科学は魔法のある風景を創り出した。そして、世界は終末を迎える。

久遠 れんり

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第三章 本当の終末

第22話 気がつけば世界の半分は終わっていた。

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「ヨーロッパからの、音信が途絶?」
「はい。かろうじてイギリスは大丈夫なようですが、自分の所で手一杯で、海の向こう側の詳細は不明だという事です。ただ、ドーバーにトンネルを造ったのは誰だと、怒っているようです」
 それを聞いて、上司は苦笑いを浮かべる。

「あそこを通じて、モンスターが来るのか。しかし、他は全滅か?」
 ファイルを、捲りながら報告を確認していく。

「ええ。無人機を飛ばしても、最近は謎の航空機がいて、戦闘になるようです」
「話は聞いている。何を考えているのか不明だが、モンスターも、人間もすべてを殲滅に掛かってきている奴だな」
「やはり、調査しかありませんね。衛星からでもある程度は見ることはできますが、詳細な情報は地道に拾わないと無理ですし。ドローンでは、所属不明無人機の反応が最近上がってきたのと、陸戦タイプに新型が登場して、それがめっぽう危険らしくて、送っても送っても撃墜をされるようです」
 嫌そうな顔をしながら、下士官は該当の記述部分を指し示す。

「まあ今のところ海は安全そうだから、船で輸送。幾箇所からか、上陸させて偵察だな」
 そうして、作戦は実行され、上陸した陸軍は壊滅的被害を受けることになる。
 その中で、ある程度結果を出せたのが、サポートアーマー部隊。だが全体からすると、数は非常に少ない。

 それ以外の大多数の部隊は、主として運用していた戦車などがあったが、物量でおされ強固な装甲を破壊された。特に、ワーム型は、アセチレントーチを装備しているらしく。装甲の薄い下部から溶かされ、内部へ侵入されて穴だらけにされた。
 むろん乗務員は、内部で蒸し焼きとなった。

「なんと言うことだ、戦車じゃ機動性において不利すぎる。あっという間にたかられておしまいだ」
「かといって、生身で、この地へ侵入偵察は無理です。奴らは、二十四時間動きが止まりません。それに、ふと気がついたのですが、放射線量がまずいレベルです」
 報告をしに来た、下士官がそっとファイルを出してくる。

「これは本当か?」
「ええ。まずいです」
「本国へ連絡。撤退をするぞ」
 現場の判断で、速やかに撤退後、連絡を行った。

 情報と報告を受けた、軍作戦本部。
「放射線量が、高いな」
「ええ、百ミリシーベルトを越えています。これで長時間の行動は非常にまずいことになります」
「仕方が無い。一度引き返せ。風の流れを地球規模で予測。軍自体の装備を一度すべて見直す」

 その頃、軍開発室。
「報告を見たか?」
「ワームや多脚型が、わさわさ居たという事ですね」
「そうだ、通常武器より、捕獲を視点に入れて武器を造る」
「鳥もちやネットですか?」
「そうなるな。それに内密だが、どうやら放射線量が高いらしい」
「除染より、線源を封じるための二液混合タイプ樹脂を噴霧する装置を開発して、敵の捕獲と同時に表土の密閉を行いますか?」
 落書きのような、フローチャートを書きながら、仮と題した対処法が矢印の先に書かれる。

「その方が、現実的だな。取り戻してからゆっくり除染した方が良いだろうが、土地が生きているのかすら不明だからな」

 そうして、彼らは無人機で樹脂を噴霧する装置を開発。
 実用化した。

 そして、新世達。
「ユーラシア全体がやばいようだ」
 報告書を見ながら、ミーティング中。

「この前冗談で言ったことが、本当になりました」
 これは、酸素ボンベのこと。

「そうだな」
 メカニック達も、せっかくゾンビ状態から生き返って生きたのに、今回フルカバーで放射線の遮蔽材料として、鉛やタングステンで外装を造ることになる。
 つまり、重い。当然、重量増に合わせて、フレームから強化が必要となる。

「全体で、どのくらい重くなるかな?」
「さあ? 今まで、外装はチタンとカーボンだったんですよ。今後は、その内部に鉛などをサンドイッチ。問題は、完全シールドで酸素ボンベが必要。これはもう、サポートアーマーじゃなくて、ロボットですね」
 そう言ってぼやいているが、顔はずっとニヤけている。

「楽しそうなんだろう」
 そう言うと笑顔が、こぼれてくる。本当にこういうことが好きなのだろう。
 よく分かる。

「そりゃあまあ。ただ予算が」
「大丈夫だろ。軍が必要だと言っているんだ。聞いていないのか?」
「なるべく安く。大量に必要だから、コストは下げろ。ですって」
 そう言って、ため息を一つ付く。

「まあ、それはそうだろう。外装に関しては一度造って、外部発注はできないのか?」
「細かなものなら、大丈夫そうですけれど、全部が秘密のお仕事ですから。うち奥さんにも秘密なんですよ。おかげで、夫婦仲が悪いったら」
「結婚していたのが意外だが、そりゃまあそうなるよな。忙しいと何日も帰らないし、子どもでも居れば、奥さんが切れるぞ」
 そう言うと、がっくりと肩が落ちる。

「そうなんですよ、子どもが生まれて、一番大変なときに家のことをしてくれなかったって、義実家の方にも言ったらしくて、最近行くと目が怖くて。幼馴染みじゃなければ、もう捨てられていますよ」
 そう言って力なく笑う。
 だが俺は、別の所に引っかかった。

「幼馴染みと、結婚をしただと」
「ええ。それが何か?」
「勝ち組め。仕事をしろ」
「ええっ??」
 
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