ツキも実力も無い僕は、その日何かを引いたらしい。- 人類を救うのは、学園最強の清掃員 -

久遠 れんり

文字の大きさ
81 / 97
第五章 人は生き残れるのか?

第81話 王の驚き

しおりを挟む
 現デルクセン領。

 シンへ褒美としたが、状態を聞いてどうしようもなかった。
 そう、前領主の馬鹿な統治により、荒れ果て人々は困窮していた。
 側近達に改善策を提出させたが、具体的なモノは無く手が打てなかった。

 そう、彼ならば何とか出来るかもしれない。
 そう思い、託した。
 言い換えれば、押しつけた。

 一月ほど調査をしていたが、残っている住民から任官をして安全を担保。
 その後、銀行が行ったと思ったら、間者を振り切りいつの間にか彼は学園にいた。
 彼だけならばありえるだろう。だが、チーム全員が学園に現れた。

 
 この事は、シュワード伯爵家側には、魔導具設置の許可取りもあったために報告があり、知っていたが、拠点のない王都は後回しにされた。
 魔導具の特性上、大っぴらに出来ないというのもある。
 犯罪に使われれば、最悪となる。

 そして、鉱夫の募集。
「おい、あそこの領地に、鉱脈などあったか?」
「いいえ、存じ上げません」
「ならば、見つけたと?」
「であれば報告が来るはずですが、まだ来ていないようです」
「ぬうぅ」

 鉱脈はあったが、掘らなければただの山。
 製錬を行ってからでいいだろうと、シンは考えた。

 普通は見つければ大騒ぎで領主から報告があり、王もピンハネをする都合上、専門家を派遣し採掘計画を立てる。
 無論、空振りも多いが、一般的にはそんな物だった。

 そんな都合は、シンは知らない。
 探査をして、おおよその埋蔵量と、製錬の手はずを整える。
 粉砕をして、その後、炉をいくつか使い不純物をなくしていく。

 燃料が勿体ないので、魔導炉と言う物を造る。
 周囲は、セラミックで補強。
 ディビィデ山脈自体が、プレート境界であり堆積物の隆起により色々なモノが層となり存在をしていた。

 ただ粘土質の物質など、焼き物用の土としか認識されていなかったが、ボーキサイトなどもあった。
 精錬をすれば、アルミになるが、セラミックの材料として使ったようだ。

 とにかく採掘場と製錬場があっという間に造られ、稼働を始める。
 周囲から、魔石を持つモンスター達が狩られ供給が始まる。
 そう、町から無くなっていたギルドが復活。

 他で使い物にならず捨てられていた魔石までが、デルクセン領で買ってもらえる。
 話が広がり、商人の一部がそれに飛びつく。

 屑魔石など盗賊も欲しがらない。
 荷台を隠さず運搬をすれば安全だ。

 にわかに、デルクセン領を中心に経済が活性化を始める。

 そして、掘るための道具。
 まるで充電工具のように、削岩機さくがんきなどの道具。
 ベルトコンベヤなどが作り出される。

 鉄が製錬され、単管パイプが製造され、足場や崩落防止の枠組み。
 そう王国にしてみれば、画期的な物が販売され始める。
 簡単な組み立て、必要が無くなれば、ばらして次の現場。
 今までは、木で櫓を先に造っていた。
 それに比べれば、軽くて丈夫。

 当然人が集まれば、食料もいるし宿もいる。
 一年も経たずに領内は変わっていく。

 そんな報告を受けながら、王は鉱山ではなく、魔導具の方に目をつける。
 王国に存在する別の鉱山では、ツルハシやスコップで採掘をして。
 急峻な所を鉱石を担いだ人々が行き交い、年に幾人もが滑落をして死んでいる。
 無論運搬だけのことではなく、坑内での窒息や崩落等損失は大きい。
 まあ危険な所は、犯罪奴隷だが損失は損失。

 そして、埋蔵量の調査や解析が王国の技術者より優れている。
 これはシンが調べた所で、確実ではないと書かれているが、現実に採掘がされ現物がでている。

 普通なら、調査採掘を行っても、すぐに枯渇することだって良くある。
 
「むう」
「シン殿にお任せをして正解でしたな。デルクセン領は急速に発展をしております」
「それはそうだが、千年前からで途切れた文明。それは、人にとって大きな損失だったようだな」
「記録によりますと、幾度かの大きなモンスターの氾濫が、町を飲み込み、人が居なくなったとありますからな」
 歴史の中で繰り返される、人類滅亡級の災害。
 もう何十年も前から、ぼちぼち来るだろうと予想がされている。

 数年前から起こり始めている、氾濫規模や異変が王の頭の中に蘇る。
 ただそれが、幾度か解決されていることについて、気が付いていない。

 そんな中、馬鹿親達がにわかに騒めき、画策を始めていた。

「デルクセン領の事、聞き及んだか?」
「ええ、あの子の事なら、小さな頃から把握しておりますとも」
 ロナルドが、奥方アウロラに言葉をかけるが、笑顔でさもありなんと返される。

「ヘルミーナのこと?」
 夫人が問いかける。

「そうだ、今度来たときに正式に婚約をさせよう」
「そうね、立場。そして領地経営の手腕。羨ましいわね。ねえあなた……」
 答えながら、チラリとロナルドをみる。

「うっ。とにかくそれでよいな」
「ええ、早くしないと、別の家が色々と画策をしていますから」
 そんな事を、ロナルドと話をしたが、アウロラはロナルドからの許可をどう取ろうと考えていた。
 実際の力関係はどうであれ、家長はロナルド。

「かわいい娘だ、嫁にやらん」
 そんな事でも言い出せば、大損失。
 なんなら、やっちゃえヘルミーナと命令する所だった。

 それは近くにいる、もう一軒の家でも起こっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...