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第五章 本当の戦い
第82話 報告は謎を深める
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「ただいま帰りました」
「よかったああ。帰ってきたか。俺は君を信じていたよぉ」
そう言って、課長古固 史行三十五歳は、彼に抱きついてこようとして、彼を見失う。
現場がザワつく。
「見たか今の? 成行が消えたぞ」
「消えたというか、神速の横スライド。あれはスライダーだな」
悲喜交々……
「あいつは王国へ行って、改造されたんだ」
「いやきっと同じ顔だが、入れ替わっている」
「成行さん、お父さんのことがなければ付き合いたかったのに。あの人はいなくなってしまったのね?」
「はあっ?」
振り返ると、お壺…… いえベテラン独身女性職員が、悲しそうな目をしている。
「ここから見て、体の周囲…… 白い光が見えるでしょ」
彼女にそう言われるが、ほかの人間には見えない。
彼女は大坪根さん。
東北の方が先祖の出身で、私の家は名のある家だったというのが、彼女のプライドを支えている。
何代か前は、どこかの庄屋だったとか、そんな類いだと思っていた。
よく親戚の集まりで聞かされた昔話だ。
そして大抵、三代前くらいのじいさんが、放蕩を繰り返して家が潰れたと。
だが彼女の目には、一般人には見えない何かが見えているようだ。
ただ、成行のことを気に入っていても、脳卒中でお父さんが倒れて、死なずに後遺症が残ったと聞いた瞬間、彼女は興味を無くした。
そう彼女はそうやって生きて来た。
あの人はこれだから嫌い。
この人は、それだから嫌い。
そう、私は周りを選別をする。
自分が選別されて、除外されるなどはあり得ない話。
モテないのは、たまたまよ……
まあ見えたからどうという事は無いので、彼女のことは無視をしよう。
見失ったが、すぐ横に避けただけ。
書類が出てくる。
印刷された物だ。
実は、龍一も書くのが嫌で、魔道式自動書記を改良していた。
大陸標準語は随分前から作られていた。
それに、日本語版を言語カートリッジ化をして突っ込んだ。
それがまあ、完成をした。
静かな部屋で、ゴーレムと向かい合う。
そしてゴーレムに向かった彼は、下書きに従い喋り始める。
句読点などは、自動式。
貴社の記者が汽車で帰社、このくらいならお手の物だ。
言語解析装置は、開発者の名を取りダレトックという。
ただ、リニア編集だから間違えると、ページの最初から修正となる。
タイプライターと同じ。
そのために、ワードプロセッサータイプが今開発中。
修正をするのに、修正と宣言をしてやれば、その行だけを読み返せば自動検索をして上書きをしてくれる。
それの実用化は、もう少し先のようである。
そして、お値段王国白貨。
一億円くらいである。
欲しがる家は沢山居たが、言語パックが日本語のために、安く買えた。
元々王命で作り出したのに、周りが群がり買値が高くなってしまった。
最近王命で造った物は、何でも買値が高い。
だが基本が出来れば、後は大量生産が出来る。
その事に、いつ周りが気がつくのか?
それまでに、貴族達の金を吸い上げる予定である。
変に金がある奴は、王国にとっての脅威となる。
「悪い目は、育つ前に狩らねば」
そう言って、楓真が高笑いをしていた。
まあその試作機を借りて、報告書と退職願を印刷してきた。
そう彼もなのだ。
両親が、王国の環境をひどく気に入り、老後はここで暮らすと宣言をしてしまった。
隣近所の繋がりがまだ残っていて、年寄りでもいざというときに、安全だと思ったようだ。
それに食料も、エアコンもある。
作業魔道具を使えば、身体強化に不慣れな母親でも、片手で親父を持ち上げることが出来る。
それでまあ……
「帰る? なんで、俺らはここに住む」
そう言って、勝手に住む家まで探してきた。
仕事は、しばらく冒険者をするようだ。
今自分で二つ名を考えているようだ。
「なんだこれは? 本当なのか?」
「本当です。父親も麻痺が治って、向こうで冒険者をしながら暮らすそうです。ですので」
そう言って課長の机に、すっと退職願が出てくる。
「まさか、成行お前もか……」
「ええ、向こうの方が暮らしやすいですし、親が離れませんから。ですが今、王国は中央帝国と今もめている様です。アジア担当の古田辺りを派遣してみれば恩が売れるかも知れませんね」
うん? と変な顔になる課長。
「あの国となんで?」
「実は王国って広いのです。それがこちらに転移してきたときに、当然かの国とも重なりまして、あの国でしょう、問答無用で攻めてきて、万単位で殲滅をさせられたようで、メンツはまあ潰れましたよね」
「それはそうだな…… あの国相手に万単位で殲滅? 銃などは使えるだろう」
そう聞かれて困ってしまう。
「あの王国魔法が使えるでしょう。報告書のこの部分を読んでください」
「えーと、なになに、魔道士一人が、キロトン単位の爆弾と同じ? それが本当なら小銃など意味が無いよな」
「そうなんです。国野に言わせると、王様は核並みだということです。それが、簡単そうに使うから多分連射可能だと」
「そんな、星が壊れるぞ」
「あの人なら、多分壊せますね」
しらっとそう言われて、課長は当然頭を抱える。
「よかったああ。帰ってきたか。俺は君を信じていたよぉ」
そう言って、課長古固 史行三十五歳は、彼に抱きついてこようとして、彼を見失う。
現場がザワつく。
「見たか今の? 成行が消えたぞ」
「消えたというか、神速の横スライド。あれはスライダーだな」
悲喜交々……
「あいつは王国へ行って、改造されたんだ」
「いやきっと同じ顔だが、入れ替わっている」
「成行さん、お父さんのことがなければ付き合いたかったのに。あの人はいなくなってしまったのね?」
「はあっ?」
振り返ると、お壺…… いえベテラン独身女性職員が、悲しそうな目をしている。
「ここから見て、体の周囲…… 白い光が見えるでしょ」
彼女にそう言われるが、ほかの人間には見えない。
彼女は大坪根さん。
東北の方が先祖の出身で、私の家は名のある家だったというのが、彼女のプライドを支えている。
何代か前は、どこかの庄屋だったとか、そんな類いだと思っていた。
よく親戚の集まりで聞かされた昔話だ。
そして大抵、三代前くらいのじいさんが、放蕩を繰り返して家が潰れたと。
だが彼女の目には、一般人には見えない何かが見えているようだ。
ただ、成行のことを気に入っていても、脳卒中でお父さんが倒れて、死なずに後遺症が残ったと聞いた瞬間、彼女は興味を無くした。
そう彼女はそうやって生きて来た。
あの人はこれだから嫌い。
この人は、それだから嫌い。
そう、私は周りを選別をする。
自分が選別されて、除外されるなどはあり得ない話。
モテないのは、たまたまよ……
まあ見えたからどうという事は無いので、彼女のことは無視をしよう。
見失ったが、すぐ横に避けただけ。
書類が出てくる。
印刷された物だ。
実は、龍一も書くのが嫌で、魔道式自動書記を改良していた。
大陸標準語は随分前から作られていた。
それに、日本語版を言語カートリッジ化をして突っ込んだ。
それがまあ、完成をした。
静かな部屋で、ゴーレムと向かい合う。
そしてゴーレムに向かった彼は、下書きに従い喋り始める。
句読点などは、自動式。
貴社の記者が汽車で帰社、このくらいならお手の物だ。
言語解析装置は、開発者の名を取りダレトックという。
ただ、リニア編集だから間違えると、ページの最初から修正となる。
タイプライターと同じ。
そのために、ワードプロセッサータイプが今開発中。
修正をするのに、修正と宣言をしてやれば、その行だけを読み返せば自動検索をして上書きをしてくれる。
それの実用化は、もう少し先のようである。
そして、お値段王国白貨。
一億円くらいである。
欲しがる家は沢山居たが、言語パックが日本語のために、安く買えた。
元々王命で作り出したのに、周りが群がり買値が高くなってしまった。
最近王命で造った物は、何でも買値が高い。
だが基本が出来れば、後は大量生産が出来る。
その事に、いつ周りが気がつくのか?
それまでに、貴族達の金を吸い上げる予定である。
変に金がある奴は、王国にとっての脅威となる。
「悪い目は、育つ前に狩らねば」
そう言って、楓真が高笑いをしていた。
まあその試作機を借りて、報告書と退職願を印刷してきた。
そう彼もなのだ。
両親が、王国の環境をひどく気に入り、老後はここで暮らすと宣言をしてしまった。
隣近所の繋がりがまだ残っていて、年寄りでもいざというときに、安全だと思ったようだ。
それに食料も、エアコンもある。
作業魔道具を使えば、身体強化に不慣れな母親でも、片手で親父を持ち上げることが出来る。
それでまあ……
「帰る? なんで、俺らはここに住む」
そう言って、勝手に住む家まで探してきた。
仕事は、しばらく冒険者をするようだ。
今自分で二つ名を考えているようだ。
「なんだこれは? 本当なのか?」
「本当です。父親も麻痺が治って、向こうで冒険者をしながら暮らすそうです。ですので」
そう言って課長の机に、すっと退職願が出てくる。
「まさか、成行お前もか……」
「ええ、向こうの方が暮らしやすいですし、親が離れませんから。ですが今、王国は中央帝国と今もめている様です。アジア担当の古田辺りを派遣してみれば恩が売れるかも知れませんね」
うん? と変な顔になる課長。
「あの国となんで?」
「実は王国って広いのです。それがこちらに転移してきたときに、当然かの国とも重なりまして、あの国でしょう、問答無用で攻めてきて、万単位で殲滅をさせられたようで、メンツはまあ潰れましたよね」
「それはそうだな…… あの国相手に万単位で殲滅? 銃などは使えるだろう」
そう聞かれて困ってしまう。
「あの王国魔法が使えるでしょう。報告書のこの部分を読んでください」
「えーと、なになに、魔道士一人が、キロトン単位の爆弾と同じ? それが本当なら小銃など意味が無いよな」
「そうなんです。国野に言わせると、王様は核並みだということです。それが、簡単そうに使うから多分連射可能だと」
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しらっとそう言われて、課長は当然頭を抱える。
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