はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第五章 本当の戦い

第92話 決戦

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 俺達は覚悟を決めて敵の本丸、魔王城へと向かう。
 周囲のコロニー解放は、兵やゴーレムに任せた。

「よし、行くか」
 無論こちらも、兵の代わりにゴーレム部隊は大量に連れている。
 呼称はホワイトナイト。
 どこかで見たような機動部隊だが、中に人間は乗っていない。

 タイプはマークⅡ、ホバータイプだ。


 道中でもモンスター達は当然掃討しながら、やって来た。
 目的の場所は判っている。間違いやしない。

「さすが敵本陣、すごい数だな」
 目の前にある草原には見渡す限りモンスター、その後方に小山。
 そこを守っているのは、そう写真で見たケルベロス、オルトロスペアだ。
 兄弟かどうかは知らんが、狛犬のように魔王城入り口の並んでいる。

「さて、行けー」
 無言だが、一斉にホワイトナイト達は突っ込んでいく。
 その姿に恐れは見えない。
 ゴーレムだから当然だが……

 左手に長さ一メートル二十センチの盾を装備、右手には一メートル五〇センチの長剣。
 それを構えて突進。

 盾を使い、跳ね飛ばしてからの、殲滅開始。

 ゴブリン達は、最初のぶちかましだけで潰れていく。
 かわいそうに、潰されたのを見てオーク部隊が動き始めた。
 そうゴブリンさん達、前からも後ろからもすりつぶされていく。

「ぐぎゃあぁぁ……」
 そんな断末魔が、到る処から聞こえている。

 だがゴーレム達は動じない。
 前進前進で進む。
 人間とは違うのだよと言う声が、どこかから聞こえる。

「どれ、援護射撃だ」
 龍一の手元から、小さな光の珠が、戦場へと向かう。
 オーガ達が整然と並んでいる中層辺りに、ポツポツポツと光が瞬く。

 音はなかった。
 ただ一陣の風? いや衝撃が、全てを吹き飛ばした……
 あわてたように、シールドが展開された自軍。
 そう安全装置の自動展開。

 その後に形容のしがたい、炸裂音が轟く。

 それを魔王城の奥で魔人が聞いていた。
「こちらにも居るのか?」
 そう、命あふれる星、それを破壊するとまた暗闇で一人。
 それは神々に閉じ込められた、次元の狭間と同じ事。

 暗き所、時間の流れも関係なく、暑さも寒さも判らないただの闇。
 そんな所で、数十億の年月を多分過ごした。
 実際は兆年よりも長かったが、彼には判らない。

 ただ、あの状態に戻りたくない。
 それだけを思う。
 だが向こうで意地の張り合いをして、星を破壊してしまった。
 そしてこちらにも、力あるもの達がいる。

 彼は悩み始める。
 モンスター達も喰わねばならぬ。
 できれば、生きの良い美味い奴を。

 だがその餌が強い。
 その矛盾。

 悩んでいるうちに、龍一のオウンゴールのような状態から立ち直り、人側は再び侵攻を開始し始めた。
 
「大丈夫だぁー、被害は少ない。いけぇー」
 とまあ、適当な感じだが、さっきの一撃はかなりの被害を与えた、狛犬達……
 彼らもかなりの怪我を負っていた。

 やって来る白い部隊。

 とうとう二匹は駆け出した。
 部隊は一度正面から当たり、それを受け流す。
 そう、包囲殲滅へと移行する。
 二匹は、個別に囲まれて突っつき回される。

「ぐるる、きゃん」
 後ろ足を突かれてしまった。

 何せ数が多く、犬パンチも盾で受け止める。
 無敵であるはずの獄炎攻撃も効いた感じがしない。
 本来は、物質にあたると燃え尽きるまで消えることがない。
 それなのに、普通にいなされる。

「ぐううっ」
 ちらっと見ると、オルトロスが、もうやられ掛かっている。
 なんと言うことだ。
 ケルベロスは遠吠えをする。

 『おやぶん、もう抜けられます。申し訳ありません……』
 その時、堰を切ったように攻撃が当たり始める、ケルベロスの身を守っていたシールドが壊れたのだ。

 そこへ、やって来た存在。
「それ以上虐めてやるな」
 やって来たのは、もちろん桃太郎…… ではなく、闇の魔神メイダークネス。

 ふと手を払うと、真っ黒な煙が二匹へと与えられる。すると、死にかかっていた二匹は復活をする。
 聖魔法において、癒やしの光にあたるものだったようだ。

 二匹は、魔神に擦り寄る。
 それは、戦場においてほっこりする姿。
 だがホワイトナイト達には関係がない。
 攻撃を再開するが、雷撃系の魔法が、ピンポイントで魔導回路を焼き切っていく。
 それにより、ホワイトナイト達は石と鉄に戻っていく。

「おわああ、ガン○ムがやられた」
「龍一、違うから」
 そう言って、横に居る楓真から、突っ込みにしては強力な肘打ちを受けて、三メートルほど吹き飛ぶ龍一。

「魔導戦車隊突っ込め」
 そう無限軌道を履いた、ゴーレム部隊。
 聖魔法を戦場に放射しながら進んでいく。
 
「ちょっと待った」
 壁が二匹と一人に近寄ったときに声が掛かる。
 頭に直接響く声。

「ちょっと話に行って来よう」
「俺も行く」
 危険なのに、楓真も付いてくるようだ。

 だがまあ、あいつが本気を出したら、星ごとやばそうな気がする。
 ならどこにいても同じだ。

 そうして向かい合う。
 交渉においての重要な事、俺達は、背中側に光を背負っている。
 表情がよく見えないだろう。
 面接官が窓側にいるのと同じ理屈だ。

「何の用事だ?」
「話し合い、つまり戦闘停止の交渉だ」
 偉そうに腕を組み、そう言ってくる魔神はフル装備の鎧姿、表情など全く見えない。
 思惑が潰された。

「要望は何だ?」
「俺は暗く淋しいのはもういやなんだ。お前達が虫けらのように殺した連中は大事な家族なんだ」
「それは悪いことをした」
 こちらからすればモンスターだが、奴には家族だったのか。

「その家族が暮らす土地。つまりこの周囲。そして食料だ。たいした要望ではないだろう」
「まあ大したことではないと言えばそうだ」
「まあ年間、二万人くらい貰えば良い」
「そうか、二万…… 人?」
「そうだ、お前達八十億もいると聞いたぞ」
「今はその半分くらいだ。だがやらん。人じゃ無い物は駄目なのか?」
 そう、喋りながら矛盾に気がついたが押し通す。
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