った魔導具工房がまだ動いていて傑作を作りだした様だ。
今回権利が移譲されたため、学園のシステムにもアクセス出来るとのこと。
説明を受けて、その便利さに驚く。
力を恐れた当時の愚王が、魔導具工房を閉鎖したが、残された技術は密かに使われているようだ。
そうその話を聞いたシンは、方向性を見いだした。
この領地、たいした特産なども見いだせず、少し困っていたが、魔導具工房を閉鎖したという話が、心を動かす。
そう今のシンには、異世界で培われた、数千年におよぶリッチによる魔導の知識が頭の中に詰まっている。
「ふむ、良いかもしれん」
マッテイスに領内に対する公示を頼み、自分は少し部屋に籠もる。
領地と、学園。シュワード伯爵と王都。
その四箇所を移動する機会が増えるだろう。
数週間を要する行程は無駄だ。
自身の創る亜空間を介し点と点を結ぶ。
キーとなる魔導具を持たぬ者は、入ったとて、迷うことになる。
「ふむ。金属と魔石が必要だな」
町で募集をかけて私設兵団を作ったのを、マッテイスに任せて、自身は山へと向かう。
ディビィデ山脈に接する領地。
探査を掛け、鉱脈を探す。
過去噴火や隆起が行われ複雑な地層ではあるが、縞状に、黄鉄鉱や黄銅、鉛。
断層部分ではあるが、金まで存在していた。
「ほほう、これは良い」
シンが出かけるというので、ヘルミーナ達も付いてきたが、ピクニックから一転、フリークライミングをすることになり、ほとんど特訓モード。
立ち止まっては、切り立つ壁をみてニヤニヤしながらメモを取る、シンの事を初めて理解ができなかった。
後で鉱脈だと聞いて納得をしたが。
普通は、鉱脈にかんする知識など持ち合わせてはいないため謎行動だったようだ。
モニカ達は喜んでいたが。
やがて、転移用の指標となるプレートが完成し、回りに居る間者達に設置をたのむ。
学園では清掃班の控え室。
シュワード伯爵家では、設置する場所を窺い許可を取るようにと説明。
王都には、拠点がないため今は設置せず、この館にはたまたまあった設計ミスのような細長い小部屋。
ただ、上階ではこの設計ミスと思える小部屋だが、地下に行くと避難路が隠されていた。
何か考えて作ったのだろうが、上階では物置となっていた。
だが、ある日気が付く。壁に目隠しがあり、隣の部屋を覗けることを発見。
シンは黙って、穴を塞ぐ。
穴の横は屋敷に勤める侍女達などの控え室だったり、まあ色々と想像が付く。
都合二月を過ごし、ある日いきなり、シンたちは学園に現れる。
そして、デルクセン領とした自領へと、鉱夫などの募集を町中で開始する。
そう、シンには家名が必要と王に言われて、とっさに答えた。
それを聞いて、王はにやりと笑ったとか……
横にいた、ヘルミーナについ声をかけたが……
「はい。お兄様」
「あっいや……」
何か言おうとしたシンだが、窓際へと移動して庭に向かい声をかける。
「シュワード伯爵に説明をして、口座とやらの権利の移譲を行って貰ってくれ」
「御意」
どこからか、声が聞こえる。
一瞬、ヘルミーナに行って貰おうかと思ったが、今でも第一は、ヘルミーナの護衛だったはず。
それが頭をよぎる。
今まで幾度かは、遠征時に放っておいたが、学園だし周りに間者もいた。ここから、シュワード伯爵家へ向かわせるのは危険だ。
どう見ても、町中ですら危険そうな雰囲気が漂っている。
とりあえず、館内のガラクタをひとまとめにして積み上げる。
宝物庫の中にあった物も、何が嬉しくて買ったのか理解ができない。
絵画にしたって、下手な絵が多く、高名な作品を摸写した物ばかり。
彫像も、裸婦像ばかりが所狭しと並んでいる。
「まともな物は、王が回収を行ったのでしょう」
ヘルミーナが呆れたように言う。
「そうだろうな、でなければ、ガラクタのために大金を払っていたのか……」
シンがそういって見つめる先には、どこか昔の自分に似た彫像。銘には英雄の像ラファエル=デルクセンと入っている。
他にも、レジアス=オーケルフェルト、エルナ=ミカエラ、ドミニク=ライナス、ザシャ=エンフィールド、エメリヤン=スヴャトス、ノエル=デュー、エミリアーナ=デメトリアと並んでいるが似ているかと言えば、微妙な者達が並んでいる。
体型も、妙に誇張された物ばかり。
ヘルミーナとマッテイスが横に来てじっと見る。
「お仲間さんですか?」
「らしいが、似てない。だが、懐かしくはある」
「金ができたら、本人監修で作ったらどうだ」
「―― 必要ない」
そう言ってその場を後にしたが、シンの後ろ姿が少し淋しそうだった。
そうして、町を浄化をしたり、残っている人達を集めて説明を行ったり三週間ほどの期間が経った頃、怪しい集団がやって来る。
どう見ても武装集団だが……
「王国銀行の者です。今回領主になられたシン様ですね」
「ああ、そうだ」
「では、屋敷の魔導具を起動させましょう」
そう、王国の特殊性。
空間魔法を使った銀行システム。
行政機関には建物と一体化させた部屋が、必ず設置されている。
これにより、政治的な金が強盗に奪われることが無い。
麦による現物支給での行政は、数百年前に終わっていた。
その頃は、ドミニク=ライナスの作った魔導具工房がまだ動いていて傑作を作りだした様だ。
今回権利が移譲されたため、学園のシステムにもアクセス出来るとのこと。
説明を受けて、その便利さに驚く。
力を恐れた当時の愚王が、魔導具工房を閉鎖したが、残された技術は密かに使われているようだ。
そうその話を聞いたシンは、方向性を見いだした。
この領地、たいした特産なども見いだせず、少し困っていたが、魔導具工房を閉鎖したという話が、心を動かす。
そう今のシンには、異世界で培われた、数千年におよぶリッチによる魔導の知識が頭の中に詰まっている。
「ふむ、良いかもしれん」
マッテイスに領内に対する公示を頼み、自分は少し部屋に籠もる。
領地と、学園。シュワード伯爵と王都。
その四箇所を移動する機会が増えるだろう。
数週間を要する行程は無駄だ。
自身の創る亜空間を介し点と点を結ぶ。
キーとなる魔導具を持たぬ者は、入ったとて、迷うことになる。
「ふむ。金属と魔石が必要だな」
町で募集をかけて私設兵団を作ったのを、マッテイスに任せて、自身は山へと向かう。
ディビィデ山脈に接する領地。
探査を掛け、鉱脈を探す。
過去噴火や隆起が行われ複雑な地層ではあるが、縞状に、黄鉄鉱や黄銅、鉛。
断層部分ではあるが、金まで存在していた。
「ほほう、これは良い」
シンが出かけるというので、ヘルミーナ達も付いてきたが、ピクニックから一転、フリークライミングをすることになり、ほとんど特訓モード。
立ち止まっては、切り立つ壁をみてニヤニヤしながらメモを取る、シンの事を初めて理解ができなかった。
後で鉱脈だと聞いて納得をしたが。
普通は、鉱脈にかんする知識など持ち合わせてはいないため謎行動だったようだ。
モニカ達は喜んでいたが。
やがて、転移用の指標となるプレートが完成し、回りに居る間者達に設置をたのむ。
学園では清掃班の控え室。
シュワード伯爵家では、設置する場所を窺い許可を取るようにと説明。
王都には、拠点がないため今は設置せず、この館にはたまたまあった設計ミスのような細長い小部屋。
ただ、上階ではこの設計ミスと思える小部屋だが、地下に行くと避難路が隠されていた。
何か考えて作ったのだろうが、上階では物置となっていた。
だが、ある日気が付く。壁に目隠しがあり、隣の部屋を覗けることを発見。
シンは黙って、穴を塞ぐ。
穴の横は屋敷に勤める侍女達などの控え室だったり、まあ色々と想像が付く。
都合二月を過ごし、ある日いきなり、シンたちは学園に現れる。
そして、デルクセン領とした自領へと、鉱夫などの募集を町中で開始する。
そう、シンには家名が必要と王に言われて、とっさに答えた。
それを聞いて、王はにやりと笑ったとか……
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