はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第五章 本当の戦い

第84話 こちら側

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 あれから三年が経ち、魔導具と電子機器の融合は思いのほか上手く行った。
 ただ一足飛びに全部が復活というわけには行かないが、インフラは魔導具のおかげで急速に復活をした。

 人々の顔に笑顔が返ってきて、暮らしが多少戻って来た頃だった。

「去年は、食い物がなくて大変だったなあ」
「ああ王国の人が、食料をくれたんだって?」
「あそこの王様は日本人らしいぞ」
「じゃあ、日本なのか?」
「大人の事情で、日本には出来ないらしい」
 そんな噂が聞こえ始めていた。

 そんな頃、世界中に日本の事情が聞こえ始めていた。
「なに、魔導具? 何だそれは?」
 ほとんどの国は、一九五〇年代へと戻っていた。
 電子デバイスを使わない機器。

 倉庫の奥から、腐りかかっていた農機具などを引っ張り出して修理。
 手が必要なため、国境の壁を開き、南から移民を受け入れる。
 ほんの三年前に、むきになって送り返していた者達を再び受け入れる。

 そんな所に、日本からの噂が聞こえる。

「それにより、急速に復活、電子デバイスの生産も開始したので輸入をするかという打診です。関税は無用だという事です」
「ぐぬぬ。彼が亡くなり、気を使う必要が無くなったというのに……」
 色々な事情があるようだ。

「早急に、その魔導具というものの正体を調べろ」
「詳細は不明ですが、インフラにおいて、配管が必要なく、クリーンなエネルギーのようです」
 報告書は、タイプライターで打たれていた。

「空気中の魔素を使う? 魔素とは何だ?」
「魔法を使うエネルギーの様なものと、学者は言っています。使用者の意識により物理的なものに変化をする」
「待て魔法?」
「ええ、各地に現れた者達が使うようですよ。日本は同盟を結んだようです。国と認めると」
「国だと? 詳細は」
「これです。時空震の時、日本海から中央帝国にかけて土地が入れ替わったようです」
 その資料は驚くべき事が書かれていた。
 どこから漏れたのか……

 当然日本が、リークした。
 牽制のために。
 未知の技術を有する王国、そことすでに仲良しだよと。

 そこが持つ、魔導兵器は大国でも作れないやばいものだと脚色されて書かれていた。
 魔導兵士一人が、キロトン単位の爆弾と一緒。
 無手で、街を消滅できる。
 そんな内容。

 王は、核ミサイルに相当し、お願いをして試すと、一〇式戦車ひとまるしきせんしゃの主砲、44口径120ミリ滑腔砲の弾を素手で受け止める事が出来、空中で制御が奪われて自分の所に戻ってくると言う技を見せられた。

 無論風魔法。
 ちなみに、44トンもある車体をコロコロと引っくり返すことも出来たと記述があった。

「なっ、これは本当なのか?」
「参考資料だそうです。かなり控えめな」
「ぬうっ」
「そして、これが中央帝国側の資料、嘘八百なので少し注釈を入れます」
 バサッと置かれた資料。
 こちらは手書きだ。

「三年前に、我が領土に現れた蛮族達。我が国は歩兵一千人を派遣。当時は、電子機器が使えず、小銃のみを装備。これ千人と書かれていますが、武器が心許ないので万人レベルを派遣したようです。そして……」
 ガサガサと、書類を漁る。

「ああコレですね。城郭を持つ街、三千年もの昔を思い出すような攻城戦、我々は興奮をしていた。だが、ここは我が国の領土。明け渡すように司令官が通達した後、ふざけるなと返答があった。こちらから攻撃が始まると、その数百倍とも言える苛烈な弾幕が張られ、仲間達はミンチとなった。私は、死んだふりをして、逃走をした。それは一瞬の出来事だった」
 目撃譚が、バサッと机に戻される。

「かの国らしい顛末ですが、問題は弾幕が張られた。つまり、見た目は古いが、近代的な武装をしていると言うことです」
「供与したのは日本か?」
「それなら世論でいけますが、自前のようです。職員が現場で採取すると、銃弾ではなく、これ」
 手の平には、ダブルポイント形重六角錐の石が握られていた。長さはおよそ十二センチで、太さが三センチちょっと。
 
「これは?」
「敵の…… いや、彼らがが使った弾幕の弾です。ちなみに硝煙の反応及び痕跡は無し。どうやって撃ちだしたのか不明。空気かと思いましたが、射程は一キロほどある様で、装備していたプロテクター、矢があるかもしれないとレベルⅡ規格だったようですがあっさり貫通。まあかの国ですから、レベルⅠと思っていた方が良いかと思います」
 それを聞いて言う言葉は一つ。

「王国とやらと連絡を取れ、脅威度によって対応は考える」
「はっ、速やかに実行いたします」

 そうは言っても、現役が行くとまずいだろうと、退役軍人達で一チーム作り派遣をするつもりだったがまずそうなので、丁度良い傭兵団に依頼をする。

「うちの傭兵団に依頼?」
「ああ君らは、各組織のあがったり、失礼退役者だ。この任務バラバラの方が良い」
「随分な言い草だな、行き先は?」
「日本に出現をした王国。連合国だが、未だに正式名称は決まっておらず、とりあえずはインセプトラ―王国の王都カーブキーへ行き脅威度を探って欲しい」
「随分漠然とした依頼だな。まあいい、飛行機は博物館にあったC-47 スカイトレインを今整備中だが、船とどちらが良い?」

「船だ」
「判った。よい旅を」
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