はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
34 / 95
第三章 大陸統一

第34話 旅は危険

しおりを挟む
「それでは、お気を付けて」
 サンドウ皇国の検問だが、実に和やかに相手をしてくれて、見送られる。

「前に、同じ様な格好の方達が入国をしましたが、インセプトラ―王国ではその格好は一般的でしょうか?」
 非常に柔らかな物腰で聞いてくる検問の兵。
 少し離れた所にいる兵は、こちらに槍を向けて震えているようだが、危険は無さそう。

「いえこの格好は、私たちのがっ…… いえ、ユニフォームです」
「いやあ、そうでしたか、どうぞ、良い旅を」
 周りを囲んでいた兵達が、道を空けてくれる。

 その脇では。
「おらあ、荷物を見せろや。さっさとしろ」
 そんな感じだから、特別この検問所が緩いという事も無いらしい。

 そう、検問の兵達も人間。命は惜しい。
 そのために、日々聞こえてくる情報は聞き逃さない。

 あるときから流れ始めてきた変な噂。
 サンカウロスの町へやって来た正体不明の連中。
 強いし、着ているものも、妙な格好だがあれは、森に入ると目立たなくなる。
 奴らは特別に訓練されたやばい奴らだ。

 何だそりゃと思っていたら、そんな格好をした奴らが、他国の貴族を連れてやって来た。
 あからさまに怪しい荷車を引いて。
 だがその荷車、魔道具が使われ、錠の掛かった箱を積んでいた。
「見て良いか?」
 生唾を飲み込みながら、職務だし、仕方が無いと聞いてみた。

「なにを?」
「その下側、怪しい箱だ」
 そう聞くと、怪訝そうな顔をされる。

「何だそりゃ、これは荷車の床だ、箱などどこにも無いじゃないか」
 そう言い張る。

 だがその時の気配、少し動いただけで、首が胴体から離れるような殺気を覚える。
 こいつらがそうだ。
 あの奇妙な噂、凶悪な戦闘集団。

 そう、何もせず…… いや何も出来ずに通してしまった。
 だがその後、町を救ったと噂が流れた。
 奴らは、人間離れした戦闘集団、関わってはいけない。

「今回も通したが、問題ないだろう」
 兵がそう言ったとおり、街道沿いの野党や盗賊は根絶やしとなる。

「また居たわよ」
 そう、この国で長引く不作。その影響で限界を超えた農民達が、野盗などにジョブチェンジした。
 決まった村から抜けてしまうと犯罪人。
 もう先がなくなる。

 野党達は、いつもの様に街道を見張りながら、山の中を先回りをして罠を仕掛ける。

 だが、そいつらは……
 山の中を、いつもの様にこそこそと移動していく集団。
 その後頭部に、音もなく飛来した矢が刺さる。
「あっおい。がっ……」
「うわっ」
「ぎゃあ」
 その攻撃は無慈悲。

 彼らは、昔出会った盗賊のせいで、盗賊に対する慈悲はなくなっていた。
 まるで、台所に出没する黒い虫と同じ様な扱い。

「あいつら、女性を捕まえたら性奴隷にするのよ。許せない」
 そう、それはひどい現場だった。
 人をおもちゃにして弄ぶ、そこに尊厳とか慈悲はなかった。
 だから……

「等しく報いを受けよ……」
 氷のような殺気を放つ矢は、盗賊を倒していく。
 実際に氷の矢。
 回収をしなくて良いので非情に便利。

 強度が必要なら土属性の矢。
 後ろ半分軽石、鏃は金属系。
 刺さるとパキッと折れる凶悪な逸品。

「本当は、外周に穴が開いたパイプがいいんだけど」
 ラノベとかに詳しい大塚君が言っていた。

「暗殺とは」
 とか言って、ナイフの刃先は黒くしたし、ロープなども黒く塗ったものを用意している。

 人が集まれば、以外と色々な知識が集まる。
 それはひょんな時に役に立つ。

 そうして彼らは、順調な旅を続けるが、その頃、サンカウロスの町では定期便が来ていた。
 その中に、久しぶりに翼人、大ディイールが混ざっていた。

 ちょっと間違えると、昔のアニメの主人公だが、こいつは悪役。
 いつの間にか、生活魔法の仲間入りをした、浄化。

 それを纏わした剣が振られ、簡単に退治されていく。
「いやあ、こんなに楽になるとはな」
「全くだ、今は留守だが、しっかり町を守るぞ」
 町の住人に慕われ、彼らの帰りは心待ちにされている。

 だが次に出会ったとき、敵と味方となってしまう。
「嘘だろ……」
「あいつらと戦うのか?」
「そんなのは……」
 さてご期待。

 そう奴らが出たと言う事は、新月。
 新月の夜は暗い。

 彼らは、野営中で一部が見張りをしていた。

「うん? ああお前か、がんばれよ」
 そう言って彼は、親指を立てる。

 ざくざくと、足音を立て彼女は目標に近付く。
 そして……

 彼は、一瞬何が起こったのか判らなかった。
 連絡兵として、訓練は欠かしていない。
 父親は、騎士爵で、一代限りのため幼いころから特訓を受けた。
 そのおかげか出世をして、準男爵となり父を抜いた。
 伝令係として、火急の場合なら王に謁見まで許される立場。
 そう彼の未来は、順風満帆だった。

 だが、迂闊なミス。
 些細だが、致命的だろう。
 挽回をするため、王が目を掛けているこの方達に庇護を受けよう。
 そう考えた。
 最低でも命。
 上手く行けば役職も。

 驚くことばかりだが、彼らは若くても良識的で強く、そして美しい人も居る。
 懇意になれぬものか。

 彼は、気を抜いてはいなかった。
 だが、体に掛かる重み。
 そして口元にキス。

 それと同時に、女性独特の匂いを感じる。
 だれだ?
 彼は目を開ける。

 そして……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...