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第3章 本格的侵攻開始   か?

第12話 大晦日は最後の月末

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 昨日に続き、朝から一司は一人。
 ばたばたと大騒ぎしていた。

 そばの打ち方を検索して、素人でも失敗しにくそうな二八そばにしようと決めた。
 そば粉8割に対してつなぎ粉2割? つなぎ粉ってなんだよ。
 小麦粉じゃなかったのか?…… ええと中力粉? よかった。
 記憶は正しかった。

 えーと、俺と美月。
 神地さんと芳雄に真魚と壮二。
 それと一翔に井守先生も来るかな? あと松沼父と母…… 10人。
 余裕をもって、20人前かな?

 なら、2kgだから、そば粉が1.6kg。中力粉が400g。冷水がそばの半分だから800g。くらいだよな。こね鉢にふるいを使って粉を振っていく。
 冷水を足しながら、指先を立てたにゃんこの手の感じで両手を使い8の字を描くようにかき混ぜる。

 この混ぜ方は、うどん打ちを習ったときの物だから、そばでするかは知らん。

 そばに、幾度かに分けて加水とかき混ぜを繰り返していく。
 まとまり始めたら一つの球にする。
 空気を抜く感じで菊練りをしていく。
 表面のつやの感じを見てしずく型を作った後。
 軽くつぶして、円盤状にしたらビニール袋に入れる。
 そして、次のそばをこねていく。
 さすがに、加水を失敗しそうで、20人前を一度にはこねられなかった。

 台の上に打ち粉をして、順に円盤状に伸ばしていく。
 この時は、打ち粉をしながらなるべく均等に、1cm以下の厚さになるまで回転させながら押し広げていく。

 適度な所で、めん棒とか、のし棒と呼ばれる棒。
 直径30mm×1050mmがお気に入りで使っている。
 この棒で順に伸ばしていき6~7mmの厚さになれば、生地を棒に巻き付けろ。
 めん棒の中心から外へ向けて、手のひらを少し力を加えたまま棒に沿って滑らせるようにしながら転がす。

 伸している間に、形が四角くなるように微調整をしていく。
 打ち粉を忘れずに適度に振りながら、角から巻きながらさらに伸ばしていく。
 厚さが約1.5mm程度になれば、終了。
 折りたたむ。
 この時の幅は麺切包丁の幅を考える。
 普通はコマ板を使って切るのだが、切った包丁をひねりコマ板をずらして、また切るのを切り返して切っていく。
 ただ、なれないと麺の幅がばらばらになる。
 それを打開するため、パスタマシーンで切っていた。
 楽なんだよ。カッター幅を決めて、くるくるするだけ。

 だが、そんな過去とは違い、今回は麺切カッター台を買った。
 これは、包丁の先が移行装置を介してシャフトに取りつけられていて、包丁を振り上げると指定のピッチ分だけ、勝手に左へ包丁が移動して均等の幅で切れていく。

 これを使い1.3mmで切っていく。
 軽く振り上げて、すとんと落とす。
 それを繰り返すだけで麺ができていく。

 パスタマシンより、麺を切る感じはする。
 出来上がりは、包丁の方が上だと信じたい。

 そこでふと、皆に見られると夜までに消える可能性がある。そんな予感がして、そばの風味が落ちるが仕方がない。
 ロック付きの袋に小分けして、冷蔵庫へ詰め込んでいく。

 そして、次に俺はうどんを打ち始めた。

 そばとやることはほぼ同じ。
 だが、水が冬場なら10% の濃度塩水に代わるだけだ。

 うどんを打っていたら、みんなが起きて来始めた。
 大体、麺切カッター台が楽しみで我慢が出来ず。
 朝早くから、バシッと目が覚めてそばを打ち始めたのが間違いだからなぁ。
 自分でもわかっている。
 でも楽しみで寝られなかったんだよ…… ほんと楽しみで。
 新しい道具を買うと、わくわくするのは理屈じゃないんだよ……。
 誰に良い訳するでもなく、そんな事を考え自分で納得する。

 うどんは、ねかしが要る。
 その間に待ちきれなかったようで、結局皆にそばを食われた。

 昼からまた粉を買いに行き、再びそばを打った。
 だが、そのおかげで、麺切カッター台は完全にマスターした。
 柄は軽く握り、上下させる。
 力を入れてはだめだ。

 俺がそば打ちを堪能していたころ。
 隣では、すでに宴会が始まっていた。

 そうこうしているうちに、一翔がやって来た。
 家は良いのか聞くと、大掃除をしていたはずだが、お姉さんがすでに酔って今年も男が出来なかったと騒いで、暴れているらしく逃げて来たそうだ。

 そば打ちも終わり、片付けていると井守先生がやって来た。
 だが、来た早々速やかに宴会に混ざる。

 ちょうど片付けが終わった頃、松沼父と母がやって来た。

 まだ、午後6時なんだけどな。
 ワイワイと騒いでいる様子を見る。
 まあ、みんなの笑顔がうれしい。
 9月から始まった、こちら側への干渉。
 地球上に今までなかったダンジョンが作られ、人々の生活が少しずつ変わって来た。

 人々は魔法を使えるようになり、まだ、俺以外は作れないそうだが、魔道具もできた。

 ……すでに俺たちは、普通の人間じゃ無くなってしまったようだが、今のところは問題が出ていないし、角でも生えてくれば何か考えよう。

 酒を飲みながら、振り返る。
 一番大きく変わったのは、俺の生活だな。
 一人マンションで、適当なものを食ってPCの前に座っていたのに。
 気が付けば家族らしき者も増えて、家はにぎやかになった。

 美月は居着くし、高校生を助け。
 芳雄に加え、真魚と壮二が家族みたいになって、井守先生にお世話になって、松沼父と母はまあいいか、怖いけど……。
 
「あれ、神地さんは帰らなくていいの?」
「そうですね、年が明ければ、一度帰ろうかなと考えています。ですので、姫はじめはぜひわた……」

 思わず、げんこつを落としていた。
「神地さんは、お年玉なしね。子供もいるのに、何を言っているんだ」
「ひどっ」とか、「くれるんですか」と神地さんが言っているが、そんなことより、ほら背後から変なプレッシャーが立ちあがって来たじゃないか。

「神崎くん。今のは、どういうことかね。聞き捨てならん話のようだが。警察関係者として違法行為は黙認できんな」
「いやだなあ、彼女が言っているだけで、何もしていませんよ」

 冷や汗を垂らしながら、
「彼女に手を出しているのは、美月の方です」
 と投げてみた。
「そうか、じゃあしようがないね。おっ年が明けるね」
 と松沼父がごまかしたところで、除夜の鐘が鳴り始めた。

 もう少しで、年が明ける……。
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