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第五章 人は生き残れるのか?
第87話 王子ははっちゃける
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「おれは、自由だあああぁ」
来てから三日ほどは、王城暮らしとの違いに驚いていたが、慣れたらこれだ。
姫様の方も同じ。
だが、王子様は二七歳、大人だ。
当然この屋敷で働く侍女達が居るが、新興のために平均が若く、ヘルミーナに厳選されたかわいさと愛嬌、そして賢さを持っている。
そして彼女達は、教育を受けている。
当家で働くなら、強く賢くなければいけない。
稼いでいるおかげで、多めの人数が働き、ローテーションで休暇と教育、業務と回っている。
「おかしい……」
「どうされました、お兄様」
「いや、夜の相手が見つからない」
王城では、王妃マティルデの息がかかった者が必ずいて、物欲しそうな顔をした王子がいると、お相手をねだっていた。
デリックの容姿も悪くなく、第一王子アルベルよりは好まれた事情もある、だが、アルベルは次期王候補、そこの違いはかなりある。
普通なら、王妃よりも気楽なデリック夫人も魅力であるが、現王妃やアルベルの性格から、王になってしまうとジャマな者達をそのままにはせず、謀略の的にすることは十分考えられる。
そのため余計に、みんなが距離を置き、夫人の息がかかった者だけが周りでうろついたいた。
そのために、行為に積極的な者達を、王子は食っていた。
貴族の子女としては、おかしな行動だと気がつかずに。
経験無しは、婚儀において重要なファクターとなる。
それなのに……
夜の訓練の時、屋敷で働く庭師などに誘われ、王子様は夜の町に抜け出す。
夜間ゲートを使う金属板は持たされている。
この屋敷、兵と言っても他の屋敷のように、立ちっぱなしではいない。
遠見の魔導具や、センサーが反応したとき、詰め所から出て行く。
夜間はさらに、何かが無い限り、兵は出てこない。
「おう、デリックこっちだ」
「ああ、すまない。またせた」
彼らは、庭師や清掃員。
だが訓練では一度も勝てない。
屋敷の外へ、自分だけで出る。
その不安さから、まるではじめて外に出た猫のように、おずおずとデリックはしている。
だが、飲み屋街へ行くと、それは初めての経験。
この町、その手の店には必ず管理が入り、病気などの検査が義務づけられている。
人気が出て、他領から流れ込んでくる口減らしの村娘達も多い。昼間は学校へ行き、夜はお店で金を稼ぐ。
実家での、今日もなんとか生きられたという生活よりは、天国のような暮らし。
他の領では、全員が名君では無い。
代官だとかなりいい加減で、住民が死のうが困ろうが知ったこっちゃないというのも多い。
その事を、シンも知っているため、夜間馬車を作った。
噂を広める。
その馬車に乗ると、幸せになれる。
闇奴隷として売られそうなら、自ら夜に走る馬車に乗れ。
普通危険があるため、夜間に馬車は走らない。
だが、それは夜に村々を回る。
「乗るのかい?」
「はい。もう限界なんです、弟も良いでしょうか?」
「ああ良いよ、中の食い物は食っていいから」
そうして今日も、馬車は走る。
むろん、噂が広がれば各領主も黙ってはいない、しかし、夜間の警備など簡易関所を作るくらいだが、見つけることは無かった。
そうしてたどり着いたのは、デルクセン領。
そう、初期に領民がおらず、苦肉の策として救済という人さらいを行った。
宿舎へと入り、健康状態のチェックと、教育。
無論通貨の使い方とか、基本的な物から入る。
その後本人達の要望を聞き、縫製や金属加工、その他職業教育が始まる。
そして、武術訓練と、基本的な身体強化と魔法を必須で習う。
民よ強くあれ。
そのおかげで、流れ込んでくるごろつき共は、この領では一瞬で捕縛され、鉱山行きとなる。
「おうおう、ねえちゃん今晩どうだい?」
「ああ? 今晩? 何すんの?」
「そりゃ…… 夜やるのは……」
見慣れない連中が絡み始めると、店の雰囲気が変わる。
皆が一斉に身体強化をつかい、雑談が止まり、静寂が店を支配する。
「なんだこれ、ひっ、許してくれぇ」
とまあ、兵を呼ぶことも無く大体収まる。
必然的に、治安がよくなる。
すると、人は安心して暮らせる。
そんな、良循環が生まれることになる。
「へー、デリックさん。良い所の坊ちゃんでしょう」
何コイツ、世間知らずで、中身の無い夢物語ばかり。
キャストに一発で見抜かれる。
「ああうん。ずっと王都に住んでいてね。最近こっちに来たんだ」
「へーそうなんだ。ああそうそう、この店でのお触りは厳禁。でも、自由恋愛は禁止じゃ無いから、口説くのはOKだからね。でも強引はだめよ」
このがっついている雰囲気、大丈夫かしら?
うちの子達に、食い散らかされそうな人ね。
変わった飲み屋、ボックスしかなく、常連なら気に入った子を指名、慣れていない人は、時間で女の子が代わる。
気に入れば、指名料を払うのだが、指名がかぶれば、入札という極悪会計。
イメージ的には、キャバクラとかガールズバーのようなシステム。この領は、お姉ちゃんが付くだけのお店が多い。
生活水準が高く、他領の様な本番メインのお店は、存在しない。
他領では、売春宿が生活に困った女の子の終着点だが、ここではそんな事はない。
出会い系は、専用の店がある。
入店代を男女が払い、適当な相手のところへ座る。
一五分という区切りがあり、話しや、雰囲気が合わなければ、相手を変える。
合えば、手を取り店を出て行く。
ゲートを使う金属板はクレジット機能を持つ為、会計は困らない。
そして初心な王子様は、そんな出会い系の店に、ハマっていく。
来てから三日ほどは、王城暮らしとの違いに驚いていたが、慣れたらこれだ。
姫様の方も同じ。
だが、王子様は二七歳、大人だ。
当然この屋敷で働く侍女達が居るが、新興のために平均が若く、ヘルミーナに厳選されたかわいさと愛嬌、そして賢さを持っている。
そして彼女達は、教育を受けている。
当家で働くなら、強く賢くなければいけない。
稼いでいるおかげで、多めの人数が働き、ローテーションで休暇と教育、業務と回っている。
「おかしい……」
「どうされました、お兄様」
「いや、夜の相手が見つからない」
王城では、王妃マティルデの息がかかった者が必ずいて、物欲しそうな顔をした王子がいると、お相手をねだっていた。
デリックの容姿も悪くなく、第一王子アルベルよりは好まれた事情もある、だが、アルベルは次期王候補、そこの違いはかなりある。
普通なら、王妃よりも気楽なデリック夫人も魅力であるが、現王妃やアルベルの性格から、王になってしまうとジャマな者達をそのままにはせず、謀略の的にすることは十分考えられる。
そのため余計に、みんなが距離を置き、夫人の息がかかった者だけが周りでうろついたいた。
そのために、行為に積極的な者達を、王子は食っていた。
貴族の子女としては、おかしな行動だと気がつかずに。
経験無しは、婚儀において重要なファクターとなる。
それなのに……
夜の訓練の時、屋敷で働く庭師などに誘われ、王子様は夜の町に抜け出す。
夜間ゲートを使う金属板は持たされている。
この屋敷、兵と言っても他の屋敷のように、立ちっぱなしではいない。
遠見の魔導具や、センサーが反応したとき、詰め所から出て行く。
夜間はさらに、何かが無い限り、兵は出てこない。
「おう、デリックこっちだ」
「ああ、すまない。またせた」
彼らは、庭師や清掃員。
だが訓練では一度も勝てない。
屋敷の外へ、自分だけで出る。
その不安さから、まるではじめて外に出た猫のように、おずおずとデリックはしている。
だが、飲み屋街へ行くと、それは初めての経験。
この町、その手の店には必ず管理が入り、病気などの検査が義務づけられている。
人気が出て、他領から流れ込んでくる口減らしの村娘達も多い。昼間は学校へ行き、夜はお店で金を稼ぐ。
実家での、今日もなんとか生きられたという生活よりは、天国のような暮らし。
他の領では、全員が名君では無い。
代官だとかなりいい加減で、住民が死のうが困ろうが知ったこっちゃないというのも多い。
その事を、シンも知っているため、夜間馬車を作った。
噂を広める。
その馬車に乗ると、幸せになれる。
闇奴隷として売られそうなら、自ら夜に走る馬車に乗れ。
普通危険があるため、夜間に馬車は走らない。
だが、それは夜に村々を回る。
「乗るのかい?」
「はい。もう限界なんです、弟も良いでしょうか?」
「ああ良いよ、中の食い物は食っていいから」
そうして今日も、馬車は走る。
むろん、噂が広がれば各領主も黙ってはいない、しかし、夜間の警備など簡易関所を作るくらいだが、見つけることは無かった。
そうしてたどり着いたのは、デルクセン領。
そう、初期に領民がおらず、苦肉の策として救済という人さらいを行った。
宿舎へと入り、健康状態のチェックと、教育。
無論通貨の使い方とか、基本的な物から入る。
その後本人達の要望を聞き、縫製や金属加工、その他職業教育が始まる。
そして、武術訓練と、基本的な身体強化と魔法を必須で習う。
民よ強くあれ。
そのおかげで、流れ込んでくるごろつき共は、この領では一瞬で捕縛され、鉱山行きとなる。
「おうおう、ねえちゃん今晩どうだい?」
「ああ? 今晩? 何すんの?」
「そりゃ…… 夜やるのは……」
見慣れない連中が絡み始めると、店の雰囲気が変わる。
皆が一斉に身体強化をつかい、雑談が止まり、静寂が店を支配する。
「なんだこれ、ひっ、許してくれぇ」
とまあ、兵を呼ぶことも無く大体収まる。
必然的に、治安がよくなる。
すると、人は安心して暮らせる。
そんな、良循環が生まれることになる。
「へー、デリックさん。良い所の坊ちゃんでしょう」
何コイツ、世間知らずで、中身の無い夢物語ばかり。
キャストに一発で見抜かれる。
「ああうん。ずっと王都に住んでいてね。最近こっちに来たんだ」
「へーそうなんだ。ああそうそう、この店でのお触りは厳禁。でも、自由恋愛は禁止じゃ無いから、口説くのはOKだからね。でも強引はだめよ」
このがっついている雰囲気、大丈夫かしら?
うちの子達に、食い散らかされそうな人ね。
変わった飲み屋、ボックスしかなく、常連なら気に入った子を指名、慣れていない人は、時間で女の子が代わる。
気に入れば、指名料を払うのだが、指名がかぶれば、入札という極悪会計。
イメージ的には、キャバクラとかガールズバーのようなシステム。この領は、お姉ちゃんが付くだけのお店が多い。
生活水準が高く、他領の様な本番メインのお店は、存在しない。
他領では、売春宿が生活に困った女の子の終着点だが、ここではそんな事はない。
出会い系は、専用の店がある。
入店代を男女が払い、適当な相手のところへ座る。
一五分という区切りがあり、話しや、雰囲気が合わなければ、相手を変える。
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そして初心な王子様は、そんな出会い系の店に、ハマっていく。
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