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第2章 魔法の使える世界

第30話 初めての県外遠征 第二夜

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「お前ら、馬鹿だろう」
「だってあの話の流れじゃあ、誰だって勘違いしますよ」

「モンスターは、死ねば魔素に還る。それは基本だろう。なんでお前たちに、焼いたクモを食わすなんて発想になるんだ?」
 ジト目で二人をにらむ。
「いや社長だし……」
「よし、芳雄。残念だが、一翔はダンジョンではぐれて、消息不明だ。いいな」
「はい」

 一翔は、おろおろしながら反論をする。
「いや、芳雄。はいじゃねえよ。社長もちょっとした冗談じゃないですか…… やだなあ、はははっ」

「しかし、4時か。さすがにちょっとだるいな。ちょっと帰って休憩するか」
「えっ今から? またダンジョンから出るんですか?」
「そんなわけあるか、面倒くさい」

「いいこと教えてやる。このダンジョン実はすでに死んでいる。ダンジョンマスターを殺したのは迷い込んだ蜘蛛だ。たぶんな。まあ、と言うことはだ、俺のゲートが開けると言うことだ」

壁に、ゲートを開く。

「芳雄は風呂へ入って、自分の部屋で仮眠しろ。一翔は、仕方がない、部屋を作ってやる。風呂へでも行っとけ」

 うん? またついてこない。何をやっているんだあいつは?
 外のダンジョンへ出ると、一翔がおろおろしている。
「社長、中に入れません。ついて行くとはじかれます」

「ああ? しまった。認証をしてなかったな。ほれ手を当てろ。これで入れるはずだ」

 無事にゲートをくぐっていく、一翔。
「うわ、なにここ」
「うちのダンジョンだ、芳雄に使い方を教えてもらえ」

 さてと、この際だ。ゲストルームを作るか。芳雄たちの部屋に続く廊下の横に新たに廊下を作る。今回は一つだけ部屋を作り、ベッドとトイレなどを簡易的に設置する。布団は、芳雄たちが来た翌日に布団を買いに行った際、余分にいくつかセットで買ったから、それを使う。

 一応洗面所も必要か。


 作業をしていると、芳雄たちが風呂から出たようだ。
「一司さん、電気が使えないんですが?」
「ああそうだな、今回ゲートをつなぎ変える予定だったから、ケーブルを抜いた。無線LANも使えんぞ」

 入り口わきのケーブルを、繋ぎ変える。
「えーとこれを、ここへ接続。どうだ?」
「あっ、使えました。その箱って何ですか?」
「新型家庭用発電機」
 何のことは無い、回転子で遊んだ時に作った発電機である。
「空気中の魔素を電気に変える。超クリーンエネルギーだ」

「すごいですね、作ったんですか?」
「うちの会社で魔道具部分を作って、ほかのメーカーに卸している。もう少ししたら市販されるんじゃないか?」

「へーうちの会社って特別指定外来種対策会社ですよね、魔道具も作っているんですか?」
 そんなぼけたことを言ってくる一翔。
「もう忘れたのか? 役所で俺が売っている魔道具を、盗みに入ったのは誰だ」
「あっ、あれも魔道具だ」

 言われて納得したようだ。
「それに、外来種対策だから何やってもいいんだよ。駆除特化というわけじゃない。まあいい。今5時だから10時くらいに出れば、今日中に終わらせて明日は遊べるぞ」

「「はい」」
 言ってから、
「冷静に考えると、うちの会社、結構ブラックだなあ。俺も寝よ」
 そうぼやいて自分の部屋へと帰る。

 一度、目覚ましが鳴りだして7時に起きたが、寝なおして9時に目を覚ます。
 風呂に入ったあと、一応朝飯を作る。
 こっちのキッチンは、魔道コンロ、魔道オーブン、魔道冷蔵庫。魔道製品のオンパレードだ。現在自分で、使い勝手のモニター中だ。

 目覚ましにコーヒーを飲んだら、サンドイッチが欲しくなり作成中。ただし、中にいくつか、からしマシマシスペシャルあり。

 適当にラップに包み転がしていく。

 そうしていると、芳雄が起きてきた。
 テーブルの上のサンドイッチを発見する。
 慌てて自分のグラスにオレンジジュースを入れてテーブルに着く。
 そして、真剣にサンドイッチを凝視し始める。

 家のルールや決まりとして、テーブルの上に出ている物は食ってよし。というルールがある。
 最初はいちいち聞かれて、うっとうしかったためにそうした。
 ルールができる前、真魚なんかテーブルの上によだれ垂らして見ていたしな。

 ただ、今の芳雄の行動は、俺が何かを作ると、間違いなくトラップがあることを、すでに知っているからだ。

 一度。プリンの形にした卵豆腐を混ぜたときは面白かった。

 あれはそもそも卵豆腐を蒸すときに、入れ物で悩んで、耐熱のグラスがあったからそれに入れて作っていた。
 そしたら美月が、それを見ていてプリンが欲しくなったらしく、結果的に同じ器でプリンを作り、一緒に蒸した。
 出来上がったものは、匂いで判断しないと食べるまで分からない。
 一口食べるまで妙なドキドキがあった。
 間違えると、脳がパニックを起こすんだよ。面白かった。
 最近は、逆パターンの茶碗蒸しの器に、プリンが入っていることもある。


 それはさておき、一翔も起きてきて、芳雄が同じオレンジジュースを用意していた。その間に、適当に取ったサンドイッチに一翔がかじりつく。もぎゅもぎゅと食べていたが当たりを引いたらしく動きが止まった。まあ当たりと言っても、食えないほどの辛さはない。食い物がもったいないからな。

「目が覚めたか?」
 と一翔に聞くと、ぶんぶんと頷いていた。

「食ったら、2日目行くぞ」
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