はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
2 / 95
第一章 先ずはサバイバル

第2話 出発。そして開始。

しおりを挟む
「おら、喧嘩をするな。さっさと並べ」
 修学旅行は学年全部、集まると、クラス同士で当然のように威嚇が始まる。

 だが、一組だけはおとなしい。

「京都方面て、どこですか?」
 気になって仕方が無いから聞いてみる。

「今から説明をするから、落ち着け。いいか京都は北東だ。はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。向こうへ進め」
「はっ?」
 ここはグランド。

 北東には、さっき出てきた校舎がある。
 だけど、そこには、運動会とかで使いそうな、アーチができていた。
 まあ修学旅行と言いながら、実習用迷彩服を装備。

「ほら出発だ、あのアーチをくぐれ。一組から行け」
 そう言われて、渋々向かう。

 そのアーチが境界だったらしく、世界が変わる。

 小山の上、森の中にぽっかり開いた広場。
 周囲は木がびっしり。

 奇妙な空間の揺らぎから、生徒達がぞろぞろでてくる。
「よく見りゃ、あのアーチ状に空気の揺らぎが見えるな」
「相変わらず、ぶっ飛んだ学校」
 そう言って、杉原は喜んでいる。


「さてみなさん、ちゅーもーくぅ。ここはデイムンディ、まあ異世界ですね。此処が修学旅行先です。皆さん楽しんでください。そして…… 生き残ってください。それでは解散」
 そう言って、学年主任のティアマト先生は、朝礼台と共に消えた……

「あー、えーと今のだけ? 放置?」
「そうだな」
 クラスのみんなも、状況が判ったようで、集まってくる。

「どうする?」
 皆が聞いてくる。
「サバイバルの基本、水の確保だ……」
 ぐるっと周りを見回す。

 まあ他のクラスの奴らが居てじゃまだが、この始まりの島は、
瞳型に東西に長く、ここはどうも森の中心にある小山。
 
 北側に千メートルくらいの山地がある。 
 周りは海だが、海の向こうにうっすらと島影が見える。
 
「あの山地に向かおう、他のクラスもだが、周囲を警戒しながら移動だ」
「「「おう」」」
 そう言って速やかに、そしてこそこそと、一組は消えた。


 他は……
「おう奴隷ども、水と食い物、それと家を造れ」
 二年三組のボス。
 志賀 雄介しが ゆうすけが、当然のように命令をする。

 だがここは、学校ではないし、装備はB。
 ナイフやロープ、その他必要な物は揃っている。
 当然のように逃げて、彼らは帰ってこなかった。

 そして、これ幸いと、食料などを探し始める女の子を襲う奴達。
 学校から離れた開放感から、猿たちは動き始める。

「おおっ、あれ良いんじゃね」
「別のクラスか。まあ良いか。襲われても、大体は恥ずかしがって内緒にするしな」
 だが、こいつらのクラスは、はまとまりなく動いていたが、普通はしない。

 二人の女子に飛びついたとき、当然だが叫ばれる。
「きゃあ、なに、だれかあぁ」
 あわてて、口を押さえて、思いっきり指を噛まれる。

 流石に躊躇され、ちぎれることはなかったが、かなりの痛み。
「この野郎」
 そう言った時、誰かが背後に来て、思いっきり蹴飛ばされる。

「だいじょうぶか?」
北川 雅美きたがわ まさみと、森谷 めぐみもりたに めぐみ は、やって来た長谷川 俊一はせがわ しゅんいちの側に駆け寄る。

「なにすんだよ、足元が危なそうだったから助けたのに、その女、俺の指を噛みやがった、慰謝料を払わせる。渡せよ」
「何言っているのよ、いきなり背後から来て、むっ胸を揉んだじゃない」

「嘘つくんじゃねえよ」
 五組の、葛山 正くずやま ただし皆川 哲平みなかわ てっぺい海東 研吾かいとう けんごは調子に乗って喋るがいつもとは違った。

 ぞろぞろとやって来た、二組の連中。
 近くに居たんだろう。

 一人が、いきなり葛山を殴り始めた。
 それを切っ掛けに、一方的にボコられる。

「畜生、覚えてろ」
 そう言って、三人は逃げ出した。

 だが、飛び込んだ藪の向こうは谷だった。
 一〇メートルほど落ちて、動けなくなっていたところに、奇妙な生き物がやって来た。
「ぐぎゃ?」
 かわいくないが、小首をかしげて少し見た後、躊躇なく棍棒で殴られた……

 ぐしゃっと……

 目が覚める。
「あれ?」
「早いな、クラスと名前」
 先生はテントの中でどっかりと椅子に座り、目の前の机には紙が積まれていた。

「こちら側と向こうでは時間が違う。せめて三日、三十年は暮らしてこい。ほら、反省文一〇枚、早くしないと向こうの流れは早い。皆について行けなくなるぞ」

 そう言っている間に、向こうで死んだ奴らが、次々と湧いてくる。
「ほら反省文」
 先生は説明をするのが面倒になったらしく、説明の立て看板を立てる。

 そして反省文を渡すと、生徒はまた消えていく。現れた場所は死んだ地点ではなく、始まりの島、最初の場所。小山のてっぺんに戻る。

「ええっ、またあぁ」
 食べてはいけなものを、つまみ食いして死んだ女の子達。
 死んで帰る時は、当然装備もない。それは地味にきついハンデとなる。

「皆の所へ急ごう」
 そう言って走って行く。

「俺達も、装備を探そう」
「おっ、おお」
 葛山達は焦って探すが、ロスは向こうで三〇分以上、すでに七六日がこちらでは過ぎていた。
 来たときは、春っぽかったのにもう夏。
 当然装備もなく、樹海を彷徨うことになる。

 次々に生徒は現れて、駆けだしていく。

 困った葛山達は、適当な生徒の後を付いて行く。
 まあ良くある話し。

 だが…… 
 そこにいたのは、いつか見た連中……
「また女子を狙ってきたのか?」
 今度は躊躇などなかった。
 此の数ヶ月の間に、彼らは幾度となく戦闘を繰り返し、外からの暴力には躊躇してはいけないと理解をしていた。
 口だけの反省も…… 当然信用をしない。

 そしてここは、学校の生徒以外に、獣と未知のモンスター達がいた。

 さらに、暮らすうちに、魔法を使える者が現れ始める。
 そう、ここは。神の創った訓練場。
 此処で彼らは、剣と魔法、そして強靱な心と不屈な精神を鍛えあげる。
 来たるべく聖戦のために。

「ほい、反省文」
「はい……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...