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第五章 本当の戦い
第75話 見てしまった
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「どうして…… 補佐まで来たのでしょうか?」
言葉は普通だが、表情は全開で俺を嫌がっている。
庁舎で会ったときには、いつも能面のようだったのだが、表情が出るとは、何か心境の変化か?
「そんな、いやそうな顔をするな」
そう言われて、さらに眉間の皺が深くなる。
「嫌なんです。嫌そう、じゃありません」
彼は、面と向かい、そう言われて笑う。
彼女は頑張り屋で見込みがあった。だからネチネチといじ…… 教育を行った。
すると、なぜだかこの状態となり、彼女に面と向かって嫌いですと言われる仲になってしまったようだ。
「ちなみに、君の退職は保留だからな」
そう教えると、彼女の表情は一変。
「えっどうして? 王妃は職業なんですよ。副業は禁止なんでしょ? はっまさか、この状態だから、退職金をケチるために共済組合から通達でも? 私を懲戒とか?」
真面目な顔をしてこれだ……
「その辺りは判らん。それに王族は家業だから…… 多分…… 大丈夫だ」
「そうなんですか?」
王族が家業、彼女は釈然としない が、一応納得をする。
「それで報告のあった、武器の見学と…… 魔法だが、さっきのは君が?」
「ええまあ。あっ、この方は王国魔道士、宮廷魔道士の最高峰マードォウ=キンワメターノ伯爵です。私の師匠です」
さっき横であわあわしていたのは、魔法使いの偉い人だったようだ。
「日本の、緊急時特別対外対策課国野 紡と申します。よろしくお願いします。キンワメターノ伯爵様」
「うむ、奥方は、筋が良いと言うより……」
伯爵が、ぼしょぼしょと言った言葉の最後、確かに人間じゃない化け物だとと言っていた。
「ではまあ、案内をするなら、今日の訓練は終了とする、頭痛とかだるさとかはないかね?」
「ええ、このくらいなら、問題ありません」
あっけらかんと返す彼女、やれやれという感じの伯爵。
どうやら色々と認識の差があり、それはかなり深くて暗い谷のような物の様だ。
「失礼をします。補佐、あそこにあるのが倉庫なので先に行きましょう」
彼女が訓練をしていた広場の一角、巨大な建物が建っていた。
「レンガ造りであの大きさ、耐震性とか大丈夫なのか?」
「何かよく分かりませんが、レンガ風だそうですよ。中には金属メッシュが入っていて、土を石化しているから、コンクリートより丈夫だとか聞きましたけど」
金属メッシュ?
基礎部分に使う、コンクリートメッシュと同じものか?
石化?
まあ、気にしないでおこう。
さっき魔法を見たばかりだ、日本とは色々と違うのだろう。
そう違った。
「なんだこれは?」
彼女が倉庫脇のパネル。そうは言っても一見ただの石だがそこに魔力を流すと、通用門が開いた。
「すごいな、指紋認証なのか?」
「魔力認証です」
そう、最初指紋かと思った。
中に入り、またパネルに触れる。
「おわっ、灯りが付いた」
「ええ、こちらは電気じゃないので、とってもエコですよ」
そういう問題じゃない。
発光器具というよりは、天井全体が光っている。
でだ…… 見た目木製。
引くところが付いて、どう見ても荷車だが、重機関銃のようなモノが乗っている。
弾帯が通るのか、ガイドカバーまで……
「此処にある物全部なのか?」
「うーんここは、一般兵士も使う装備品で、奥に行くとスペシャルなものが確かあるとか?」
彼女は、こういう物には興味が無く、きっとよく知らないのだろう。
奥へと進む。
壁にも、銃やガンブレードなどが並んでいる。
槍や剣、弓。
どう見ても、アニメとかに出てくるような、モノばかり。
ただ問題は、剣とか槍が光っていること。
命を持つように、明滅をしているのが気になる。
そして奥のドアを開けて中に入ると、俺の体は動かなくなり、あろうことか失禁をした……
その部屋の中には人の形をした、猛獣がいた。
睨まれた瞬間、世界は暗転をした。
「目が覚めた?」
「あれっ? ここは?」
見慣れない天井だ…… お約束だが、口には出さない。
「医務室です」
声の主は、稲田かと思ったが、そこには、メイドさんが居た。
俺は、その女の人を見たとき、胸を撃ち抜かれた。
「結婚してください」
マチルダさんが、目の前に……
ああロボットアニメの方じゃなく、映画の方。
マチルダ・ランドーの方だ。
大人になってからの、ナタリー・ポートマンは少しシュッとしてしまってイメージが違うが、レオン出演時の彼女を見て好きになった。
そして、成長をして少しきつめの顔になったナタリー・ポートマンと違い、あのままの彼女が……
「えっ、あの…… 頭とか打った影響かしら? 少しお待ちください」
俺が伸ばした手から、逃れるように彼女は、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
呼ばれたのか、部屋へ入ってきた男。
「気がついたのか? すまないな。私が神野 龍一だ。二人が並んでいるのを見て、つい浮気かと思ってな。悪かった」
何か言っていたが、その時、俺の耳には何も聞こえていなかった。
「それはどうも…… それよりも、先ほどの彼女は?」
そう、今は何よりも、彼女のことを知りたい。
「それよりも? まあ良いだろう、さっきの彼女は、マリーダ=オートス、侯爵家の令嬢だ。ここでは、侍女として働いている」
「侯爵家?」
爵位を聞いてなんとなく、家の違いを理解した彼だが、諦められない。
日本の常識で、愛さえあればと思っていた。
だがこちらでは、家の格というものがある。
平民と侯爵家では、どのくらいの差があるのか……
追々彼は、知ることになる。
「さて、それよりもと言われてしまったが、俺に要件があったと聞いたが?」
おれは、侯爵家と聞いて、少し正気に戻った。
「えっ、あなたは?」
「―― さっき名乗ったが、神野 龍一。此処の王だ」
「王、神野……」
やっと理解をしたらしく、彼はベッドから飛び降りる。
「申し訳ありません」
ビシッとお辞儀。
当然、龍一は苦笑い。
言葉は普通だが、表情は全開で俺を嫌がっている。
庁舎で会ったときには、いつも能面のようだったのだが、表情が出るとは、何か心境の変化か?
「そんな、いやそうな顔をするな」
そう言われて、さらに眉間の皺が深くなる。
「嫌なんです。嫌そう、じゃありません」
彼は、面と向かい、そう言われて笑う。
彼女は頑張り屋で見込みがあった。だからネチネチといじ…… 教育を行った。
すると、なぜだかこの状態となり、彼女に面と向かって嫌いですと言われる仲になってしまったようだ。
「ちなみに、君の退職は保留だからな」
そう教えると、彼女の表情は一変。
「えっどうして? 王妃は職業なんですよ。副業は禁止なんでしょ? はっまさか、この状態だから、退職金をケチるために共済組合から通達でも? 私を懲戒とか?」
真面目な顔をしてこれだ……
「その辺りは判らん。それに王族は家業だから…… 多分…… 大丈夫だ」
「そうなんですか?」
王族が家業、彼女は釈然としない が、一応納得をする。
「それで報告のあった、武器の見学と…… 魔法だが、さっきのは君が?」
「ええまあ。あっ、この方は王国魔道士、宮廷魔道士の最高峰マードォウ=キンワメターノ伯爵です。私の師匠です」
さっき横であわあわしていたのは、魔法使いの偉い人だったようだ。
「日本の、緊急時特別対外対策課国野 紡と申します。よろしくお願いします。キンワメターノ伯爵様」
「うむ、奥方は、筋が良いと言うより……」
伯爵が、ぼしょぼしょと言った言葉の最後、確かに人間じゃない化け物だとと言っていた。
「ではまあ、案内をするなら、今日の訓練は終了とする、頭痛とかだるさとかはないかね?」
「ええ、このくらいなら、問題ありません」
あっけらかんと返す彼女、やれやれという感じの伯爵。
どうやら色々と認識の差があり、それはかなり深くて暗い谷のような物の様だ。
「失礼をします。補佐、あそこにあるのが倉庫なので先に行きましょう」
彼女が訓練をしていた広場の一角、巨大な建物が建っていた。
「レンガ造りであの大きさ、耐震性とか大丈夫なのか?」
「何かよく分かりませんが、レンガ風だそうですよ。中には金属メッシュが入っていて、土を石化しているから、コンクリートより丈夫だとか聞きましたけど」
金属メッシュ?
基礎部分に使う、コンクリートメッシュと同じものか?
石化?
まあ、気にしないでおこう。
さっき魔法を見たばかりだ、日本とは色々と違うのだろう。
そう違った。
「なんだこれは?」
彼女が倉庫脇のパネル。そうは言っても一見ただの石だがそこに魔力を流すと、通用門が開いた。
「すごいな、指紋認証なのか?」
「魔力認証です」
そう、最初指紋かと思った。
中に入り、またパネルに触れる。
「おわっ、灯りが付いた」
「ええ、こちらは電気じゃないので、とってもエコですよ」
そういう問題じゃない。
発光器具というよりは、天井全体が光っている。
でだ…… 見た目木製。
引くところが付いて、どう見ても荷車だが、重機関銃のようなモノが乗っている。
弾帯が通るのか、ガイドカバーまで……
「此処にある物全部なのか?」
「うーんここは、一般兵士も使う装備品で、奥に行くとスペシャルなものが確かあるとか?」
彼女は、こういう物には興味が無く、きっとよく知らないのだろう。
奥へと進む。
壁にも、銃やガンブレードなどが並んでいる。
槍や剣、弓。
どう見ても、アニメとかに出てくるような、モノばかり。
ただ問題は、剣とか槍が光っていること。
命を持つように、明滅をしているのが気になる。
そして奥のドアを開けて中に入ると、俺の体は動かなくなり、あろうことか失禁をした……
その部屋の中には人の形をした、猛獣がいた。
睨まれた瞬間、世界は暗転をした。
「目が覚めた?」
「あれっ? ここは?」
見慣れない天井だ…… お約束だが、口には出さない。
「医務室です」
声の主は、稲田かと思ったが、そこには、メイドさんが居た。
俺は、その女の人を見たとき、胸を撃ち抜かれた。
「結婚してください」
マチルダさんが、目の前に……
ああロボットアニメの方じゃなく、映画の方。
マチルダ・ランドーの方だ。
大人になってからの、ナタリー・ポートマンは少しシュッとしてしまってイメージが違うが、レオン出演時の彼女を見て好きになった。
そして、成長をして少しきつめの顔になったナタリー・ポートマンと違い、あのままの彼女が……
「えっ、あの…… 頭とか打った影響かしら? 少しお待ちください」
俺が伸ばした手から、逃れるように彼女は、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
呼ばれたのか、部屋へ入ってきた男。
「気がついたのか? すまないな。私が神野 龍一だ。二人が並んでいるのを見て、つい浮気かと思ってな。悪かった」
何か言っていたが、その時、俺の耳には何も聞こえていなかった。
「それはどうも…… それよりも、先ほどの彼女は?」
そう、今は何よりも、彼女のことを知りたい。
「それよりも? まあ良いだろう、さっきの彼女は、マリーダ=オートス、侯爵家の令嬢だ。ここでは、侍女として働いている」
「侯爵家?」
爵位を聞いてなんとなく、家の違いを理解した彼だが、諦められない。
日本の常識で、愛さえあればと思っていた。
だがこちらでは、家の格というものがある。
平民と侯爵家では、どのくらいの差があるのか……
追々彼は、知ることになる。
「さて、それよりもと言われてしまったが、俺に要件があったと聞いたが?」
おれは、侯爵家と聞いて、少し正気に戻った。
「えっ、あなたは?」
「―― さっき名乗ったが、神野 龍一。此処の王だ」
「王、神野……」
やっと理解をしたらしく、彼はベッドから飛び降りる。
「申し訳ありません」
ビシッとお辞儀。
当然、龍一は苦笑い。
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