はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
19 / 95
第二章 冒険者時代

第19話 巡り会い、町

しおりを挟む
「おう、おまえら何組だ?」

 すったもんだしたあげく、町に入った亀井達のグループと、明宏達。
 道ばたで相談をしていると、声をかけられる。
 明宏達は、さすがにもう農民の格好はしていない。

 声をかけたのは、無論一組のグループ。
 男三人に女二人。
川上 千尋かわかみ ちひろ斉藤 勝巳さいとう かつみ 西田 敏弘にしだ としひろ
 そこに、女の子が二人。
木村 孝子きむら たかこ望月 京子もちづき きょうこ

 話を始める亀井達を余所に、美加の目に光るものが……
 このグループは、男があぶれている。

「おれらは、三組で、こっちは四組だそうだ」
「そうか、いつ来たんだ?」
「四日位前、あー、明宏達は?」
「俺達はもう、一週間位になるか」
「うん、そうね」
  腕を組む叶恵と、それを見て、どこかから舌打ちが聞こえる。

「そうか、悪さをしないなら、宿舎に来るか?」
「宿舎?」
「最初…… 俺達皆がこのなりだろう。半分逮捕をされた感じで連れてこられて、まあ、監視はあるが、その時から宿舎を使って良いという事で、宿代もかからないし快適だぜ」

 仕事をして金ができたので、数人は宿へ行ってみたようだ。
 ところが、日本の宿をイメージしたら、大間違い。
 板の間に、適当に作られた干し草敷きのベッド。
 当然、チクチクするし、虫も居た。
 そうダニとかその類い。
 金を払ってひどい目に会いに行ったのかと、その報告を聞いて、皆大笑い。

 そこよりも安いところだと、山小屋のような雰囲気。
 板の間に全員雑魚寝で、朝には財布も何もかもなくなっているらしい。
 女の子だと、貞操も危険だという事だ。

「やべー、俺達なんとか安い宿なら、泊まれるなと話をしていたところだよ」
「やめた方が良いぜ。宿舎へ来いよ」
 そう言って、怪しい集団は膨らんでいく。

 代官は、話を聞いて寝込むことになる。
「奴らいったい、何処から来るのだ」
 気がつけば、じわりじわりと数が増えているらしい。
 散らばらず、与えた宿舎に留まっているのが救い。
 だが、それにしても限りがある。
 このまま彼らが増えるのであれば、受け入れるところが必要。

「ええい、彼らの宿舎を造れ。建て増しをするのだ、その時に意見を聞き、できることなら答えるように」
 彼は決断をした。
 救世主かもしれない。

 ひょっとすると…… いや、少しだけ、覚悟は決める。

 建て増し計画発令のため、調査に来ていた。
 餌を目の前にぶら下げて、そのかわりに情報を抜こうという意図が当然ある。

「諸君ら、じわじわと人数が増えているようだが、どこから来ておるのだ?」
「どこって…… なんでそんなことを?」
 皆は、顔を見合わせる。

 コホンと兵は咳払いをして、答え始める。
「代官様、オサメルーデ=マーチン男爵様が、人数が増えるようであれば、宿舎を建て増ししてくださるそうだ。そして注文があれば聞き届けるようにと聞いておる。さて先の質問、返答はいかに?」
「ちょっと待ってください」
 皆は集まって相談を始める。

 島にいることは言っても良いかと思ったが、中には悪さをする奴も居る。
「下手に言って、探しに行かれても困るな」
「そうよ。向こうの島じゃ、死んでも反省文を書くだけで戻ってくるだけらしいし、放って置けば良いのよ」
 間中 美加まなか みかはその事を言ってしまう。

 一組の連中は今だに誰も死んでいない。
 そう…… それは最も、必要な情報だった。

「おい教えてくれ、どうやれば修学旅行は終わるんだ?」
 つい兵がいるのも忘れて、杉原は 美加に詰め寄ってしまう。
 男の子、それもグレードが高い。
 美加は、急に近寄ってきた顔に、つい唇がにゅっと伸びる。

 だが先に、意識が飛びそうになる。
 そう血圧が一気に上昇をしたのだ。

 はううっ。
「こら意識を失うな、答えろ」
「はっ。初めてなの…… 優しくして…… お願い」
「ちがーうっっ」
 その態度に、森 澪もり みおが前に出る。
「あんた。人の彼氏相手に、どういうつもり? 楓真。あんたも離れて」
「ああ。はいはい」
 澪の剣幕に、頭に登っていた血が下がる。

 その奥で、兵は聞いていた。
 謎のキーワード、『シュウガクリョコウ』とは何だ?
 これは大事な何かを聞いたに違いない、そして、どうすれば終わるのかと言っていた。
 やはり、この一件、だだの神隠しではない。
 わいわい言っている皆を残して、兵達は消えてしまう。

「あれ、兵士さんが消えた」
「その方が良いよ、あわてて随分まずいことを言った気がする。聞き取りへの回答集と、宿舎への要望書を作ろう」
「ああ、そうだな」

 その時、男に囲まれ、もみくちゃにされて、喜んでいたものが一人。
「幸せ…… 私モテモテだわ」
 それだけで、幾度か上り詰め、幸せそうな顔で気を失っていた。


「なに? まことか」
「はっ」
 兵からの報告は、速やかに男爵に伝えられた。

「ふうむ…… シュウガクリョコウと…… それはいかなるものなのか誰か判らぬか?」
 その場に居る者達は、首を横に振るのみ。

 だが兵は、情報を出してくる。
「ですが、それを言ったとき、その者に対してどうやれば終わるのかと、それはもう必死の形相で詰め寄っておりました。愚考ですが、彼ら、神になるための試練を、地上にて行っておるのではありませんか?」
 それを聞いてその場で、どよめきが起こる。

「神の試練か…… シュウガクリョコウ…… それがいかなるものかは分からぬが、力あるもの達が、必死でどうすれば終わるのかと問うほどのもの…… そうか、試練を受けている者達が何かを達成をするのか、それとも悟り、重要な事に気がつくのか…… なかなかに厳しいものだとみた」

 そこまで考え、彼は思いつく。
 試練だとすれば、余り手を掛けて反則とされてしまうと、我らのせいで失格などになれば彼らのためにならん。
 その線引きについての話し合いは、なかなか答えが出ず、三日三晩延々続いたようだ。

「神の試練、シュウガクリョコウ…… 恐るべし……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...