ツキも実力も無い僕は、その日何かを引いたらしい。- 人類を救うのは、学園最強の清掃員 -

久遠 れんり

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第五章 人は生き残れるのか?

第95話 何かが来た

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 シンもまた、方々を回り救援をしていた。

 探査をして、救援後魔導具で王都に送る。
 意外と小さな村でも、貯蔵庫などの地下室に潜んでいる者達がいた。

「おおおっ。何かが来るのじゃ」
 村の呪術師が急に何かを感じたようだ。
 彼らは追い込まれ、村長の家にある地下貯蔵庫に集まっていた。

 シンは探査魔法で、フェーズドアレイレーダー的に3Dとして見る。

「居るな」
 住民が残っているところは避けて、攻撃を行いモンスターを駆逐する。

 ばら撒かれる聖魔法の魔力。
「これはすごい。聖なる光が体を包み。うああっ駄目っう」
 呪術師は引っくり返る。

 やがて、閉じてあったはずの地下室への扉が開かれる。

 飛び出してきた、怪しい呪術師。
「先ほどの魔法あんたじゃな」
「ああそうだ」
 そう答えると飛びついて来た。

「好き、わしと子をなしてくれ」
 呪術師は、まだ一五になるかどうかの幼さ。
 口調はまあ、仕方が無いのだろうが、奇妙な者に惚れられたようだ。

 シンは、無言で王都へゲートを開くと、住人を押し込む。

 そして、なにも見なかったように、次の村へと向かう。

「あの者、陰と陽が混ざり合い、そして魂の階位も高い。人のままで神に最も近いのではないじゃろうか。まっこと惜しい……」
 王都の広場で、まだブチブチと言っていた。

 それからも、彼は救済を行う。

「おおい、向こうから光が飛んでくる。全員防御」
 だが、来たのは攻撃ではなくシンだった。
 ちらっと、数千のモンスターを見ると、何か音が聞こえた。
 そう、はじけるような……

「ええ見たんです。光が、白い光が来て町の上へ止まると、壁から何かが出た様に、周囲にいたモンスターがはじけ飛んだんです。潰れて血とか肉塊は町から外に向けて流れていましたから、この町の壁から何かが撃ち出されたのだと思います」

「あれは何だろうなぁ、そう波紋、池に石を放り込むと広がるあれ。白い光があれのように広がったんだ。触れた瞬間にモンスターがはじけちまった」

 そうすでにシンの攻撃は、常人の理解の外にあった。
 町の人が言っていた様に、空間を揺らす。
 つまり、強制的に物理的変化を与える。
 波のように、圧縮されて、解放。
 モンスターは、波の揺れにより、マリアナ海溝並みに圧力がかかり、その後成層圏並みに陰圧を喰らう。
 だからはじける。

 最初は盗賊への拷問として開発をした。だが意外と使い勝手が良く、最近はよく使っている。

「周囲のモンスターは倒した。町長は居るか?」
「はっ」
 かなり怖がっている兵に連れられ、町長の屋敷へ向かう。

「なんだこの忙しいのに? なんだお前は?」
「救援に来た。コンラート王国シン=デルクセンだ」
「デルクセンだ? ……はっ、この町の町長デル=ヘイデン男爵でごじゃいます。侯爵閣下」
「ゲートを、魔導具で王都に繋ぐ。向こうの指示を聞け」
「はっ。ありがとうごじゃいます」

 シンが居なくなった後、側近が聞いてくる。
 何者ですか?
「馬鹿者、王都の遷都、それに関わる一連の中で、絶えず暗躍をして準備を整え、王達を助けた。デルクセン卿に睨まれれば、町ごと無くなるともっぱらの噂だ。それも魔法一発でな」
「そんな。人間ですか? それ……」
 話を聞いて、部下は怪訝そうな顔になる。
 だが、男爵もそんな事を聞かれても困る。

 なにせ……
「本人にも分からないらしい」

 そう、どう考えてもおかしく、本人すら、最近になっておかしいと思い始めたようだ。

 混ざったもの、それは想像以上に大きかった様だ。
 まあヒトでは無い、悠久を生きたリッチの能力。
 人をやめるには、十分だったのだろう。

 そしてシンは、とうとうバンパイアどもを捉える。

「ぬっ、何かが来たぞ」
 それはうち捨てられた廃城。

 周りを囲むは、驚異的な力を持つミノタウロスの軍勢。

 その外周には、近隣の貴族が陣を構えて囲んでいた。
 だが、もう幾日囲んでいるのか、疲れが表情に出てボロボロの状況。
 しかし、儀礼として、他家の攻撃中に横やりを入れるわけにはいけない。

「これは困った。中にひのふの三体ほどか。そこの兵、何時からこの攻撃をしておる?」
「ああ? もう一〇日だ。敵が強くて一歩も進まん。援軍でも来てくれないとだめだ」
 彼はそう言うが、敵の強さを考えれば、止まっていること自体がおかしな話。
 この力量差なら、一気に押し込まれてもおかしくない。

 シンは、少し離れて、様子を見ることにする。

 その晩、奴らは来ていた。
 城から這い出し、兵の居るテントを飛び回る。

 そうこの兵達、多くはすでに眷属とされていたようだ。
 かれらは、道楽として、遊んでいた。
 一斉に兵達が向きを変えて、自軍を襲ってくる。
 それは恐怖だろう。

 だがその滑稽な姿が見たいため、彼らは時間を掛けて遊んでいた。
 悠久の時を生きるバンパイア達。そのいたずらも、なかなかに性格が悪い。

 まあ、それもシンが見た以上、終わりを迎えるが、兵を殺すのはまずい気がする。
 下手をすると、敵認定だ。

 とりあえず、明け方近くに、城へ帰ろうとするバンパイアを捕まえて、柱へとくくりつける。

 そう時間が経てば、日の出となる。
 それはじわりじわりと、彼らを焼くことになる。
 不思議なのは、コウモリへの変態ができない。
「なんじゃこりゃあ」
 城へ帰ろうと思ったら、いきなり掴まった。

 紐で柱にくくられていても、すぐに逃げられる。
 そう思っていた、しかし、変身も能力も封じられていて動けない。

 そう彼らは、朝陽の中で灰へと変化をしていった。
 そして、噛まれて二四時間が過ぎて、完全に眷属化をした者達も、次々に崩れ始めていく。

 当然陣は大騒ぎとなる。
 そしてその時になって、多くの兵が敵の傀儡となっていたことを知る。
 当然賢いものは、誰かがこれをしてくれたことに気が付く。
「一体誰が来たのでしょう?」
「さあな。だが味方だろう」

 まだ隊長である伯爵は、状況が分からず、騒いでいる……
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