はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
82 / 95
第五章 本当の戦い

第82話 報告は謎を深める

しおりを挟む
「ただいま帰りました」

「よかったああ。帰ってきたか。俺は君を信じていたよぉ」
 そう言って、課長古固 史行ふるかた しこう三十五歳は、彼に抱きついてこようとして、彼を見失う。

 現場がザワつく。

「見たか今の? 成行が消えたぞ」
「消えたというか、神速の横スライド。あれはスライダーだな」
 悲喜交々……

「あいつは王国へ行って、改造されたんだ」
「いやきっと同じ顔だが、入れ替わっている」
「成行さん、お父さんのことがなければ付き合いたかったのに。あの人はいなくなってしまったのね?」
「はあっ?」
 振り返ると、お壺…… いえベテラン独身女性職員が、悲しそうな目をしている。

「ここから見て、体の周囲…… 白い光が見えるでしょ」
 彼女にそう言われるが、ほかの人間には見えない。
 彼女は大坪根おおつぼねさん。
 東北の方が先祖の出身で、私の家は名のある家だったというのが、彼女のプライドを支えている。

 何代か前は、どこかの庄屋だったとか、そんな類いだと思っていた。
 よく親戚の集まりで聞かされた昔話だ。

 そして大抵、三代前くらいのじいさんが、放蕩を繰り返して家が潰れたと。

 だが彼女の目には、一般人には見えない何かが見えているようだ。
 ただ、成行のことを気に入っていても、脳卒中でお父さんが倒れて、死なずに後遺症が残ったと聞いた瞬間、彼女は興味を無くした。
 
 そう彼女はそうやって生きて来た。
 あの人はこれだから嫌い。
 この人は、それだから嫌い。
 そう、私は周りを選別をする。

 自分が選別されて、除外されるなどはあり得ない話。
 モテないのは、たまたまよ……

 まあ見えたからどうという事は無いので、彼女のことは無視をしよう。

 見失ったが、すぐ横に避けただけ。
 書類が出てくる。
 印刷された物だ。

 実は、龍一も書くのが嫌で、魔道式自動書記を改良していた。
 大陸標準語は随分前から作られていた。
 それに、日本語版を言語カートリッジ化をして突っ込んだ。

 それがまあ、完成をした。

 静かな部屋で、ゴーレムと向かい合う。
 そしてゴーレムに向かった彼は、下書きに従い喋り始める。
 句読点などは、自動式。

 貴社の記者が汽車で帰社、このくらいならお手の物だ。
 言語解析装置は、開発者の名を取りダレトックという。

 ただ、リニア編集だから間違えると、ページの最初から修正となる。
 タイプライターと同じ。
 そのために、ワードプロセッサータイプが今開発中。
 修正をするのに、修正と宣言をしてやれば、その行だけを読み返せば自動検索をして上書きをしてくれる。

 それの実用化は、もう少し先のようである。
 そして、お値段王国白貨。
 一億円くらいである。
 欲しがる家は沢山居たが、言語パックが日本語のために、安く買えた。
 元々王命で作り出したのに、周りが群がり買値が高くなってしまった。

 最近王命で造った物は、何でも買値が高い。
 だが基本が出来れば、後は大量生産が出来る。
 その事に、いつ周りが気がつくのか?
 それまでに、貴族達の金を吸い上げる予定である。

 変に金がある奴は、王国にとっての脅威となる。
「悪い目は、育つ前に狩らねば」
 そう言って、楓真が高笑いをしていた。

 まあその試作機を借りて、報告書と退職願を印刷してきた。
 そう彼もなのだ。
 両親が、王国の環境をひどく気に入り、老後はここで暮らすと宣言をしてしまった。
 隣近所の繋がりがまだ残っていて、年寄りでもいざというときに、安全だと思ったようだ。
 それに食料も、エアコンもある。

 作業魔道具を使えば、身体強化に不慣れな母親でも、片手で親父を持ち上げることが出来る。

 それでまあ……
「帰る? なんで、俺らはここに住む」
 そう言って、勝手に住む家まで探してきた。
 仕事は、しばらく冒険者をするようだ。
 今自分で二つ名を考えているようだ。


「なんだこれは? 本当なのか?」
「本当です。父親も麻痺が治って、向こうで冒険者をしながら暮らすそうです。ですので」
 そう言って課長の机に、すっと退職願が出てくる。
「まさか、成行お前もか……」
「ええ、向こうの方が暮らしやすいですし、親が離れませんから。ですが今、王国は中央帝国と今もめている様です。アジア担当の古田辺りを派遣してみれば恩が売れるかも知れませんね」
 うん? と変な顔になる課長。

「あの国となんで?」
「実は王国って広いのです。それがこちらに転移してきたときに、当然かの国とも重なりまして、あの国でしょう、問答無用で攻めてきて、万単位で殲滅をさせられたようで、メンツはまあ潰れましたよね」
「それはそうだな…… あの国相手に万単位で殲滅? 銃などは使えるだろう」
 そう聞かれて困ってしまう。

「あの王国魔法が使えるでしょう。報告書のこの部分を読んでください」
「えーと、なになに、魔道士一人が、キロトン単位の爆弾と同じ? それが本当なら小銃など意味が無いよな」
「そうなんです。国野に言わせると、王様は核並みだということです。それが、簡単そうに使うから多分連射可能だと」
「そんな、星が壊れるぞ」
「あの人なら、多分壊せますね」
 しらっとそう言われて、課長は当然頭を抱える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...