65 / 95
第四章 魔王と魔人
第65話 やって来た者達
しおりを挟む
「おいあれなんだ?」
魔人族の大陸、港町イントロイトスで、船を守っていた兵達は騒ぎ始める。
そう前回遠征時に、船を守るために警備についていた者達だ。
だが、敵は陸側ではなく海から来たようだ。
水しぶきを上げて、光を放つ目が二つ。
『ぶおおー』と奇妙な音を立てている。
「っ、大きいぞ、魔導砲準備」
「隊長、旗が我が国の旗です。援軍です。上部にこちらより黒くて、大きな立派なブツがこちらを向いています」
双眼鏡をひったくり見つめる。
「あれは船なのか?」
港側ではなく、浜の方へと向かうようだ。
子どものような感じで、皆が謎の物を追いかける。
それは、普通に浜へと上がってきて、呆れたことに街道を走り始めた。
内部では、こんないい加減な会話がされていた。
「なあ、ホバーってさあ、陸も走れるよなあ」
「走れるな」
「荷車を出して、ガタガタしながら移動するより、こっちの方がよくね」
「そうだな、行くか」
そんな重要な事があっさりと適当に決められた。
だが実際、大陸間の移動も陸上も、ホバーの方が早い。
スカートもきっと地球の物より丈夫。
通常の矢や槍も刺さらない。
「あっ、残していた兵がいる。乗せるぞ」
「了解」
死に戻ったときから、すっかり忘れていた。
「辛く長い任務、ご苦労であった。あの時、我らは負けてしまった。特殊な事情があり詳細は言えないが、再びこの地へとやって来た。共に戦おう」
そう言って言葉を濁したが、今回ついてきた兵達に詳細を聞いた様だ。
殺されたが、シュウガクリョコウの途中であるため王達は蘇ってきた様だ。
「目的を達成するまで、死ぬことすら許されないらしい」
「そりゃありがたいが、辛いな」
そしてそれは、人間離れした強さを持つ王達が死ぬほどの戦いに、自分たちも乗ったと言う事。
「俺達も若返って生き返るのかな?」
「さあ、どうだろうなあ? 聖戦ではあるが……」
彼らは不安を募らせる。
いつか来た道をまたひた走る。
今回横ではしゃいでいるのは、ウェヌスではなく、澪達だ。
ふと思い出すと、それは悲しく、心の棘として刺さっている。
だが澪達には、そんな心の内は告げられない。
勘ぐられるだけだしな。
「あのテクはすごかったものねぇ、忘れられないんだ……」
なぜかそっちへ、話が飛んでいくからだ。
悲しみを、語れない辛さ……
「龍一ったらさ、師匠の話をすると必ず一部が元気になるんだもの、どう思う?」
「あれすごかったもの……」
そんな話しが、女子側ではあった。
そして今回、ホバーによる移動のため、速度が速すぎて偵察と連絡が魔人族側で遅れて混乱をする。
大きくて、早い。
街道を走る馬車達も、あっというまに撥ねられていく。
それは本当に無慈悲な事。
「ええ、そいつは突然現れました。ぶおおとか言う音を…… いえ唸りでしょうか? 馬にひかれた荷車。それごと、パイーンと…… そこに容赦は無く。えっ? 怪我をした馬? 美味かったです。まあ最近始まった保険が効きまして。ええまあ損はありませんが恐ろしかったです」
魔人族領の各地で起こったひき逃げ事件。
それは、魔王の町アンダワルドへと近付いていく。
だが、彼らは町には寄らず、そのまま行きすぎ、霊廟へと一直線。
そう彼らは、魔王が目覚めたことを知らない。
彼の地へと一直線に向かってしまう。
そこは 、扉がぶち抜かれ、おっぴろげられていた。
「久しぶりだな」
周囲には、あの時乗っていた、荷車の破片が散乱していた。
あの爆発にも霊廟は耐え、あの時のまま。
奥の扉もそのままに、あのブヨブヨは無くなっていた。
いくつかの骨が転がっている。
一緒にいた兵達と、あの兄妹。
皆は手をそろえ、拝んだ後。
箱に収めていく。
そして、各自の身守りナイフを回収。
「居なくなっているな」
「ああ。ここより奥に魔人の居る洞があると言っていた。そっちを浄化しよう。向こうは実体がなく、悪意の固まりらしいからな」
そうして彼らは、山奥の洞へと向かう。
魔人が蠢くところ。
ボス戦を回避していきなりラスボス戦へ。
だが、彼らの使う浄化はめっぽう効いた。
「おいそっち、逃げるぞ、逃がすな。それにガス状の黒い奴、そいつが本体のようだ、触れるな、食われるぞ」
皆が強さの差はあるが、浄化の光を纏い、魔人を消していく。
その黒き煙は噴く出す端から滅されていく。
「魔神様が助けを求めている」
キュピーンと何か電波を感じたらしく、魔王がいきなり立ち上がり、走り始める。
よく判らない繋がりがある様だ。
魔人は眠っていた。
だが、端から焼かれる様な痛み。
逃げようとするが、どこまでも追いかけてくる浄化の光。
「何かくるぞ」
「魔人族だろ撃て」
「了解」
今回、初の砲撃。
「ターゲットロック。フルオート追尾オン。てぇ」
「了解」
その時、狂気の様な銃撃は始まった。
魔王はとっさにシールドを張る。
だが、凶悪な物理攻撃は、シールドを抜け、類い希なる身体再生が追いつけないほどのスピードで彼を壊していく。
時代の変化。
昔なら無敵だった。
魔導具の進化により、その攻撃は生き物の限界を超えた。
龍一達が魔人を浄化する間に、名も無き兵達が魔王を倒してしまう。
いや本当、三十五ミリ機関砲は凶悪だった。
魔王は銃弾を食らい、分解されていった。
その後駆けつけてきた四天王達も、後を追うことになる。
それは、訳も分からず無慈悲に……
魔人族の大陸、港町イントロイトスで、船を守っていた兵達は騒ぎ始める。
そう前回遠征時に、船を守るために警備についていた者達だ。
だが、敵は陸側ではなく海から来たようだ。
水しぶきを上げて、光を放つ目が二つ。
『ぶおおー』と奇妙な音を立てている。
「っ、大きいぞ、魔導砲準備」
「隊長、旗が我が国の旗です。援軍です。上部にこちらより黒くて、大きな立派なブツがこちらを向いています」
双眼鏡をひったくり見つめる。
「あれは船なのか?」
港側ではなく、浜の方へと向かうようだ。
子どものような感じで、皆が謎の物を追いかける。
それは、普通に浜へと上がってきて、呆れたことに街道を走り始めた。
内部では、こんないい加減な会話がされていた。
「なあ、ホバーってさあ、陸も走れるよなあ」
「走れるな」
「荷車を出して、ガタガタしながら移動するより、こっちの方がよくね」
「そうだな、行くか」
そんな重要な事があっさりと適当に決められた。
だが実際、大陸間の移動も陸上も、ホバーの方が早い。
スカートもきっと地球の物より丈夫。
通常の矢や槍も刺さらない。
「あっ、残していた兵がいる。乗せるぞ」
「了解」
死に戻ったときから、すっかり忘れていた。
「辛く長い任務、ご苦労であった。あの時、我らは負けてしまった。特殊な事情があり詳細は言えないが、再びこの地へとやって来た。共に戦おう」
そう言って言葉を濁したが、今回ついてきた兵達に詳細を聞いた様だ。
殺されたが、シュウガクリョコウの途中であるため王達は蘇ってきた様だ。
「目的を達成するまで、死ぬことすら許されないらしい」
「そりゃありがたいが、辛いな」
そしてそれは、人間離れした強さを持つ王達が死ぬほどの戦いに、自分たちも乗ったと言う事。
「俺達も若返って生き返るのかな?」
「さあ、どうだろうなあ? 聖戦ではあるが……」
彼らは不安を募らせる。
いつか来た道をまたひた走る。
今回横ではしゃいでいるのは、ウェヌスではなく、澪達だ。
ふと思い出すと、それは悲しく、心の棘として刺さっている。
だが澪達には、そんな心の内は告げられない。
勘ぐられるだけだしな。
「あのテクはすごかったものねぇ、忘れられないんだ……」
なぜかそっちへ、話が飛んでいくからだ。
悲しみを、語れない辛さ……
「龍一ったらさ、師匠の話をすると必ず一部が元気になるんだもの、どう思う?」
「あれすごかったもの……」
そんな話しが、女子側ではあった。
そして今回、ホバーによる移動のため、速度が速すぎて偵察と連絡が魔人族側で遅れて混乱をする。
大きくて、早い。
街道を走る馬車達も、あっというまに撥ねられていく。
それは本当に無慈悲な事。
「ええ、そいつは突然現れました。ぶおおとか言う音を…… いえ唸りでしょうか? 馬にひかれた荷車。それごと、パイーンと…… そこに容赦は無く。えっ? 怪我をした馬? 美味かったです。まあ最近始まった保険が効きまして。ええまあ損はありませんが恐ろしかったです」
魔人族領の各地で起こったひき逃げ事件。
それは、魔王の町アンダワルドへと近付いていく。
だが、彼らは町には寄らず、そのまま行きすぎ、霊廟へと一直線。
そう彼らは、魔王が目覚めたことを知らない。
彼の地へと一直線に向かってしまう。
そこは 、扉がぶち抜かれ、おっぴろげられていた。
「久しぶりだな」
周囲には、あの時乗っていた、荷車の破片が散乱していた。
あの爆発にも霊廟は耐え、あの時のまま。
奥の扉もそのままに、あのブヨブヨは無くなっていた。
いくつかの骨が転がっている。
一緒にいた兵達と、あの兄妹。
皆は手をそろえ、拝んだ後。
箱に収めていく。
そして、各自の身守りナイフを回収。
「居なくなっているな」
「ああ。ここより奥に魔人の居る洞があると言っていた。そっちを浄化しよう。向こうは実体がなく、悪意の固まりらしいからな」
そうして彼らは、山奥の洞へと向かう。
魔人が蠢くところ。
ボス戦を回避していきなりラスボス戦へ。
だが、彼らの使う浄化はめっぽう効いた。
「おいそっち、逃げるぞ、逃がすな。それにガス状の黒い奴、そいつが本体のようだ、触れるな、食われるぞ」
皆が強さの差はあるが、浄化の光を纏い、魔人を消していく。
その黒き煙は噴く出す端から滅されていく。
「魔神様が助けを求めている」
キュピーンと何か電波を感じたらしく、魔王がいきなり立ち上がり、走り始める。
よく判らない繋がりがある様だ。
魔人は眠っていた。
だが、端から焼かれる様な痛み。
逃げようとするが、どこまでも追いかけてくる浄化の光。
「何かくるぞ」
「魔人族だろ撃て」
「了解」
今回、初の砲撃。
「ターゲットロック。フルオート追尾オン。てぇ」
「了解」
その時、狂気の様な銃撃は始まった。
魔王はとっさにシールドを張る。
だが、凶悪な物理攻撃は、シールドを抜け、類い希なる身体再生が追いつけないほどのスピードで彼を壊していく。
時代の変化。
昔なら無敵だった。
魔導具の進化により、その攻撃は生き物の限界を超えた。
龍一達が魔人を浄化する間に、名も無き兵達が魔王を倒してしまう。
いや本当、三十五ミリ機関砲は凶悪だった。
魔王は銃弾を食らい、分解されていった。
その後駆けつけてきた四天王達も、後を追うことになる。
それは、訳も分からず無慈悲に……
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる